PBP 2019 走行時のウェア

この記事は約 11分で読めます。

私がPBPで着る予定のウェア構成と、その理由を紹介します。

前回参加の経験を踏まえて、アップデートを加えたものになります。これから2ヶ月で少し修正を加えるかも知れませんが、概ねこの通りになると思います。

以下のものは別記事で紹介します。

目次

基本的な考え方

パリの緯度がどれくらいかご存知でしょうか。

パリは意外と北にある

答えは北緯48度。日本最北端の宗谷岬が北緯45度なので、更に北です。

実際には宗谷岬の方が寒流や寒気団の影響を受けることもあり、緯度以上に寒いのですが、それでもパリは関東あたりと比べると夏場の平均気温はかなり低くなります。大体、北海道の南部と気候は似ていると考えてください。

熱波と気温

この記事を書いている2019年6月現在、フランスには熱波が到来していますが、それでも最高気温は36℃。

2003年、史上最悪の熱波が到来した年にはフランス中部で8日連続40℃を超える高温を記録しましたが、そうそうここまで暑くなることはないはずです。

フランスの朝は寒い

平年のパリの8月の平均最高気温は25℃ほど。東京の平均最高気温が31℃なので、かなり涼しい気候と言えます。

そして、PBPで走る田舎道は、深夜~早朝にかけてかなり冷え込みます。暑さよりも心配すべきは寒さなのです。

PBP_wear_1.jpg

こちらは2015年のPBPを走った際の、Garminの気温センサの記録です。

最高気温は26℃と、先程挙げたパリの平均最高気温と近い値になっています。注目すべきは最低気温で、なんと8℃です。

記録した時間は午前4時頃。地点は折返しのブレストから40km手前の山(といっても標高260mくらい)の中でした。ブレストはフランスでも寒い地域の一つで、8月の平均最高気温は21℃、平均最低気温は13℃。これは大体、宗谷岬の8月の平均気温と一致します。

アジア勢の完走率の低さ

こちらのページは、PBP2015の国別完走率の統計です。

リタイヤ率上位の国はシンガポール・タイ・インドネシア・マレーシアと言った東南アジアの国々が目立ちます。時差もあるとは思うのですが、私は平均気温の差が大きいと思っています

前回のPBP終了後にタイからの参加者と話す機会がありましたが、どうもタイの自転車屋には十分な防寒具が売っていないようなのです。

バンコクの平均気温は年間で29℃ですから、それも納得。恐らく、彼らは4年間で海外通販で防寒具を色々買い漁ったことでしょう。

一桁気温に対応できるウェアを

前置きが長くなりましたが、とりあえず一桁気温に対応できる装備は用意しておきましょう。

5℃~30℃くらいまで対応できるようにしておけば安心です。山が含まれると氷点下も覚悟しなくてはなりませんが、PBPの最高標高は僅か350m。氷点下を心配する必要はないはずです。

気温に合わせた専用のウェアを用意していたら、サドルバッグは溢れてしまいます。このため、薄い服を重ね着し、外気温に応じて脱ぎ着しながら走ることになります。

これを「レイヤリング」と呼びます。この後の詳細解説では、レイヤリングを前提としてお話します。

私の場合、大きく3つのシチュエーションに分けて以下のように切り替えます。

  1. 基本モード
    → 昼間かつ、雨も降っていない場合(10~30℃)
  2. 夜間/早朝モード
    → 気温が低くて暗い、夜間と早朝の場合(5~10℃)
  3. 雨天モード
    → 雨が降っている場合

私は持ち歩く荷物を少しでも減らすため、レインウェアを防寒具としても使っています。

基本モード

まずは基本となるウェアから。昼間かつ、雨も降っていない場合(10~30℃)のウェアです。

PBP_wear_2.jpg

こちらは前回参加時の格好です。今回もヘルメット以外はほぼ同じです。

なお、左足首に巻いているのはセンサーです。各PCの入口にはこのセンサーを読み取る機会があり、通過時間を記録しています。

こちらは特別な工夫をしていません。

ヘルメットの着用はPBPにおいては必須ではありません(!)が、私は被ります。

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いつも使っているKABUTOのZENARD。涼しく、軽いヘルメットです。

日本では8月にエアロヘルメットは地獄を見ますが、フランスは湿度が低いのでエアロヘルメットでも大丈夫でしょう。むしろ夜は暖かくて良いかも?

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ヘルメットの下にはメッシュ生地のスカルキャップを被ります。汗垂れの防止用です。

PBP_wear_3.jpg

アイウェアは度付きサングラスを使用。ポイントはレンズの色で、薄いピンクにしています。この色は地面の凹凸を強調する効果があります。御徒町のオードビーで作成しました。

上半身

重要なのが上半身のウェアです。私は長袖のインナーに長袖の薄手ジャージの構成で走る予定です。

理由は、冷え込んだときに長袖なら調整が効くこと、レインウェアを着たときに肌にレインウェアが接触しないようにするためです。

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インナーは、mont-bellの「ジオライン L.W. ラウンドネックシャツ」を予定しています。

理想的には保温性と防臭性の高いウール性インナーが良いのですが、私はウールのチクチク感が気になって使えません。そのため、保温性には劣るものの速乾性の高いジオラインを選択。

保温と吸汗のため、さらにもう一枚内側に半袖またはノースリーブのインナーを着ることも考えています。

ファイントラックの「フラッドラッシュ」か、おたふく手袋の「デュアル3D」を現地に持ち込み、気温を見て判断します。

PBP_wear_4.jpg

長袖インナーの上には、夏用の薄手長袖ジャージを合わせます(写真はAJ PBP2019ジャージ)。日焼け止めを塗る手間が省けますし、薄手の生地ならば30度くらいまでは耐えられます。フランスの夏は日本よりも湿度が低いので、長袖でも不快感が少ないんですよね。

私はアームカバーの締付けが苦手&シリコンで肌がかぶれるのでこの構成にしていますが、半袖インナー+半袖ジャージ+アームカバーの組み合わせもアリでしょう。

指切りグローブの下にインナーグローブを付けます。指切りグローブはパッドをナシにしてチコリンパフ運用にするかもしれません。

インナーグローブを入れる理由は、防寒・手荒れ防止・衝撃の緩和。一枚入ると意外と快適性が上がるものです。

下半身

こちらも上半身とほぼ同じ考え方です。

ただし、私は自転車用タイツの下にはインナーウェアやパンツは履きません。足首までの丈がある自転車用タイツのみを履く予定です。また、ビブ形式でないものを使います。

具体的には、パールイズミ「プリザーブバイクタイツ」を使います。

なかなか薄手&パッド付&非ビブの条件を満たすものは多くなく、他に選択肢がないのでコレを選んでいます。

足首までの丈のタイツにするのは、上半身と同じく、レインウェアを肌に触れさせない&日焼け対策です。もちろん、膝上までのレーパン+レッグウォーマーの組み合わせでも良いでしょう。

非ビブにするのは、トイレでジャージを脱がなくて済むのが理由です。フランスのトイレ、脱いだウェアを置いておく場所が無いんですよね…。

足先は、普通にソックスとシューズのみです。

ソックスは愛用のフットマックスを使う予定。アキレス腱部のテーピング効果があるのが気に入っています。濡れた際の乾きはあまり良くないのですが。

PBP_wear_5.jpg

シューズはMTB用のSPDシューズ「SHIMANO SH-XC31」を使います。「機材編」でも触れましたが、PC内を歩き回ることを考えて歩きやすいSPDシューズを選びました。

夜間/早朝モード

気温が低く(5~10℃)て暗い夜間と早朝は、基本モードの上に何枚か着込むことになります。

頭・首

ネックウォーマーを着用します。首と耳をカバー出来れば、体感気温は上がります。

薄手のものなら重量は20g程度ですし、荷物にもならないでしょう。100円ショップに売っている日焼け止め用の薄いネックウォーマーでもそれなりに暖かいです。

それでも耐えられないほどの寒さの場合は、レインジャケットのフードを被ります。

上半身

レインジャケットと反射ベストを着用します。

PBP_wear_6.jpg

PBPでは昼間の反射ベスト着用は義務ではありませんが、夜間は着ないと法律違反となります。

参加の記念品としてもらえるPBPの公式ベストは体幹部を覆うので、夜間は心強い防寒具ともなるでしょう。

恐らく4枚のウェア(長袖インナー+長袖ジャージ+レインジャケット+反射ベスト)に加えてネックウォーマーがあれば5℃くらいまでは何とか耐えきれると見ています。

変更しない部分

「手」「下半身」「足」は基本モードから変更しません。

どうしても寒ければ、雨具として持ち歩くレインウェア(グローブ・レインパンツ・シューズカバー)を付けます。

雨天モード

気温に関わらず、雨天時はレインウェアを身に着けます。

基本的な考え方

気温がそこまで低くなければ、基本モード+レインウェア。気温が低ければ、夜間/早朝モード+レインウェアの構成になります。

ウェアを一度濡らしてしまうと、乾くのに非常に時間が掛かります。また、基本的に気温が低いことが予想されるので、気化熱で体温が奪われて低体温になる可能性があります。雨が降ってきたら、すぐにレインウェアを着るようにしてください。

しつこいようですが、レインウェアは肌に接触しないよう、何か布を一枚挟んでください。

ちゃんとしたレインウェアには湿気を通す特性がありますが、液体の水は通しません。汗を一旦水蒸気に変えるための層が必要です。

また、レインウェアの裏地に肌が触れてしまうと、皮脂などで湿気が通らなくなってしまうのです。このため、一枚布を挟みます。

そして、雨が止んでも、すぐにレインウェアを脱いではいけません

濡れた状態でバッグにしまうと乾かず、次に使う時に不快です。15分くらいは着たまま走行風で乾かしてからバッグにしまうようにしましょう。

詳しいレインウェアの着用・運用法は、拙著の「雨天ライド攻略本」をご覧頂けると幸いです。

ヘルメットにバイザーを後付けするKABUTOの「BitVisor」を取り付けます。

これはアイウェアに付着する水滴を減らすためです。サイクルキャップでも同じ役割を果たします。

大雨の場合は、レインジャケットのフードを被ります。

上半身

レインジャケットを着用します。

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ネックウォーマーは、そこを通じて浸水するので、脱いでしまったほうが良いです。

指抜きグローブを脱ぎ、レイングローブを着用します。

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私は、透湿性のあるゴム手袋「テムレス」を持っていきます。完全防水を実現しつつ透湿性があるグローブは、私が知る限りでこれだけ。他のグローブはハンドルに体重を掛けると浸水します。

下半身

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レインパンツを着用します。

ビニールシューズカバー+レインシューズカバーを着用します。

靴は濡れると乾きが遅いですし、代わりを用意することが難しいもの。浸水からはなんとしても守り抜く必要があります。

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残念ながら市販のシューズカバーも割と浸水します。そこで、シューズとレインシューズカバーの間に、絶対に水を通さないビニールのシューズカバーを挟む方法です。多少は蒸れますが、浸水するよりは大分マシです。

詳しい方法は以下のレビューを参照してください。

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着替えについて

PBPは4日間です。道中、最低でも2回は着替えることをオススメします。

着替えないと、以下のような事態になります。

  • 雑菌が繁殖し、股擦れを起こしやすくなる。
  • 臭う。

ウェアの中でも、レーパンのパッドは出来る限り清潔にしないと、後半に股擦れに悩まされることになります。

出来れば、シャワーと着替えをセットで行うようにしたほうが良いです。

着替えを持って走るのも手ですが、大荷物になってしまいます。ここはドロップバッグサービスを活用しましょう。

何通りかのシチュエーションを想定して着替えを入れておけば、天候に合わせてウェアを選ぶことも可能になります。レインウェアが水没した時のために、予備のレインウェアを入れておくのも手です。

まとめ

使用予定のウェアと、天候に合わせたレイヤリングについて紹介しました。ポイントは以下です。

  • PBPの気温レンジはかなり広い。深夜・早朝はかなり冷え込む。
  • 幅広い気温レンジに対応できる長袖ウェア、またはアーム・レッグカバー運用を推奨。
  • レインウェアは防寒具を兼ねることで荷物を減らせる。
  • 夜間は反射ベストを必ず着ること!
  • ドロップバッグに入れたウェアに必ず着替える。

当日の気温・天気は行ってみないと分かりません。

異常に冷える予報の場合は、厚手のインナーを着ていくことにもなるでしょうし、熱波が到来したらより薄手のウェアを選ぶ事になると思います。

スタート前の選択肢を絞らないよう、インナーウェアとジャージは何種類かの厚みのものをフランスまで持っていくことをオススメします。

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この記事を書いた人

ロングライド系自転車乗り。昔はキャノンボール等のファストラン中心、最近は主にブルベを走っています。PBPには2015・2019・2023年の3回参加。R5000表彰・R10000表彰を受賞。

趣味は自転車屋巡り・東京大阪TTの歴史研究・携帯ポンプ収集。

【長距離ファストラン履歴】
・大阪→東京: 23時間02分 (548km)
・東京→大阪: 23時間18分 (551km)
・TOT: 67時間38分 (1075km)
・青森→東京: 36時間05分 (724km)

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