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PBP 2023 通信手段の手配
PBPにおける通信手段とその入手法について解説します。具体的にはネット&電話回線の入手についての話題が主となります。
なお、本記事はスマホを前提としています。今やガラケーを使っている方も少ないとは思いますが。
フランスにおけるネット接続の基礎知識
今や生活必需品となったスマホ。スマホの各種サービスを使うにはインターネット回線が必要です。
PBPにおいては「地図の表示」「ツイート」「翻訳アプリの通信」などをするためにインターネット回線への接続が必要となります。
ネット接続の手段
海外旅行では固定回線を契約することは出来ませんので、一時的にインターネットに接続できる手段を用意することになります。
一時的なネット接続の手段を列挙すると、大体以下の4種類になると思います。
- 無料Wi-Fiスポット
- レンタルWi-Fiルーター
- SIMフリースマホ + 現地プリペイドSIM
- 国際ローミング
それぞれについて、「PBPにおいてどうか?」という観点で説明します。オススメは③か④です。
① 無料Wi-Fiスポット
空港やホテルには無料で接続可能なWi-Fiスポットがあります。もしかしたら、PBPのPCにもそういったスポットが設置される可能性はありますが、公式なアナウンスはありません。
無料Wi-Fiスポットだけに頼ろうとすると、当然ながら空港やホテル以外ではインターネットに接続できません。
都市部を中心とした海外旅行ならそれでもなんとかなるかもしれませんが、フランスの田舎道を1200km走るイベントには向かない通信手段です。
② レンタルWi-Fiルーター
海外旅行向けのWi-Fiルーターのレンタルサービスを使う方法です。
手持ちのスマホからルーターに接続し、ルーターがインターネットに接続します。
設定不要でお手軽なWi-Fiルータですが、弱点があります。「荷物が増える」ことです。
追加で、Wi-Fiルーター用のモバイルバッテリーも必要となります。ルーター本体やバッテリーを入れるためのバッグも必要になるかも知れません。電子機器が1つ増えるのって、実は結構面倒なのです。
複数人のグループ旅行ならWi-Fiルータは魅力的な選択肢ですが、PBPにおいては一番選ぶべきではない選択肢だと私は考えます。
③ SIMフリースマホ + 現地プリペイドSIM(物理SIM/eSIM)
SIMフリーのスマホに、プリペイドのSIMカードを使う方法です。恐らく、大半のPBP参加者はこちらの方法を選んでいると思います。
Wi-Fiルーターと違って場所を取りませんし、SIMには別途バッテリーが必要なわけでもありません。
SIMカードには「物理SIM」と「eSIM」があります。
物理SIMは、実在するSIMカードを購入し、スマホに挿入して使用します。前回のPBPではこちらのSIMを使う人が大半でした。
一方、2018年頃から登場したeSIMは、スマホにソフトウェア的なSIMカードをダウンロードして使用します。前回のPBPでは対応している機種がほとんどなかったのですが、最近のスマホは大抵対応しています。
ちなみに、フランスの空港や街のショップでも物理SIMカードを購入することは可能ですが、アクティベーションしないと使えないことがある点には注意してください。
アクティベーションの方法は「電話で指定のキーワードを話す」「SMSを指定の場所に送る」などですが、いずれもフランス語での操作が必要になります。日本人が行うのはなかなか厳しい操作です。2015年の時は、フランス語ネイティブの人と一緒に行動していたからなんとかなりましたが、一人では詰んでいたと思います。
ショップでの購入ならば店員さんがアクティベーションまでやってくれることもあるようですが、なるべくならば日本でSIMカードを買っておいたほうが無難ではあります。
④ 国際ローミング
日本で契約している通信キャリア(Docomo/au/softbankなど)を介して渡航先の回線を使い、通信を行うことを「国際ローミング」と呼びます。渡航先で使うのは、日本国内のキャリアが提携しているフランスのキャリア回線になります。
Wi-FIルータを持ち歩いたり、SIMカードの差し替えが必要ないので、利用者側の手間は一番小さい方法になります。ただし、料金は高額です。
海外ローミングは時間単位で課金されることになります。具体的には「1日で980円(auの世界データ定額の場合)」のような料金体系。
PBPではおよそ10日前後はフランスに滞在することになるので、単純計算で9800円掛かることになります。プリペイドSIMならば3~4000円で済むことを考えれば、積極的に選ぶ手段ではありませんでした。
ただし、近年は国際ローミングに別料金が掛からない(基本料金に含まれる)日本国内キャリアも出てきています。
「ahamo」や「楽天モバイル」は、海外ローミングが基本料金に含まれます。通信容量には制限がありますが、今回のPBPでは国際ローミングを使う人が増えそうです。
フランスの通信キャリア
現地プリペイドSIM・国際ローミングのどちらも、実際に使われるのはフランスの通信キャリアの回線です。
日本における通信キャリアと言えば、「Docomo」「au」「Softbank」「楽天モバイル」の4社です。これらの会社は自社で通信網を整備しています。
一方、フランスの通信キャリアはシェアの順に「Orange」「SFR」「ブイグテレコム」「Free」となっています。
日本の通信キャリアでも「Docomoはどこでも電波を掴む」「auは山間部では繋がりにくい」といった特徴がありますが、フランスの通信キャリアにもカバー範囲に差があるようです。
PBPにおけるキャリア選びの注意点
注意しなくてはいけないのは、PBPルートの大半はフランスの田舎道であるという点です。
パリの都市部では高速通信が出来るキャリアであっても、PBPのルート上で通信できなければ意味がありません。そして、田舎道での通信状況は口コミがなかなか出てこないのも事実です。
キャリアごとのカバー範囲
nPerfというサイトが、各通信キャリアのカバー範囲を地図に表示できるサービスを公開しています。
ただし、このサービスが表示しているのはキャリアが公開しているデータではなく、同サービスのアプリユーザーが検知したデータを使っているようなので、「通信できた」実績がある場所ということになるでしょうか。
PBPはフランスの北西部で行われますので、その部分のカバー範囲をキャリア別に比較したのが以下の画像です(2023年6月29日時点のデータ)。
要は白い範囲が少ないほど、「圏外になりにくい」ということですが、各社それなりに差があることが分かります。
4年前もほぼ同じタイミング(2019年7月9日)でデータを取得していましたが、傾向はあまり変わってないようですね。
元・国有企業であるOrangeはやはりカバー範囲が広く、PBPで走る田舎道も大半をカバーしています。その他の3社は通信できない場所がそれなりにあることが見て取れます。
私は2015年のPBPではブイグテレコムのSIMを使用しました。新城選手がかつて所属していたチームのメインスポンサーということで使ってみたのですが、ルート上で圏外になることが多く困りました。8年経っていれば改善されていそうですが、積極的に使う気にはなれません。
2019年のPBPではOrangeのSIMを使用しましたが、こちらはルート上の大半の場所で4G LTEが使えて快適でした。時折圏外になることはありましたが、少し移動すれば高速通信が使えました。
私は、今回も「Orangeの回線を使える」ことを条件に通信方法を選ぶことにしました。
私の通信手段
今回のPBP、私は以下のスマホとSIMカードの組み合わせで行くつもりです。
物理SIMカードをメインに、保険としてeSIMも契約してから渡仏します。
スマホ
昨年購入した、Google Pixel 6aです。
機能的には特に不満もなく、eSIMにも対応しています。
物理SIMカード(メイン)
Orangeの提供する海外旅行向けSIM「Orange Holiday」を購入しました。前回のPBPと全く同じものです。
前回のPBPで全く不満がなく使えた実績が大きいです。通信容量は前回も8GBでしたが、半分くらい余りました。昨今のアプリは通信料が増えていると思われますが、調子に乗って動画をたくさん見たりしなければ足りると思っています。
Orange HolidayのSIMカードのスペックは以下。
- 使用期間: 14日間
- 価格: 3899円(2023/6/30時点)
- データ容量: 8GB
- 無料通話時間: 30分
- SMS: 300通
- 回線: Orange (4G LTE/3G)
通常は面倒なアクティベート作業が不要というのが最大の魅力。2015年はそれで大変苦労しましたので……。2019年の時は実際に空港でSIMを差し替えただけで使い始められて非常に楽でした。
ただ、しょっちゅう知らない番号から電話がかかってくるのは困りましたね。通話が出来ることがこのSIMの特徴でもあるんですが、通話が付いてくるからこその問題もあるという。フランスで通話をする機会もあまり無かったので、データ専用SIMでも問題はないと思います。
通信容量20GBのSIMカードもありますが、恐らくここまでは使わないと思うので8GB版を買いました。
eSIM(サブ)
必要ないかもしれませんが、今回はサブとしてeSIMも契約しておくことにしました。最近、Amazonで買った物理SIMカードが動かないという事例が散見されたので、念のため。
今回契約したのは「airalo」というサービスのeSIMです。5GBのプランを契約しました。
airaloのSIMカードのスペックは以下。
- 使用期間: 30日間
- 価格: 14ドル(2023/6/30時点)
- データ容量: 5GB
- 無料通話時間: なし
- SMS: なし
- 回線: Orange (4G LTE)、ブイグテレコム(4G LTE)、SFR(4G LTE)
データ専用eSIMなので、無料通話やSMSは使えません。
回線は、Orange・SFR・ブイグテレコムの3社に対応しているようです。回線の切り替えがどう行われるのかは不明ですが、とりあえずOrangeが入っていれば安心だろうということで。
こちらの記事に掲載されていた割引コードで3ドルOFFで契約できました。色々なサイトで割引コードが出ていますが、大体は10%OFF。14ドルの10%は1.4ドルなので、3ドルOFFのほうがお得です。
採用しなかった通信手段
今回は安価になった国際ローミングの使用も検討しましたが、見送りました。
ahamo
ahamoはDocomo傘下の格安通信キャリアです。
月額2970円のプランで、追加料金なしで国際ローミング機能を使えるのが特徴。通信容量も20GBと多めに確保されています。
これは良いなーと思って契約寸前まで行ったのですが、提携先のフランス国内キャリアを見て躊躇しました。「SFR」「Free」「ブイグテレコム」の3社のみの回線に対応していたからです。
フランス内のシェア2~4位までのキャリアを押さえていれば問題は無さそうな気がするのですが、1位のOrangeのフランス田舎道における強さを知っていると不安が残ります。
魅力的ではありましたが、採用は見送りました。
楽天モバイル
楽天モバイルも、基本料金内で国際ローミングを使うことが出来ます。
しかも、提携しているフランスのキャリアは「Orange」です。
ただし、通信容量は2GBまでと、少々心もとない。2GBを超えた場合は、1GBあたり500円とそれなりに料金が高い設定となっています。
これならばeSIMでairaloを使ったほうが安いので、こちらも採用を見送りました。
UQモバイル
私が国内で加入しているUQモバイルも、親会社のauの国際ローミングサービスを使うことが出来ます。
通常は24時間あたり980円で3GBまで使えます。日本国内で事前予約すると(早割)、24時間あたり490円になります。
PBPでの滞在期間は約10日なので、4900円で使うことが可能。割と悪くはないです。
提携しているフランスのキャリアは、「Orange」「SFR」「ブイグテレコム」と、こちらも十分。
物理SIMカードを買ってから「早割」の存在に気づきましたが、こっちでも良かったかもしれません。
まとめ
PBPにおける通信手段の選び方について述べました。
今回紹介したSIMカードはなるべく確度の高いものを紹介したつもりですが、お手持ちのスマホとの相性によっては使えないことも有り得ます。対応するバンド(周波数)を確認してから購入するようにしてください。
心配であれば、確実性が高いのは国際ローミングです。提携会社によっては田舎道での通信に不安はありますが、少なくとも初期設定は一番楽だと思います。
著者情報
年齢: 38歳(執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: BIANCHI OLTRE XR4(カーボン), QUARK ロードバイク(スチール)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)
# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせていただきました。