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PBP 2023 機材の選び方
私がPBPで使う予定の機材と、その使用理由を紹介します。
あくまでも「私はこれで行く」という紹介であって、誰にでも適するものではありません。
はじめに
PBP2023において使用する機材について説明します。
前回&前々回の参加経験を踏まえて、アップデートを加えたものになります。これから2ヶ月で少し修正を加えるかも知れませんが、概ねこの通りになると思います。
ここで言う機材は走行に寄与するパーツ(フレーム・コンポーネント・ホイール・タイヤ等)を指します。
以下のものは別記事で紹介します。
基本的な考え方
PBPだからと言って、特別な機材を使うことはないと思います。
キャノボにおける機材選びの記事でも書いていることと、ほぼ内容は同じです。
初物を投入しない
普段使わない機材を使うと、色々と不具合などに対処出来ないものです。
基本的には普段のブルベで使い慣れたものを使うべきでしょう。
「決戦用」という考えは捨てたほうが良いです。実績のあるものを使ってください。
プロによる整備&消耗品交換
きちんと機材を整備した状態でスタートに着くことも大切です。
防げるトラブルは未然に防ぐために、出来れば一通りプロに確認してもらうのが確実だと思います。
チェーンやタイヤ、ケーブルと言った消耗品もすべて新品に交換しておきましょう。
ただし、タイヤだけは下ろしたてを使うのはNG。表面のワックスが落ちる程度には乗っておきましょう。ワックスが路上のゴミを拾ってパンクする可能性がありますので。
こだわるべき機材
フレームについては使い慣れたものであれば特別なこだわりは必要ないと思います。
機材的にこだわるべき場所があるとすれば、「足周り」。
具体的に言えば、タイヤ・チューブ・ホイールです。その辺りの理由は後述します。
今回の予定機材
今回のPBPでは以下の機材で行く予定です。
- 機材一覧(+ボタンで展開)
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区分 ブランド 製品名 フレーム QUARK ロードフレーム NEMO オーバーサイズ フォーク RITCHEY WCS CARBON ホイール FULCRUM RACING3 C17 タイヤ PANARACER AGILEST CL 28C チューブ REVOLOOP RACE TPUチューブ ブレーキ SHIMANO DURA-ACE BR-9000 ブレーキシュー SHIMANO R55C4 スプロケット SHIMANO DUR-ACE CS-R9100 11-28T STI SHIMANO DURA-ACE ST-9001 ケーブル類 日泉ケーブル ステンレス クリアレッド ヘッドパーツ RITCHEY WCS LOGIC 1-1/8 ディレイラー前 SHIMANO DURA-ACE FD-9100-B ディレイラー後 SHIMANO DURA-ACE RD-9100-SS チェーン KMC X11 EL クランク SHIMANO DURA-ACE FC-9000 50-34T BB CHIRS KING ThreadFit24 RED ペダル SHIMANO XTR PD-M9100 ハンドル 3T ERGONOVA TEAM 420mm バーテープ SPECIALIZED ROUBAIX TAPE WIDE FIZIK BAR GEL2 ステム Bontrager XXX Stem 100mm シートポスト Bontrager XXX Seat Post 27.2mm サドル Fabric Scoop Radius Race
前回からほぼ変化なしです。時間外完走ではあったものの、前回の機材チョイスの方向性は間違っていなかったと思っています。
大きく変わったのは、タイヤとチューブくらいでしょうか。
フレーム・フォーク
細山製作所製のスチールフレームを使用します。フォークは、RITCHEYのカーボンです。
「スチールフレームがロングには最高!」というわけではありません。カーボンは素材自体の振動減衰・衝撃吸収性が高いので、乗り心地的にはフルカーボンフレームの方が良いと思います。
ただ、ジオメトリや荷物の積載性、そして見た目にこだわろうとするとスチールも中々の選択肢だと思っています。乗り心地は足周りやその他のパーツでそれなりに修正が効きます。
そういった意味で、乗り心地に寄与するフォークはカーボンのものを使っています。
「ディスクロードにしないのはなぜか?」と聞かれそうなので答えておきますと、飛行機輪行が面倒になるからです。
ディスクロードの場合、ディスクローターを外さなければ輸送中に破損する可能性があります。外すのは家で出来るとして、フランスで組み立てる際にはディスクローターを取り付ける工具が必要です。
内セレーションのロックリングであれば、こうしたスプロケ用工具があれば外せるんですが、結構重くて大きいです。これを持っていくくらいなら他のものを持っていきたいですね。
コンポーネント
SHIMANO Dura-Ace(9000/9100)を使用します。
とはいえ、こちらも「Duraじゃないと!」という話ではありません。
2015年のPBPはだいぶ昔のULTEGRA SLで完走しました。キャノボと同じで、整備さえきちんとされていればどんなコンポでも問題ないと思います。
とりあえずチェーンリングの歯が擦り減っているので、出発前に予備チェーンリングに交換しようと思っています。
電動コンポを使用する方は、充電を忘れずに。
昨今の電動コンポならば1200kmは持つとは思いますが、それも充電が十分であればのこと。バッテリーが古い場合は新品にしておいたほうが良いでしょう。
ペダル
SHIMANO XTR PD-M9100を使用します。SPDの両面ペダルです。
こちらも慣れていれば何でも良いと思うのですが、個人的にはSPD-SLやSPEEDPLAYのようなレース向けペダルよりも、MTBやツーリング用のSPDペダルを推奨します。
理由は、ペダルよりもシューズの方にあります。
PCの構造と設備の記事でも書きましたが、PBPにおけるPCはとにかく広いです。相当の距離を歩くことになります。
クリートが出っ張ったシューズだと地味に疲れるはず。クリートの材質によっては破損のリスクもあります。毎回クリートカバーを付ければ破損は防げますが、結構面倒です。
その点、歩くことが容易なシューズならば、PC内でもそこまで疲れることもないはずです。
ただし、シューズ自体はレース向けのものに比べると片足で100g近くは重くなりますが……。あえてフラペ+普通のシューズと言うのもアリだと思います。
それでもレース向けペダルとシューズを使いたい場合、PC内を歩き回るためだけのサンダルみたいなものを持っておいても良いかも知れません。足裏のリラックスにもなります。
サドル・シートポスト
Fabric Scoop Radius Raceと、Bontrager XXX Seatpostを使用します。
前回はカーボンレールのモデルでしたが、現在はチタンレールのモデルにしています。あまり差は感じられませんが、今の時期にサドルポジションを変えたくないのでこのまま行きます。
繰り返しになりますが、これも慣れているものを。国内で1000km以上走っても問題がないサドルを選んでおくと安心です。

シートポストは、カーボン製のものを私は使っています。セットバックは20mm。
材質よりもセットバックがあることが重要だと思っています。そちらの方がしなって乗り心地が良くなるので。セットバック0mmのものをブルベで使っている人はあまり見ませんが、辛いと思います。
ハンドル周り
手に対する衝撃・振動を緩和する上で大事なのがハンドル周りです。
ハンドル・ステム
ハンドルは3T Ergonova Team、ステムはBontrager XXX Stem。いずれもカーボンです。
振動を少しでも緩和するために、手から近い場所はカーボンパーツで固めています。
バーテープ
バーテープは既に廃版となってしまい、秘蔵のSPECIALIZED ROUBAIX WIDEを巻く予定。その下に更に、FizikのBAR GELを入れます。衝撃と振動を緩和するためのゲルです。
手のひらの神経圧迫&振動による手のしびれを防止するための仕様ではあるのですが……
最近、整形外科で見てもらった所、私の手のしびれの原因は手のひらではなく、鎖骨の下を通る神経の圧迫によるもの(胸郭出口症候群)だそうです。現在、これを克服するための筋トレを理学療法士の指導の元で実施中。
私の場合、手のひらを保護する意味はあまり無さそうではあるのですが、振動によるダメージも多少はあるはず。このままで行きます。
DHバー
PBPにおけるルールの中で、近年一番頻繁に変わっているのがDHバーに関する規定です。
- ~2015年
DHバーは禁止。- 2019年
DHバーの先端がレバーの先端より前に出てはいけない(制限付きの解禁)。- 2023年
DHバーに対する制限は特になし。ただし、集団内では握らないこと。
ということで、今回からDHバーは事実上の解禁となっています。
私はフロントバッグを使って、ライトを2個ハンドルの上に付ける必要があるため、DHバーを付けるスペースがありません。また、重量もかさむし、慣れていないと危ないので、今回も使用しない予定です。
ただし、向かい風区間を単独で走る場合には有効なのも確かです。日本と違って信号ストップもほぼないので、バーを握れる時間はそれなりに長いでしょう。
こういった小型のDHバーもあります。空力効果はフルサイズのものよりは小さいですが、その分軽量です。
保険として、フランスに持って行くかもしれません。
足周り
フレームは何でも良いと思いますが、ホイールとタイヤはこだわったほうが良いと思います。
ホイール
ホイールは前回に引き続きFulcrum Racing3 C17を使用します。
ポイントは、「ステンレススポーク」であること。
2015年のPBPはアルミスポークのEURUSで参戦。アルミスポークは反応性が良いものの、乗り心地はあまり良くありません。
1200kmでは積もり積もったダメージが大きくなることが分かり(足裏に痛み発生)、以後は乗り心地が比較的良いステンレススポークのホイールを使うことにしています。
タイヤ
前回はGRAVELKING 26Cを使いましたが、今回は無印AGILEST 28Cを使おうと思っています。
GP5000 28Cもこれからテストする予定で、もしかしたらこちらになるかもしれません。
前回のPBPからの4年間で、ロードタイヤは「新ETRTOへの対応」という大変革がありました。
これによって28Cタイヤが随分軽くなり、乗り心地と軽快さが両立できるようになりました。昨年から28Cタイヤをテストしていますが、感触は良好です。
なお、PBPコースの路面は多くの方が想像するよりも綺麗です。千葉の田舎道のほうが荒れていると思います。
このため、耐パンク性能重視のタイヤではなく、オールラウンドなレーシングタイヤの太めモデルで臨むことにします。
それでもパンクする可能性はあるので、修理しやすいクリンチャーを使う予定。なお、過去2度のPBPでは、イベント中のパンクはありません。スタート前日のパンクはありましたが。
チューブ
REVOLOOPのTPUチューブのうち、厚い方を使おうと思っています。
厚いと言えど、重量は38g。一般的なブチルチューブの半分以下の重量です。
28Cタイヤも軽くはなりましたが、漕ぎ出しは少しモッサリ感が否めません。そこを中和するための軽量化としてTPUチューブを投入します。
前回のPBPの直前にTubolitoが出回り始めましたが、あの時はまだ実績に乏しく躊躇した面はあります。
この4年間でテストした上で、REVOLOOPに限っては実用性が高いと判断して採用を決めました。TPUチューブの中では品質のばらつきが小さく、乗り心地も良いと思います。
パンク時の修理が難しいので、予備チューブはブチルにする可能性が高いですが。
チェーンルブ
PBPで使うチェーンルブは、ウェットルブを日本から持参予定です。
スプレータイプのチェーンルブは飛行機では運べませんので(荷物検査で没収されます)、非スプレータイプのものを選びます。
非スプレータイプであっても、昨今は飛行機輪行でのチェックが厳しくなっています。こちらの記事を読んで、SDSを印刷して持参することをオススメします。
今のところは、安定の「muon」を予定してます。晴天ならば5~600kmは持続。ただし、黒くなりやすいので見た目に気を使う方には合いません。
私の知る範囲での話ですが、1200km再注油なしで持続するチェーンルブはありません。
1000km程度持つルブもあるようですが、恐らくそれも条件が良い場合の話で、雨天走行が長く続けば再注油は必要となるでしょう。
このことから再注油ありきでチェーンルブを選んでおいたほうが良いと思います。念の為、スタート前日にも現地で注油。
そして、そのオイルを小分けにして持参し、走行中にチェーンから異音を感じたら注油するようにしてください。
前回は、特に雨がふらなかったこともあり、折返しのBRESTにおける1度の再注油だけで最後まで走り切ることが出来ました。
飛行機輪行事情の変化
機材の話ということで、ついでに電動変速(Di2/EPS)について触れておきます。
前回のPBP以降に航空会社の規制が強化されたため、前回はOKだった人も今回はNGになる可能性があります。
リチウムイオンバッテリーの規制強化
2020年頃から、航空各社によるリチウムイオンバッテリーの検査が厳密に行われるようになりました。
この契機となったのは、国際航空輸送協会(IATA)が2020年にリチウムイオンバッテリーに関する規定を改めたことにあるようです。
それまでもリチウムイオンバッテリーを含む荷物は「預け入れ荷物」には出来ませんでしたが、2020年からは空港職員による検査がより厳格化されています。
リチウムイオンバッテリーは「手荷物」としてであれば、機内持ち込みは可能となっています。
フレーム内蔵バッテリー
そこで問題になるのが、電動変速のバッテリーです。
昨今の電動変速のバッテリーは、シートポストやダウンチューブに埋め込まれています。そして、その中身はリチウムイオンバッテリーです。
自転車は手荷物には出来ませんので、預け入れ荷物にする必要がありますが……そのフレームの中にリチウムイオンバッテリーが入っているわけですね。
規約をそのまま適用すれば、フレームからバッテリーを取り外して手荷物にしなければなりません。
メーカーの取扱説明書でバッテリー容量を提示できればお目溢しされる例もあると聞きますが、最悪の場合はバッテリーの取り外しを要求される可能性はあります。いざというときのために、バッテリーを外す方法は覚えておいたほうが良いでしょう。
電動変速の中では、SRAM eTapは例外です。バッテリーは外側にあるため、これを外して手荷物にすればOKのはず。

合わせてこちらの記事も御覧ください。
まとめ
使用予定の機材について紹介しました。
ポイントをまとめると以下になるでしょうか。
- 機材は普段のブルベで使い慣れたものを使う。
- 出発前に一通り整備し、消耗品は新品にしておく。
- 足周り(ホイールとタイヤ)は振動と衝撃の緩和を重視したほうが良い。
- PC内を歩き回るためのシューズがあったほうが良い。
繰り返しになりますが、整備はきちんと。
そして、飛行機輪行で破損しないようなパッキングも大事です。
フランスに着いた後も破損がないことを確認し、破損があれば現地の自転車屋さんに整備をお願いしてからスタートについたほうが良いと思います。
ホイールの振れや、チェーンリングの曲がり、ディレイラーハンガーの曲がりは特に起こりがちです。必ず確認するようにしましょう。
著者情報
年齢: 38歳(執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: BIANCHI OLTRE XR4(カーボン), QUARK ロードバイク(スチール)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)
# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせていただきました。