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PBP 2023 反射ベスト要件
2023年のPBPにおける反射ベスト要件を確認する記事です。
PBPで使用可能な反射ベストについてもいくつか紹介いたします。
まえがき
PBP参加者に必須のアイテムのうちの一つに「反射ベスト」があります。
反射ベストの着用が必要な状況
日本のブルベではスタートからゴールまで、走行中は反射ベストの着用を義務付けている団体が多いですが、PBPは少し事情が異なります。
下記に、PBP Rulesより公式ルールの一部を引用します。
According to French traffic law, a high visibility vest MUST be worn when riding at night (safety standard number EN 1150 or EN ISO 20471).
(フランスの交通法により、夜間走行時には視認性の高いベストを着用する必要があります (安全基準番号 EN 1150 または EN ISO 20471)。)
The vest handed to all participants before the starting line is conform to French regulations and it is highly recommended you wear it during PBP Randonneur.
(スタート ライン前にすべての参加者に渡されるベストは、フランスの規則に準拠しており、PBP ランドヌール中に着用することを強くお勧めします。)
1行目に書いてあるように、PBPにおいて反射ベストの着用が義務となるのは夜間(と、雨天など視界が悪いケース)のみです。昼間は必ずしも着用する必要がありません。
ただし、2行目に書いてあるように「常に着用するように」と推奨されています。この文言は2019年にはなく、2023年になって追加されたものです。
2023年のPBPは反射ベストに対するチェックが厳しくなるかもしれません。
着用の根拠
「夜間(と視界が悪い場合)の反射ベスト着用」はブルベのルールではなく、フランスの道路交通法が根拠です。
下記に条文を示します。
夜間、または視界が不十分な日中に運転する場合、すべての自転車の運転手および同乗者は、市街地以外の規制に準拠した視認性の高いベストを着用する必要があります。
自転車の運転者または同乗者がこの条文の規定に違反した場合、第 2 種違反の罰金が科せられます。
つまり、夜間に反射ベストを着用しないことはフランスにおいて法律違反ということになります。
ブルベのルールとしてもペナルティが課されますが、それ以外にも行政的な処分を受ける可能性があります。ご注意ください。
使用可能な反射ベストの要件
「日本で着ている反射ベストを持っていけば良いかな」
と思っている方もいらっしゃるかもしれませんが、ちょっとお待ちを。その反射ベストではルール違反となる可能性があります。
反射ベストなら何でも良いわけではなく、PBPでは国際規格に適合した反射ベストを着用する必要があるのです。
反射ベストに求められる規格
PBP使える反射ベストは、ルールに書いてある通り「EN1150」または「EN20471」という規格に適合している必要があります。
それぞれの規格について簡単に紹介します。
- EN1150(1999年発行)
非職業用の高視認性衣服の規格。用途としてはレジャー向け。- EN20471(2013年発行)
対象は特に規定されない。ISO規格でもある。
規格では、「反射材の面積」「反射材を貼り付けるベース生地の色と面積」「反射材のパターン」等を規定しています。
この規格はかなり満たすことが難しく(相当の面積の反射材が必要)、日本国内で販売されているスポーツ用途の反射ベストの大半は規格を満たすことが出来ていません。
つまり、「日本で購入した反射ベストはPBPで使えない可能性が高い」ということです。
日本では定番の反射ベストである下記の製品も、残念ながらPBPのルールには適合しません。
EN1150/EN20471の詳細
EN1150とEN20471の規格詳細について以下に示します。
規格 | 用途 | クラス | 反射材 | 蛍光生地 | |||
面積 | 幅 | 配置の規則 | 面積 | 許可色 | |||
EN1150 | 非職業用 | 158cm未満 | 0.09㎡以上 | 25mm以上 | – | 0.13㎡以上 | ・イエロー ・オレンジ ・レッド ・ピンク ・グリーン ・イエローグリーン ・オレンジレッド ・イエローオレンジ |
158cm以上 176cm未満 |
0.09㎡以上 | 0.14㎡以上 | |||||
176cm以上 | 0.10㎡以上 | 0.15㎡以上 | |||||
EN20471 (ISO20471) |
区別なし | 1 | 0.10㎡以上 | 50mm以上 | 水平1本&垂直1本 または 水平2本 |
0.14㎡以上 | ・イエロー ・オレンジ ・レッド |
2 | 0.13㎡以上 | 0.50㎡以上 | |||||
3 | 0.20㎡以上 | 0.80㎡以上 |
全体的にEN20471の方が上位の規格であり、条件を満たすことが難しくなっています。
また、EN20471は主に空港作業員やゴミ収集員といった、「職業として路上作業をする人たち」向けの反射ベスト規格です。
このため、「スポーツなどのレジャー用のEN20471適合の反射ベスト」というものは(ほぼ)存在しません。スポーツ用は大抵EN1150適合となります。
反射材
EN1150/EN20471では、「反射ベストに貼り付けられている反射材の面積」を規定しています。
EN1150では最低0.09㎡、EN20471では0.10㎡の反射材が貼り付けられている必要があります。
0.09㎡=900平方センチメートル。反射材は大抵2.5cm幅か5cm幅ですが、5cm幅で180cmもの長さの反射材が必要ということになります。
モノの大きさに例えれば、大体A4用紙の1.5枚分の面積です。
これはかなり満たすことが難しく、日本で売っているスポーツ用の反射ベストで満たしている製品はごくわずかしか存在しません。
また、EN20471では「水平1本&垂直1本 または 水平2本」というように、反射材の配置方法についても指定があります。反射材が水平に一本だけの反射ベストはNGということです。
蛍光生地
EN1150/EN20471では、反射材以外の生地色についても規定があります。
基本的には「蛍光色」のみが許可されています。蛍光色ではない生地に反射材が貼られていても、それは反射ベストとみなされません。
EN20471では「蛍光イエロー」「蛍光オレンジ」「蛍光レッド」のみが許可されます。EN1150は、EN20471の色に加えて、蛍光ピンクや蛍光グリーンも許可されます。
例えば、こういった生地が黒い反射ベストは工事現場で着ている人を見かけますが、フランスではNGということになります。
また、こちらのように「全面が反射材」というのもNGです。蛍光色の生地が必要です。
その他の規定
反射材の面積と蛍光生地だけではなく、EN1150/EN20471では「反射材の性能」「生地の色あせにくさ」なども評価対象となっています。
規格の準拠
こうした規格の準拠を謳うために、「第三者団体の審査が必要なのか」それとも「自社検査でOKなのか」については良く分かりませんでした。
ヨーロッパで販売されている反射ベストの場合、タグ部分に適合する規格が書かれています。
こちらはSportfulの反射ベストのタグで、「EN471」に適合しています。EN471はEN20471の前身です。
こちらはPBPオフィシャル反射ベストのタグで、「EN1150」に適合しています。
ヨーロッパで販売されていない反射ベストに関してはこうした記載がタグに無いはずです。
PBPでの判断基準
規格への適合を判断するのは現場のスタッフのはずで、彼らが果たして製品タグまで確認するのかは分かりません。
前回と前々回に関しては、少なくとも車検時においても製品タグを確認されることはありませんでした。
ただ、見た目で明らかに反射材が不足していたり、ベストの生地の色が蛍光色でない参加者に対しては、スタッフが注意しているのを見かけました。
スタッフに対しては「こういう場合には注意する」といったガイドラインが提示されているのではないかと思います。
使用可能と思われる反射ベスト
とりあえず、PBPの受付時にもらえるオフィシャル反射ベストを着ておくのが安心&確実ではあるはずです。
それでも「別の反射ベストを使いたい」という方のために、「PBPで使用可能と思われる」かつ「日本から購入可能な」スポーツ用の反射ベストを紹介します。
非スポーツ用であればもう少し選択肢は増えますが、「動きにくい」「ムレる」「空気抵抗が大きい」といったように、自転車には不向きです。
ろんぐらいだぁすとーりーず!「サイクル反射ベスト」
概要
自転車漫画「ろんぐらいだぁすとーりーず!」のグッズとして販売されている反射ベストです。
見た目で分かるようにPBPオフィシャル反射ベストを意識して作成されています。反射材の面積はXLサイズで0.13㎡あり、生地の色も蛍光イエローと、EN1150の基準を満たしています。
現地での規格認証は取っていないと思われますが、規格の準拠という意味では問題ないはず。
適合規格
EN1150(相当)
販売場所
※常時販売はされておらず、時折受注生産されます
(2023/2/10追記)
2/10~2/19まで、受注生産の予約を受付中です。
L2S「Visioplus」
概要
L2Sはフランスの反射グッズメーカーです。その中で自転車用としてラインナップされているのが「Visioplus」です。
PBPオフィシャル反射ベストは、このVisioplusにロゴなどを追加したものになります。
PBPオフィシャル反射ベストは蛍光イエローしかありませんが、Visioplusには下記のカラーが用意されています。
- 蛍光ピンク
- 蛍光オレンジ
- 蛍光グリーン
- 蛍光イエロー
私は蛍光ピンクカラーをAmazon.co.ukで購入し、前回のPBPではそれを着て走りました。
ただ、このベスト、実は品質があまり良くありません。
ここでいう品質とは、ファスナーの動きや縫製などです。ファスナーはすぐ壊れたという人もいましたし、縫製もかなり荒いです。
私がわざわざ日本から持っていったベストで走ったのは、スタート受付でもらったPBPオフィシャル反射ベストの品質が悪かったときに備えたのが理由でした。
適合規格
EN1150
販売場所
Wowow「Roadie Reflex Sports Gilet」
概要
ベルギーの反射グッズメーカー「WOWOW」からは、EN1150に準拠したスポーツ用の反射ベストがいくつか発売されています。
一例として紹介するのが「Roadie」。反射材をぐるぐると巻いたデザインをしています。
他にもEN1150準拠の反射ベストとして「AMSTERDAM」「DRONE」「MAVERICK」なども販売されています。
以前は「Frandrien」というカッコいいベストが販売されていましたが、現在はラインナップされていないようです。
MAVERICKはフランスで購入したものが手元にあります。
シルエットはカッコいいんですが、生地の伸縮性はあまり高くありません。
適合規格
EN1150
販売場所
BIKE24など
J2X Fitness「Full Zip Reflective Cycling Gilet」
概要
どこの国のものかは不明ですが、Amazon.co.ukなどで取り扱われているJ2X Fitnessの反射ベストです。
EN1150に対応。背面がメッシュかつバックポケット付きで、日本にも愛用者が多いようです。
適合規格
EN1150
販売場所
まとめ
以上、PBPの反射ベスト要件と、「PBPで使えそうな反射ベスト」の紹介でした。
思った以上に「スポーツ向け」「EN1150/EN20471に準拠」という反射ベストの選択肢が少なくて驚きました。
よほどの理由がない限りは、受付時にもらえるPBPオフィシャル反射ベストで出走するのが無難でしょう。
ただし、PBPオフィシャル反射ベストは個体差が結構あります。すぐにファスナーが壊れたという話も聞くので、スタート受付でベストを受け取ったら、すぐに確認したほうが良いです。問題があればその場で交換してくれるかもしれないので。
また、日本のブルベを統括するAudax Japanでは、PBPのたびに「記念反射ベスト」が制作されています。
2015年と2019年は制作されたので、おそらく2023年大会も制作されるのではないかと予想されます。
2019年大会はEN20471相当の反射ベストが制作され、夜間の路上でも強烈に目立っていました。
今回も制作されるのであれば、そちらを購入しても良いでしょう。
著者情報
年齢: 38歳(執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: BIANCHI OLTRE XR4(カーボン), QUARK ロードバイク(スチール)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)
# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせていただきました。