「Garminマウントはサイコン以外には不向き」という話

この記事は約 12分で読めます。

いろいろな場所で使われるようになった、Garminのサイクルコンピューターのマウント規格(通称「Garminマウント」)。

ただ、個人的には「Garminマウントはサイコン以外の取付には不向き」だと考えていますので、その理由について書いていきます。

目次

Garminマウントについて

まずはGarminマウントの概要と歴史について書いていきます。

Garminマウントとは

「Garminマウント」は、Garminのサイコン(主にEdgeシリーズ)を自転車に取り付けるための仕組みを指します。

こちらのサイコンとマウントのパーツを合わせて「Garminマウント」と呼ばれることが多いです。

サイコン裏側の爪を差し込み、90°回転することでロックされて固定されます。

以降の説明のためにサイコン本体側の差し込む部位を「プラグ」、差し込まれる側を「ソケット」と呼ぶことにします。

ソケット側に凸、プラグ側に凹が付いており、ここが噛み合うことでロックされます。

なお、Garminマウントは通称です。Edgeのマニュアルでは単に「マウント」と呼ばれています。

Garminマウントの登場

Garminのサイコンも最初からGarminマウントを採用していたわけではありません。

Edge705はスライド式マウント

Edge705 (2009年発売)

2009年に発売され、GPSサイコンの火付け役となった名作機「Edge705」は回転式のGarminマウントを採用していませんでした。

SRAMのEdge705用アウトフロントマウント

こちらの写真を見ていただくと分かるのですが、サイコンを右から左にスライドさせて差し込む方式でした。

それまでの各社のサイコンは大体どこもこのような「横からスライドする」マウントが多く、Edge705もその方式を踏襲していたわけです。

Edge500からGarminマウントに

私の知る限りでは、Garminマウントが採用された初のサイコンは「Edge500」でした。

2010年に発売されたEdge500。裏面の写真を見ると、Garminマウントのプラグ部が見て取れます。Garminマウントの歴史はここから始まりました。

この頃はハンドルの前に突き出す「アウトフロントブラケット」もまだ存在せず、ステムにソケットを直接ゴムバンドで取り付ける方式が主流だったはずです。

その後、発売されたGarminのEdgeシリーズはいずれもGarminマウントを採用。脱着が簡単で固定力も案外強いGarminマウントはスタンダードへの道を歩み始めました。

各社のサイコンがGarmin(風)マウントを採用

その後しばらくは、サイコンメーカー各社はそれまでのスライド式マウントを採用していました。

ただ、徐々にGarminマウントが定着していき、回転式マウントを採用するメーカーが増え始めます。

回転式マウントが採用され始める

Garminに続いて回転式マウントを初めて導入したメーカーがどこであるかはハッキリ分かりません。

確認できた限りでは、SIGMAが2014年に発売した「ROX 6.0」は回転式マウントを採用しています。

動画を見る限りプラグ・ソケット形状ともにGarminマウントに良く似ていますが、GarminとSIGMAでは以下の違いが合ったようです。

差異のポイントGarminSGIMA
プラグの爪の数2個4個
取付時の回転角度90°45°

Garminマウントをそのまま真似しなかったのは権利的な理由なのか、モノづくりメーカーとしてのプライドなのかは分かりませんが、この頃は「回転式だけど、ちょっとGarminとは違う」方式を採用したマウントが多かったです。

Bryton・Wahoo・Pionner・Yupiteruも回転式マウントを採用したものの、やはりGarminマウントとは微妙に違うマウントを採用していました。

Garminマウントを採用する他メーカーが登場

2020年代になると、Garminマウントをそのまま採用したサイコンも出てきました。

具体的なメーカー名を上げると、XOSS、Coospo、CYCPLUS、iGPSOPORTなど。いわゆる中華メーカーが中心の動きになります。なんとなく権利的にグレーな香りがしますが、日本国内には該当しそうなマウント方式の特許を確認できませんでした。

iGPSPORT「iGS630」の裏面

私の手元にある機器では、iGPSPORT「iGS630」は完全にGarminマウントと同一の形式のプラグを採用しています。

サイコン以外もGarminマウントを取り入れ始める

Garminマウント人気は留まるところを知らず、ついにサイコン以外の取付にも採用するメーカーが現れました。

本記事で問題提起したいのは、この「サイコン以外のGarminマウント採用」の機器についてです。

ライトに採用するメーカーが登場

いつ頃からGarminマウントに取付可能なライトが登場したのかは定かではありませんが、調べる限りでは2019年に日本のGENTOSがGarminマウント採用のライトを発売していました

それまではCATEYEのようなスライド式マウントを採用していたGENTOSですが、このAXシリーズではGarminマウントを採用しています。

OLIGHT「RN1500」

ただ、Garminマウント採用のライトとして一番流行したのはOLIGHT「RN1500」でしょう。GENTOSの翌年、2020年の発売ですが、ロングライド用に丁度よいスペックのライトとして人気を博しました。

RN1500の人気を受けて、Garminマウントを採用するライトメーカーが増加。TOWILDやMagicshineなど、大半は中華メーカーでしたが、大手メーカーでもGarminマウントを採用したライトを発売する所が出てきました。

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驚いたのは、老舗メーカー「MOON」が採用したこと。それまでは堅牢なスライド式マウントを採用していたので、非常に意外でした。

その他のGarminマウント採用機器

ライト以外では、スマホのマウントにも採用される例がありました。

こうしたシール式のプラグをスマホに貼り付けることで、Garminマウントへのスマホ取り付けが可能になります。

変わり種製品としては、Garminマウントに取り付けられるBluetoothスピーカーなんてものもありました。

サイコン以外に不向きな理由

前置きが長くなりましたが、本題です。

「Garminマウントをサイコン以外の用途に使うと何が問題なのか」を書いていきます。

壊れる可能性がある(特に逆さ吊り)

一番の問題は、マウント(プラグ・ソケット両方)が破損する可能性が高いということです。

破損事例(RN1500)

こちらは、adiasさんご提供の写真です。RN1500をGarminマウントに取り付けて走行中、段差を超えた際にライトが吹っ飛んだそうです。

RN1500の破損事例(adiasさんご提供)

見ての通り、RN1500の本体に取り付けられたマウントのプラグ部の爪が2本とも折れています。爪が折れれば押さえるものはなにもないので、ライトごと吹っ飛ぶことになります。

ソケット側のこの部分が割れる事例もあった

ソケット部の爪と接する部分が割れる事例もあります。

ソケット側の爪が割れた例(しーぽんさんご提供)

Twitter等を検索するとこうしたGarminマウントを採用したライトの破損事例は多く報告されています。

これがもし、真っ暗な峠のダウンヒルで起こったら……ライトは脱落し、一瞬にして視界が奪われることになります。これは避けなければなりません。

なぜ破損するのか

サイコンではあまり聞かないマウントの破損事例ですが、ライトでは破損事例が多い。これには理由があります。

1つ目の理由は、「Garminマウントの耐荷重を超えている(可能性が高い)」からです。

製品重量プラグ材質
Garmin「Edge 1000」114g樹脂
Garmin「Edge 1030」124g樹脂
Garmin「Edge1040」133g金属
OLIGHT「RN1500」172g樹脂
Magicshine「RN3000」281g樹脂
Garminマウント採用機器の重量比較

Garminマウントのご本尊であるGarminが販売しているサイコンの中で最も重いのはEdge1040。一番重くても「133g」なのです。

Garmin公式サイトより引用

しかも、Edge1030(124g)までは樹脂だったプラグ部に金属を採用するなど、133gという重量への警戒感が見て取れます。

恐らくですが、Garminマウントというのは耐荷重の上限は120~30g前後。Edge1040ではその上限を超えてしまったので金属プラグを採用する対策を講じたのでしょう。

一方、自転車ライトは軽々とその耐荷重を飛び越えています。RN1500は172g、RN3000に至っては281g。耐荷重はある程度マージンを持って設計するものですが、耐荷重の1.5倍となれば壊れるのも自然なことです。

2つ目の理由は、「ライトは吊り下げで使われることが多い」からです。

サイコンは上向きに付ける

サイコンを取り付ける場合、普通はハンドルの上側に取り付ける(ソケットが空に向く)はず。地面に向けてサイコンを取り付けたら画面は見えませんからね。当たり前のことです。

ライトは吊り下げて使うこともある

一方、ライトはハンドルから吊り下げて使う(ソケットが地面を向く)ことがあります。昨今はサイコンの下にGoPro用の吊り下げアダプタが付いていることが多く、そこにGarminマウントのソケット部を取り付けるわけですね。

Garminマウントに限りませんが、「上向きで使う」のと、「下向きで使う」のでは、マウントに掛かる負荷や部位が異なります。上向きで耐えられるものが、下向きでは耐えられないということが起こり得ます。

こちらの3枚の画像は、プラグをソケットに差し込んで回す様子を裏側から撮影したものです。

プラグ側の爪と、ソケット側の爪の位置関係に注目してください。

上向きで使う場合にはサイコンやライトの裏面が多少の重量を受け持ってくれます。しかし、下向きで使う場合、プラグ側の爪とソケット側の爪が支え合う構造になります。崖から落ちそうな人が指先だけで体を支えてるような状態です。指先に恐ろしい力が掛かることは想像できるでしょう。

この爪は、双方1.5mmほどしか無い非常に薄い部位です。たとえ材質を工夫しても、走行振動に耐えながら150g以上のものを支えることは出来ないはず。そして、自転車用ライトの重量はそのボーダーを超えているものが大半。

結果として、プラグ・ソケットのどちらかの爪が破損するわけです。

着脱しにくい

こちらは破損ではなく、使い勝手に生じる問題です。

Garminマウントは「90°回転させる」という動作が必要になります。サイコンよりも長さのあるライトは、回転時に周囲の他のパーツと干渉する可能性が高いのです。

こちらはブルベなどではありがちな、サイコンの両サイドにライトを取り付けるレイアウトです。ライトを外そうと90°回転させると、サイコンと干渉してしまいます。

ハンドル周りにモノをあまり付けない人には関係ありませんが、色々付けている人はレイアウトに制約が生じることになります。

Garmin本家による「例外」

基本的にGarminは機器を上向きに取り付ける用途の製品しか発売していませんが、例外があります。拡張バッテリーパックです。

拡張バッテリーパックは約130gで、サイコンの下に吊り下げて使用します。

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拡張バッテリーの画像をご提供頂きましたので、その画像を紹介します。

こちらが拡張バッテリーのGarminマウント部です。特徴的なのは、「機器側にソケット部が付いている」点。サイコンの場合は「機器側にプラグ部が付いている」のが普通です。

こちらはアウトフロントブラケットの下側。プラグ部が付いています。

そしてポイントなのは、Garminのアウトフロントブラケットと一体成型されているプラグであるという点です。

Garminの純正アウトフロントマウントは恐らく繊維強化樹脂(FRPとかCFRPと呼ばれる)を使っており、かなり強度が高いことで知られています。通常のソケット部はプラスチック製であることが多いので、それに比べるとかなり強いはず。

吊り下げで取り付けるという制約を何とかクリアするために、こうした方法を取ったのではないかと推測しています。

つまり、これくらい対策しないとGarminマウントでの吊り下げは成り立たないわけですね。

なお、Garmin純正のライト「VARIA」も拡張バッテリーパックと同様の方式を採用しています。

まとめ

「Garminマウントにサイコン以外の取付が不向きである」理由を解説しました。

Garminマウントは元々、「100g前後」で「正方形に近い形状」のサイコンを「上向きで使う」ために生まれた規格です。「150g以上」で「長方形」のライトを「下向きで使う」ことは考慮されていません。

一見便利そうな「Garminマウントのライト」ですが、長期間使用すると破損する可能性が高いです。

メーカー側が普通にGarminマウントのライトを販売しているので、ユーザー側としては「ちゃんとテストしてるよね」と思うのは普通の感覚。ただ、自転車業界のパーツはそこまでちゃんとテストされていないこともあります。

我々ユーザー側が使う前に自分で判断する必要があります。面倒ですが。

自転車ライト攻略本より

こちらは拙著「自転車ライト攻略本」の1コマ。

「付けられる」と「付けて問題が起こらない」というのは全く別の話です。「付けられるけど問題が起こるかもしれない」という懸念は常に持っておいたほうが良いでしょう。


そうは言っても「Garminマウント仕様のライトを買っちゃったよ!」という方もいると思います。

対策としては、ゆるふわーくすさんから発売されているアダプタに交換し、CATEYEのマウント方式に変えてしまう方法を推奨しておきます。OLIGHT・TOWILD・iGPSPORTのライト向けのマウントアダプタがラインナップされています。

RN1500の具体的な変換方法はこちらの記事にまとめました。

CATEYEのマウント方式は、ある程度の耐荷重が考慮されており、更に吊り下げも考慮されています。ライトの脱着時もライトの前側にスライドさせる方式なので干渉することもありません。

ライトメーカー各位におかれましては、是非ともGarminマウント以外の取付方式をご検討頂くか、Garminマウントを採用するならソケット・プラグともに強化したバージョンを発売してほしいものです。といっても、1.5mmの爪では素材を強化した所でたかが知れている気がしますが。

その点、iGPSPORTは動きが素早かったですね。一作目のVS1200はGarminマウントを採用していましたが、二作目のVS800はスライド方式のマウントに変更してきました

三作目のVS1800もスライド式。Garminマウントの問題点に気がついたので変更してきたのではないか……と見ていますが、はてさて。

著者情報

年齢: 39歳(執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: GHISALLO GE-110(カーボン), QUARK ロードバイク(スチール)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)

# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせていただきました。

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この記事を書いた人

ロングライド系自転車乗り。昔はキャノンボール等のファストラン中心、最近は主にブルベを走っています。PBPには2015・2019・2023年の3回参加。R5000表彰・R10000表彰を受賞。

趣味は自転車屋巡り・東京大阪TTの歴史研究・携帯ポンプ収集。

【長距離ファストラン履歴】
・大阪→東京: 23時間02分 (548km)
・東京→大阪: 23時間18分 (551km)
・TOT: 67時間38分 (1075km)
・青森→東京: 36時間05分 (724km)

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