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「例のポンプ」一族のスペック比較レビュー
「例のポンプ」と同様の構造(ピストンを引いた時に内部に空気を圧縮し、次に押す時のアシストに使う)を持った携帯ポンプは、ここ数年で目まぐるしく進化しています。
当サイトでも新しいバージョンが発売されるたびに個別レビュー記事を書いてきましたが、本記事ではそれらを横並びに比較してみようと思います。
導入
まず、この記事を書こうとと思った理由と、「例のポンプ」について一通り説明致します。
記事を書こうと思った理由
当サイトでは、「例のポンプ」系の機構を持つ携帯ポンプに2018年頃から注目し始めました。後述する「内部圧縮機構」は、携帯ポンプの世代を一つ前に進める変化だったと考えています。
新バージョンを見つけるたびに購入し、個別にレビューに実施。「例のポンプ一族」のタグを見ると、現時点で12本のレビューがあります。
当サイトのレビューには、「総合評価」として、★1~5個のスコアを付けています。こちらの評価はあくまで、「レビュー執筆時点の評価」を書いたもので、後から変更することはしていません。
困るのは、後から出てきた製品の方が明らかに優れているケースです。
製品が進化するのは世の常。明らかに優れた後継モデルが出ると、以前は最高と感じていた品が古臭く感じてしまう……。それが、携帯ポンプの世界でも起こっています。過去に★5を付けた製品より明らかに優れた製品が出てきたとして、その製品に付ける★5は過去の★5よりも優れていることになります。
特に「例のポンプ一族」の製品進化のスピードは早く、2017年頃の初出から4年で性能・品質共に大きく前進していると感じています。
……ということで、2021年6月現在の段階で一度、「例のポンプ一族」のスペックをまとめ、横並びでレビューをしておきたいと考えました。
現時点で総合的に優れている「例のポンプ一族」の携帯ポンプはどれなのか? 当然、後発の製品ほど有利ということにはなりますが、その進化の過程も含めて説明したいと思っています。
例のポンプ一族とは
「例のポンプ一族」というのは私が作った言葉で、一般的な用語ではありません。
一言で言えば、「Oture携帯ポンプ(通称・例のポンプ)」と同様の構造を採用した携帯ポンプを指しています。
2017年に登場したOture携帯ポンプは、従来の携帯ポンプとは異なる独自の構造を採用していました。「内部圧縮機構(詳しくは後述)」を採用し、高圧でも大きな腕力を必要としないのが最大の特徴です。主にブルベ界隈で注目を集め、2018年のヒット製品となりました。
こちらの携帯ポンプはいわゆる「中華製品」です。中華製品は、モノは同じでも多数のブランドが自社のロゴを入れて別々の製品として販売されていることが多いものです(いわゆるOEM製品)。Otureの携帯ポンプも例外ではなく、モノは同じでも別ブランド(BLACKBIRDなど)のロゴが入った製品が同時に販売されていました。
これらを製造していたのは、「Dongguan Jiaguan Sports Equipment」という会社だと思われます。こちらの会社は自社ブランドの「PRO STAR」でもポンプを販売していますが、OEMの生産がメイン。「Oture 携帯ポンプ」は、同社の「HQ-20」という型番の製品でした。それに、OtureやBLACKBIRD等のブランドがロゴを入れていたわけですが、モノは同じなわけです。
結局、こうした「HQ-20タイプの携帯ポンプ」をひと括りにして呼ぶ際に「例のポンプ」というワードが用いられたわけです。
例のポンプ一族の歴史
2018年に一斉を風靡した「例のポンプ」ですが、2019年には小型化した「ミニ・例のポンプ」が誕生します。こちらも様々なブランドから同型の携帯ポンプが販売されており、これらにも相変わらず「例のポンプ」の呼称が用いられました。
ん?これ新製品なのか。
例のポンプの方式と同じで、重量100g。出たら買ってみよう。 https://t.co/265u6huesk— ばる (@barubaru24) October 1, 2019
大きな転換と言えるのが、2019年10月のこの出来事。世界的メーカーであるTOPEAKが、例のポンプと同様の構造の携帯ポンプを発表したのです。例のポンプで採用されていた内部圧縮構造を、TOPEAKでは「ツインターボテクノロジー」と呼称しました。中華製品は、仕組みは革新的でも作りが荒い(品質が良くない)ことが多いものです。大手メーカーが手掛けると、品質の向上が期待出来ます。
実際、TOPEAKが2020年に発売した「ROADIE TT」は、例のポンプをより洗練した素晴らしい製品となっていました。
TOPEAKに続いたのが、Panaracerです。Panaracerは自慢のワンタッチ口金を採用した携帯ポンプ「携帯ワンタッチポンプ(BMP-22AEZ)」を2018年に発売。口金はとても良かったんですが、肝心のポンプとしての能力は全然ダメで、高圧まで入れられる性能を持っていませんでした。
そんなパナレーサーが2020年に後継モデルとして販売したのが「ワンタッチミニポンプ(BMP-23AEZ)」です。
パッケージに「高圧でも、軽快ポンピング!」の文字の通り、高圧でも使えるように改良されていました。内部構造については明らかにはされていないのですが、ポンピングの感触から「例のポンプ」と同様の構造を採用しているのは間違いないはずです。
例のポンプ一族に共通の構造
TOPEAKのROADIE TTで言う「ツインターボテクノロジー」を採用しているのが、例のポンプ一族の特徴です。
簡単に言うと、「ピストンを引いた時に内部に空気を圧縮し、次にピストンを押す時のアシストに使う」仕掛けです。ピストンを押す際に下駄を履いた状態で始められるので、高圧状態でも押しが軽くなるわけですね。
詳しい構造を知りたい方は、「Oture 携帯ポンプ」のレビューの「構造」の章を御覧ください。図解しています。
この構造とよく勘違いされるのが「押しても引いても空気が入る」構造です。TOPEAKでは「ダブルアクションテクノロジー」と呼んでいますが、ツインターボテクノロジーとは全く別の構造なので注意して下さい。正直、このDA構造の携帯ポンプは使い物になりません……。