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リム内幅と空気圧の関係
「同じ回数だけポンピングした時に、リム内幅によってタイヤの空気圧に違いが出るのか?」を調べた実験レポートです。
実験動機
先日、「WH-R8170(新型アルテグラホイール)」を購入しました。
新型アルテホイールは内幅21mm
こちらのホイール、リム内幅は21mmです。太い!
10年ほど前の主流は内幅15mmでしたが、ある時から17mmが登場し、現在の主流は19mmです。アルテグラホイールは、更にそれよりも2mm太いホイールで、恐らく最適タイヤサイズは28Cとなるはずです。
シマノは前の世代(R9100)ではリム内幅15mm(カーボンリムは17mm)という古めの規格だったんですが、一気に他社よりも太い内幅を採用しました。
空気が中々入らない
で、このアルテグラホイールにアジリスト25Cを取り付けて空気を入れてみたんですが。中々空気圧が上がりません。
大体私は7気圧程度は空気を入れるんですが、いつもならとっくにそこまで入っている回数だけポンピングしているはずなのに、フロアポンプの空気圧計は中々上がらず。C19のキシリウムSLに比べてポンピング回数は1.5倍位になっているように感じられました。
タイヤもチューブも同じなのに、ポンピング回数が増えている。これは恐らく「リム内幅が増えた影響では?」と考えました。
今回は家なのでフロアポンプが使えますが、出先でパンクした時に携帯ポンプでのポンピング回数が1.5倍に増えたら一大事です。400回が600回になるわけですからね。
そうした事態に備え、実験を行ってみることにしました。
アンケート
せっかくなので実験前にアンケートも取ってみました。
【アンケート】内幅が違うリムに同じタイヤとチューブを付けて、同じ携帯ポンプで同じ回数だけポンピングしたら空気圧はどうなると思いますか?
— ばる (@barubaru24) May 19, 2022
「内幅が狭い方が空気圧が高くなる」と予想する方が多かったです。
実験方法
まず、5種類の異なるリム内幅のホイールを用意しました。ちなみに、リム内幅は上の写真のように「622x17C」みたいな形で書いてあることが多いです。
C21: SHIMANO WH-R8170
C19: MAVIC KSYRIUM SL DISC
C17: FULCRUM Racing 3
C15: Campagnolo EURUS 2WAY
C13: SPINERGY XAERO LITE PBO
C13とかC15というのは、リム内幅を表す時の表現方法です。C13なら内幅13mm、C15なら内幅15mmということになります。
これらのリムに対して、下記のタイヤとチューブを取り付けます。全て同一個体です。
タイヤ: Panaracer AGILEST 25C
チューブ: Panaracer R’Air 18-23C
タイヤとチューブの組み合わせがちょっとおかしいですが、手元にあった使い古しのチューブがこれだけだったのでご容赦ください。
このホイール・タイヤ・チューブの組み合わせに対して、下記の携帯ポンプで同一回数だけ空気を入れます。
携帯ポンプ: TOPEAK ROADIE TT
ポンピング回数: 200回
ポンピングは毎ストローク、しっかり引き切る・押し切るを実行し、空気圧のブレが起こらないようにしました。
この状態で、空気圧を測定して比較を行います。
実験結果
結果は以下の通りです。参考情報として、6気圧まで入れた際のタイヤ幅も掲載しています。
ホイール | リム内幅 [mm] ※実測 |
空気圧 [bar] ※200回時 |
タイヤ幅 [mm] ※6気圧時 |
SHIMANO WH-R8170 | 21.3 | 4.75 | 27.0 |
MAVIC KSYRIUM SL DISC C19 | 19.0 | 5.01 | 26.4 |
FULCRUM Racing 3 C17 | 17.2 | 5.09 | 25.2 |
Campagnolo EURUS 2WAY C15 | 15.8 | 5.44 | 24.8 |
SPINERGY XAERO LITE PBO | 13.2 | 5.97 | 24.0 |
リム内幅と空気圧の関係をグラフ化すると以下のようになります。
「リム内幅が広いほど、同一ポンピング回数時のタイヤ空気圧は低くなる」という結果になりました。
おまけとして、リム内幅とタイヤ幅の関係もグラフ化しました。
これは既によく知られた話ですが、「リム内幅が広いほど、タイヤ幅も広くなる」という関係が示されています。
考察
今回の結果を受けて、どうしてそうなったのかを考えてみます。
リム内幅が広いほど、空気圧は低くなる
今回の実験では、「リム内幅が広いほど、同一ポンピング回数時のタイヤ空気圧は低くなる」という結果が得られました。
気体の圧力と体積の関係は以下の公式で表されることが知られています。
PV=nRT
P:気圧
V:体積
n:物質量
R:気体定数
T:温度
今回、同じ携帯ポンプで同じ回数だけポンピングしたので、nは一定。Rは気体定数なので一定。温度Tも大体一定(厳密には違うはず)。ということで、PV=一定ということになります。
チューブは「タイヤとリムに挟まれた空間」を充填するように膨らむわけですが、リム内幅が広いほうがこの空間の体積は当然ながら大きくなります。
また、「リム内幅が広いほど、タイヤ幅も広くなる」という関係があることも分かっています。
リムの幅も広がり、タイヤの幅も広がる。「タイヤとリムに挟まれた空間」も大きくなる。つまり、リム内幅が大きいほど、V(体積)の値は大きくなるということです。
PV=一定なので、Vが大きくなればPは小さくなる。気圧は下がるということです。
内幅以外のパラメータはあるのか?
気になったのは、C17とC19で気圧に大きな違いが出なかったことです。
グラフから言えば、C17のRacing 3は、5.2気圧前後になるのが自然。しかし、実際には5.09気圧でした。
恐らく、「リムの深さ」「リムベッドの形状」なども空気圧に影響を与えるパラメーターになっている気がします。
リムが深ければその分、「タイヤとリムに挟まれた空間」は大きくなるはずで、気圧は下がるはずです。Racing 3はクリンチャーリムで、ハンプ(チューブレスタイヤ保持用の突起)が存在しません。このため、多少ながら「タイヤとリムに挟まれた空間」が大きくなり、空気圧が低下したのではないかと推測します。
まとめ
結論は、「リム内幅が広いほど、同一ポンピング回数時のタイヤ空気圧は低くなる」となりました。
「ある一定の気圧に達するまでのポンピング回数は、リム内幅が広いほど多くなる」とも言い換えられます。ただ、C15→C19に移行しても、ポンピング回数は1~2割の増加で済みそうなことが分かりました。1.5倍はさすがにオーバーな体感だったようです。
実使用を見ると、ワイドリムに乗り換えると空気圧を下げる傾向のある人が多いので、ポンピング回数(=タイヤ内の空気の総量)は変わらないかもしれません。
ただ、「いかなる時も同じ気圧で乗りたい」という人の場合は、リムをワイドにした時にはポンピング回数が増加することに注意してください。
著者情報
年齢: 37歳(執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: BIANCHI OLTRE XR4(カーボン), QUARK ロードバイク(スチール)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)
# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせていただきました。