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ライト配光比較ツールを公開
「自転車ライト配光比較ツール」を公開しました。
ツールについて
Twitterでは数日前から書いていましたが、自転車ライトの配光を比較するツールを作成し、公開しました。
ブログのヘッダにあるメニュー部からアクセスできるようにしています。
ツール概要
ライト2種類を左右に並べ、「配光写真」「照度変化グラフ」をモードごとに比較可能になっています。
言ってしまえば、CATEYEサイトにある「ビームチャート」をCATEYE以外のメーカーも含めて比較可能にしたものです。
作成動機
自分の手持ちのライトの配光を比較したかったのが理由です。
CATEYEのサイトでもCATEYEのライトは比較出来ますが、最近メインで使用しているOLIGHT RN1500とは比較出来ません。OLIGHTはどうも「一番明るい位置がVolt800に比べて近距離に来る」という印象はあったんですが、正確に比較したわけではありませんでした。
ならば、ツールを作って比較してしまえば良いわけです。一応、自分もシステムエンジニアなので、それくらいは出来るはず。
Javascriptはあまり得意ではないんですが、なんとか動くものは作ることが出来ました。
比較可能なライト
この記事を書いた時点で、以下の24本のライトを比較可能です。モデル名に(*)付きのものは汎用ライトで、自転車専用ではありません。
ブランド名 | モデル名 |
CATEYE | Econom Force |
Volt200 | |
Volt300 | |
Volt400 | |
Volt700 | |
Volt800 | |
GVolt70 | |
URBAN2 | |
AMPP300 | |
OLGHT | T25 Regular(*) |
RN800 | |
RN1200 | |
RN1500 | |
BFL1800 | |
Magicshine | RAY2600 |
Serfas | e-lume1200 |
Dosun | S1 |
S1 Delux | |
GENTOS | 閃 SG-305(*) |
閃 SG-325(*) | |
閃 SG-355B(*) | |
ROXIM | RX5 Speed |
Rockbros | R3-1000 |
Sofirn | SP33 V3(*) |
ライト比較
せっかくツールを作ったので、各ライトの比較と分析を簡単にしてみようと思います。
ここで書くのは私が気になった組み合わせだけにはなります。全部の組み合わせをやると、24C2=276通りにもなるので……。
基本的には、左側のライトが古く、右側のライトが新しい組み合わせになっています。
なお、画面奥に行くほど遠近法の関係で照らされた面積が小さく見えるようになります。画面奥のほうを集中的に明るくしているライトはルーメン値より暗い印象となりますので、そこを考慮に入れてご覧ください。
① Volt800 vs RN800
まずは、2015-2020年までブルベにおけるメインライトとして使ってきたCATEYE「Volt800」と、2020年以降のメインライトの一つとして使っているOLIGHT「RN800」の比較です。
この2つのライトはどちらも3モードあり、各モードの明るさも200/400/800ルーメンと同一なので比較対象としてはうってつけです。
写真はローモード同士の比較。双方200ルーメンです。どちらも定電圧回路を搭載しているようで、最後まで明るさがほとんど落ちないのも特徴となっています。
まず、RN800の方が光が横に広いこと。路肩まで見えやすいということになります。
次に気がつくのは、「Volt800: 手前は暗い」「RN800: 手前が明るい」という差。
ただ、双方ともに200ルーメン。(スペックを信じるならば)光の量の合計は同じになるはずです。違うのは、「どこを明るく照らすか」という配分の差。レンズやリフレクターの差によって、「明るく照らす」場所を制御しているわけで、そこにライトの設計思想の差が出ます。
写真で黄色い点線で示したのが、双方のライトの一番明るい部分です。Volt800は5mのコーンと10mのコーンの間の約7m地点に一番明るい部分が来ていますが、RN800は5mのコーンより手前の約8m地点に一番明るい部分が来ます。双方ともに15m程度先まで照らせているのは共通ですが、一番明るい部分までの距離が異なるのです。
恐らく、RN800が防眩機能のためのスリットで屈折させた上半分の光が4m地点の地面に落ちているのでしょう。普通に照らせばVolt800と同じく15mの照射距離の中間地点である8m地点が一番明るくなるはずですが、この防眩機能で曲がった光が4m地点に明るさをプラスしているわけです。
人間、暗闇の中では無意識に一番明るい部分に目が行ってしまうもの。たとえ遠くまで照らせていても、注目するのは一番明るい部分となります。視点の中心がそこになるわけですね。
自転車の走行速度が仮に25km/hだとすると、1秒間に進む距離は約7m。4m先の道路に異常があった場合、対処するまでの時間は0.5秒となります。8m先の路面であれば1秒ちょっと。時間にして0.6秒ほどの差ではありますが、この差は結構大きいと思います。
今回、ツールで使用している配光画像は、水平から光軸を2°ほど下に傾けて撮影しています。ライトを少し上に向ければ一番明るい部分の距離は遠く出来ますが、そうなるとせっかくの防眩機能の意味がありません。OLIGHTは光をスリットで屈折させるアイデア自体は良かったと思うのですが、屈折させる角度がちょっと急過ぎたのではないかと思います。
感覚的に「OLIGHTはもう少し遠くを照らしてほしいな」と思っていたんですが、その差が視覚的に分かる形で比較できました。これだけでもこのツールを作った意味があります。
② RN1500 vs RN800
続いては、OLIGHTの兄弟機であるRN1500とRN800の比較。筐体もレンズ・リフレクターの設計もほぼ同じで、LEDと回路が異なると思われます。
写真はローモード同士の比較。RN1500が300ルーメン、RN800が200ルーメンです。
レンズ・リフレクターが共通であることから、当然配光も同じになります。違いは明るさ。確かにRN1500の方が明るく、全体的に地面の色がより白く写っていることがわかると思います。順当に数値通りの明るさの差があるということです。
ただ、実は30分後にはその明るさは逆転します。RN1500は30分掛けて57%(170ルーメン程度)まで暗くなる処理(恐らく暗順応を見越している)が入っており、30分後以降はずっと200ルーメンを保つRN800の方が明るくなるわけです。
そんなわけで、最近はRN1500よりもRN800を使う機会が個人的には増えました。
③ RN1500 vs RN1200
これまた兄弟対決のRN1500 vs RN1200。
最大光量は異なりますが、ローモードはどちらのライトも公称300ルーメン。ただ、比較してみるとRN1500のほうが明るいです。この写真だとわかりにくいので、是非比較ツールで見比べてみてください。
RN1200もRN1500とレンズ・リフレクターともに同一のはずなので、暗く見えるということは単純に光量が少し落ちるはず。300ルーメンは出ていないでしょう。
そして、RN1200も30分かけてゆっくり暗くなる性質があり、こちらは52%まで低下します。RN800・1200・1500を同時に点灯した時、30分後に一番明るいのは実はRN800なのです。
④ Volt700 vs Volt800
今度はCATEYEの兄弟対決。2014年10月発売の「Volt700」と、2015年10月発売の「Volt800」です。
こちらも恐らくレンズ・リフレクターの構造は共通なのでしょう。配光は全く一緒で、明るさだけが違います。Volt700が100ルーメンでVolt800が200ルーメンです。
2015年のPBPではVolt700をメインライトとして臨み、2019年のPBPではVolt800をメインライトとして臨みました。2015年は300ルーメンのミドルモードも使いましたが、基本は100ルーメンモード。よくこれで乗り切れたなーと思いますが、やはり目の方もより明るいライトに慣れてきているんでしょうね。
⑤ Econom Force vs Volt300
CATEYEが本気で開発した最後の電池式ライトであろう「Econom Force(2011年10月発売)」と、CATEYEが一斉を風靡したカートリッジ式バッテリーライトの初代「Volt300(2013年10月発売)」の比較です。
Econom Forceはブルベ界隈では大流行した電池式ライトです。特殊なリフレクターを使い、上側の光をカットし、前に集めた実戦的な配光をしていました。
Volt300と比べてみると照射範囲がかなり狭いのですが、その狭い範囲はかなり明るくなっています。Volt300も「100ルーメンを8時間(といっても徐々に暗くなる)」維持出来るライトでしたが、Econom Forceを好む人も多かった記憶があります。
現代のライトと比べると明るい範囲が極端に狭いEconom Forceですが、実際に走ってみると案外走りやすい。一番明るくあってほしい5~10m地点までが集中的に明るいことがその理由でしょう。電池式という資源のハンデを背負いながらも、その制約の中で最大限の成果を出した名作ライトと言えます。
⑥ Econom Force vs S1 Delux
今度は電池式ライト対決。日本・CATEYEの「Econom Force」と、台湾・Dosunの「S1 Delux」です。どちらもリリースは2011年ということで、同時期のライト。
どちらのライトもドイツ向け風の上側カット配光を採用していますが、Econom Forceは単三電池×4本で、S1 Deluxは単三電池×2本という違いがあります。
Econom Forceは5~10mに明るい部分を絞っているのに対し、S1 Deluxは1~5mの範囲に光が集中しています。設計思想の差ですね。
どちらも電池式にしては明るく、考え抜かれた配光をしています。昔はお世話になりました。
⑦ RN1500 vs Ray2600(左右LED同時)
RN1500の製造元はMagicshine。そのMagicshineが自社ブランドとして出しているライトがRay2600です。
Ray2600は左右のLEDを独立して点灯することが可能で、左右同時に点灯することも出来ます。
写真は、RN1500のローモードと、Ray2600を左右同時点灯した場合のエコモードの比較。
Ray2600のほうが数字上は明るいはずなのに、少し暗く見えます。というよりは手前に明るさが集中している感じ。一番明るいのは3m地点ですね。
ただ、RN1500が30分で明るさが落ちるのに対し、Ray2600は明るさが最後まで一定です。真面目な作りという意味ではRay2600なんですが……ちょっと明るい部分が近すぎるのが気にかかります。
⑧ Ray2600同士
前述の通り、Ray2600は2つの別特性のLEDを持っています。
向かって左のLEDは遠距離用の「Floodlight」、向かって右のLEDは近距離用の「Spotlight」。
左がSpotlight。確かに遠くまでは照らせています。これに対し、Floodlightは3m地点が一番明るくなっていますね。
左右同時点灯した場合は、この2つのモードの光が重ね合わさることになります。一つ前の比較でRay2600(左右LED同時点灯)において「一番明るいのは3m地点」と書きましたが、これはFloodlightの一番明るい部分が3m地点に来るからというわけです。
実用を考えると左右同時点灯した方が良いとは思いますが、それでも照らせる範囲はRN1500よりも狭いというのは……ちょっと設計がイマイチですね。Ray2600が明るさを保つ点は良いんですけども。
⑨ Volt300 vs AMPP300
最後は、2013年発売のVolt300と、2020年発売のAMPP300。
どちらもHighモードは300ルーメンで3時間。ただ配光はちょっと違いますね。Volt300の方が少し遠くまで照らせる代わりに、AMPP300は手前側を照らせるようになっています。
そして、明るさが段々落ちるVolt300に対し、AMPP300は最後まできっちり300ルーメンを保ちます。7年分の進化を感じますね。
Volt300は定価7000円、AMPP300は定価3500円。これだけ物価の値上がる昨今で、同一ルーメンの明るさのライトが半額で手に入るのは凄いことです。AMPP300は電池を交換できませんが、なかなか優秀なライトだと思っています。
まとめ
ライト配光比較ツールの紹介と、実際に比較してみた結果の紹介でした。
ツールを作るのは結構大変でしたが、比較してみると色々発見があります。注いだ労力以上の価値がありました。
是非皆さんも使ってみてください。私の持っているライトに限られますが、何らかの発見があると思います。ご活用いただければ幸いです。
著者情報
年齢: 37歳(執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: BIANCHI OLTRE XR4(カーボン), QUARK ロードバイク(スチール)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)
# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせて頂きました。