【レビュー】FULCRUM「RACING ZERO CARBON DB」

評価:3

Fulcrumのディスクブレーキ用カーボンクリンチャーホイール。内幅19mm、ハイト30mmのプロファイルを備えています。

購入動機

ディスクロード「BIANCHI INFINITO CV」用のホイールとして購入しました。同社のRacing 5 DBからの乗り換えとなります。

 

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詳しい購入動機はこちらの記事に書いています。かいつまんで言えば、

・ディスクロードはリムにブレーキ面がないので、カーボンリムを選ばない理由がない(価格以外)。
・リムブレーキ版のレーゼロカーボンを使っており、アルミスポークの反応性の高さが気に入っていた。
・横風の影響を受けやすいディスクロードなので、ローハイトのものを選びたかった。

といった理由で購入しました。

購入先は、イギリスの通販サイト「Merlin Cycles」です。

製品概要

実測重量は、1508g(前輪695g, 後輪813g/ロックリング除く/シマノフリー)。公称は1450gなので、58gプラス。

リムにはスポーク穴が空いておらず、テープ無しでのチューブレス運用が可能となっています。リムハイトは前後ともに30mmです。

リム内幅は19mmのワイドリム。素材はカーボン(T800 UD)で、グロスコーティングされています。ニップルホールはカーボンで強化(ARCテクノロジーと呼ばれる)する手法を採用。

スポーク素材はアルミ。前後ともに本数は21本で、2to1と呼ばれるフルクラム伝統のスポークアレンジとなっています。

付属品は以下。

・説明書
・チューブレスバルブ 2個
・バルブコアツール
・スルーアクスル用コンバータ
・タイヤレバー 1本
・サイクルコンピュータ用マグネット

使用感

ブルベ等のロングライドで使用する想定で購入しましたが、一度に走った最大距離は130km程度(三浦半島一周)。結局ブルベには使わず、夜練のみで使用していました。

比較対象は、この後に購入したHUNTの「44 AERODINAMICIST CARBON」です。

重量

前述の通り、実測で1508gでした。

公称重量が1450gなので、4%ほど重かったです。

周囲の持っている人に話を聞いたり、ネット上のレビューでも1500gを切っている個体はほとんどなく、1510-1520gの重量の場合が多いようで。さすがにここまでズレていると、公称重量を訂正したほうが良いと思いますが。

フリーボディは白色のアルミバージョンが最初から付いており、後から交換して軽量化することは出来ません。

構造

とにかく凝った作りです。他のホイールには無い構造が多く見られます。

まずはニップルホール周辺を強化するARCテクノロジー。カーボンではないレーゼロでは切削でニップルホール周りをあえて多めに残すことで似た効果を実現していたようですが、カーボン版は追加でカーボンを盛っている感じ。

ハブも、前輪はカーボン胴で、後輪はアルミ胴と違う素材で作られていました。

特徴的なのはスポークです。リムブレーキ版のレーシングゼロカーボンと比べて、よりディスク版のスポークの方が厚くなっています

「ラジアル」というのは、リムからハブ中心に向かってまっすぐスポークが伸びているパターンを指します。普通、ディスクブレーキではラジアル組は採用されませんが、フルクラムやカンパニョーロの上位ホイールではホイールの片面のみラジアル組が採用されます。本製品の場合、前輪はディスクローターと逆側、後輪はディスクローター側がラジアル組となっていました。

ホイールに詳しい人の話では、「ディスクローター分、スポークの長さが左右で変わるので、その均衡を取るためではないか」とのことでしたが、果たしてそれが理由なのかは不明です。

取付

Racing 5 DBに付けていた、RT-MT900を移植。MTB用のXTRグレードのディスクローターです。

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センターロック、外セレーションのロックリングでの取付となります。

タイヤは最初にSCHWALBE PRO ONE(TL)を付けて、その後にIRC Formula PRO S-Light(TL)で運用していました。

TLタイヤの取付に関しては、「ビードを上げる」のはかなり簡単ですが、「ビードを外す」のがかなり大変です。

ハンプを峠に見立てると、ビードを上げる方向の斜度は緩やかなんですが、ビードを外す方向の斜度は激坂です。一度ビードがハンプを越えてしまうと、空気を抜いてもビードがなかなか落ちてくれません。そのため、タイヤを外すのには大変苦労しました。パンク時にタイヤが外れないようにするためにこうしているんだと思いますが、いくらなんでも外れなさすぎだと思いました。

加速性能

さすがに「レーゼロ」なだけあって、ゼロ加速の性能は抜群です。極太アルミスポークの反応性はやはり独特ですね。そして恐らくローハイトのリムもかなり軽いはず。

低速域での加速性能は素晴らしい一方で、高速域(40km/h以上)からの加速はイマイチです。

パワーを掛けても中々40km/h以上のスピードが出ません。空気抵抗なのか、見えない壁に阻まれている感じ。

そんな時にHUNTのホイールに試乗する機会を得たのですが、割と普通に40km/h以上のスピードを出すことが出来ました。ちょっとこの時点でレーゼロカーボンDBの性能に疑問を持ち始めていました。

登坂性能

常に加速を繰り返しているのと同じヒルクライムでも性能を発揮します。

ただ、シッティングで回すと進みますが、スタンディングの場合にはフレームとの周波数が違うというか、ギクシャク感がありました。これはエンデュランスフレームであるINFINITO CVとの相性の悪さかもしれません。

巡航性能

30km/hくらいの巡航では引っ掛かりを感じないのですが、35km/h以上になると抵抗を感じます。

私が弱くなっただけかと思ったんですが、リムブレーキのロードを引っ張り出すとそこまで苦労せずに35km/hまで持っていくことが出来ました。うーむ、ハブはUSBだし、フレームはエアロ形状のはずなのに、なぜここまで巡航に抵抗を感じるのか……?

乗り心地

めちゃめちゃ硬いです。

HUNTと交換試乗した後にレーゼロカーボンDBに戻して感じたのは、「またがってハンドルを持っただけで硬いことが分かる」ということ。沈み込むという感覚とは無縁の剛性です。

Cyclowiredやサイスポのインプレでは「リムブレーキ版よりもスポークテンションを落としマイルドになった」と書かれているんですが、果たして本当でしょうか? たまたま代理店が貸し出している個体がテンション低めで、その同じ個体をCyclowiredもサイスポも使っていたのではないか……と思うくらいには硬いです。リムブレーキ版のレーゼロカーボンと比べても、ガチガチに感じます。

「硬いけど乗り心地は意外と良い」と言いたいところですが、ハッキリ言って乗り心地は良くなかったです。

乗り心地改善の最終手段・チューブレスタイヤを付けても乗り心地は悪く、巡航性能も相まって個人的には100kmが限界だと感じたほど。この点が理由で、ブルベへの投入を断念しました。

見た目

UDカーボンかつグロスコーティング。INFINITO CVの塗装も同様の質感なので、フレームとマッチしていて気に入っていました。最近はマットブラックのカーボンホイールばかりで、グロスブラックのホイールがあんまり無いんですよね。ワンエアーくらいでしょうか。

抵抗の原因考察

高速域での加速の大変さ、35km/h以上の巡航での引っ掛かりの原因を考えてみます。

推測ではあるのですが、「アルミスポークが空気抵抗を産んでいるのではないか?」と思っています。

レーゼロと言えば極太のアルミスポーク。前述のようにラジアル側のスポークの厚みは1.5mm→2.0mmに増えています。そして空気抵抗への影響が大きいと言われる前輪のスポーク数は21本。リムブレーキ版の16本に比べて5本追加されています

ディスクブレーキのホイールの前輪のスポーク本数の相場は24本なので、それに比べたら21本は少ないほうです。しかし、24本スポークの場合は細いステンレススポークが使われているのが普通。21本のアルミスポークというのは、もしかしたら想定以上に抵抗が大きい……という可能性はあります。マビックのR-SYSに乗った人が口を揃えて言う「前輪の空気抵抗が凄い」という感想に通じるものがあるかもしれません。

2008年頃のホイール空気抵抗テストデータ。スポークの材質に注目して見てみるとなかなか面白いです。

参考までに、フルクラムのホイールの前輪におけるスポークの実測スペックを以下に纏めておきます。

幅[mm] 厚み[mm]
アルミスポーク(レーゼロカーボンDB/ラジアル側7本) 4 2
アルミスポーク(レーゼロカーボンDB/クロス側14本) 4 1.5
アルミスポーク(レーゼロカーボン/ラジアル16本) 4 1.5
ステンレススポーク(レーシング3/ラジアル16本) 2 1.2

 

実際、ホビーユーザーでは利用者の多い「レーゼロ」シリーズですが、プロレースの現場で使われているのを見たことはありません。

2016年段階では既にレーゼロカーボンは売っていたはずですが、プロバイクに装着されているのは下位モデルであるレーシングクアトロカーボン。リムハイトもあるのかもしれませんが、アルミスポークはプロレースの現場では見かけないのも確かです。

Equipment…

UCI認証ホイールリストにもレーゼロシリーズは入ってないので、プロレースでは使うことがそもそも出来なそうですね。

まとめ

ゼロ加速性能や登坂性能が素晴らしい高剛性ホイール。ただ、何故か高速域ではあまりスピードが伸びないホイールでした。乗り心地も良くなかったです。

リムブレーキ版とディスクブレーキ版、同じ「レーゼロカーボン」の名を関していても、個人的には全く別のホイールだと感じました。スポークは増え、太くなり、前輪は組み方も変わっています。メーカー側としては同じ乗り味を再現しようとしたのだと思いますが、それは難しかったのかなと。リムブレーキとディスクブレーキでは、同じ名前のホイールでも別物である可能性を考えたほうが良いですね。

HUNTのホイールを手にしてからは全く出番が無くなってしまったため、レーゼロカーボンDBは売却しました。多分、1000kmも乗っていなかったと思います。

単にフレームとの相性が悪かったのか、それとも実際性能的にイマイチだったのか、今となっては分かりませんが、フレームをそうそう追加購入できるわけもないので、持っていても仕方がないと判断しました。次のオーナーの元で活躍してくれればと思います。


ただ、ロード用のディスクブレーキ用ホイールからアルミスポークが徐々に姿を消しているのも確かです。

cyclowired

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MAVICのキシリウムプロと言えば、昔からジクラルスポーク(アルミスポーク)が当たり前でしたが、2021年モデルからディスクモデルはステンレススポークになったようです。

cyclowired

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また、フルクラムの兄弟ブランドであるカンパニョーロの中で伝統的にアルミスポークを採用してきたシャマルも、最新作はステンレススポークに変わっています。アルミリムのシャマルDBはアルミスポークのままですが、本国サイトのラインナップからは既に消されています。ディスクブレーキ用ホイールでアルミスポークが現役なのは、レーゼロシリーズだけということですね。

スポーク本数増加による空気抵抗が理由なのか、それともスポークを伝って制動力を発揮するディスクブレーキならではの強度的な問題があるのかは不明ですが、ディスク時代とは合わないスポークなのかもしれませんね。

評価

対象モデル:  FULCRUM「RACING ZERO CARBON DB」
年式: 2020年
定価: 310400円(税込)
購入価格: 158000円(税込)
公称重量: 1450g
実測重量: 1508g

価格への満足度

8/10

割と安く買えました。

総合評価

6/10

加速・登坂性能は一級品。しかし、それ以外がなんとも微妙。

レビュアー情報

年齢: 36歳 (レビュー執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: QUARK ロードバイク(スチール), GIANT ESCAPE RX(アルミ)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)

# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせて頂きました。


この記事を書いた人
ばる
ロングライド系自転車乗り。昔はキャノンボール等のファストラン中心、最近は主にブルベを走っています。PBPには2015・2019年の2回参加。R5000表彰・R10000表彰を受賞。

趣味は自転車屋巡り・東京大阪TTの歴史研究・携帯ポンプ収集。

【長距離ファストラン履歴】
・大阪→東京: 23時間02分 (548km)
・東京→大阪: 23時間13分 (551km)
・TOT: 67時間38分 (1075km)
・青森→東京: 36時間05分 (724km)