【レビュー】Aeroerastic 「Eyes Saddle」

この記事は約 6分で読めます。

評価:2

Aeroerastic社のサドル。

コンセプトは「快適性の追求」だそうです。一度見たら忘れられない独創的な形状をしています。

目次

購入動機

ブルべ仲間のTrinityさんからお借りしました。

以前からその奇抜な見た目は気になっていたのですが、どうしても乗り心地が想像できず、一度試してみたいと考えていました。かといって購入するには高い(定価29000円)。特に試せる場所も無いということで諦めていました。

そんな折、実際に使っていたTrinityさんからお借りするチャンスを得ましたので、レビュー致します。お貸し頂き、ありがとうございました。

製品概要

実測重量は361.5g。なかなか重め。

レールはカーボン製で、四角に近い断面。レールと一体成型されたサドルベースはV字の形状をしており、その上にクッション付の座面が左右に一つずつ乗った構造をしています。

座面は指で押すと簡単に凹むほどに柔らかく作られています。今まで使ったどんなサドルよりも柔らかいです。低反発ウレタン製とのこと。見た目から座面が上下に稼働するのかと思っていましたが、稼働はしません。しなりもほとんどありません。

使用感

ロードバイクに取り付け、角度を調整しながら10㎞のライド。調整後に更に15㎞のライドを行った結果を述べます。

コンセプト

公式サイトによると、以下がコンセプト。

体重を股間で支える事ではなく、臀部で支え、その臀部が痛くならないようにシートを柔らかくしました。

つまり、股間の痛みや痺れを起こさないために、会陰部に触れる部分を大胆に無くし、その分坐骨が触れる部分を柔らかくしたということ。確かに理屈は通っているように見えますが……。

取付

まず、カーボンレールに対応したヤグラでないと取り付けが出来ません。私はFizikのCyranoを使用しました。

重要なのは、恐らく全てのサドルの中でトップクラスの厚みを持つということ。つまり、普通のサドルから移行した場合には、シートポストを下げる必要があります。

私が普段使っているALIANTEも厚みのあるサドルですが、そこから更に3cmほどシートポストを下げました。普通のロードバイク用サドルを使っていて、シートポストの突出し量が5cm以上無い人はポジションが出ないはずです。

もう一つ難しいのは、サドルの角度。レールを地面と平行にした場合、座面が前傾しているので斜面に座っているような感覚になります。若干前上がりに調整して、私は何とか乗れるようになりました。ポジション出しは他のサドルより難しいはずです。

重量

製品概要に記載した通り、重いです。

昨今のレーシングサドルは軒並み200g以下であり、快適性を重視したサドルでも200g台中盤のものが主流です。本製品は、軽量なカーボンレールとカーボンベースを採用しているにも関わらず300g台という重量です。多分、クッション付の座面がかなりの重量を持っていると推測されます。

当然、ダンシング時には顕著に重さを感じます。

見た目

一目見たら忘れられないインパクトを持っています。

特に座面に書かれた2つの目は自転車自体の印象を変えてしまうほどの破壊力。形状も独特なので、信号待ちで後ろに着いた人に、まじまじと注目されます(バックミラーで見えました)。

Eyesサドルには「Kabuki」「Goemon」という2タイプがあります(本製品はGoemon)。何か仕様に違いがあるかと思ったんですが、座面に書かれている目の形が違うだけのようです。

乗り心地

ロングライド用という位置づけのようですが、結論から言えば私は20㎞ほどで音を上げました。

まず座面ですが、触ると柔らかいにもかかわらず、座ると硬く感じます。感触としては、「フェンスの上に腰かけてる」感じ。角度を変えたりと試してみましたが、やはりすぐに坐骨が痛くなってしまいました。理由は分かりませんが、やはり接触面の少なさが影響しているのかと思います。

普通、サドルというのはノーズからテールまでの座面全体で重量を支えますが、本製品は真ん中から先がバッサリ切り落とされています。

ある面に掛かる圧力は、面の広さに反比例します。本製品のように坐骨しか触れないような場合は、当然坐骨に掛かる圧力は高まるわけです。

本製品は座面を柔らかくすることでそれを回避しようと考えたようですが、それだけではカバーし切れていないと感じました。確かに会陰部のトラブルを避けるという目的は達成されていますが、その分のツケは坐骨に回ります。

坐骨の痛みを回避するには、なるべくサドルに荷重しないように走るしかありません。サドルから若干腰を浮かせるような感じで、ペダルに荷重を掛けるように走ればそれなりに長い距離は行けそうです。本来的にはロードバイクのサドルの座り方はこちらの方が正しいので、意識付けのための矯正用具としては良いかもしれませんね。

もう一つ長時間使えなかった理由として、「左右の座る位置が割とズレやすい」という点が挙げられます。普通のサドルは、ノーズ部分や座面の湾曲など接触面が多いので、座る位置が左右に少しでもズレると違和感があるものです。しかし本製品は接触面が少ないため、気づくと座る位置が左右にズレていることがありました。今回は乗った距離が短かったので違和感程度でしたが、長距離乗ると膝へのトラブルが出そうな感触がありました。

なお、ノーズ部分は基本的に何の仕事もしません。カーブを曲がるときに太ももを安定させる時だけ出番があります。

その他

ちょっと謎なのが、この「エアロエラスティック社」。最初は海外で作られたものを輸入しているのかと思ったのですが、どうも日本の会社が製造・販売を行っているようです。

海外では韓国で売られていた程度で、他の国では売られている様子はありません。

あわせて読みたい

公式サイトの構造解説のページでは、特徴が5点上げられています。4点目までは良いとして、最後の5点目。「自分に合ったサドルの位置を自由に調整」。あまりにも当たり前のことを強調されており、この会社はサドルについての知識があまり多くないのではないかと言う印象を受けました。

まとめ

会陰部のトラブルを避けるという目的は達成されています。

ただ、単純に会陰部のトラブル回避ならば、普通の穴空きサドルの方がデメリットが少ないと思います。あまりにも構造が独特であるため、私にとってはメリットよりデメリットの方が大きかったです。

長い距離を乗ることに関しては、乗り手次第ということになりそうです。サドルに荷重をあまり掛けずに走れる人ならばトラブルは出にくいはずです。逆に、サドルにどっかり座ってしまう人は早い段階で限界を迎えるはずです。

いきなり買うには値段が高いので、どこかで試せる場所があれば良いのではないかと思います。ただ、テストサドルをやっているという話は聞きませんし、発売から3年経っても特に新製品情報も無いので、そこまでする気は無いのかもしれません。

created by Rinker
AEROELASTIC
¥19,580 (2024/09/20 20:05:22時点 Amazon調べ-詳細)

評価

対象モデル:  Aeroerastic「Eyes Saddle」
年式: 2016年
定価: 29000円(税込)
購入価格: (借り物)
公称重量: 398g
実測重量: 361g

価格への満足度

借り物のため評価対象外。

総合評価

4/10

会陰部のトラブル回避と引き換えに失うものが多い。

レビュアー情報

年齢: 32歳 (レビュー執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: QUARK ロードバイク(スチール), GIANT ESCAPE RX(アルミ)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)

# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせて頂きました。

記事のシェアはこちらから
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

ロングライド系自転車乗り。昔はキャノンボール等のファストラン中心、最近は主にブルベを走っています。PBPには2015・2019・2023年の3回参加。R5000表彰・R10000表彰を受賞。

趣味は自転車屋巡り・東京大阪TTの歴史研究・携帯ポンプ収集。

【長距離ファストラン履歴】
・大阪→東京: 23時間02分 (548km)
・東京→大阪: 23時間18分 (551km)
・TOT: 67時間38分 (1075km)
・青森→東京: 36時間05分 (724km)

目次