【レビュー】APIDURA「SADDLE PACK (COMPACT)」

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評価:4

大型サドルバックの新星、Apiduraの大容量サドルバッグです。Regular(17L), Medium(14L), Compact(11L)の3サイズを展開しており、今回レビューするのは最小サイズのコンパクトになります。

目次

購入動機

geared.jp(サイト消失のためリンク削除)の記事で紹介されてから気になっていました。良いな、と思ったポイントは以下です。

・比較的安価(直販で12000円程度)
・比較的軽量(実測: 310g)
・バンジーコードが標準装備
・ライトマウントが標準装備
・反射材が多く使われている
・地面に対して水平方向というよりは垂直方向に伸びる
・入手性が良い(納期が早い)

基本的な構造は先発の大容量サドルバッグ(Revelate Designs、Oveja Negra等)と一緒ですが、細かい点がブラッシュアップされているな、と。

そうこうしているうちに国内取り扱いが開始されました。そんな時、国内代理店のAlternative Bicyclesさんからモニターのお話が。とても興味があったので、快諾しました。サイズは軽量性を重視して、最も小さいCOMPACTです。

製品概要

実測重量は310g。公称が350gなので、40gほど軽いです。容量は最大11Lで、最小容量は記載されていません。カラーはグレーのみ。

メイン素材はDimension-Polyant VX21。大容量サドルバッグではおなじみの素材で、Revelate Designsもよくこの素材を使います。

自転車への固定は、サドルレールへのベルト2箇所と、シートポストのベルト1箇所、計3箇所で行います。これも大容量サドルバッグでは定番の形式です。シートポストベルトは他社に比べると長めかつ、柔らか目の素材が採用されています。

バンジーコード。輪行袋を括り付けたり、濡れたレインウェアを乾かしたりと、色々な用途に使えます。これがあると便利。

ライトマウント。2箇所付いています。

反射材が多く使われているのも特徴です。ベルトにまで反射材が使われているのは安全性への配慮を感じます。

使用感

BRM914群馬200上毛三山(200km/4000m↑)のブルベで使用しました。いわゆる山岳ブルベです。比較対象はこれまで使ったGearjammer(Oveja Negra)、Ermine(Revelate Designs)です。

容量

今回の200kmブルベでは上の装備を入れて使用しました。200km程度ではここまでの装備は必要ないんですが、600kmブルベでも違和感なく使えるかを確かめたかったので、あえてフル装備で走ることに。

これだけ入れても、この余裕っぷり。

最小と最大の比較図。かなり垂直方向に伸びます。

使いやすさ

ロールアップの口は2箇所で固定。荷物を出し入れするロールアップの口は大きく、出し入れはしやすいです。

少し気になるのは、シートポストへの密着性の高さゆえの、太腿との干渉でしょうか。私が極端に後ろ乗りなので、これは仕方ないと言えば仕方ないかもしれません。ただ、太腿に触れるたびに、若干動いてしまうのはマイナスです(原因は後述)。

バンジーコードは、脱いだウェアや輪行袋などを一時的に取り付けておけるので便利です。ペットボトルの飲み物などを固定するのもアリ。ただ、最大容量まで詰め込んだ場合、バンジーコード部分にモノを括り付けると、尻と干渉するかもしれません。後ろ乗りの人は注意。

防水性

完全防水ではありません。防水のスタッフバッグは必須です。

安定性

前述のように、Apiduraのサドルバッグは垂直方向に伸びます。

同じ大容量サドルバッグであるRevelate Designsと比べてみると設計思想の差が解りやすいと思います。シートポスト取付ベルトを従来よりも上側に付けることにより、シートポストに沿って垂直方向に伸びる設計。水平方向に伸びる他社製品に比べて、ダンシング時やダウンヒル時の慣性モーメントが小さくなります。これは、荷物を入れれば入れるほど顕著に体感出来ます。サドルバッグに「持っていかれる」感は明らかに少ないです。

惜しいのは、Apiduraのサドルバッグはサドル・シートポストへの固定力が他社製品より弱い点です。「回転した時の慣性モーメントは小さくなる」設計をされているのに、「回転しにくくする」設計が足りていないと感じます。その原因は2点あると考えています。

1点目は、シートポスト設置面に滑り止め加工がなされていないこと。左からApidura、Oveja Negra、Revelate Designsの設置面の写真です。他社製品2つには滑り止めの加工がされているのに対し、Apiduraには特に何の加工もされていないのが解ります。アレだけ軽量に振っていて、内部のシェルすら除去したErmineですら滑り止めだけは除去していないことからも、大容量サドルバッグの固定における滑り止めの重要性は明らかです。

私は、ショルダーバッグのベルト用の滑り止め防止シールを貼ることで対策しています。

2点目は、サドルレールに取り付けるベルトの長さ。Oveja Negraと比べて長く、最大まで締めこんでもサドルへの密着度がやや低いのです。もっともこれは、色々なレール形状に対応するための策なのかもしれませんが。

この2つの原因によって、シートポストを中心としてサドルバッグが回転しやすくなってしまっています。「回転しにくくする」対策が取られれば、より一層サドルバッグの安定感は増すと思います。

その他

バンジーコードの拡張性は便利なのですが、底部分にも拡張性があればもっと良いと感じました。これは軽さとのトレードオフでしょうか。

あと、先端がシートステーに接するという形状であるためか、取り回しによってはリヤブレーキのケーブルアウターと接触するのが気になるところです。バイクとの相性があるかもしれません。

まとめ

後発の強みを生かして従来品より多機能になっていますが、従来品と比べて基本的な部分に惜しい面が見られる印象です。まだまだスタートしたばかり(恐らく2013年創業)のブランドなので、今後洗練されていくのだと思いますが。

なお、シートポスト設置面の滑り止めと、サドルレール取り付けベルトの長さに関する要望は、国内代理店を通してApidura本社に提出済みです。必要と判断されれば改善されることと思います。


国内ブルベ界隈を見ても、Apiduraの利用者は増えてきているようです。入手性が良く、多機能な大容量サドルバッグとして頑張ってほしいブランドです。

評価

対象モデル:  APIDURA「SADDLE PACK (COMPACT)」
年式: 2014年
定価: 16376円(税込)
購入価格: モニター提供
公称重量: 350g
実測重量: 310g

価格への満足度

モニター提供のため、評価対象外。

総合評価

8/10

安定性以外は理想的。

レビュアー情報

年齢: 30歳(レビュー執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: QUARK ロードバイク(スチール), GIANT ESCAPE RX(アルミ)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)

# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせて頂きました。

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この記事を書いた人

ロングライド系自転車乗り。昔はキャノンボール等のファストラン中心、最近は主にブルベを走っています。PBPには2015・2019・2023年の3回参加。R5000表彰・R10000表彰を受賞。

趣味は自転車屋巡り・東京大阪TTの歴史研究・携帯ポンプ収集。

【長距離ファストラン履歴】
・大阪→東京: 23時間02分 (548km)
・東京→大阪: 23時間18分 (551km)
・TOT: 67時間38分 (1075km)
・青森→東京: 36時間05分 (724km)

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