【レビュー】APIDURA「SADDLE PACK DRY」

評価:4

APIDURAから登場した防水サドルバッグ。生地同士を縫うのではなく、溶着させることで高い防水性を実現しています。

通常のサドルバッグはCOMPACT/MEDIUM/REGULARの3サイズ展開ですが、防水版は9Lの1サイズ展開です。

購入動機

これまで、私は数々の大型サドルバッグを使ってきました。

・SUEW – Rera
・Revelate Designs – Ermine
・Oveja Negra – Gearjammer
・APIDURA – Saddle Pack Compact
・KS Ultralight gear – Saddle Pack SP16

共通しているのは、「完全防水ではない」という点です。生地自体は防水ではあるので多少の雨は防げますが、縫い目はシーリングされていないので本格的な雨では浸水します。割とこのことは知られておらず、中身が濡れてから気付く人も多いとか。

この手の大型サドルバッグの考え方は登山におけるパッキングの考え方を元にしており、「防水の内袋で中身を守る」ことが基本となっています。だから、外側(=サドルバッグ本体)は防水でなくても構わないということです。

しかし、完全防水のオルトリーブのサドルバッグが浸透している日本のロングライド界隈では、中々この事がネックとなっているようです。何も考えずにバッグの中にモノを突っ込める楽さを知っているので、いちいち内袋に入れるのが面倒であると。私もその一人で、内袋を使うのには抵抗がありました。

「防水の大容量サドルバッグが出たら人気が出るだろうなぁ」と思っていたら、APIDURAがリリースしたというニュースが入ってきました。これにはちょっと驚きました。幸運にも、今回も国内代理店を務めるAlternative Bicyclesさんよりモニターのお話を頂きましたので、二つ返事でやらせて頂く事にしました。

製品概要

実測重量は297g。公称は326gなので、実測はかなり軽いということになります。縫製→溶着にしたことで軽量化されたのだと思います。容量は9L。

素材は、より防水性の高いTPUハイパロンという素材に変更されています。手触りとしては、二年ほど前に素材が新しくなったオルトリーブのサドルバッグの生地に似ています。

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自転車への固定方式は通常モデルと変わらず。サドルレールに2本、シートポストに1本のストラップで固定します。

脱いだジャケット等を一時的に留めておけるバンジーコードも装備。テールライトを付けられるライトマウントも付属しています。

使用感

400kmブルベと200kmブルベに連続で参加して使用しました。400kmブルベのラスト10km、200kmブルベのスタートから40kmは雨に降られました。なお、たびたび比較に出てくる通常版のレビューは以下です。

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容量

大きさを比較すると、通常版のCOMPACTとサイズは変わりません。

しかし、通常版よりも容量は減っています(11L→9L)。恐らくですが、水の浸入を防ぐために、ロールアップ(巻き込む)回数を多く見積もっているのではないでしょうか。サドルバッグの口を締めるだけなら2巻きもすれば可能ですが、防水性を考えると3~4巻きはしたいところ。その分で2Lの容量差が出ているのだと思います。

大容量サドルバッグとしては小さめの容量ですが、それでもオルトリーブのサドルバッグLの倍はモノが入ります。

使いやすさ

使い勝手は基本的に通常版と同じ。ロールアップの口は大きく、中の荷物の出し入れのがしやすいです。

内部の様子。不要なでっぱりもなく、容量一杯に荷物が入ります。中の黄色い部分はクッション状になっていますが、防水性を高める工夫?中を見やすくするため?意図はちょっと分かりません。

バンジーコードも健在で、雨上がりにレインシューズカバーをここに付けて置いたら乾きました。乾燥に適しています。

防水性

届いたその日に早速、水攻めにしました。シャワーで水を一分間、あらゆる方向から掛け続けました。

サドルバッグを開けて確認。中身の古雑誌の切れっ端で、濡れていたものはありませんでした。

また、ブルベでの実走においては50kmの距離に渡って雨に降られましたが、中にそのまま入れておいたレインウェアは濡れずに無事でした。防水性は本物のようです。ただし、3~4回ロールアップしたことを述べておきます。ロールアップ回数が少ないと、隙間から中に水が入り込んでしまう可能性があるので注意。

防水なので、脱いだジャケット等をそのまま突っ込んでおいても雨で濡れる心配が無いのが良いですね。従来は、内袋に畳んで入れるという手間があったので……。

安定性

通常版と同じく、ここはやはり本製品のネックだと思います。

通常版のレビューでも書きましたが、APIDURAはシートポストとサドルバッグが触れ合う面に滑り止めが設けられていません。そのため、シートポストを中心に、サドルバッグが左右に回転してしまうのです。この点については通常版のモニターレポートでも記載し、代理店経由で本国に報告しました。しかし、今に至るまで滑り止めはついておりません。不要と判断されたということでしょう。

確かに、ある特定のシチュエーションにおいては、滑り止めがなくても安定させることが可能です。その条件は以下。

・サドルバッグの底がシートクランプよりも上に来ること
(シートポストの突き出し量がそれだけあること)

その理由は、以下の2つの写真を見ていただくと解りやすいと思います。

上はAPIDURA、下がRevelate Designsです。APIDURAは底が長く上方向に伸び、Revelateは底が短く後ろ方向に伸びる形状をしていることが解ると思います。この底の長さが厄介なのです。

シートポストとの接点が動かないようにするには、滑り止めを付けるのが一番手っ取り早いのですが、本製品には滑り止めが付いていません。となると、滑らないようにするには「接触面積を増やす」必要があります。接触面積が増えれば、面の摩擦係数が小さくても摩擦力を稼げますので。

しかし、普通は中々ぴったり接触させることは出来ません。何故ならシートクランプがあるからです。シートクランプが出っ張っているので、サドルバッグとシートポストが面同士で接着しないのです。

昨今のエアロロードで採用されているようなシートクランプであれば出っ張らないので問題はありません。上記写真はSCOTT FOILの例。ついでに書くと、エアロシートポストでも、サドルに巻くストラップの長さは十分足ります。

サドルバッグの底がシートクランプと接触しないほどにシートポストの突き出し量があれば問題は無いでしょう。ただ、日本人でこれほどシートポストを出せる人は限られるはずです。日本よりも平均身長が7cmも高い本国(イギリス)では、それくらいシートポストが出ている人が多いので問題ないと判断されているのかもしれません。

私はシートクランプの出っ張り部を前に回し、更にシートポストに滑り止めを貼るという対策を取っています。これでかなり回転しにくくなりました。ダンシング時や、ダウンヒルのカーブでも、サドルバッグだけが独立して動いてしまうことはありませんでした。

通常版から良くなった点も挙げておきます。シートポストとの接触面にプラスチックと思われる強化が入りました。これにより、シートポストとの接触面が潰れて、サドルバッグの後ろ側が垂れ下がってしまうことを防ぐようになっています。

通常、この手のサドルバッグは、バッグの中にギチギチに荷物を入れ、外に膨らもうとする圧力で形状を保つ構造を取っています。そのため、いい加減に荷物を入れると形状を維持できませんでした。その点、本製品は強化が入ったので、雑に荷物を突っ込んでも大丈夫。地味ですが嬉しい変更点です。

その他

カラーリングについて、通常版は灰色でしたが、本製品は黒っぽくなりました。私の自転車は黒基調なので、より見た目の一体感が上がりました。

まとめ

通常版に比べて2000円ほど値段は上がりましたが、機能性は大幅に向上しています。

より軽量に、かつ防水に。完全防水の大型サドルバッグはあるにはありましたが(RevelateのTerrapin等)、容量の割に重量がある(大体500g以上)であることがほとんどでした。実測300gを切りながら、防水を実現させたのは凄いですね。

「完全防水の大型サドルバッグ」は潜在的需要は大きいはず。本製品がヒットすれば、他メーカーも追随するかもしれません。

あとは、やはり安定性だけ改善していただければ完璧なのですが……。やはり容量が大きいほど、内容物は重くなり、左右に振られたときの慣性は大きくなります。これが結構気が散るのです。

底が長いのは設計思想的に変えられない部分だと思うので、シートポストがあまり出ていなくても安定させるための滑り止めの設置を改めて要望します。

 

評価

対象モデル:  APIDURA「SADDLE PACK DRY」
年式: 2016年
定価: 18400円(税込)
購入価格: モニター提供
公称重量: 326g
実測重量: 297g

価格への満足度

モニター提供のため評価対象外。

総合評価

8/10

完璧な防水性。安定性が改善されれば更に○。

レビュアー情報

年齢: 31歳(レビュー執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: QUARK ロードバイク(スチール), GIANT ESCAPE RX(アルミ)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)

# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせて頂きました。