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【実験】CATEYE Volt800は「一定光量」か「ダラ落ち」か
先日、面白いサイトを見つけました。「市販のライトをガチでスペック測定する」サイトです。
自転車用ライトをメインに、撮影機材用のライト、水中用のライト、アウトドア用のライトと、合計200種類以上のライトのスペックを測定しています。
このサイトを運営しているのは、「Light & Motion」というライトメーカーです。
ライトメーカーだけあって、専門の機材(積分球)を使ったルーメン測定(普通の家庭ではまず不可能)を行っています。
そこで普段愛用している「CATEYE Volt800」のスペックを見てみたところ、実に意外なことが書かれていたのです。
私はVolt800をブルベでも愛用しています。愛用しすぎて既に5本持ちです。それゆえ、「意外なこと」の理由を追求したくなり、実験を行うことにしました。
本記事では、Volt800のライトの明るさの変化について実験した結果を述べます。
意外だったこと
まずは以下の画像を見てください。「We Test Lights」サイトに掲載されている、Volt800のスペック測定結果です。
横軸が時間、縦軸がルーメン(明るさ)を表しています。見ての通り、右肩下がりのグラフになっています。これはつまり、「時間が経つにつれて暗くなる」ということを表しています。
これが私にとっての「実に意外なこと」です。
以前、照度計を購入した私がまず行ったのが、手持ちのライトの照度測定でした。満充電の時の照度はもちろん、1時間ごとに照度の変化を測定しました。
その結果、CATEYEのVolt800は「時間が経っても照度が変化しない」ことが分かりました。
正確な測定結果ではありませんが、こうなるはずなのです。We Test Lightsの実験結果と真逆です。
実験前提の違い
なぜ2つの実験で結果が真逆になったのか?
その理由の一つは実験の前提の違いにあるのではないかと考えました。
前提の比較
以下に、私の実験とWe Test Lightsの実験の前提の違いを示します。
・測定単位は照度(ルクス)
・ローモード(公称200ルーメン)を測定
・測定単位は光束(ルーメン)
・ハイモード(公称800ルーメン)を測定
単位の違い
ルクスとルーメンの違いは、下記サイトが分かりやすいので参照してください。
ルクスについては数千円の照度計で簡単に測定が出来ます。私の家にもあり、それで実験をしました。
一方、ルーメンは専用の機材(積分球)が必要です。測定環境をそろえようと思ったら、数十万~数百万円掛かります。一般家庭ではちょっと無理ですね。
モードの違い
私はブルベで使うことが多いローモードでの測定を行いました。ミドルモード以上は結構な発熱があり、静止状態で点灯するのが怖かったのも理由です。
一方、We Test Lightsはすべてのライトを一番明るいモードで測定することに統一しているようです。Volt800では、一番明るいハイモードを測定しています。
仮説
ここで一つ仮説を立てました。
「Volt800は、モードによって、”ダラ落ち”・”一定光量”を分けているのでは?」
「ダラ落ち」「一定光量」は正式な用語ではありませんが、自転車乗りの間ではしばしば使われるワードです。
私は、Volt800を「一定光量」のライトと信じて使ってきましたが、どうもハイモードでは「ダラ落ち」側ではないかという疑惑が出てきました。
これを検証してみます。
再実験
Volt800を対象に再実験を行いました。
実験方法
実験方法は以下の通りです。
- ライトを壁から1mの距離に置く。
- 照度計を壁に密着させ、一番明るい場所の照度を記録する。
- 満充電時に最初の測定を行い、その後一定時間ごとに測定を行う。
- 測定対象のモードは「ミドルモード」「ハイモード」とする。
ローモードは以前実験を行い、満充電時と8時間後(公称ランタイム)で照度が変化していないことを確認済みです。
今回は、実験していないミドルモード・ハイモードを実験します。
なお、ミドル以上のモードは走行風で冷えることを前提としているのか非常に熱くなるので、扇風機で冷却しながら実験を行いました。
測定結果: ミドルモード
ミドルモードの測定結果です。
経過時間[min] | 明るさ[lx] |
---|---|
0 | 3170 |
60 | 3060 |
120 | 3120 |
150 | 3120 |
180 | 3140 |
ミドルモードの公称ランタイムは210分なので、ここで測定をやめました。
照度計の測定は1mmズレただけで結構値が変わるので、数十ルクスの差は誤差と考えてよさそうです。
結果から、「一定光量である」と判断しました。もちろん、ある一点の測定なので、周辺の照度が減っている可能性はありますが。
測定結果: ハイモード
ハイモードの測定結果です。
経過時間[min] | 明るさ[lx] |
---|---|
0 | 5800 |
30 | 4930 |
60 | 3920 |
ライトがかなり熱くなっていたので、ここで測定終了。
結果から、「ダラ落ちである」と判断しました。We Test Lightsの結果は間違っていなかったということになります。
考察
なぜモードでわざわざ方式を変えているのか?
電子工学科卒のクセにSEになってしまい、今やすっかり電気の知識が無い自分には良く分からないので、以下は完全に「推測」としてお読みください。
一定光量を保つためには、定電圧回路を入れる必要があります(「LEDなら定”電流”じゃ?」とも思うのですが、CATEYEのサイトには定電圧の文字あり)。
定電圧回路は読んで字のごとく「電圧を一定に保つ」ための回路です。電圧を一定に保つことでLEDの明るさを保つわけですが、この定電圧回路を動作させるにも一定以上の電圧が必要となります。
恐らく、定電圧回路を入れてしまうと、電池の能力的にすぐに消灯してしまうのではないでしょうか。だから、あえて定電圧回路を通らないようにしているとか? 回路を見たわけではないので完全に推測ですけども。
結論
結論は、
「Volt800は、ハイモードはダラ落ち、ミドルモード・ローモードは一定光量」
と言うことになりました。
ミドルモードやローモードでも、赤ランプが点灯(電池残量10%以下)すると、徐々に暗くはなりますが、それまでは一定光量を保ちます。
しかし、ハイモードでは、点灯開始からどんどん暗くなっていくようです。今回は計測しませんでしたが、ハイモードで1時間半経過すると、ミドルモードと変わらない照度まで低下するはずです。
そういえばVolt800を電池残量が少ない状態で使っていた時、何故かハイモードに入らなくなったことがありました。あれは「ハイモードに入っていない」のではなく、「ハイモードに入っても、ミドルモードと明るさが同じなので切り替わったように見えなかった」ということだったと思われます。
まとめ
これまで一定光量だと信じて使ってきたVolt800は、モードによってはダラ落ちであることが分かりました。
ここからは推測ですが、Volt700やVolt1200といった、CATEYEのハイエンド機種も恐らく同様ではないかと思います。以前測定した限りでは、Volt1200のローモードも一定光量を保ちました。
しかし、We Test Lightsの測定結果によると、ハイモードでは1時間を超えたあたりから暗くなり始めています。Volt800と同じように、ハイモードはそれより暗いモードと比べて制御の方法を変えているのかもしれません。
なお、Volt400やVolt300といったカートリッジ式のエントリーモデルは全モードがダラ落ちです。これは以前実験しました。
よくよく考えてみると、CATEYEって一定光量のライトには、わざわざキャッチコピーで「一定光量ライト」であると書くんですよね。CATEYE HL-EL540(エコノムフォース)や、「CATEYE GVolt70」には以下のキャッチコピーが書かれています。
「定電圧回路を内蔵し、インジケータの点灯間際まで明るさがほとんど変わらない一定光量ライト」
「We Test Lights」にも、Gvolt70ではありませんが、同じくドイツ向けに開発された製品である「Gvolt80」のデータが掲載されています。Gは「Germany」のGで、ドイツの厳しい道路交通法(StVZO)向けに特化した設計になっています。
以下がそGVolt80グラフです。
見事なまでの一定光量ライトですね。このことから考えると、CATEYEは、一定光量を保つライトには、ちゃんと「一定光量」と宣言をするようにしていると思われます。それが書いていないライトは、モードによってダラ落ちの可能性アリなのかもしれません。もっとも、中々ハイモードを使う機会は無いのですが。
ハイモードを使う方は、「実は徐々に暗くなっている」ことに注意して使用されることをオススメします。
レビュアー情報
年齢: 35歳 (レビュー執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: QUARK ロードバイク(スチール), GIANT ESCAPE RX(アルミ)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)
# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせて頂きました。