この記事は約 7分で読めます。
【レビュー】Ergon「TP1 (シマノ SPD用)」
評価:4.5
Ergonのクリート調整用ツール。ビンディング各種のクリートに合わせたモデルがありますが、今回レビューするのはSPD用のものです。
購入動機
一時期、ブルベ中に右足の違和感を感じることが多くありました。
左右のシューズ位置の違い
その時期の300kmブルべ中、ふと下を見たところ、あることに気づきました。明らかに右側のシューズが、左側よりも外に出ているのです。上から見たときに見えるペダル軸の長さが左右で違う。見たところ2-3mmでしょうか。いわゆるQファクターが左右で違うと言うことになります。
以前は左右対称にしていたはずなので、これはおかしい。シューズを裏返して眺めてみても、場所的には同じところに付いているように見えます。なのに、ペダルと接続するとズレるのです。
どちらがズレているのかは分かりませんが、問題が出ているのが右足なので右側のクリートを少しズラすことにしました。
結果としては、これが正解でした。痛みが出ることなく300㎞を走りきることが出来たのです。
シューズの個体差
この出来事から疑い始めたのは、シューズの個体差です。
シューズの裏には靴底が貼り付けられており、そこに位置の目安となる目盛りが印刷されていることが多いもの。ほとんどの人は靴底&目盛りとの位置関係でクリート位置を再現していると思います。
しかし、靴底の取り付け位置も、目盛りの印刷位置も、考えてみればそれほど精度が高い保証は無いわけです。
恐らく、シューズを新しくしたときに、古いシューズと同じ位置にクリートをセットしたつもりが、実は個体差によってズレてしまっていたのでしょう。
そこで思い出したのがこのErgonのツールです。早速、SPD用のものを買って試してみることにしたのでした。
製品概要
材質はプラスチック。各社のクリート型の立体的な穴が開いているシンプルなつくりです。
使わない時は、折りたたんで収納可能。
使用感
SPDシューズのクリート位置決定に使用しました。
ブルべ中に即席で合わせた位置で不満は無かったのですが、折角なのでこの機会に一度完全に左右対称な位置に揃えて見たかったのです。何か問題が出たら後から調整するつもりでした。
使用準備
付属の英語マニュアルを読み、まずは使用前の準備を。
付属のシールを、「親指側の一番出っ張っている場所」「カカトの中心位置」に貼るのが最初のステップ。
親指側の一番出っ張っている位置。つまり、よく言われる母子球の位置ですね。
カカトの中心。これもシューズの模様を見て合わせがちなんですが、実際に履いて出した位置で合わせたほうが良いです。
しかし、この写真を見ても左右で靴底の位置がずいぶんズレていることが分かりますね。明らかに靴底の切り欠けの位置が左右でズレているのがお分かりでしょうか?
これを基準にしてクリート位置をセットしてもズレるのは当たり前ですね。
セット
シューズを脱ぎ、本ツールにセットします。この時、クリートが動くように少しネジを緩めておく必要があります。
まず、クリートの前後位置の調整。具体的には母子球の基準に前後位置を決定します。
「親指側の一番出っ張っている所」にシールを貼ってマーキングをしたわけですが、マニュアルには「それよりも少し後ろの位置にクリートの中心が来るように」合わせる旨が書かれています。これは、「足の指の関節は足の向きに対して直角ではなく斜めに並んでいる」からであると説明されていました。小指側に行くほど、指の関節の位置は後ろに行くわけです。
私は、マーキングの位置から約2mm程度後ろにクリートの中心線が来るように設定しました。
次に、Qファクター(クリートの左右位置)の調整。マニュアルでは狭くすることを推奨していましたが、今回は調整前の左足のクリート位置に合わせることにしました。やや広めのQファクター設定です。
ここで気づいたのは、アッパーと靴底のズレ。上から見たときにペダル軸の長さが左右同じになる(Qファクターが左右同一)になるようにセットしたんですが、靴底は右側の方が2mmほど内側に入っていました。つまり、Qファクターを左右同一にしたければ、右側のシューズだけ2mmほど外側にクリートを移動させる必要があるということです。
最後に、角度を合わせます。
人間の足は自然な状態では爪先が微妙に外側を向くことから、そのような向きになることを推奨する旨がマニュアルには書かれていました。カカトに貼ったシールと、ツール上の太線(クリートの左右中心線)を基準に、角度を調整します。私はいつも通り、少し爪先が外側に出る(カカトに貼ったシールが若干内側に入る)セッティングにしました。
固定
クリートの位置が決まったら、固定します。机の端から本ツールを半分だけ外に出し、裏側からアーレンキーで締めこみます。シューズが自重で動かないようになっているので、確実に固定出来ると。頭いい。
シューズに貼ったシールを剥がしてセッティング完了です。本来は剥がさない方が位置の再現のためには良いのでしょうが、さすがに目立つので……。靴底に母子球の位置&カカトの位置をマジックペンなどで書いておけば代用出来そうでもあります。
これが左右対称にセッティングしたクリート位置。靴底を基準にしているとズレて見えますが、アッパーとペダルを基準にすればこれが左右対称なのです。靴底のズレが如何に大きいかが視覚化されました。
実走
実の所、ブルべ中に調整した後のクリート位置と大して変わりませんでした。もちろん違和感は無し。一応、300㎞ブルベを走って違和感の出なかった位置が正しかったと言うことが確認できたのは良かったです。
これまで使っていたシマノのシューズでは、靴底を基準にクリート位置を決めても問題は出ませんでした。今回はたまたま左右の誤差が大きい個体に当たってしまったということなのでしょう。運は悪かったですが、勉強になりました。
まとめ
クリートの位置を客観的に決定でき、また保存・再現が容易になるツールです。
クリートとペダルの位置関係って、割と分かりにくく、クリートを動かしたのと逆方向に(ペダル取り付け時)シューズが動くんですよね。このツールを使うと、逆方向に動くとか考えることなく、シューズを動かすだけで直感的に位置決定が行えるのも良い点です。
人間の体は左右差があるもので、突き詰めていくと左右のクリート位置を変えないといけない場合も多いもの。
ただ、その基準となるのは左右対称となるクリート位置で、そこが揺らいでいてはダメなはず。基準位置をしっかり出せると言うのは大事なことなのだと感じました。
もちろん、本ツールにも誤差はあるはずなのでそこは留意する必要があります。専用のツールとして売っている以上は、多少は精度に自信がある……ということだと思いたいですが。とりあえず、サドル上に座って目視する限りでは左右差は起きていないように見えました。少なくとも靴底のようにミリ単位でズレていることは無さそうです。
また、もう一つの利点は、シューズを買い換えたときにクリート位置の再現が容易になる点でしょう。シューズが違うとクリート位置も探り直しになりますが、このツールがあれば最小限の手間で済みます。複数シューズを使い分けている場合も同様。
また、同じ型のシューズでも個体差があるわけですが、その影響を考えずにクリート位置を再現することも可能です。
今回レビューしたのはSPD用ですが、SPD-SLやスピードプレイ用、KEOやクランクブラザース用もあります。使うペダル種類が決まっていて、毎回セッティングに悩む方にはおすすめのツールです。
評価
対象モデル: Ergon「TP1 (シマノ SPD用)」
年式: 2018年
定価: 4180円 (税込)
購入価格: 2764円 (税込)
価格への満足度
少し高い気もするが、ポジションで悩むことを考えると安い。
総合評価
シューズを変える際のポジション再現に無くてはならないツール。
著者情報
年齢: 36歳(執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: BIANCHI OLTRE XR4(カーボン), QUARK ロードバイク(スチール)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)
# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせて頂きました。