【実験】 アルミリムの摩耗による重量減

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リム摩耗によるアルミホイールの重量変化の話です。計算してみてちょっと驚いたので紹介します。

目次

実験動機

2010年のEURUSのブレーキ面が摩耗してきたこともあり、2013年のユーラスに買い替えました。

レビュアーなら真っ先にやるのが重量測定。しかし、そこで驚きの結果が出ました。

2010年版→ F: 610g, R: 890g (3年使用後)
2013年版→ F: 640g, R: 895g (新品)

重くなっている……

ホイールの軽量化のペースは恐ろしく速く、シマノのC24-9000は既に1400gを切ってきています。それなのにまさかの重量化。

手で持ってみても、2010年版の前輪は明らかに2013年版より軽いことが分かるほどです。

2013年版は不良個体なのか?と思って公称重量を調べてみました。

 公称重量→ F: 643g, R: 857g

これは3年間で変わっていません。後輪が公称重量より重いのはフリーのせい。

シマノフリーはカンパフリーより約40g重くなっています。数値を見ると、もっともらしい差となっています。

注目すべきは前輪の重量で、「重量化した」と感じた2013年版は公称重量より軽かったのです。つまり、2013年版は正常、2010年版が軽すぎるということになります。

更に、2010年版購入当時の重量測定データが出てきました。mixiの記事、当時はよく書いていたなぁ……。

 2010年版→ F: 620g, R: 894g (購入時)

元々前輪は公称より軽かったのですが、4年の間に前輪が10g、後輪が4g軽くなっています。

計測器自体の精度は怪しいのですが、2010年の購入時と現在は同じ計測器を使っているので、軽くなっていることは間違いないはずです。

仮説

なぜホイールは4年間の間に軽くなったのか?普通に考えれば、「リムの摩耗によるもの」でしょう。

しかし、リム面が多少削れたくらいで5gも10gも軽くなるものでしょうか。アルミ粉が多少削れても、感覚的にはそこまでの差はないと思えます。

イメージしやすく、1円玉(1g)で考えてみると、5枚から10枚ほどが摩耗によってなくなっていることになります。そう考えると結構恐ろしいですね。

ただ、他の要因で軽くなることは考えにくい(グリスの量とかはあるかも)ので、「摩耗によって軽くなった」と仮定して計算してみることにしました。

実験条件

実験の前提条件です。

使用状況

使用状況を示します。

ホイール Campagnolo EURUS 2way-fit 2010
使用期間 2010/05~2014/01 (3年9ヶ月)
使用距離 約40000km
使用機材 フレーム: SPECIALIZED ROUBAIX
ブレーキ: SHIMANO BR-6600-G
シュー: SHIMANO R55C3 or R55C4
使用者体重 80kg。
車重も合わせると、ブレーキが支える重量は90kg前後になるはずです。
使用シーン 主にロングライド。レースではあまり使いません。
日常用かつ「ロングライド決戦用」に位置付けていて、東京大阪キャノンボールやブルベなどはこれで走りました。
雨天走行の有無 基本的には雨の日は走りませんが、ブルベなどにも出ているので雨の中を走ることもあります。
このホイールで雪の中を走ったこともあります。

 

以上の環境で使って、4年弱で前輪10g、後輪4gが削れました。後輪は、普段はパワータップを使うことが多かったので磨耗はより少なかったのではないかと推測しています。

磨耗を検知する方法

カンパのリムには磨耗のインジケータ(小さな穴、これが消えたら寿命)がありません。シマノには付いているのに。

2010年版にも2013年版にもインジケーターは無かったので、カンパのホイールはそういう仕様なのだと思います。同じリムを使っているフルクラムも同様のはず。

インジケータの無いリムの寿命を調べる方法は、以下の二通りです。

・直接ノギスなどで計測する
・重さから推測する

どちらにしろタイヤとチューブを外す必要はありますが、定期的にチェックは行ったほうが良いでしょう。

出来れば購入後すぐに、「リムの厚さ」「ホイールの重さ」を正確に計測しておいた方が良いと思います。この2つの値が解っていれば、リムの磨耗について、後から推測が出来るはずです。

計算結果

アルミリムの700Cホイールの摩耗による重量差を計算してみました。

計算過程

まず、ブレーキ面の面積を計算します。ホイールの実測値が以下です。

ホイールの半径: 31.6[cm]

軸からブレーキ面までの半径: 30.6[cm]

よって、ブレーキ面の面積は、

3.14×31.6^2-3.14×30.6^2 = 195[cm^2]

となります。

アルミの比重: 2.7[g/cm^3]

とすると、仮に0.1[mm] = 0.01[cm]削れた時の重量は、

195×0.01×2.7 = 5.26[g]

となります。

結果考察

ちょっと驚きました。0.1[mm]摩耗するだけで、5gも軽くなるわけです。

片面だけでコレなので、両面が0.1[mm]ずつ軽くなったとすると、10.5g軽くなります。これは結構驚きの数字ではないでしょうか。

もちろん、リムが均一に削れるわけではありません。ただ、数gから数10gが摩耗によって減ることは十分あり得るということが分かりました。

まとめ

前輪が10g、後輪が4g軽くなっていた2010年版ユーラス。一般に、前ブレーキのほうが多く摩耗することを考えると、数字のオーダーは、上記の計算から見ると十分納得できる範囲です。

これは私の感覚的な値よりもかなり大きく、ショッキングなものでした。と同時に、やはりホイールは消耗品であることを実感できた感じです。

この重量はすなわち、4年間にブレーキカスと共に削れていったアルミの重量ということになります。まさに身を削って制動力を生み出してくれた結果です。

「自転車探検」というサイトに拠れば、下記の危険性があるそうです。

アルミ合金リムのブレーキパッドの当る面は、ブレーキ掛けによって磨耗する。
その部分の肉厚が0.5~0.7mm以下になると、高圧タイヤ(圧力700kPa以上)の場合はタイヤの圧力によって亀裂が入る可能性がある。
同時にリムの破損によってタイヤが支持を失い破裂することもある。

「自転車のリム」より引用

リムの厚さは、ざっくりと片面1mm程度でした(実測)。片面で0.3~0.5mm削れていれば危険範囲ということになります。

計算上、うちの2010年版ユーラスの前輪は片面で0.1mm程度は摩耗していることになります。

これは均一に摩耗した場合で、実際にはもっと凹んでいる場所もあるはずです。今が良い変え時だったことがわかりました。

もし、ホイールの重量が目に見えて軽くなっていたら、それはリム面が寿命を迎えているのかもしれません。ご注意を。

補足①

リムは純アルミではなくアルミ合金で作られています。

ただ、アルミ合金の比重は2.6~2.8となっており、比重2.7の計算結果からは大きくズレないと思われます。

補足②

しかし、なぜインジケータを付けていないメーカーが存在するのでしょう?

付けておいた方が、買い替えの促進になるはずで、メーカーにとってもメリットはあるはず。インジケーターが無いために、本来の買い替え時期よりも長く使ってしまう人も多いと思うのですが……。

調べてみると、シマノがリムの磨耗インジケータの特許を持っているようです。詳細は読んでいませんが、これによって他のメーカーは入れたくてもインジケータを入れられないのかもしれませんね。

【参考】磨耗インジケータ付自転車用リム
http://www.patentjp.com/13/I/I100075/DA10038.html

レビュアー情報

年齢: 29歳 (レビュー執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: QUARK ロードバイク(スチール), GIANT ESCAPE RX(アルミ)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)

# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせて頂きました。

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この記事を書いた人

ロングライド系自転車乗り。昔はキャノンボール等のファストラン中心、最近は主にブルベを走っています。PBPには2015・2019・2023年の3回参加。R5000表彰・R10000表彰を受賞。

趣味は自転車屋巡り・東京大阪TTの歴史研究・携帯ポンプ収集。

【長距離ファストラン履歴】
・大阪→東京: 23時間02分 (548km)
・東京→大阪: 23時間18分 (551km)
・TOT: 67時間38分 (1075km)
・青森→東京: 36時間05分 (724km)

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