【レビュー】Fizi:k「TEMPO ALIANTE R1(145mm)」

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評価:3.5

Fizi:kのロード用モデルにおいて快適性担当のサドル「アリアンテ」の穴開きモデル。

今回レビューするのは、カーボンレールのR1です。坐骨幅に合わせて2パターンあり、今回は細い方の145mmタイプを購入しました。

目次

購入動機

私は2009年以来アリアンテを愛用しており、新モデルが出たということで購入を決めました。

詳しい経緯はこちらの記事に書いています。

私が好きだったのは2つ前の世代(第一世代)のアリアンテで、まだ家に5個以上のストックがあります。しかし、1つ前の世代(第二世代)のアリアンテは体に合わず売却してしまいました。

それからは、第一世代のアリアンテと感触が瓜二つなFabric「Scoop Radius」シリーズを愛用しています。

さて、第三世代のアリアンテはどうでしょうか?

製品概要

実測重量は177g(145mm幅タイプ)。R1はカーボンレール採用タイプです。

シェルはカーボン強化ナイロン、パッドはダブルデンシティフォームとされています。

TEMPO ALIANTEシリーズのラインナップは以下の通り。

製品価格重量レール素材
ALIANTE R1(145mm)31800円180gカーボン
ALIANTE R1(155mm)31800円186gカーボン
ALIANTE R3(145mm)23700円220gKium
ALIANTE R3(155mm)23700円226gKium
ALIANTE R5(145mm)17100円230gS-Alloy
ALIANTE R5(155mm)17100円236gS-Alloy

使用感

ファストライド担当のロードバイク(OLTRE XR4)に取り付けて使用しています。

ある程度、快適性は犠牲にしても速く走りたい時に持ち出す機体です。

ブランド内での位置付け

かつては「アリアンテ」のみの名前でしたが、「テンポ」という冠詞が付くようになりました。これは、フィジークブランド内における用途を表すもののようです。

冠詞用途
VENTOロード レーシング
TEMPOロード エンデュランス
TERRAグラベル

TEMPOが付くので、本製品は「ロード エンデュランス」用ということになります。

この観点でフィジークの現ラインナップを整理すると以下の通り。

用途製品名
ロード レーシングVENTO ANTARES R ADAPTIVE
VENTO ARGO R ADAPTIVE
VENTO ANRARES R
VENTO ARGO R
VENTO ARGO X
ロード エンデュランスTEMPO ALIANTE R
TEMPO ARGO R
グラベルTERRA ARGO X
TERRA ALPACA X
TERRA AIDON X

昔は背骨の柔軟性で「スネーク」「カメレオン」「ブル」に分けるスパインコンセプトを提唱していましたが、廃れてしまったようです。

外観

サドル中央部に穴が開いています。穴のないモデルはラインナップされていません。

かつて存在した「アリアンテ オープン」には穴が開いていましたが、そちらは穴のエッジがかなり尖っていて硬く、購入には至りませんでした。本製品は穴の周辺も柔らかく、座っても違和感がありません。

「湾曲した座面」「多めのパッド」という、アリアンテの伝統は受け継がれています。

第一世代→第二世代で若干フラットに近づきましたが、第三世代となってまた第一世代に近い湾曲に戻りました。

尻を支える後部形状の広さは相変わらずですが、先端部分が旧作より太くなっています。サドル先端に乗ってペダルを回す走り方に対応したようですが、人によっては太ももに先端が擦るかもしれません。

重量

公称180gで、実測は177g。

パッドが多く重くなりやすい快適担当サドルの中ではかなりの軽さ。

セッティング

かつて、フィジークのカーボンレールは取付時に注意が必要でした。

他社が高さ9mmのカーボンレールを採用する中、フィジークだけは高さ10mmだったからです。ヤグラの構造によってはレールをクランプ出来ませんでした。

最近は業界標準に合わせて9mmになったらしく、本製品も9mmの範疇となっていました。カーボンレールが使用できるシートポストであれば問題なく使えます。

アリアンテで毎度困るのは「角度」です。湾曲の強いアリアンテは、取付時の角度によって随分と感触が変わってきます。ピタリとハマるスイートスポットが狭いので、私の場合は何度も乗って修正を繰り返します。

最終的に、先端よりも後端が少しだけ上に来るこちらの角度に落ち着きました。

乗り心地

このサドルでブルベ(200km)1本と、ファストラン(約300km)2本に参加しました。

硬さ

座面の硬さの印象をまとめると以下の通り。

第二世代 >> TEMPO ALIANTE(第三世代) > 第一世代

硬すぎた第二世代よりは柔らかくなっていますが、「le sofa(フランス語でソファー)」という愛称で親しまれた第一世代よりは硬い印象です。

300kmくらいまでの距離であれば尻がヒリヒリするくらいで済みました。ただ、400kmを超えると厳しそうに感じます。「何キロでも大丈夫」な第一世代のアリアンテよりは快適度は下がっていますね。

穴のない第一世代では長距離走行時に会陰部の痺れを感じることはありました。TEMPO ALIANTEは穴の効果なのか、痺れは今のところ起きていません。

シクロワイヤードの記事によると、以下のような効果のあるカッティングになっているとか。

実際のところ、この”エルゴノミクスカットアウト”は医学的見地からの分析をもとに開発されており、会陰部周辺の血流を促進する効果があるという。

シクロワイヤードの記事より

先端形状

使う前に気になっていたのは、サドル先端の形状です。

左は第一世代、右が第三世代(TEMPO ALIANTE)です。TEMPO ALIANTEの方が、2mmほど幅広になり、平らになっています。カモノハシのクチバシのようですね。

交換当初は太ももが広がった先端に擦る印象がありましたが、その後は気にならなくなりました。

平らになったのは「高速巡航時に先端部分に腰掛けてペダリング」する昨今のトレンドを受けての形状変更のようですが、アリアンテユーザーの多くは後ろ乗り&あまり座面を前後に動かさないと思うので少々疑問はあります。

第二世代アリアンテの先端は鋭くレーパンが引っかかった

第二世代のノーズはあまりにも尖りすぎていて降車時にレーパンに引っかかっていたので、それがなくなったのは良かったです。

まとめ

第二世代よりは快適になったものの、第一世代ほどの快適性はない印象です。穴開きになったことで会陰部への圧力は減りましたが、穴以外の部分への圧力は増えているはずなので、その影響でそう感じるのかもしれません。

全体的に軽量になっており、前乗り時代に合わせた変更(先端が平らになった)が行われるなど、「現代的解釈のアリアンテ」と言ったところでしょうか。

「快適性担当」を今後も続けるのであれば、もう少し座面は柔らかく設定しても良い気がしました。


この記事を書くにあたって一年ぶりにフィジークのサドルラインナップを確認しましたが、一年前は存在していたアリアンテGAMMA(第一世代の生き残り)がついに消滅していました。10年以上の長きに渡りラインナップされてきたロングセラーモデルでしたが、ついに……です。2世代後の製品が出てもなお売っていたほうが異常なんですが。

「この世代のアリアンテしかダメ!」って方も多いと思うので、そういった方は早めに在庫品を抑えておくことをオススメします。

評価

対象モデル:  Fizi:k「TEMPO ALIANTE R1(145mm)」
年式: 2023年
定価: 29600円
購入価格: 25160円
公称重量: 180g
実測重量: 177g

価格への満足度

6/10

高いと感じたが、カーボンレールだとこれくらいはもはや普通か。

総合評価

7/10

第二世代よりは第一世代に近い。快適性一辺倒ではなく、現代トレンドに合わせたアリアンテ。

著者情報

年齢: 39歳(執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: GHISALLO GE-110(カーボン), QUARK ロードバイク(スチール)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)

# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせていただきました。

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この記事を書いた人

ロングライド系自転車乗り。昔はキャノンボール等のファストラン中心、最近は主にブルベを走っています。PBPには2015・2019・2023年の3回参加。R5000表彰・R10000表彰を受賞。

趣味は自転車屋巡り・東京大阪TTの歴史研究・携帯ポンプ収集。

【長距離ファストラン履歴】
・大阪→東京: 23時間02分 (548km)
・東京→大阪: 23時間18分 (551km)
・TOT: 67時間38分 (1075km)
・青森→東京: 36時間05分 (724km)

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