【レビュー】FULCRUM「RACING ZERO CARBON」

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評価:5

FULCRUMのカーボンクリンチャーホイール。ワイドリム、30㎜ミドルハイトの万能選手です。

目次

購入動機

箱根ヒルクライムの集団下山にて、長いこと使っていたFFWDのF6Rのリムが融解。これを機に、チューブラーを卒業することを決めました。ランニングコストは高く、パンクしても出先では直せない。このため、扱いには慎重になってしまうのが嫌だったのです。

昨今はカーボンクリンチャーの選択肢も随分と増えました。その中でも評判が良いのが、FULCRUMのRacing Zero Carbon。大手サイトのインプレや、購入した知人からも悪い話を全く聞かない珍しいホイールです。聞いたことのないブランドのカーボンクリンチャーは不安ですが、そこはFULCRUMということで安心しても良いでしょう。

ちょうど、イギリスのEvans Cycleで810ポンド(決済時のレートで13万円ほど)という破格の値段で販売されていたので速攻で注文。かなり待たされましたが、約一か月後に無事発送され、手に入れることが出来ました。

製品概要

実測重量は、前輪586g/後輪785g。合計1371g。

リム幅は24mmでワイド、リムハイトは30mm。トレンドを抑えつつ、どんな状況にも対応出来る仕様です。

ハブは、カーボンシェルのUSB(Ultra Smooth Bearing)。スポークはアルミ。そして、フリーボディには食い込み防止のプラズマ電解酸化処理が施されています。

付属するのは、ホイールカバー、フルクラムのクイックリリースと、純正のカーボン用ブレーキシュー(前後)。専用のサイコン用マグネットも付属します。

使用感

SCOTT FOILに取り付けて使用。

チューブはMAXXISのライトウェイト(実測70g程度)、タイヤはSCHWALBEのOne 25C(実測230g程度)を取り付け。空気圧は、前7.5bar、後8.0barで乗っています。比較対象は、それまで使っていたカーボンリムのFFWD F6R、アルミリムのCampagnolo EURUSです。

使う分野は、レース(エンデューロ、ヒルクライム)と、ロングライド。まだ300㎞程度しか使用していませんので、ファーストインプレッションとしてお読みください。

重量

公称重量+13gでした。それでも30mmハイトのカーボンクリンチャーとしてはかなりの軽さです。

周りで買った人たちの話を聞くと1350g台の人が多かったので、私のは重い個体の様子。ただ、私のように体重のある人間の場合、ちょっと重い方が安心感もある……と思うことにしました。

それまで使っていたF6Rに比べて20gほどの重量化。今回は25Cタイヤを付けましたが、軽量な23Cタイヤを付ければ相殺出来るくらいの差なので気にしないことにしました。

取付

タイヤの取付について。SCHWALBE Oneのせいかもしれませんが、手だけでやたらとスムーズに取り付けることが出来ました。普段使っているのが取付のしづらいチューブレスリムであることも影響しているかもしれません。出先のパンク修理も楽そうです。

フレームへの取付について。24mmのワイドリムは思った以上に太く、ブレーキのクリアランス調整が必要になりました。ナローリムと交換しつつ使うのは中々面倒そうです。

走行性能

加速性能。リムの軽さ+アルミスポークということもあって、かなりの鋭さ。信号停止からも気持ちよく加速します。

巡航性能。ハブの性能なのか、リムの真円度なのかは不明ですが、失速しにくく、一度上げたスピードが中々殺されません。勝手にセンターの出るクリンチャーであることも良い方向に影響していると思います。60mmハイトのF6R+素人貼付けのチューブラータイヤよりも明らかに良いです。もっとも、あちらはハブが廉価なので比べるのは酷かもしれませんが。

登坂性能。特に傾斜面(5%以下)では慣性を殺さずに気持ちよく登ってくれます。普段、F6Rで19km/h程度で登っていた坂(300m程度)が22km/h程度で登れるようになりました(同心拍にて)。斜度10%を超える坂では、露骨に剛性を感じます。ヨレないので、EURUSやF6Rに比べて非常に楽。長い登りではまだ試していないので、それはそのうち追記します。

コーナーリング性能。ワイドリム&25Cタイヤの恩恵もあり、コーナーリングは自由自在。これに更にMICHELIN POWER ENDURANCEの25Cを付けたらかなり良さそう。

乗り心地。良いです。レーゼロと言えば、「固い→不快」という印象がありますが、レーゼロカーボンは別物です。同じ25Cのタイヤでも、ナローリムに付けたときとワイドリムに付けたときでは接地面積が変わるそうですが、そこが効いてるんでしょうか。

ブレーキング

付属の純正ブレーキシューを使用。赤黒でカッコいい。

3Kカーボンで保護されたリム面の平滑度は高く、ブレーキを掛けたときのムラはありません。F6Rはかなり波打っているのかムラがありましたので……。

ドライ環境でしか試していませんが、コントローラブルかつ、しっかり止まります(アルミリムのEURUSよりも制動距離は多少伸びます)。アルミリムとの違いを意識すれば、常用するにも問題のない性能です。ただ、激坂の下りでは少々心もとないかも。ウェット性能は追ってレポートします。

見た目

マットな質感の表面に、あまり目立たないロゴ。もう少し主張してくれても良いのになーと思います。ここばかりはF6Rの派手な見た目に軍配です。なお、左右で若干デカールの配置がズレているのは残念なところ……。

まとめ

普段使いの出来る決戦用ホイール。

加速、減速、巡航等々、なんでもソツなくこなす上に、乗り心地も良し。ブレーキセッティングの関係で、ナローリムのホイールとの併用が難しいことが弱点と言えば弱点かもしれません。パンクに不安を感じることなく、決戦用ホイールでヒルクライムに行けるのは嬉しいですね。私のメインであるロングライドやブルベと言った方面でも使えそうだと感じています。

ただ、一般にアルミスポークは寿命が短いといわれるので、普段使いは勿体ないのかもしれませんが。もっとも、私はアルミスポークのEURUSを3年くらいブルべやロングライドで使い倒すので、今更気にすることもないかなーと思いなおしました。今回は安く買えましたし。

これから、色々なシーンで活用していく予定です。買って良かった!

追記(2016年9月26日)

赤城ヒルクライム&その練習(赤城山、和田峠)で使用したので、その辺りについて追記します。


赤城も和田峠もですが、急勾配な箇所の多いヒルクライムコースです。登り、下り共に使ってみて気になった点を書いていきます。

登り

前のレビューで書いた通り、傾斜面でのスピードの維持は楽です。

また、急勾配の箇所はトルクを掛けても変形の少なさが感じられ、進みます。ただ、機材のスペックは上がったのに、本人のウェイトが増えすぎたので数値的には記録は伸びていません。

下り

コーナーリング性能は前のレビューに書いた通り。25Cタイヤの恩恵もあって、思い通りに曲がれる感覚があります。

一番の懸念だったのは、「急勾配の下りで溶けないか?」ということ。元々このホイールを買うキッカケは、前のホイールのリムが融解したことです。箱根ヒルクライムの集団下山で、ブレーキを掛けすぎたことが原因でした。

この時、融解したのはカーボンチューブラー。そして本製品はカーボンクリンチャー。構造上、熱の影響を受けやすいのはカーボンクリンチャーです。複雑な造形と内部にチューブが存在することがその理由。果たして、赤城ヒルクライムの大会で集団下山をして大丈夫かを非常に心配していました。ちなみに、大会当日の私の体重は80kg超と、カーボンホイールに対しては結構な負荷だったと思います。

大会当日。集団下山はカーペーサーによる先導のもと行われました。カーペーサーの速度は40km/h固定。一応、前回融解した経験を元に、ブレーキは前後を交互に掛けたり、不必要な所では掛けない等の対策は取りました。

結果として、特にリムには問題は起きずにスタート地点まで下ることが出来ました。ある程度体重がある人がカーボンクリンチャーで集団下山をしても特に問題は起きなかった例として、ここに書き残しておきます。ただし、

・箱根ヒルクライムよりも赤城ヒルクライムの斜度は緩いこと
・箱根ヒルクライムでは、集団下山の速度が30km/h以下であったこと
・当日の気温は箱根の方が暑かったこと

と言った違いがあるので、一概に本製品が熱に強いということは言えないと思っています。さすがに溶けるまで試験する気は起きないので、今後もおっかなびっくり使っていくことになりそうです。

ただし、FulcrumはCampagnoloの傘下であり、Campagnoloは相当昔からカーボンクリンチャー(ハイペロン)を展開してきたことを考えると、リムの熱問題に対してある程度は信頼性があると判断しても良いのではないかと思います。


とりあえず、ヒルクライム大会で使っても問題なさそうだという感触が得られたのは収穫でした。今後も本製品を決戦用として活用して行こうと思っています。

評価

対象モデル:  FULCRUM「RACING ZERO CARBON」
年式: 2016年
定価: 不明
購入価格: 130000円(税込)
公称重量: 1358g
実測重量: 1371

価格への満足度

8/10

安く買えました。

総合評価

10/10

今のところ、何の不満もない。最高のレーシングホイール。

レビュアー情報

年齢: 31歳(レビュー執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: QUARK ロードバイク(スチール), GIANT ESCAPE RX(アルミ)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)

# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせて頂きました。

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この記事を書いた人

ロングライド系自転車乗り。昔はキャノンボール等のファストラン中心、最近は主にブルベを走っています。PBPには2015・2019・2023年の3回参加。R5000表彰・R10000表彰を受賞。

趣味は自転車屋巡り・東京大阪TTの歴史研究・携帯ポンプ収集。

【長距離ファストラン履歴】
・大阪→東京: 23時間02分 (548km)
・東京→大阪: 23時間18分 (551km)
・TOT: 67時間38分 (1075km)
・青森→東京: 36時間05分 (724km)

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