【レビュー】GARMIN「eTrex 30」

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評価:4.5

Garminの登山用GPS。一応、自転車での使用も想定されています。登山では、ルートのロストは遭難に繋がるため、信頼性と冗長性に比重をおいた製品となっています。

後継モデルとしてマイナーチェンジ版の「eTrex30x」が販売されていますが、今回レビューするのは無印の「eTrex30」です。

目次

購入動機

2013年頃に参加した、ブルベ有志による「GPS勉強会」でeTrex30の存在を知りました(当時はEdge800を使用していました)。

自転車用GPSにおけるスタンダードは今も昔もGarminであり、その中でも自転車専用に作られたEdgeシリーズに人気があります。しかし、より長い時間GPSを使用するランドヌールの中では、「最近eTrexシリーズの人気が急上昇中である(2013年当時)」という情報を、この勉強会で知りました。

勉強会で話を聞いた中で魅力的に思えたのは以下の点です。

・フリーズしにくい。
・フリーズしても、電池を換えればすぐに復活できる。
・バッテリーを交換可能(単3電池)。
・ランタイムが長い(単3電池×2本で、30時間前後稼働)。
要は、「より長い時間、安定して使用できる」ということですね。
Edgeシリーズは705→800と使っていましたが、とにかく不安定かつ電池が持たない欠点がありました。私も、「ロングライド中に勝手にOFFになる」「全く操作を受け付けなくなる」等の不具合に遭遇。また、Edgeシリーズは15時間程度のランタイムしか無く、300km以上のブルベやキャノンボールでは外部給電が必要となります。給電するためにはモバイルバッテリー、さらにそれを収納するためのバッグがハンドル周りに必要となり、ハンドル周りの重量増加を招いていました。
eTrex30の特徴が本当であれば、Edgeシリーズの弱点をカバー出来ることになります。ちょうど、eTrexの話を聞いたのは「青森~東京 耐久ラン(730km)」の準備をしている段階でした。想定所要時間は34時間。それだけの時間を安定して動かせる可能性を感じ、eTrex30の購入を決意したのでした。

製品概要

実測重量は、100g(電池無し)。電池(単3電池×2本)込みで150g程度。

稼働時間は公称25時間。IPX7(1mの水位で30分間水没させることが出来る)の防水仕様です。

GPSは、GLONASSに対応。日本語版は「みちびき」にも対応しています。

通信インターフェースは有線(miniUSB)接続と、ユニット間無線接続。各種機器の接続はANT+のみ対応しています。

付属品は、USBケーブル(miniUSB)のみです。

使用感

ブルベやファストラン等のロングライドにおけるメインサイクルコンピューターとして使用しています。最近はEdge530と併用することが多いですが、2013~2019年のPBPまでは、これ一つでほぼすべてのロングライドを走っています。

比較対象は、Garminの自転車用GPSである「Edge800」「Edge530」です。

重量

エネループの単3×2本込みで150gと、Edgeシリーズに比べると重量級です。大体80gのEdgeシリーズと比べると、+70gといった所。

ただ、電池の交換が効かないEdgeシリーズは、走行時間が15時間を越える場合には外部電源とケーブル、それを入れるためのトップチューブバッグ等が必要になります。これらをセットにすると軽く100gは超えます。eTrexであれば、換えの電池を持てばOK。単3電池ならばコンビニでも確実に手に入りますし、持ち歩かなくても何とかなるでしょう。

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また、リチウム乾電池という特殊な電池を使うと、電池の重量を2本で30g程度に抑えられます。単3電池×2本あたりの重量は以下のようになっています。

・リチウム乾電池: 30g
・アルカリ乾電池: 45g
・エネループ: 50g
・エネループ PRO: 60g

大きさ

Edge800や530よりは一回り大きいです。特に厚みはEdge800の1.5倍ほどあります。単3電池を使用しているので仕方ありませんね。

ハードウェア

ディスプレイは、176x220pxのカラー液晶。リリースから既に10年近くが過ぎているため、現行の製品と比べると粗さは目立ちます。ただ、地図は見やすいですね。特に昼間の太陽の下での液晶の視認性はかなり良いです。射型液晶を使用しているようで、周りが明るくても見やすいようですね。

バックライトは、昼間は無し、夜間は30%で運用しています。これで大体不満無しです。

タッチパネルは搭載しておらず、物理ボタンのみで操作します。地図の縮小・拡大の操作も専用のボタンが割り当てられています。地図の移動も、スティックキーを使用すれば簡単です。最新機種のEdge530と比べると、そこまでレスポンスは良くありませんが……

本体のストレージ容量は1.7GB。地図データを入れても十分な容量があります。更にmicroUSBドライブも搭載しているので、追加の地図データはこちらに入れれば良いでしょう。

ケーブルは「miniUSB」。残念ながらケーブルが中々手に入らないので、付属品を壊さないように使っています。

地図

私の購入した英語版には、地図データは付属しません。通常は地図データを購入することになります。

ただ、フォーマットに沿ってさえいれば無料の地図データを使用することも可能です。OpenStreetMapという世界的なプロジェクトからは、Garminデバイスに対応した世界中の地図をダウンロードすることが可能です。

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私はこちらのサイトのバージョンを使用しています。

上記の写真は、Garminの各機種の同一地点を同一の地図で表示したものです。Edge800よりもeTrex30の方が見やすいと感じました。画面の更新も早く、峠のダウンヒルでも現在位置に追従してきます。また、GPXによってルートを表示している場合、ルート上の山と谷の最高点と最低点には自動的にマークが付くのもこの機種の特徴でしょう。

稼働時間

ここが最大の魅力です。公称稼働時間はなんと25時間。現在でこそEdge530が20時間稼働しますが、それまではeTrex30の稼働時間の長さは圧倒的でした。

実際に使ってみた所、Edge800が実測で12時間稼動なのに対し、eTrex30は30時間稼動しました(eneloop pro使用)。なお、30時間のうち10時間程度は30%ほどの照度でバックライトを点灯しています。公称ランタイムは25時間ですが、それよりも持つようです。結局、青森~東京の36時間の道のりで、電池交換は1回で済みました。

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また、前述のリチウム乾電池を使うと、同条件で45時間程度持ちます。制限時間90時間のPBPにおいても、電池交換は一度だけで済みました。

Edge800を使用していた頃は、モバイルバッテリーをトップチューブバッグに入れるという運用でした。しかし、USBケーブルが振動で抜けたり、そもそもトップチューブバッグが邪魔という短所が。その点、単三電池運用ならばケーブルが抜けることもなく、電源を格納するトップチューブバッグも不要となり、煩わしさがかなり減って、装備も軽量化されました。電池が内蔵されているEdgeのようなタイプだと電池の劣化が避けられないのですが、乾電池式では電池さえ新しいものに変えれば劣化が起こらないのも魅力です。

対応衛星

通常の衛星に加え、GLONASSに対応しています。日本語版だと「みちびき」に対応しているようですが、私のは英語版なので対応していません。

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GLONASSをonにすると約30%の電池の減りが早くなるというデータもあるので、私は通常切っています。確かに記録される軌跡は正確になるのですが。

ネットワーク

BluetoothやWi-Fiへの接続といった機能はなく、走行データを自動でクラウドサービスにアップロードすることは出来ません。毎回、PCと有線接続する必要があります。

ただ、eTrex30はユニット間無線接続に対応しています。eTrexの中でも30だけは、お互いに通信が出来てルートデータを送受信出来るのです。これはeTrex10や20にはない機能です。

過去に出たブルベでルートデータを忘れてしまったことがあり、その時には近くにいたeTrex30を持っている方に頼み込んでルートデータを送信してもらいました。600km分のTracksデータを受信するのにおよそ10分ほど掛かりましたが、一応そういった機能があることを覚えておくと役に立つことがあると思います。

防水性

非常に防水性が高いのも、eTrexシリーズの特徴です。様々なライドで雨に降られましたが、雨が原因で動かなくなったことはありません。USB端子のカバーも、電池カバーもしっかりシールされています。

ただ、雨の中で使用すると、画面に結露が生じる場合もあります。これだけはいかんともし難いですね。

安定性

Edge800は突然のフリーズなどが頻発する機種でした。特に走行距離が300kmを超えるとトラブルが起きがちで、長時間稼動のテストをしていないのでは?と思うほど。

その点、eTrex30はそうそうフリーズはしません。突然電源が落ちることはたまにありますが、ログデータは失われませんし、復帰のスピードも早いのが特徴です。この辺りはさすが登山用ですね。たとえフリーズしても、電池を抜けば電源は切れます。充電池の機種だと、マスターリセットが効かない場合もあったりしますが、乾電池の機種はその辺りが強いですね。

かつて「本州一周」というライドに挑戦した時は、8日間で計174時間を走りました。

eTrex30は、基本的に電源がonの間は常にログが取られ続けます。夜寝ている間は電源を切っていたものの、それ以外の時間はずっとリセットをせず動作させていました。

しかし、100時間を超えたところでこのような表示に。TotalTimeが「__:__」となり、距離の積算が増えなくなりました。どうやらこれは公式の仕様のようで、100時間以上は動作しないようです。出来れば最後までひとつのログで記録したかったのですが、ここで泣く泣くログをリセットすることになりました。

ただ、「100時間で制限が掛かる」ということは、「少なくとも100時間までの耐久試験はやっている」ということです。1日たらずのログでバグるEdge800などとはテストの力の入れ方が違うということが読み取れます。安定して動作するのは、こういったテストをしているからなのでしょう。

センサーとの連携

eTrexシリーズは登山用途がメインとして開発され、「自転車用としても使える」GPSです。自転車用の機能は最低限のものに限られています。

心拍計・スピードセンサー・ケイデンスセンサーには対応していますが、パワーメーターの接続に対応していません。そもそもeTrex30がリリースされた2010年前後はパワーメーターが今ほど一般的ではなかったのですが。ただ、ファームウェアのアップデートでも対応する気配もないので、今後対応されることはないでしょう。

パワーメーターと連携したい場合、Edgeシリーズ等の自転車用サイクリングコンピュータを買う必要があると思います。

また、ケイデンスセンサーも、「スピード・ケイデンス一体型」タイプしか認識しません。チェーンステーに付けるタイプのアレです。GarminのGSC10などが該当します。CATEYE ISC-11も使えるようです。

最近はスピードセンサーとケイデンスセンサーが別れているタイプが多いのですが、そういったタイプは残念ながら認識されません。注意してください。

表示項目

センサーとの連携の項目でも書きましたが、自転車関連の表示項目は少なめです。「当然これはあるだろう」という項目も無かったりするのが困りもの。

例をあげると、「斜度」の項目がeTrexにはありません。ヒルクライム時にこれが無いと結構困ります。

代わりに使える項目を探してみると、「滑空比(Glide Ratio)」というものがありました。eTrex30は登山用途がメインですが、自転車の他にも様々なアクティビティ向けの表示項目を採用しており、「滑空比」はパラグライダーなどで使われる項目です。この数字の逆数を取ると、斜度になります。子供の頃、そろばんをやっていた私はリアルタイムで逆数を計算できるのですが、そうでない方には使いづらいかもしれません。

また、本体のみでは「気温」の表示が出来ません。表示項目はあるのですが、eTrex30には温度センサが内蔵されていないため、数字が出ないのです。

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気温を表示したい場合には、こちらの外部センサを買う必要があります。登山用に開発されたeTrexは、首から下げて使うことを想定されているようで、内蔵の温度センサだと体温の影響が無視できなくなるのでしょう。このため、外部センサという方式を取ったのだと思います。

ナビゲーション

Googlemapのような、「目的地を検索し、そこまでのルートを道に沿って引く」機能は、eTrexにはありません。「目的地を検索し、現在地から目的地までの直線を引く」機能はありますが、使い所は少ないかもしれませんね。

ご指摘を頂いたのですが、「目的地を検索し、そこまでのルートを道に沿って引く」機能が存在しました。

メニュー画面で「Setup→Routing」と辿り、「Guidance Method」の設定を「Off Road」以外に設定すれば、現在地点から各種の目的地までの道に沿ったルートを引くことが出来ます。これを「Off Road」に設定すると、目的地まで直線で引かれます。

ブルベ等で使う場合には、あらかじめRWGPSなどのルート作成サイトで作ったGPXデータをインポートして使うことになります。

地図上に、作成したルートデータが軌跡(紫の線)として表示されます。

残念ながらEdgeにあるような「ミスコースした時に警告を表示する機能」はありません。ただ、「作成したコースから何m離れているか?」を表示する項目「Off Course」があるので、私はそれを地図ページに表示しています。この項目の数値が大きくなったらミスコースをしているということです。

トレーニング

自転車用のトレーニング機能はeTrexにはありません。

ここでいうトレーニング機能は、「何Wで何分走る→レスト→何Wで何分走る…」といったような、ワークアウトを作る機能のことです。そもそもパワーメーターにも対応していませんが。

また、周回コースで自動的にスタート地点でラップを切る機能もありません。そもそも、ラップタイムという概念がありません。衛星を補足した瞬間から計測が始まり、リセットするまで計測は継続します

マウント

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Garminから販売されているこちらのマウントを使用して、ステムに取り付けています。

ただこのマウント、しばらく使っているとプラスチック部分が削れてきて、固定力が弱まっていきます。すると、段差などでeTrexが発射されてしまうんですね。私はGarminのマウントではなく、RECMOUNTSのマウントを使っていた時にeTrexが発射されてしまい、地面に落下。初代eTrexはこの時壊れてしまいました。今使っているのは二代目です。

「eTrexは首にかけて使うことを想定されている」と書きましたが、そのためのストラップを通す穴が本体下部に開いています。初代が破損して以来、私はここにストラップを通し、ステムに巻きつけて万が一の際の落下を防ぐようにしています。

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重くても気にならない方は、RAMマウントという、より確実な固定方法もあります。

日本語化

私が購入したのは英語版ですが、少しPCの知識があれば日本語化をすることも可能です。

アルプス縦走にあこがれて
すぐ出来るeTrex30の日本語化と地図の導入 - アルプス縦走にあこがれて ありゃ。文字が何も表示されなくなった。手順を間違えるとこんなことになります(^^;。 etrex30の日本語化と地図の導入にについてはググればいくらでも出てくるのでそれを参...

私は上記サイトのやり方を参考にして日本語化しました。……が、日本語フォントが夜間は読みにくいこともあって、今は英語に戻しています。

まとめ

どんな天候でも使え、安定して長時間の使用が可能なGPS。単3電池で最大45時間使えるのが最大の魅力です。特にブルベ等のロングライドをする方であれば、持っておいて損はないでしょう。

ただ、元々が自転車専用ではない&設計時期が古いため、パワーメーターや一部のケイデンスセンサーが認識できない不都合も生じてきています。あくまで自転車用として使うのは「流用である」ということですね。

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しばらくeTrex30に肩を並べるランタイムを持った自転車用GPSは無かったのですが、昨年発売されたEdge530/830はeTrex30に匹敵するランタイムと、高い応答性、自転車に特化した機能を搭載しています。今後の主流はこちらに移っていく気がしますが、それでも私は600km以上だったらeTrex30を選ぶと思います。やはり単3電池駆動というのはとても楽なので。

そのための予備機として、eTrex30x(マイナーチェンジ版)も購入済みです。これまで7年間使ってきましたが、あと数年は使う予定です。

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なお、現在はeTrex30xの更に後継であるeTrex32xも発売しています。イマイチ30xとの差が分かりませんが、CPUとストレージ容量の強化が行われているようです。

評価

対象モデル:  GARMIN「eTrex 30」
年式: 2013年
定価: 33600円(税込)
購入価格: 19649円(税込)
公称重量: 141.7g
実測重量: 150g

価格への満足度

10/10

20000円以下でこれだけ出来れば凄い。

総合評価

9/10

設計は古くなっているが、安定性とバッテリーの持ち時間は他に代えがたい。

レビュアー情報

年齢: 35歳(レビュー執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: QUARK ロードバイク(スチール), GIANT ESCAPE RX(アルミ)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)

# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせて頂きました。

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この記事を書いた人

ロングライド系自転車乗り。昔はキャノンボール等のファストラン中心、最近は主にブルベを走っています。PBPには2015・2019・2023年の3回参加。R5000表彰・R10000表彰を受賞。

趣味は自転車屋巡り・東京大阪TTの歴史研究・携帯ポンプ収集。

【長距離ファストラン履歴】
・大阪→東京: 23時間02分 (548km)
・東京→大阪: 23時間18分 (551km)
・TOT: 67時間38分 (1075km)
・青森→東京: 36時間05分 (724km)

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