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【レビュー】GARMIN「eTrex 32x」
評価:5
Garminのトレッキング用GPS。eTrex30xの後継版です。
購入動機
2022年6月、ブルベで愛用してきたeTrex30xが破損してしまいました。
30x破損で購入
破損内容は、「back」ボタンの摩耗による陥没です。
eTrexはかなりタフでそうそう壊れません。なので、一番最初に悲鳴を上げるのがこのbackボタンという人は多いようです。一番触るボタンですからね。
一応ボタン自体は押せないこともないのですが、ブルベ中にここから水が入ったら故障することは確実。退役してもらい、後継機種を買うことにしました。
eTrex31xは存在せず、後継機はeTrex32xである様子。30xよりかなり値上がりしていて驚きましたが、必要なものなので購入を決めました。
eTrexシリーズ愛用の理由
EDGEシリーズの高機能化が進んでいますが、未だに私はブルベにおいてeTrexをメインで使っています。
その理由は以下。
- 電池寿命が長い
リチウム乾電池を使えば最大45時間稼働する。電池を交換すれば充電時間なしで復活する。- 比較的システムが安定している
山歩き用だけあり、めったにフリーズなどはしない。フリーズしても電池を抜いて再起動すれば復活する。- 余計な機能がなく、シンプル
最近の自転車用GPSにはバーチャルパートナーやクライムプロと言った個人的に不要な機能が多いが、eTrexはシンプルに記録を取るだけ。
山歩き用GPSながら、心拍計やスピードセンサー(ケイデンス計測一体型に限る)との接続にも対応し、自転車用のマウントもあります。
機能的にもシンプルに纏まっており、それゆえにシステムが安定しています。EDGEシリーズが不安定なのは多機能すぎることも原因だと思うので。
欠点は、パワーメーターとの接続に対応していないこと。自転車専用GPSではないので仕方がありませんが、パワーメーターの値を見るためだけに別のサイコンをサブとして使うこともあります(ペース管理にパワーを使用しているため)。
製品概要
実測重量は100g(電池なし)。単三電池×2本で動きます。
公称の稼働時間は25時間。ですが、実際は設定次第でもう少し長く使えます。
防水等級はIPX7(水に沈めることが出来る)。
GPS衛星は通常のものに加えてGLONASSに対応。日本語版は「みちびき」にも対応しています。
通信インターフェースは有線(miniUSB)接続と、ユニット間無線接続。各種機器の接続はANT+のみ対応しています。
内蔵メモリ容量は8GB。microSDカードのスロットを備えており、地図データ等を格納可能です。
付属品は、USBケーブル(miniUSB)のみです。
使用感
普段の練習や週末のライドはEDGEシリーズが中心になりましたが、ブルベでは未だにeTrexシリーズをメインで使用。
2023年のPBPはeTrex32xをメイン、EDGE840 Solarをサブとして使用しました。
パッケージ
従来のeTrexシリーズより箱が小さくなっています。以前は正方形でした。目的は恐らく輸送コストの削減でしょう。
重量
本体は100gですが、単三電池を2本使うので意外と重くなります。
単三電池は種類によって結構重量が違います。
電池種別 | 重量(2本あたり) |
アルカリ電池 | 45g |
充電電池(エネループ) | 53g |
充電電池(エネループプロ) | 60g |
リチウム乾電池 | 30g |
eTrexに電池をセットしたときの重量は、130~160gくらいということになります。
EDGEシリーズは軒並み100g以下なので、重量はあります。ただし、拡張バッテリーパックを付けると重量的には並びそうです。
30x→32xの変化
スペック的には、内蔵ストレージ容量が4GB→8GBに増量されたのみで、他に変化はありません。動作速度なども変わらないように思うので、CPUなども恐らく一緒。
他に違うところと言えば、筐体の色くらい。30xはグレーでしたが、32xはベージュになっています。
大きさ
EDGEシリーズに比べると、単三電池を使う分だけ厚みがあります。
空力面では確実にeTrexのほうが悪いと思います。
ハードウェア
ハードウェアのスペックを見ていきます。
解像度
液晶の解像度は240 x 320px。画面サイズは2.2インチです。
EDGEシリーズに比べると画面内の文字フォントは小さめで、老眼の方からは「見えにくい」という意見もあるようです。
バックライト
バックライトの設定に「light」ボタン1押しだけで辿り着けるのは便利です。EDGEシリーズでは設定の奥深くにあったりするので。
20段階(5%刻み)で明るさを設定可能ですが、私は「常に15%」の点灯で運用しています。10%まででは少し暗すぎるんですが、15%くらいだと夜でも十分に見えます。
ストレージ
30xから倍増し、8GBになりました。30x時代は6年使って6割程度しかストレージ容量を使わなかったので、この容量を使い切れるとは思えませんが。
電池ボックスの下にはmicroSDカードを挿入できるスロットがあります。地図データなどを入れる用途ではありますが、32xは本体のストレージが8GBもあるので地図データも十分に格納可能です。振動などでmicroSDカードがズレると電源が切れてしまうため、私はmicroSDカード無しで運用しています。
処理能力
そこまでサクサクと動作するわけではありませんが、不満がない程度には動いてくれます。
GPS捕捉
普段の使用ではそんなに遅く感じることはありませんが、たまに全然捕捉しなくなることがあります。
接続可能センサー
ANT+での外部機器の接続に対応しています。
端子
なんと今どき「miniUSB」の端子です。Type-Cでないのは仕方ないとして、「microUSB」ですらありません。
既にminiUSBのケーブルは貴重品なので、付属のケーブルが大事になります。
操作性
タッチパネルは搭載していませんが、操作性は良いです。
このジョイスティックが秀逸。マップ上での現在地移動では、タッチパネルに負けないくらいの使いやすさがあります。
設定なども一箇所にまとまっており、メニューも階層も深くはない(最大2層)などシンプルな操作性です。
地図
文字は細かいですが、地図自体は見やすいと思っています。
最近のEDGEシリーズは夜間でも地図が白背景で固定になってしまいましたが、eTrexシリーズは変わらず黒背景の地図で夜でも見やすい。ジョイスティックでグリグリと地図を動かすこともできます。
一点強調したいのは、「eTrexにはナビゲーション機能はない」ということです。
あらかじめルートデータを作って読み込ませておけばルートの軌跡(画像の中の紫の線)を表示することは出来ますが、「ここの交差点で曲がれ!」のようなアラートは出ません。ただ、あのアラートが原因でフリーズすることもあるので、軌跡を表示するだけのほうが合理的ではないかと思っています。
そして、この画像に出てくる富士山マーク。これが便利です。ある程度以上のアップダウンの頂上と谷底をルート上に表示してくれます。クライムプロ機能よりもこっちのほうが分かりやすくて好きです。
あと、EDGEシリーズですが、恐らく「それまでの進行方向から次に進む方向を予測して現在位置を動かしている」印象があります。実際には交差点で右に曲がったのに、地図上での現在位置は直進している……みたいなケースが結構あります。10秒後くらいにしれっと右折した場所に現在地が飛ぶんですが、こういう動作はミスコースを招くんですよね。
eTrexシリーズは頑固に現在位置を表示し続けてくれるところが好きです。
稼働時間
公称稼働時間は25時間ですが、設定次第ではもっと長く使うことが出来ます。
- バックライト: 15%
- センサー接続: 心拍計・気温センサー(Tempe)
- GPS設定: GPSのみ(GLONASS不使用)
こちらの設定で私が実測した電池の種類別の稼働時間を示します。
電池種別 | 実測稼働時間 |
アルカリ電池 | 30時間 |
充電電池(エネループ) | 30時間 |
充電電池(エネループプロ) | 35時間 |
リチウム乾電池 | 45時間 |
おおむね30時間以上稼働します。
特にリチウム乾電池を使った場合にはなんと45時間稼働します。
600kmブルベの制限時間は40時間なので、電池交換なしで最後まで動くということです。充電不可能の使い捨て電池ではありますが、電池交換の回数を減らせるので、600km以上のブルベではリチウム乾電池を使っています。
あと、eTrexの設定画面には「電池の種類」を設定する項目があります。これを適切に設定しないと、稼働時間が短くなる場合があります。ご注意。
充電
eTrexには充電機能はありません。
防水性能
1年ほど使っていますが、雨で動かなくなったことはありません。
eTrex30xは6年使いましたが、こちらは雨の日には結露のような状態になることはありました。ある程度使うとシールが弱くなることはあるかもしれません。
機能
極めてシンプルです。
記録スタートのボタンもありませんし、ラップタイムを取る機能もありません。メニューからリセットを行うとログが切られて記録が始まります。記録を終了するには、再度リセットするだけ。
前述の通り、マップも現在地とあらかじめ設定したルートが表示されるだけ。うざったいバーチャルパートナーがいないので心安らかに走ることが出来ます。
表示データ項目
自転車関連の表示項目は少なめです。「当然これはあるだろう」という項目も無かったりするのが困りもの。
例をあげると、「斜度」の項目がeTrexにはありません。ヒルクライム時にこれが無いと結構困ります。
代わりに使える項目を探してみると、「滑空比(Glide Ratio)」というものがありました。
eTrexはトレッキング用途がメインですが、自転車の他にも様々なアクティビティ向けの表示項目を採用しており、「滑空比」はパラグライダーなどで使われる項目です。この数字の逆数を取ると、斜度になります。子供の頃、そろばんをやっていた私はリアルタイムで逆数を計算できるのですが、そうでない方には使いづらいかもしれません。
また、本体のみでは「気温」の表示が出来ません。表示項目はあるのですが、eTrex30には温度センサが内蔵されていないため、数字が出ないのです。
気温を表示したい場合には、こちらの外部センサを買う必要があります。登山用に開発されたeTrexは、首から下げて使うことを想定されているようで、内蔵の温度センサだと体温の影響が無視できなくなるのでしょう。このため、外部センサという方式を取ったのだと思います。
センサーとの連携
ANT+での接続のみ対応しており、Bluetoothでの接続には対応していません。
自転車乗り的に少し不便に感じるのはパワーメーターとの接続に対応していないこと。eTrexの登場時にはマイナーだったパワーメーターに対応していないのは仕方がありませんが、ファームウェアアップでも対応する様子はありません。eTrexの用途的に対象外だと考えられているのかもしれません。
最近登場してきたリアビューレーダーにも非対応です。
ケイデンスセンサーも、「スピード・ケイデンス一体型」タイプしか認識しません。チェーンステーに付けるタイプのアレです。GarminのGSC10などが該当します。CATEYE ISC-11も使えるようです。
最近はスピードセンサーとケイデンスセンサーが別れているタイプが多いのですが、そういったタイプは残念ながら認識されません。注意してください。
まとめ
安定して長時間の使用が可能なGPSサイコン。
原型となっているeTrex30は2010年頃の発売ということで接続できない外部機器は増えてきましたが、このシンプルな操作性は魅力です。
稼働時間で言えば、今年発売されたEDGE840 SolarはeTrex32xをリチウム乾電池で動かした時と互角の性能があります。とはいえ、システムの安定性はやはりeTrex系が上なので、未だに卒業できそうにはありません。
なお、次世代機として「eTrex SE」が今年始めに発売されましたが、こちらはeTrex10系の後継機で地図表示も出来なければ、外部センサーとの接続機能もありません。
eTrex30系の後継機が出るんじゃないかと思っていましたが、未だに出ていないのは気になりますね……。168時間も動作するのは魅力なので、eTrex SEの高機能版が出たら間違いなく買うと思います。
評価
対象モデル: GARMIN「eTrex 32x」
年式: 2022年
定価: 65780円(税込)
購入価格: 32000円 (税込)
公称重量: 148g(電池あり)
実測重量: 100g(電池なし)
価格への満足度
すっかり高くなりました。
総合評価
パワーメーターと接続出来ない点以外に不満はない。ロングライド用のGPSとしては最高の品。
著者情報
年齢: 39歳(執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: BIANCHI OLTRE XR4(カーボン), QUARK ロードバイク(スチール)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)
# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせていただきました。