【レビュー】IRC「FORMULA PRO S-LIGHT TLR 25C」

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評価:3

IRCのロード用チューブレスレディ(TLR)タイヤ。同ブランド初のTLRです。

目次

購入動機

チューブレス(TL)タイヤは一時期使っていました。まだロード用TLタイヤが出始めて間もない2011-2012年頃のことです。

TLタイヤのトラウマ

当時TLタイヤを出しているメーカーと言えば、HutchinsonとIRCくらいのもの。私は定評のあったHutchinsonを試しましたが、出先でパンク。シーラントは仕事をせず、穴は埋まりませんでした。

「チューブを入れれば帰れるよ」という話を聞いていたのでチューブを入れるも、全然タイヤがリムにはまらない

TLタイヤをリムにはめる作業は、環境の整った家でも難しいもの。それが出先で簡単に出来るはずもなく。結局、その時はたまたま近くに来ていた知人の車に乗せてもらって帰宅しました。

10年経って……

ロード用TLタイヤが出てきてそろそろ10年。リムはTL対応が当たり前になり、ほぼ全てのメーカーがTLタイヤをラインナップ。

ワイドリム化が進み、多少はめやすさも向上しているはず。性能も10年前より随分良くなっているということだったので、久々にTLタイヤにトライしてみることにしました。

どのモデルにするか?

久々に購入したタイヤは、定評のある「シュワルベプロワンTLE」でした。

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しかし、リムとの相性が良すぎたのか、全く外れないトラブルに遭遇。シーラントも入れていないのにガッチリはまってしまいました。

出先で何かあった場合にタイヤを外すことすら出来ないのは困ります。それと、プロワンTLEはサイドがしなやかすぎて、挙動が好みではありませんでした。プロワンTLEは、早々に人に譲ってしまいました。

そこで次なる候補に上がったのが、今回レビューするIRCの「S-LIGHT」です。

同ブランド初のTLRタイヤ。驚くべきはその重量で、25Cで公称220g。クリンチャータイヤとほぼ変わらない値に驚きました。

世界に目を向ければシュワルベのプロワンTTが25Cで205gと更に軽いわけですが、国産でこれだけ軽いタイヤというのは注目に値します。国産で言えばPanaracerも一度TLRタイヤを出したんですが、不具合があったようで回収となってしまいました。

製品概要

実測重量は、222g/228g(25C)。

チューブレスレディなので組み付けにはシーラント必須です。

コンパウンドは新型の「RBCC2」を採用。ライス・ブラン・セラミックス・コンパウンドの略で、米ぬかを焼成して作ったセラミックスを使っているのだとか。

対応するリム内幅は15~19C。今回は19Cのホイールに取り付けています。

トレッドパターンはなかなか複雑。

使用感

最初はディスクロードに取り付けて使用(ホイール: RACING ZERO CARBON DB)。現在はリムブレーキのロード(OLTRE XR4)に付けて使っています(ホイール: TOKEN KONAX PRO)。

6~6.5気圧程度で運用。未だに前述のトラウマもあってTLで長距離を乗るのが怖く、一度に乗った距離は最大100km程度です。合計で1500km程度使用。

パッケージ

会社のイメージカラーの赤を採用したパッケージ。

なんとなく90年代のアメリカ製品感が漂うパッケージです。

取付

下記の記事に取付の話はまとめてあります。

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かいつまんで言うと、「取付は割と楽」「ビードはなかなか上がらない」と言った所。ただ、これはホイールとの相性もあるので何とも言えませんが。

気密性

TLRタイヤなので、シーラントがちゃんとビード部まで行き渡っていないと空気が漏れます。

同社のTLタイヤ「FORMULA PRO RBCC」はシーラントを使わなくてもほとんど漏れなかったので、これはやはりTLとTLRの差なのでしょう。

シーラントが行き渡れば、空気圧の低下は1日で0.3気圧程度まで緩和されます。

重量

公称重量220g、実測重量222g/228gと、TLRタイヤとしては驚異的な軽さを誇ります。

ただ、その分全体的に薄く作られています。特にトレッドはかなり薄め。

漕ぎ出し・加速

タイヤ自体の軽さ・グリップの高さもあり、漕ぎ出しはチューブレスとは思えない軽さ。と言っても私のイメージは10年前のイメージで止まっているので、最近はこれくらい当たり前なのかもしれませんが。

それでも220g(+シーラント30ml)は、軽量タイヤにTubolitoくらいを入れた程度の重量なわけですから、軽快感はかなりのものです。

巡航

これは特に印象に残るほどでは無かったです。チューブレスなので数値的な転がり抵抗は軽いはずですが。

ただ、6気圧程度で走っても腰砕け感が無いのは好感触。プロワンTLEはちょっとサイドが柔らかすぎましたが、S-LIGHTはサイドにも適度なコシがあります。

ヒルクライム

これは正直「ズルい」と感じるレベルで良かったです。

ほぼ毎日走っている練習コースに7.5%程度の坂があるんですが、その坂を最後まで20km/hを保つのにいつも苦労します。しかし、このタイヤだと「まだまだ転がるぜ!」といった感じで、ヒルクライムなのに惰性で転がってくれる感触がありました。

軽さとチューブレスの転がりの軽さの相乗効果ということなのでしょう。「ヒルクライム用に作ったチューブレス」という売り文句にも納得しました。

乗り心地

チューブレスなので、クリンチャーより乗り心地は上質。空気圧を下げている影響もありそうですが。

耐パンク性

これはハッキリ弱いと思います。

1500km程度乗りましたが、後輪のトレッド部に穴が空いてしまいました。シーラントでも塞がらなかったので、諦めてタイヤを外しました。裏からパッチを貼れば良いそうですが、固まったシーラントの膜を剥がすのが難しく、恐らく破棄することになりそうです。

サイスポに各社のTLRタイヤのトレッド厚の計測結果が載っていました。大体各社3.0~3.3mmほどなのに対し、S-LIGHTは2.3mm。相場の7割程度しかありません。さすがにちょっと薄すぎる気はします。ヒルクライム用として割り切れということかもしれませんが。

耐パンクベルトについても特に入っているという記載はありません。同社にはS-LIGHTの他に「RBCC」「X-GUARD」の2つのTLタイヤがラインナップされていますが、耐パンクベルトが入っているのはX-GUARDのみのようです。

耐久性

コンパウンドの耐摩耗性は前の世代に比べて280%向上したと謳われています。確かにセンタートレッドの模様もなかなか消えずに残っています。

ただ、前述の通り絶対的に薄いため、使える期間はそう長くはないでしょう。

見た目

IRCのコーポレートカラーが赤であるためか、タイヤにも赤が多めに入っています。

車体のカラーを赤黒で統一している私には合わせやすくて助かりますが、他のカラーで統一している人にとっては赤が多すぎるかも。

まとめ

走行性能(特にヒルクライム)は素晴らしいものの、その軽さと引き換えにデリケートなタイヤです。ヒルクライム決戦用のチューブレスと言えるかもしれません。

ちょっと普段遣いにはキツかったです。元より割り切った製品であることは覚悟していましたが、軽さのための犠牲がちょっと大きいなと感じました。私みたいに体重が重いと後輪に採用するのは躊躇しますね。

穴が塞がらなかった後輪用のタイヤは、同社の「RBCC」に交換しました。こちらも耐パンクベルトは入っていませんが、トレッドの厚みはそれなりにあるので、耐パンク性は上でしょう。

前輪のS-LIGHTはまだ生きているので、しばらく使い続けるつもりです。

 

評価

対象モデル:  IRC「FORMULA PRO S-LIGHT TLR 25C」
年式: 2020年
定価: 8360円
購入価格: 5400円
公称重量: 220g
実測重量: 222g/228g

価格への満足度

8/10

チューブレスにしてはお手頃価格。

総合評価

6/10

性能は高いけれど非常にデリケート。

著者情報

年齢: 36歳(執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: QUARK ロードバイク(スチール), GIANT ESCAPE RX(アルミ)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)

# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせて頂きました。

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この記事を書いた人

ロングライド系自転車乗り。昔はキャノンボール等のファストラン中心、最近は主にブルベを走っています。PBPには2015・2019・2023年の3回参加。R5000表彰・R10000表彰を受賞。

趣味は自転車屋巡り・東京大阪TTの歴史研究・携帯ポンプ収集。

【長距離ファストラン履歴】
・大阪→東京: 23時間02分 (548km)
・東京→大阪: 23時間18分 (551km)
・TOT: 67時間38分 (1075km)
・青森→東京: 36時間05分 (724km)

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