【レビュー】KMC「X11SL DLC」

この記事は約 9分で読めます。

評価:4.5

KMCの高級チェーン。DLC(Diamond-Like Carbon)によるコーティングが施されています。

目次

購入動機

もともと妻が使っていて興味は持っていました。とにかく伸びが少なく、パワーの強くない妻とは言え5年ほど使ってもチェーンチェッカーが0.75%でも入らないほどの高耐久性を誇ります。距離は最低でも10000km程度は乗っているはずで、SHIMANOのチェーンなら3本目に突入している頃でしょう。

とはいえ、国内定価は驚きの2万円。流石にデュラエースのチェーンが4本買えてしまう値段です。安易に手は出せませんでした。

ある日、Bike24で小物パーツを買う必要が出てきました。Bike24には送料無料ラインは無く、最低でも2500円程度の送料が掛かります。他にも買っておかないと勿体ない。その時に約9000円でDLCチェーンが売っているのを見かけてついでに購入しました。色はもちろん、バイクカラーに合わせたレッドです。

製品概要

実測重量は未測定。SHIMANO、SRAM、Campagnoloのコンポーネントに対応しています。

11速専用で、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)によるコーティングが為されています。付属するミッシングリンクもDLC加工済みです。

カラー展開は以下。

・ピンク
・イエロー
・チェレステ
・オレンジ
・グリーン
・レッド
・ブルー
・ブラック

使用感

ロングライド用ロードバイクに取り付けて使用。カラーはレッドです。ドライブトレインはSHIMANO。チェーンオイルは、KUREのドライを使用。使用期間は3ヶ月、2000kmほど走行した状態でのレビューとなります。

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パッケージ

高級チェーンだけあって、やたら豪華なパッケージが採用されています。これは外箱。

内箱。

内箱を開けると、ようやくチェーンとご対面。写真では分かりにくいですが、チェーンが収まっている部分の質感も指輪ケースの中のようで、ずいぶんと高級感が漂っています。

取り付け

自分で取り付けを行いました。

本製品はコネクトピンは使えず、付属のDLC加工済みミッシングリンクを使う必要があります。11速になってからはずっとコネクトピンを使っており、ミッシングリンク系のものを使うのは今回が初めてでした。

手ではもちろん繋ぐことは出来ず。Twitterでアドバイスを求めると、「仮止めした状態でブレーキを握ってペダルを踏むと繋がりますよ」という情報が得られたので実行してみると、ミッシングリンクが吹っ飛びました。

その後、Twitterで「ミッシングリンクはチェーンステーの下ではなく上で仮止めをすること」という情報が。確かに先程はチェーンステーの下で仮止めをしていました。チェーンステーの下で仮止めしてしまうと、リアディレイラーが動いてチェーンにテンションが掛からず、繋がらなかったわけです。チェーンステーの上で繋いでペダルを踏んだ所、しっかりと繋ぐことが出来ました。

重量

測定はしておりませんが、CN-HG901より少しだけ軽いようです。以下の記事にDLCではないKMC X11SLと比較した内容があります。

プレートは穴あき、ピンは中空となっており、軽量性が追求されています。

コーティング

DLCコーティングは主に「プレート」「ピン」に施されているそうです。チェーンの伸びはピンの摩耗が大きいとされているので、ピンをDLCコーティングで守り、チェーンの伸びを防いでいるということでしょうか。

余ったチェーンをバラしてみました。プレート内部とリンク外側は黒く加工された跡が見えますが、ピンは黒くはありません。ただ、世のDLCコーティング製品を見ると必ずしも黒いわけではないようなので、実はこのピンもコーティングされているということなのでしょう。下記に様々なDLCコーティングの色が示されています。

mst
DLCにおける規格・標準化の現状と実用の展望 | mst 長岡技術科学大学 副学長 物質材料系 教授 斎藤 秀俊 わが国において、ダイヤモンドライクカーボン(DLC) の国際標準規格制定の機運が盛り上がってきているように感じ...

KMCのサイトを見ると、プレートの外側に施されているのは、DLCではなく「TiCN(炭窒化チタン)」という別のコーティングみたいですね。下記画像はKMCのサイトのキャプチャとなります。

このTiCNコーティングを施すことでプレートの硬度は3倍、表面の滑らかさは10倍になるとか。てっきりこの黒い色がDLCなのかと思ってましたが、そうではないようで。

走行性能

CN-HG901からの乗り換えでしたが、性能面では変化が体感出来ませんでした。良くも悪くもなっていない印象です。

どうやらリンク内のピンがDLCコーティングされているらしく、その分チェーンのリンク部の動きが滑らかになるそうですが、体感できるレベルではありませんでした。

変速性能

これはCN-HG901と比べると一段落ちる気がします。

「耐擦過性と低摩擦抵抗性による高効率なシフティング。」と能書きには書かれています。DLCコーティングにより表面の滑らかさが上がって変速しやすくなる……というロジックだとは思うのですが、純正チェーンとの形状の差のほうが変速に及ぼす影響が大きい気がしています。SHIMANOのチェーンは裏表がありますが、DLCチェーンには裏表がありません。こうした所で小さな差が出るのではないかと思います。

また、ペダリング時のドライブトレインのノイズもCN-HG901に比べると大きいですね。ウェットタイプのチェーンオイルを使うとマシにはなると思うのですが、汚れやすいウェットタイプだとせっかくの赤色が損なわれるのでドライタイプを使い続けています。

耐久性

公式サイトでは、「通常の3倍の距離が使える」と書かれています。一体何に比べて3倍なのかは分かりませんが。

現在まで2000km使っていますが、チェーンチェッカーはまだまだ0.75%でも入らない程度です。

前段にも書きましたが、妻のチェーンは既に5年ものなのに、まだ0.75%も伸びていません。2年前からDLCチェーンを付けていない方のロードばかり乗っていたので、実質的な使用期間は3年ほどですが、ブルベだけで10000km、その他も含めると13000kmは乗っているはずです。それで未だに使えているのは凄いですね。値段は高かったですが、元は取れているはず。

その一方、こんなデータもあります。

https://www.velonews.com/gear/we-went-to-germany-to-test-the-most-popular-bicycle-chains-heres-what-we-found

「各社のチェーン耐久性をテストした所、DLCチェーンが一番耐久性が低かった」ということになっています。CN-HG901に比べて、半分の時間でチェーンが1%の伸びを示したということですが……。ちょっと信じられないデータです。

私の使い方だと、CN-HG901は3000kmほどで0.75%の伸びを示し、4000kmほどで1%の伸びとなります。仮にDLCチェーンがその半分しか持たないのだとしたら、既に私のDLCチェーンは伸び始めていないとおかしいのですが、そんな兆候はありません。

よくよく記事を読んでみると、実験条件がちょっと特殊ですね。

・チェーンを溶剤で洗浄
・70kgのライダーが8kgの自転車で8%の坂を13km/hで走る場合の負荷を掛ける
・一定時間ごとに、オイル・水・砂がチェーンに掛けられる
気になるのは、「溶剤で洗浄」という部分です。
私の知人(かなりの数寄者)が、DLCチェーンを完全に脱脂してからチェーンオイルを塗って走ったのですが、脱脂しなかったときに比べて半分の距離でチェーンが伸びてしまったそうです。どういった機序でそうなるのかは分かりませんが、DLCコーティングは脱脂してはいけないのかもしれませんね。
とりあえず、私はシールを侵さないタイプのチェーンクリーナーでメンテして使うことにしています。

見た目

やはり最大の利点は見た目ですね。チェーンという、通常は色で遊べない部分に色が入れられるのは大きいです。チェーンが汚れると折角の赤色が損なわれるので、ドライブトレインをきれいに保つモチベーションが湧きます。

まとめ

個性的な見た目を持つ、耐久性の高いチェーン。コンポ純正チェーンと比べ、運動性能は並ぶ程度、変速性能は少し落ちる気がします。

実際、3倍持つかはまだ確かめられていませんが、仮に3倍の距離を走れるならこの値段は決して高くはないですね。妻が5年間使えているのを見ると、むしろお得なのでは?と思えてくるほどです。

少なくとも、CN-HG901の2倍(8000km程度)は持ってくれることを期待しています。8000km走った時点で、追加レビューを行う予定です。

 

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追記(2021/2/22)

約束の8000kmを過ぎましたので、寿命について追記します。

長さを測定

三浦半島を走りに行ったのですが、沿岸部で砂嵐に遭遇。強風で砂浜の砂が巻き上げられたようです。

これはさすがに放置するとチェーンへの悪影響が大きそうなので、帰宅して翌日はドライブトレインの清掃を実施。

その後でチェーンの伸びを測定したのですが……

 

残念ながらチェッカーが入ってしまいました。

スッと入ると言うよりは、ギリギリ入るといった感じ。シマノのチェッカー基準でちょうど寿命を迎えつつある……といった所のようです。

「かなり持つと聞いていたのに、そこまで持たなかったな……」と思って使い始めた日を調べてみたのですが。

ちょうど使用開始から一年が経過していました。

コロナ禍で大したイベントもなかったせいか、一年前のことがせいぜい半年くらい前のことのように思われていたのでした。

持った距離

この一年のQUARK号(DLCチェーンを取り付けたロード)の走行距離は約9000kmほど。この9000kmの中には、大雨のブルベも含んでいます。

私の場合、SHIMANOのデュラエースのチェーンの交換頻度は4~5000kmに1回程度。およそ2倍の距離持ったということです。KMCが標榜する「通常の3倍」はさすがに盛りすぎている気はしますが、他社の通常チェーンより長持ちなのは確かでしょう。

購入価格もちょうどデュラエースのチェーンの2倍程度だったので、コストパフォーマンスは悪くなかったと言えます。

チェーンの伸びはピンやローラー内部の摩耗で起こるわけですが、DLCコーティングは寿命を延ばしてくれることが(少なくとも私のケースでは)分かりました。

性能に満足したので、評価を★4→4.5に変更します。

次のチェーン

またDLCチェーンをリピートしても良いのですが、ストックの「KMC X11EL」が手元にあるので、次はコレを使って見る予定です。

 

ただ、DLCチェーンも今回の実験で耐久性が確かめられたので、次の交換用に再購入しようと思っています。

 

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評価

対象モデル:  KMC「X11SL DLC」
年式: 2019年
定価: 21780円(税込)
購入価格: 8920円(税込)
公称重量: 231g
実測重量: 未測定

価格への満足度

6/10

チェーンの値段としては高いが、耐久性を見ると納得できる範囲。

総合評価

9/10

性能は落とさず、見た目と耐久性を手に入れている。

レビュアー情報

年齢: 35歳(レビュー執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: QUARK ロードバイク(スチール), GIANT ESCAPE RX(アルミ)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)

# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせて頂きました。

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この記事を書いた人

ロングライド系自転車乗り。昔はキャノンボール等のファストラン中心、最近は主にブルベを走っています。PBPには2015・2019・2023年の3回参加。R5000表彰・R10000表彰を受賞。

趣味は自転車屋巡り・東京大阪TTの歴史研究・携帯ポンプ収集。

【長距離ファストラン履歴】
・大阪→東京: 23時間02分 (548km)
・東京→大阪: 23時間18分 (551km)
・TOT: 67時間38分 (1075km)
・青森→東京: 36時間05分 (724km)

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