【レビュー】LAZER 「GENESIS AF」

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評価:4

ベルギーの老舗メーカー・LAZERから2019年秋に発売されたヘルメット。同メーカーで最軽量モデルとなり、プロツアーでの使用実績もあるモデルです。

目次

購入動機

それまで使っていたOGK KABUTO「ZENARD」が汚れてきたので購入日を調べると、実に2年半前。そろそろ次のモデルを探すか〜と言う事で検討を開始しました。

私は典型的なアジア人形状の丸型骨格で、自転車界隈で言うところの「OGK頭」の持ち主。自転車を始めた時(MTB)こそBELLのヘルメットを使っていたものの、ロードバイクに乗り始めてからは一貫してメインにOGKを使ってきました。履歴は以下。

・BELL 「TRITON」(2007-2008)
・OGK「REGAS」(2009)
・OGK「REDIMOS」(2010-2016※)
・OGK「ZENARD」(2017-2019)

※7年間で4個使用

一番気に入っていたのはREDIMOS。このモデルはカーボンによる補強を入れており、軽いだけではなく安全性にも気を配られたヘルメットでした。しかし、後継モデルとして発売されたZENARDはカーボン補強を廃し、冷却性能を売りにしていました。他のメーカーも検討しましたが、なかなか頭の形に合うモデルがなく、結局ZENARDを購入しました。

この頃からOGKの姿勢には違和感を持ち始めていましたが、それが確信に変わったのは軽量モデル「FLAIR」が発売された時のことです。徹底した軽量化を謳ったモデルでしたが、私的に気になったのは「前傾ポジションで視界を妨げない、前頭部を大胆に切り上げたシェルデザインを採用」という点。ここを短くするということは、前転するような落車で目や鼻の損傷の確率が高まるということです。ヘルメットの本分を犠牲にしてまで軽量化を推し進める姿勢には共感できません。

そんな時に報じられた、OGKのJIS認証取り消し。バイク用ヘルメットの不手際でしたが、この件で完全に心が離れてしまいました。サイクルモードで試着したZENARDの後継「ZENARD EX」が頭に合わなかったこともあり、別メーカーの検討を開始。

昨今はアジアンフィットのモデルを販売するメーカーも増えました。SPECIALIZEDを皮切りに、BONTRAGER、GIRO…と、典型的なOGK頭では従来被れなかったヘルメットが選択肢に上がるようになってきたのです。

私が第一候補のメーカーとして考えていたのが、ベルギーのLAZERでした。昨年からSHIMANOが代理店となり、アジアンフィットモデルが展開されるようになりました。そして、現在応援しているプロチーム「JUMBO VISMA」もここのヘルメットを使っています。

その中で注目していたモデルが、「GENESIS」でした。2019年9月の世界選手権でJUMBO VISMAが実戦投入した軽量ヘルメットです。サイクルモードで先行サンプルが出ていましたが、被った感触もよく、前頭部の厚みもしっかり取られている点が気に入りました。

11月下旬、実店舗への入荷が始まったのを見て店へ。フィット感もサイクルモードの先行サンプルと変わりなく、色も好み。値段も20790円とお手頃だったので、その場で購入しました。

製品概要

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実測重量は247g(Lサイズ・レッド/ブラック・ノーマルパッド)。安全規格としては、EN1078に対応。JCF認証も取っています。

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付属品は以下の通り。

・ヘルメットバッグ
・軽量インナーパッド
・説明書

カラーバリエーションは以下の通り。

・ブラック
・ホワイト
・マットチタニウム
・レッド/ブラック
・フラッシュイエロー

使用感

「レッド/ブラック」Lサイズを購入。主な用途はロングライドです。まだ50km程度しか使用していないため、ファーストインプレッションとお考え下さい。

重量

LAZER最軽量モデルとのことで、Sサイズは公称189gと、200g切りを達成しています。Mサイズ・Lサイズの公称重量は明らかになっていませんが、行きつけのショップのブログで実測重量が公開されていました。Mサイズ(ブラック)は208g、Lサイズ(ホワイト)は236gだそうです。

私の購入した個体は247gと、やや重め。それまで使っていたZENARD(Lサイズ)が230gだったので、そこまで大きな差ではありません。私の頭のサイズでは中々の軽量性と言えます。OGKがサイズに比して軽すぎる気もしますが……。カラーによってデカールの数が違うようで、レッド/ブラックカラーは重くなりそうです。逆にホワイトカラーはデカールが少ない分、ちょっと軽そう。

ロングライドで気になるヘルメットの前後重量バランスも悪くないです。

付属する軽量インナーパッドは、2.6g。ノーマルのインナーパッドが2.7gなので、全然変わりません。汗の処理能力はノーマルの方が高そうなので、ノーマルで運用します。

外観

ZENARD比で、サイドの厚みは同程度。後頭部の厚みも同程度で、前頭部は厚くなっています。これまでの経験上、前方向に投げ出される落車の方が多かったので、顔を守る意味で前頭部の厚みがあるのは安心感があります。落車しないに越したことはありませんが。

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厚みの比較画像です。1枚目がGENESIS、2枚目がZENARD。前頭部の厚みがあるのが分かると思います。

今回購入したレッド/ブラックカラーは凝った色合いで、グラデーションの美しさがポイント。購入の決め手の一つは、この色合いでした。デカールかと思っていましたが、印刷されたプラスチックが表面に貼り付けられています。

サイズ感

アジアンフィットということで、欧米向けのモデルに比べ、帽体は前後が小さく左右が大きくなるように調整されています。

OGKのLサイズがジャストフィットだった私の場合、GENESISのMサイズでもギリギリ入りましたが、Lサイズを購入しました。基本的にはバンダナを着用して走ることが多く、特に冬場は少し厚めの防風キャップを被ることが多いためです。

フィット感

通常、多くのヘルメットはアジャスターの先端がこめかみ付近にあり、後頭部のダイヤルで調整する構造です。これだと締めこんで行った際に均一に締まらず、強く締めると頭痛の元になることがしばしばありました。

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これに対し、同社のヘルメットの特徴である「ロールシス」は、「頭頂部」にアジャストダイヤルが設けられた独特の構造を取っています。頭の周りを一周するワイヤーを上から巻き上げる構造を取っているため、一箇所に圧力が集中せずに自然なフィット感を得ることが出来ます。結構キツく締めたつもりでも、こめかみ辺りの圧迫感が無いのが良いですね。

一方、頭頂部のダイヤルにはイマイチな点もあります。結構、髪の毛が巻き取られます。私は普段からバンダナを付けているので問題はありませんが、髪が長く、キャップなどを付けずにヘルメットを被る人は注意が必要です。……JUMBO VISMAの選手とか大丈夫なんでしょうか? 特に、Koen Bouwman選手とか。

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また、この値段域だと耳の下のストラップ位置を調整するアジャスターが付かないモデルも多いのですが、GENESISはちゃんとアジャスターが付いています。ストラップも薄く、圧迫感がなくて良いですね。汗の処理能力や匂いの出方はこれから使ってみないと分かりませんが。

通気性能

これまで使っていたZENARDは通気・冷却性能が最大の売りでした。GENESISの通気性能もかなり高く、ZENARD同等と言って良いと思います。夏場はかなり快適であると想像出来ますが、冬場の現在は寒く感じます。海外のリリースでは、「ヘルメットを被らない場合よりも8%冷却効果が高い」と謳っているとか。

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前後のエアインテークの画像です。

ZENARDは冬場向けのインナーパッドが付属しましたが、GENESISにはそういったものが付属していません。冬場は、厚めのキャップをかぶるか、発売が予告されている(*)エアロシールドを装着する必要があるでしょう。

* シマノに問い合わせてみましたが、現在は販売は予定されていないそうです。要望があれば検討するとのことだったので、要望しておきました。

空力性能

通気性能の高さは空力性能の裏返しだと考えています。「冷たく感じる」という事は肌に風が当たっているということです。製品ページにも、空力性能に関するアピールは見つかりません。

とはいえ、プロツアーチーム供給モデルです。空力性能も他社の非エアロヘルメットよりは有利になるように設計されている……はず。

安全性能

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ヨーロッパのヘルメット安全規格であるEN1078に準拠しています。貼られているCEマークは、このEN1078への対応が根拠です。余談ですが、大手自転車メディアは揃って「EN1087」と書いていますが、こちらは合板の規格です……。

前述のように、前頭部は厚みがあり、前転するような落車の際にも顔を守ってくれそうです。逆に側頭部は昨今の流行もあってか薄めです。やたら嫌われる「キノコ頭」ですが、横方向に倒れた際のダメージを考えると、私は厚みが有る方が良いと考えているので、ここはちょっと不満な所。規格は通っているので、強度的には安心だとは思いますが。

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後頭部には、左右2箇所に反射材が貼られています。「SUPERLIGHT」の文字も反射するようです。

欧米向けには、安全性を向上するMIPS機能を搭載した「GENESIS MIPS」なるモデル(重量+30g)が販売されています。日本でも是非販売してほしいですね。

その他

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ブルベでの雨天対策に効果を発揮する、KOOFU BIT VISORも装着可能でした。

まとめ

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典型的な日本人頭にもフィットし、かつ総合性能の高いロードバイク用ヘルメット。これまでOGK以外のヘルメットがフィットしなかった方も、試してみる価値が有ると思います。値段も他社のフラグシップよりは安く、カラー展開も多いのが良いですね。

冷却性能が高いため、夏場は快適そうですが、冬場は寒さ対策が必要になるでしょう。エアロシールドの販売が待たれます。

評価

対象モデル:  LAZER「GENESIS AF」
年式: 2020年
定価: 23100円(税込)
購入価格: 20790円(税込)

価格への満足度

9/10

他社ミドルクラスの値段でフラグシップ並の高級感と性能があると思います。

総合評価

8/10

非常に満足。側頭部の薄さのみ気になるので-1としました。

レビュアー情報

年齢: 35歳 (レビュー執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: QUARK ロードバイク(スチール), GIANT ESCAPE RX(アルミ)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)

# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせて頂きました。

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この記事を書いた人

ロングライド系自転車乗り。昔はキャノンボール等のファストラン中心、最近は主にブルベを走っています。PBPには2015・2019・2023年の3回参加。R5000表彰・R10000表彰を受賞。

趣味は自転車屋巡り・東京大阪TTの歴史研究・携帯ポンプ収集。

【長距離ファストラン履歴】
・大阪→東京: 23時間02分 (548km)
・東京→大阪: 23時間18分 (551km)
・TOT: 67時間38分 (1075km)
・青森→東京: 36時間05分 (724km)

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