【レビュー】MOTOREX「CARBON PASTE」

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評価:4.5

スイスのケミカルブランド・MOTOREXの組付け用ペースト。アルミ・カーボンの接触面の摩擦を増やし、確実に固定するためのケミカルです。

目次

購入動機

昨今、ロードバイクフレームにはシートポストが付属してくることが当たり前になってきています。エアロ効果を狙って流線型にしたものや、快適性を狙ってD字断面にしたものなどが一般的です。

まぁ、性能を良くしようとする姿勢は良いのですが……こうしたシートポストって、乗っているうちにずり落ちてくるんですよね。

丸断面のシートポストだとずり落ちたことはないんですが(割と接触面が均一だからだと思う)、非丸断面のシートポストはこれまで100%(3台中3台)の確率でずり落ちていました。もちろん、ファイバーグリップのようなケミカルを使った上で、です。

体重が80kgを超えていることが原因だとは思うんですが、これは非丸断面のシートポストを使う上での一番の悩みでした。

徐々に馴染みが出るのか、おおむね一ヶ月程度でシートポストがずり落ちることはなくなります。ただ、少しでも高さを変えるとまたしばらくずり落ちに耐えなければなりません。

非丸断面のシートポストのフレームとしては3台目のINFINITO CVも、やっぱりシートポストがずり落ちました。またしばらく慣らさなきゃならないのか……という内容をTwitterで愚痴っていた所、私と同じく重量級サイクリストであるジョニーさんからこんな情報を頂きました。

どうしてもウェイトがある我々は。。。

私はモトレックスのカーボンペースト派です。
あれはいいですよ。

モトレックス。初耳でした。

頂いたリンク先の情報を読んでみると、ファイバーグリップ等と違ってコンパウンドを含まないのが特徴とのこと。ファイバーグリップには歯磨き粉のような小さな粒が含まれていて、それの摩擦力でパーツ同士を固定します。しかし、粒なので引き抜く時には表面に傷が付きます。

これに対して、モトレックスはコンパウンドを含まず、パーツ同士の接触面に傷が付かないとのこと。一体研磨剤を含まずにどうやって摩擦力を上げるのか?とは疑問に思いましたが、とりあえず買ってみることにしました。

製品概要

内容量は100g。

使用可能な素材は、カーボン・アルミ。鉄はダメみたいです。

ただし、使える素材であっても上記のような滑り止め加工(シボ加工というらしい)があらかじめ成されている面には使用不可とされています。つまり、ツルツルな面同士の場所にしか使えないということです。こういった場所に塗ると逆に固定力が落ちるらしいので注意。

使用感

2020年に購入したINFINITO CVは、既にファイバーグリップを塗って、馴染みが出てずり落ちの症状は無くなっていました。

本製品の初使用は、妻のOltre XR4の組み付け時。INFINITO CVと同様、Oltreのシートポストも表面はツルツル。そこを臼で押すタイプですが、いかにもずり落ちそうに見えました。

そこで、組付けを行うショップにモトレックスのカーボンペーストを持ち込み、「これを使ってください」と依頼。ショップからは「これ、そこまで止まりませんよ。まぁ、それでも宜しければ……」とは言われたものの、実験の意味合いもあったのでそのままお願いすることにしました。

半年間、妻がブルベで乗っても全くシートポストのずり落ちは無し。効果は確認できました。

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妻のOltre XR4購入から半年後、私もOltre XR4を購入。この時もショップにモトレックスカーボンペーストを渡し、シートポストへの塗布をお願いしました。

作用する仕組み

前述のように、本製品は従来の「コンパウンドで摩擦を増やして止める」という製品とは仕組みが違います。

輸入元である服部産業さんの記事には、以下のように書かれています。

中身を容器から出して、指で触ってみるとヌルヌルしているのですが
非常に細かな粒子のペースト状のケミカルで、強い力をかける事により
大きな固定力を発揮する仕組みになっております。
(ダイラタンシーと同じ理屈です)

 

ダイラタンシーってなんぞや?と思って調べてみると、以下のような現象を指すようです(出典: 東京理科大学 川村研究室サイトより)。

ダイラタンシー現象とは、物体の内部に力がかかり、液体の状態から固体に変化する現象です。
原理としては、物体(本実験では片栗粉を使用)の粒子(小さい粒子)に力が加わると、
その微細な粒子が密集して粒子間の隙間が小さくなり、強度が増し固体になります。
しかし力を加えるのを止めると再び粒子の隙間が広がり、元の液体へと戻ります。

 

シートポストの組付けの場合、フレームとシートポストの間に本製品を塗り、そこに大きな力が掛かると一時的に固体になるということのようですね。

効果

結論から言うと効果は抜群でした。

Oltre XR4は納車直後から全くシートポストのずり落ちは無し。いつもならば最初の200kmくらいは、「ずり落ち→戻す」の繰り返しを5セットくらいやるんですが、今回は全く無し。

現在までに1000km程度乗りましたが、シートポストはガッチリと固定されています。Amazonでも体重90kg超の人が全く落ちなくなった旨のレビューを投稿していましたが、これは本当っぽい。

塗り方

蓋の裏にハケが付いているので、これを利用して塗ります。そこまで厚塗りをする必要はなく、表面を覆う程度で良さそう。

外し方

最近少しサドルが低い気がしたので、少しだけサドルをあげようとしたのですが……あまりにもガッチリ固定されていて、全然シートポストが抜けない

完全にシートポストとフレームがカーボンペーストで接着されたようになっている感じ。そこで、サドルを横からプラハンマーで数回弱めに叩いた所、「ペリッ」と音を立てて外れました。

Di2のバッテリーが内蔵されているのでシートポストを完全に引き抜くことは出来ないので、少しだけ抜き出して見てみました。

ペーストを塗った部分は特に乾いているわけではなく、ゲル状を保っています。ここに力が掛かると固体になる……ということですね。シートポストの表面にも傷は付いていませんでした。

今回は100g入りのものを買いましたが、たぶん一生使い切らないでしょう。1回1gも使いませんので。

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一応5gの小袋入りのものも存在しますが、私が買おうとした時は売っていませんでした。ちょっと組み付けに使用するだけなら、こちらの5gサイズのほうが良いと思います。

まとめ

非常に強力なカーボン&アルミ用の滑り止めケミカル。コンパウンドを含まず、シートポストやフレームに傷が付かないのは良いですね。

「平滑面同士にしか使えない」という縛りがありますが、シボ加工がなされていないシートポストとフレームの間の滑り止めとしては凄く良いものだと感じました。

シートクランプを強く締めすぎてカーボンシートポストを割ってしまう……というのは私も一度やったことがありますが、これを使っていたらそれも起こらなかったかもしれません。そうした用途で使うショップもあるようです。

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評価

対象モデル:  MOTOREX「CARBON PASTE」
年式: 2020年
定価: 3300円(税込)
購入価格: 2970円(税込)

価格への満足度

6/10

滑り止めケミカルとしてはお高め。

総合評価

9/10

使い所は限られるが、固定力は抜群。シートポストがずり落ちなくなる。

著者情報

年齢: 36歳(執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: QUARK ロードバイク(スチール), GIANT ESCAPE RX(アルミ)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)

# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせて頂きました。

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この記事を書いた人

ロングライド系自転車乗り。昔はキャノンボール等のファストラン中心、最近は主にブルベを走っています。PBPには2015・2019・2023年の3回参加。R5000表彰・R10000表彰を受賞。

趣味は自転車屋巡り・東京大阪TTの歴史研究・携帯ポンプ収集。

【長距離ファストラン履歴】
・大阪→東京: 23時間02分 (548km)
・東京→大阪: 23時間18分 (551km)
・TOT: 67時間38分 (1075km)
・青森→東京: 36時間05分 (724km)

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