【レビュー】Muc-off「LUDICROUS AF」

評価:4

Muc-offの高級チェーンルブ。国内定価は11000円です。

購入動機

3月に行ったチェーンルブアンケートの結果、気になって購入しました。

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Muc-offの高級チェーンルブ「LUDICROUS AF」を購入しました。 購入まで 先日行ったチェーンルブアンケートで絶賛する人が多かったことが理由です。 超高級チェーンルブ LUDICROUS AFは、昨年10月に発売。 […]

詳しい購入動機は↑の記事に。

LUDICROUSは、低抵抗という意味でも「世界一」を標榜するチェーンルブですが、私の関心は「一回の塗布あたりでの走行距離」にありました。このチェーンルブは、ドライ条件ならば「1回の塗布で1600km走れる」と豪語しているのです。

私も数々のチェーンルブを試してきました。ブルベでは数百kmを一気に走るため、1回のイベント中に注油が入ることもしばしば。しかし、やはり面倒なのでその回数を減らしたいのです。そのためには、「1回の塗布で何km走れるか」が重要になります。

通常のチェーンルブの場合、1回の塗布で走れる距離は300~400kmが普通。500km持てば優秀、600km持てばかなりの高耐久と言えます。1600kmが如何に異常な数字かお分かりいただけると思います。

しかし、能書きを鵜呑みにするほど私も素直ではないので、「実際には何km持つのか」という検証をしてみることにしました。

Twitterにて「#LUDICROUS耐久テスト」というタグを付けて、走行距離をメモ。最終的に何kmで油膜が切れるかを検証しました。

製品概要

容量は50ml。ウェットルブです。

成分については特に記載はありません。SDSには成分が書かれていますが、ここには記載しません。

消防法上の分類は、「第四類(引火性液体) 第3石油類」。SDSを持参すれば飛行機への持ち込みも可能です。

使用感

ブルベ用のロードバイクのチェーンに塗布して使用しました。

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塗布したチェーンは、KMC「X11EL(シルバー)」です。

特性

LUDICROUSが出る前の高級チェーンルブと言えば、大抵はドライルブ(溶剤が揮発して有効成分が残るタイプ)だったため、LUDICROUSもドライルブだと思いこんでいました。

しかし、実際に買ってみるとウェットルブでした。手で触ってみても、そこまで粘度は高くありません。1600kmも持つとはにわかには信じがたい。

Muc-offのケミカルは香料で香りを付けてあることが多いのですが、LUDICROUSは「油」という感じの香り。香料は使われていないようです。

施工

ウェットルブなので「注油して終わり」と思いきや、マニュアルには中々面倒な施工手順が書かれています。

① 潤滑油を塗布する前に、ドライブチェーンの油分を完全に除去します。超音波洗浄器の使用が理想的です。
② ドライブトレインが乾いていることを確認してください。製品効果が最大限に発揮できるように、クリーニング後はチェーンをバイクから外し、オーブンに入れて全体を乾燥させてください。チェーンが常温に戻り、水分が完全に抜けてからLudicrous AFを塗布します。
③ ボトルを勢いよく振ってから、チェーンのリンクにLudicrous AFを1~2滴ずつ両面に塗布します。チェーンリングやプーリーにも塗布してください。ペダルを反対方向に回して、潤滑油をリンク全体に馴染ませます。潤滑油を浸透しにくい部位まで浸透させるために、超音波洗浄器の使用を推奨します。
④ 使用の最低24時間前までに塗布を終わらせてください。
⑤ 余分な油分は丁寧に拭き取ります。

……なんというか「注文の多いチェーンオイル」ですね。超音波洗浄器を洗浄と塗布の両方で使えという。

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一応、うちにはメガネ用の超音波洗浄器があったので、①の工程の洗浄時にのみ使用しました。

今回は、あと2000kmほどで寿命を迎える(はず)、使用済み「X11EL」を洗浄して使用。一度完全脱脂する必要があるため、SIL-TEC加工済みの新品デュラチェーンを使うのは勿体ないことが理由です。

ジップロックにチェーンを入れて、その中にディグリーザーを入れて汚れをかき出す感じ。

ただ、②の工程の「オーブンに入れて乾燥」と、③の工程の「超音波洗浄器の使用」は省略しました。チェーンをオーブンに入れて乾燥するなんて聞いたことがありませんし。また、超音波洗浄器を用いてオイルを浸透させるということは、チェーンをジップロックなどに入れてオイルで漬けこむ感じにする必要があるはず。この高級チェーンルブをそんな贅沢に使うのはちょっと無理です。

1コマずつ丁寧に塗布。クランクを逆回転させて、あとは余分な油分を拭き取り。

これで施工は完了です。

1回の塗布あたりでの走行距離

いきなり結論を書きますが、894kmで油膜切れとなりました。

こちらが油膜切れと判断した時点の写真です。ローラーがキラキラに輝いているのがお分かりでしょうか。

一見、綺麗な状態に見えますが、これは油膜が切れてローラーの表面を磨いてしまっている状態です。この日は40kmほどしか走行していませんが、走行開始の時点ではうっすら油膜が残っていました。写真は走行終了時点のもの。正確には、850~894kmの間のどこかで油膜が完全に切れたものと思われます。

この894kmの中で、雨天走行は全部で10km程度。98%はドライ条件での走行です。

diatec | ダイアテック公式サイト

世界最速のルブLUDICROUS AFは、世界一高いのか?Muc-offは現在6種類(E-BIKEラインナップ除く)のチ…

Muc-offの代理店であるダイアテックのサイトを見ると、Ludicrous AFの1回の塗布あたりの「最短」距離が800kmだそうです。うーん?

もしかしたら、「オーブンで乾燥」「超音波洗浄器で浸透」を真面目にやった上で「屋内のみでの使用」ならば、それくらいは持つのかもしれません。

静粛性

塗布直後はかなり駆動音が静かになります。Vipro’s「muon」と良い勝負。

400km程度でチェーンの駆動音が気になるようになりました。600kmを過ぎると駆動音が顕著になってきたため、「そろそろかな」と思っていました。

走行抵抗

踏みはかなり軽い印象があります。あくまで主観ですが。速度差を比較するような実験は行っていません。

踏んだ感触はソフトで、ワコーズのチェーンルブリキッド「パワー」風。あまりダイレクト感は無いです。

cyclowired

イネオス・グレナディアーズやEFエデュケーション・NIPPOとタッグを組みルブリカントを開発するマックオフが、最新のLU…

各種測定結果は上の記事に載っています。Muc-off自身が出しているデータなので何とも言えませんが、低抵抗であることは確かなようです。

耐水性

今回の実験ではそれほど雨の中を走っていないので、雨天走行時の耐久性は未知数です。

今後、雨天走行をする機会があればその後に追記します。

ブルベで雨天走行をしたので、耐水性について追記しました

防汚性

ドライルブほど綺麗な状態は保てませんが、ウェットルブにしては綺麗な時間が長く続きます。200kmくらいまでは結構綺麗。

入手性

なかなか在庫している店は少ないと思います(高価過ぎる)。取り寄せか通販になるでしょう。

使用量

1コマに1滴程度の塗布で、2gほどの使用量でした(塗布前後の容器重量を計測)。

1本50ml入りなので、(比重は分かりませんが)およそ25回は使用できそうです。

価格

さんざん書いていますが、税込で11000円/50ml。AbsoluteBlackと並んで、現時点での世界で最も高級なチェーンルブです。

ただ、1回の注油で800km使えて、25回分使えるとすると、1本で20000km使える計算になります。なかなかコストパフォーマンスとしては悪くないです。

その他

「LUDICROUS」は、「馬鹿げた」「滑稽な」という意味です。

「馬鹿げたほど高性能なチェーンルブ」ということでしょう。

まとめ

高耐久で防汚性の高いウェットチェーンルブ。

1600kmの耐久性を期待していたので少々ガッカリではありますが、それを忘れて「800km持つ」「汚れにくい」という点に注目するとかなり優秀と言えます。他にそういうチェーンルブは(私の知る限りでは)今までありませんでしたので。

「1200kmブルベを道中の注油なしで走る」は実現できそうにないですが、少なくとも600kmブルベならば最後まで快適に走れそうです。

値段は高いですが、相応の性能を持ったチェーンルブだと感じました。

価格的にはジャブジャブ使おうという気にはなりませんが、ブルベ時のチェーンルブとして、これからも継続使用予定です。

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追記(2022/8/26)

先日のブルベでようやく雨の中を走れたので、耐水性について追記します。

先日参加した「宗谷岬600」ブルベでは、LUDICROUS AFを使用しました。指示されたほど厳密な注油を行ったわけではありませんが、一通り清掃してから1コマずつ注油しています。

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宗谷岬600は1日目の後半が雨でした。朝方にも雨は合ったものの、こちらは割と軽い雨(20km程度)。まともに降られたのは最後の80km程度です。

この雨でほぼチェーンルブは流れてしまったようで、ホテルに到着した頃にはギシギシ音が目立つようになっていました。

「最短でも800km」と豪語しているはずですが、100kmほどの雨で流れてしまうのはちょっと疑問ではありました。大体どんなチェーンルブも200kmずっと雨だと油膜切れを起こす気はしますが、それにしてもちょっと短い。ドライ条件では894kmの持ちを確認しましたが、耐水性はそれほど高くないようです。

耐水性を考慮し、評価を★4.5→4.0に下げました。雨の中を100km以上走る可能性があるのであれば、別の製品を試したほうが良さそうです。

評価

対象モデル:  Muc-off「LUDICROUS AF」
年式: 2021年
定価: 11000円(税込)
購入価格: 11000円(税込)

価格への満足度

4/10

初期投資がさすがにちょっと高すぎる。

総合評価

8/10

1600kmはさすがに盛りすぎだが、800km程度は持つ。防汚性・静粛性も高い。

著者情報

年齢: 37歳(執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: BIANCHI OLTRE XR4(カーボン), QUARK ロードバイク(スチール)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)

# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせていただきました。


この記事を書いた人
ばる
ロングライド系自転車乗り。昔はキャノンボール等のファストラン中心、最近は主にブルベを走っています。PBPには2015・2019・2023年の3回参加。R5000表彰・R10000表彰を受賞。

趣味は自転車屋巡り・東京大阪TTの歴史研究・携帯ポンプ収集。

【長距離ファストラン履歴】
・大阪→東京: 23時間02分 (548km)
・東京→大阪: 23時間18分 (551km)
・TOT: 67時間38分 (1075km)
・青森→東京: 36時間05分 (724km)