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【レビュー】ナカガワサイクルワークス「エンドワッシャー」
評価:4
スチールフレームで有名な「ナカガワサイクルワークス」が販売している、クイックリリースのタケノコバネの代わりに取り付けるワッシャー。特許取得済み。
エンドの切り欠けの部分を埋めることでハブ軸にかかる圧力を均一化し、歪みを取って回転効率を上げることを目的としたアイテムです。副産物として、剛性感の向上も見込めます。
購入動機
本製品を初めて見かけたのはFacebook。誰かがシェアした記事を見ました。理論は面白いと思ったのですが、値段は前後で6480円。「ちょっと高いな」と感じ、その際には購入を見送りました。
それから数ヶ月後。たまにやっていた「サイクルショップ巡り」でナカガワサイクルワークスに伺いました。
そこで、社長の中川さん自ら本製品についての製作動機や意図をお話いただきました。
中川さんはフレームビルダーという仕事柄、フレームが修理に持ち込まれるのが日常。そこで、フレームのエンドが歪んでいることが多いという事実に気づいたとのこと。その対策として本製品を作成したそうで、当初は実用新案として出願を考えていたと言います。しかし、実際に出願に行ったら「これは特許になります」と言われ、特許を取得したそうです。
お話を聞いた後、本製品を取り付けた自転車にも試乗させていただき、理論と効果に納得。その場で購入しました。
製品概要
実測重量は前後で28g。
前輪用と後輪用は別設計で、突起の幅と厚みが異なります(一般に、フレームのエンド形状は前後で異なるため)。区別のために、前輪用には小さな穴が開けられています。
・後輪用: 幅10mm, 厚み6mm
最近のモデルはナカガワのロゴが入っているようですが、私のは初期タイプなので特にロゴは入っていません。
使用感
基本的にはスチールフレームに取り付けて常用しています(エンド歪み防止の目的)。
ただ、私の仮説では「本製品はスチールフレームでこそ効果を発揮する」と思っていたので、比較のためカーボンフレームにも取り付けて実走してみました。以下が使用したフレームです。
・カーボンフレーム: SCOTT FOIL
どちらのフレームにも、DT SWISS社の「RWS STEEL」を使用して本製品を固定しています。「固定力が大きい方が、より差が出やすい」と推測されるため、RWSを使用しました。
取り付け
クイックリリースのタケノコバネを外し、本製品を取り付け。フレーム側のエンドの切り欠け部分に、本製品側の突起が収まるようにします。
本製品が使用できるのは、
エンドの厚み = 突起の厚み
エンドの厚み > 突起の厚み
の場合のみです。エンドの厚みが突起よりも薄い場合は使用できません。突起部分だけがハブ軸に振れたのでは本末転倒ですからね。
フレームの上下方向が正しければ、重力で突起部分が下に来るので、特に苦労せずとも取り付けが可能です。輪行時など、上下方向が逆の状態でホイール取り付けようとすると苦労します。
効果
スチールフレームとカーボンフレームで、本製品で謳われている2つの効果について検証しました。
②剛性感の向上
ホイールの回転性能
こちらについては、自宅で実験を行いました。
・タケノコバネを使用した場合と、本製品を使用した場合を比較
・3回の試行の平均値を結果とする
・ホイールとクイックは同じものを使用
結論から言うと、タケノコバネを本製品に交換しても、回転時間に有意な差は見られませんでした。スチールフレーム、カーボンフレーム共に同様の結果です。どちらの場合も30秒±5秒程度。ホイールを回す力が手動である以上、厳密な計測は出来ないのですが、空転性能は特に差はないようです。
もちろん重要なのは無負荷時の回転性能ではなく、負荷の掛かった時の回転性能なので、そちらに違いが出るのかもしれません。本製品を取り付けた時の方が、惰性での伸びがあるように感じはするのですが……。
剛性感
こちらについては、定量的な測定は出来ないので、あくまで感触の差のみを記載します。リヤ側よりはフロント側の剛性感が上がった結果により起こる感触の変化があります。
スチールフレームの場合、取り付け前後で明確に剛性感の差を感じました。特にダンシング時やスプリント時には顕著で、フレームの反応がよくなった感触があります。ダウンヒルのカーブでも安定感が上がります。
また、エンドのガタで消されていた細かな感触が伝わるようになります。いわゆる「ロードインフォメーションが伝わりやすい」状態になったと思います。
次に、カーボンフレームの場合。こちらは正直、大きな差を感じませんでした。気持ち、フロントの剛性感が上がったかな?と言う程度。
推測
ここからは私の推測。
本製品、「スチールフレームには効果が高いけれど、カーボンフレームには効果が薄いのでは?」と私は思っています。
本製品は、フレームエンドの切り欠けを埋めることで、「ハブ軸に均一に圧力をかける」ための製品です。そして、均一に圧力をかけようと思うと、切り欠けを埋める突起の厚みと材質はフレーム側と同一で無ければいけません(正確には塗装の厚みとかも考慮しなければならない)。
スチールフレームの場合、エンドもスチール製です。本製品はナカガワのスチールフレーム向けに元々作られたものなので、厚みも一致するはず。写真を見ても、エンド幅と突起の幅が一致しているのがわかります。これならば、確かにハブ軸に均一に圧力をかけられそうです。
カーボンフレームの場合、エンドの材質はアルミもしくはカーボンです。更に、厚みもスチールフレームよりは厚く作られてることがほとんど。写真を見ると、ハブ軸との間に2mmほどの隙間があるのが分かるでしょうか。これではハブ軸に均一に圧力を掛けられているとは言えません。
一応、この辺りはナカガワ側でも把握しているようで、アジャスター付きのものを開発中のようです。
ただ、2017年9月現在、通販などではアジャスター無しのものしか見たことがありません。
価格
本製品の最大のネックはここでしょう。
私が買った時は6480円(税込)でした。その後8640円に値上げとなり、現在は10800円となっています。さすがに小物金属4個に1万円は中々ポンと出せる人は少ないんじゃないでしょうか。私も実際に使って決心したので。試せる場所があれば良いのですけどね。
その他
本製品は、元々はハブの歪みだけではなく、フレーム側のエンドに日常的に余計なストレスが掛かることを防ぐためのもの。当然、フレームの変形を防ぐ保護効果もあるはずです。スチールフレームを大事に使いたいので、私は日常的に本製品を取り付けています。
まとめ
手軽に走行性能やフィーリングを向上出来る、独創的なパーツ。正しくは、「向上」というよりは、「本来の性能を引き出す」と言ったほうが正しいのかもしれません。DTのRWSもそうでしたが、割りと細かい所でロスをしている部分は、探せば多いということなのでしょう。
ただし、効果を顕著に実感できるのは、スチールフレームだと思います。カーボンフレームだと材質や厚みの違いで本来意図した効果は出づらいと思います。そこは、アジャスター付きの改良版の登場が望まれますね。
特に取り付けることによるマイナス効果は感じていないので、フレーム保護の意味も兼ねてスチールフレームに取り付けて継続使用予定です。
追記(2020年5月6日)
久々に調べてみたら、厚みのバリエーションが増えていました。
私が持っているのは、「前:5mm, 後:6mm」の組合せです。スチールフレームには適した厚みでしたが、カーボンフレームだと厚みが足りないと過去のレビューで書きました。
前述の通り、本製品はエンドの厚みと一致しないと効果を発揮しない製品です。その意味で、こうした厚みを変えたバリエーションが発売されるのは自然な流れと言えます。以前はアジャスター付きにしようとしていたようですが、厚みのバリエーションを増やす方向になったようですね。
調べた限りでは現在のバリエーションは以下の通り。
・6mm
・6.8mm
・6.8mm
・7.8mm
評価
対象モデル: ナカガワサイクルワークス「エンドワッシャー」
年式: 2016年
定価: 6480円(税込・当時)
購入価格: 6480円(税込)
公称重量: 不明
実測重量: 28g
価格への満足度
特許維持費などが掛かるのだろうが、もう少し安いと嬉しい。
総合評価
スチールフレームの性能向上を実感。
レビュアー情報
年齢: 33歳 (執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: QUARK ロードバイク(スチール), GIANT ESCAPE RX(アルミ)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)
# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせて頂きました。