【レビュー】日泉ケーブル「プレミアムブレーキケーブルセット」

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評価:5

大阪の新興ケーブルメーカー・日泉(にっせん)ケーブルの最高級ブレーキケーブルセット。

目次

購入動機

2017年10月。大阪に行った時にお世話になったショップ「K&M CYCLE 南船場店」の店長さんから、こんな話をいただきました。

 「面白いケーブルがあるんですけど、使ってみませんか?」

提示されたのは日泉ケーブルというメーカー名。この段階では全く私も聞いたことがありませんでした。調べてみると、ヴィンテージバイク向けの渋いアウターケーブルを作っているメーカーとのこと。そのメーカーが本気を出して作ったロード向けの最高級モデルをテストしてみないか?というお話でした。もちろん、新しいものには興味あり。二つ返事で受けることにしました。

ちょうどその頃、レース用フレームのオーバーホールを控えていたので、それに導入を決定。お世話になっている自転車店・CYCLECUBEに持ち込んだのでした。

同社のロード用ケーブル類の分類は上記の表の通り。赤線で囲んだ部分が、プレミアムブレーキケーブルセットの内容になります。

K&M CYCLE BLOG
日泉ケーブルの綺麗すぎる新製品 "sp31彩(SAI)" : K&M CYCLE BLOG 日泉ケーブルのインナーケーブル"sp31"の上位グレードがついに発売開始となりました。日泉ケーブルからSP31の上位グレードが発売されるということでサンプルを頂きました。...

なお、更に上位のインナーケーブルとして「彩」という製品もあります。

製品概要

実測重量は未測定。インナーケーブルは、同社製の特製インナー「SP31」を同梱(シマノ用)。

カラーは、以下の4種類。

・ブラック
・クリアー
・クリアーブラック
・クリアーレッド(限定)

パッケージ内容は以下。

・ステンレス製PTFEライナー入アウター(1800mm×1、800m×1)
・SP31インナーケーブル(シマノロード用前後)
・アウターキャップ(4個)
・インナーキャップ(2個)

インナーケーブルは、通常19本の素線で構成されるところを31本にした特注品。スリック加工を施した上で、プラズマメッキ加工されています。

使用感

SCOTT FOILとBOTTECCHIA T1 TOURMALETに取り付けて使用。使用期間は9ヶ月です。走行距離は4000km程度。

それまで使っていたのは、SHIMANOのDURA-ACEグレード(ポリマーコーティング)です。ブレーキは、DURA9100のダイレクトマウントを使用しています。

使用者は、それまではシマノ純正一辺倒。サードパーティーのケーブルは使ったことはありません。

組付

ご提供頂いたK&M CYCLEさんは大阪のお店。私は神奈川在住ということで、組付はいつもお世話になっているCYCLECUBEさんにお願いしました。

「ケーブルはこれで!」と持ち込んでみたものの、店のスタッフの方全員が「初めて見るなぁ」「聞いたことないですね」という反応。この段階(2017年秋)では直販くらいしか手に入れる方法は無かったので無名なのも当然でした。

お預けして一週間ほど。組み上がった際に、店長さんから説明を受けました。

 「このケーブル、ちょっと変わってますね。
  シマノの場合、アウター内部にはグリスが塗ってあって、インナーの表面は凸凹。
  このインナーの凸凹にグリスが入ることで潤滑してるんですが。」

 「日泉ケーブルは思想が逆ですね。アウター内部もインナー表面もツルツルにして、
  更にインナーに表面加工してスムーズさを出そうとしてます。」

私は自分で組付をやったことがないのですが、図付きで解説を頂いて意味を理解。組む前は「これ、今の(DURA-ACE)より重くなるかもしれませんよ。」と言ってた店長さんも、組付け後には「これ、(引きが)軽いですね」と太鼓判を押していました。

調べてみると、アウターのライナーにテフロン製ライナーを使うのも、プレミアムグレードの拘りとのこと(ノーマル版はポリエチレン製ライナー)。プレミアムとノーマルの違いはこのライナーによるところが大きく、アウターの真円度を出すためにライナーにもかなりの真円度を要求しているようです。

外観

ステンレス製アウターということで、もっと金属らしい見た目になると思っていたんですが、至って普通の黒い見た目。

同社のノーマルグレードのステンレスアウターはビビッドな色をしているんですが、プレミアムはかなり落ち着いていて、一見してどこのメーカーのものかは分かりません。

ただ、触ってみると非常にしなやか。ハンドルを切ってもシマノのものよりアウターケーブルによる抵抗は少ないです。

重量

「ステンレス製のアウター」「密度を高めたインナー」という謳い文句から重くなるのだろうなーと想像していました。が、結果としては日泉に変えた後の方が60g軽量化(自転車全体の重量を前後で比較)。ブレーキとシフトをセットでシマノ→日泉に変えましたが、軽くなっていて驚き。

もちろんケーブルの長さで重量は結構変わるとは思うのですが、60gは誤差というには少し大きいような。計測器の精度はいまいちですが、とりあえず特別重いということは無さそうです。むしろグリスが入らない分軽くなるかもしれません。

性能

さて、肝心の性能です。月並ですが、非常に引きが軽いです。引っかかりを全く感じない。

シマノのDURA-ACEグレードも最初はかなり良いんですが、しばらく使うと引きが徐々に重くなります。ポリマーコーティングが剥がれてくるのが原因ではないかと考えていますが……性能は置いておくにしても、あの抜け殻は見た目という点でも大変よろしくありませんでした。

本製品は7ヶ月使用時点でも引きの軽さに変化を感じませんでした。多少は落ちているのかもしれませんが、気づかない範囲に収まっています。むしろ、いつ変えてよいのかよく分かりません。SPDのクリートのような嬉しい悩みです。ポリマーやグリスを使っていないので耐久性も高いということなのでしょう。

その他

私が手に入れた当時は直販しかありませんでしたが、今や野口商会・東京サンエス・東商会等々、多くの代理店が取り扱っています。Amazonですら手に入るようになりました。入手性はかなり今は良くなっていると言えるでしょう。

なお、値段は7200円+税と、お値段もプレミアム。加工にかなり拘っているので仕方ない面はあるのですが、シマノの最高級(4000円ほど)と比べても倍近い値段はなかなか手が出しにくくはあります。

まとめ

非常にしなやかなアウターケーブル。引きが軽く、その軽さが長く持続するのも魅力です。もっと早くレビューしようと思っていたのですが、性能がどれくらい続くのか興味があったので長期使用のレビューとなりました。半年以上使っても変わらない使用感なので、耐久性は本物だと思います。

欠点としては、値段の高さ。偏執的なまでの拘りから来るクオリティにそれだけの価値を感じれば、買いです。耐久性も高く、性能も長続きするのでそこまでの割高感は無いと感じます。

CYCLECUBE
話題の日泉ケーブル取り扱っています し■日泉ケーブル 当店スタッフもオススメの日泉ケーブル、スペシャルステンレスインナーケーブルをシマノ用、カンパ用とも在庫しています。 引きの…

なお、最初は「知らないなぁ」と言ってたCYCLECUBEさんですが、わずか半年後にはすっかり日泉ケーブル推しに。組付けをするフレームの多くが日泉になっていると聞いて驚き。最初は「重くなるかも」なんて言ってたのに……! たった数ヶ月でここまで手のひらが返るのかと、ちょっと可笑しくなりました。実際、私のフレームへの組付けで良さを分かって徐々に取り入れ始めたようでした。

その後サイクルスポーツ誌でも2号連続で取り上げられるなど、一年前には想像出来ないほどのシェアを獲得しています(少なくとも私の周りでは)。

ただ、この人気は徹底的に追求されたクオリティに基づいたものだと思うので、それが保てるかがこれからの注目すべき点だと思っています。サードパーティーのメーカーでここまで作り込んでいるメーカーは少ないと思うので、これからに期待しています。


なお、ディスクロードの出現(電動・油圧化が進むため)によって日泉ケーブルは先行きが厳しいのかな、と思っていましたが、コロナ禍でヨーロッパでの自転車人気が高まった結果、現在の業績はかなり順調であるようです(テレビで紹介されていました)。

私も妻もすっかり日泉ケーブルのファンになってしまい、今や家にある全てのロードバイクのシフトケーブル・ブレーキケーブルは日泉ケーブル製に入れ替わりました。

次に組むオルトレも、変速は電動ですが、ブレーキは日泉ケーブルにする予定です。

このような素晴らしいパーツを教えて頂き、ご提供頂いた「K&Mサイクル 南船場店」様、ありがとうございました。

 

評価

対象モデル:  日泉ケーブル「プレミアムブレーキケーブルセット」
年式: 2017年
定価: 7920円(税込)
購入価格: K&Mサイクルさんご提供

価格への満足度

(ご提供品のため評価対象外)

総合評価

10/10

引きの軽さ、耐久性に満足。

レビュアー情報

年齢: 36歳 (執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: QUARK ロードバイク(スチール), GIANT ESCAPE RX(アルミ)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)

# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせて頂きました。

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この記事を書いた人

ロングライド系自転車乗り。昔はキャノンボール等のファストラン中心、最近は主にブルベを走っています。PBPには2015・2019・2023年の3回参加。R5000表彰・R10000表彰を受賞。

趣味は自転車屋巡り・東京大阪TTの歴史研究・携帯ポンプ収集。

【長距離ファストラン履歴】
・大阪→東京: 23時間02分 (548km)
・東京→大阪: 23時間18分 (551km)
・TOT: 67時間38分 (1075km)
・青森→東京: 36時間05分 (724km)

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