【レビュー】OGK KABUTO「IZANAGI」

評価:4.5

OGK KABUTOのロード向けオールラウンドヘルメットのフラグシップモデル。

東京オリンピックに向けて製作されたモデルで、「至極のフィーリング」を謳っています。

 

購入動機

2019年末に「LAZER GENESIS AF」を購入しました。

関連記事

ベルギーの老舗メーカー・LAZERから2019年秋に発売されたヘルメット。同メーカーで最軽量モデルとなり、プロツアーでの使用実績もあるモデルです。 購入動機 それまで使っていたOGK KABUTO「ZENARD」が汚れてきたので[…]

 

購入した当初はかなり気に入っていたのですが、使い続けるうちに不満が出てきました。

GENESISは軽量モデルということもあって、あご紐もかなり薄く軽量化したものが使われています。これが高速域になると耳の下でバタバタバタと音を立てて振動することがありました。発生条件がよく解らないのですが、あご紐を締めても発生します。意外とコレのストレスが大きく、少しずつ使わなくなってしまいました。

関連記事

OGK KABUTOのロード向けノーマルヘルメットのフラグシップモデル。エアフローを重視しており、「冷感ヘルメット」を名乗っています。 購入動機 以前、OGK KABUTOのエアロヘルメット「AERO-R1」を購入しました。レビューは以[…]

 

結局、前に使っていたZENARDを復活。しかしこれも結構長いこと使っているモデル(2017年購入)。さすがにそろそろ交換が必要です。

そんなある日、ショップ店頭で新作の「IZANAGI」を発見。試着をさせてもらうと、あまりのフィット感の良さに驚き、即購入を決断してしまいました。

 

製品概要

実測重量は240g(Lサイズ/ノーマルパッド装着時)。サイズはXS、S/M、L、XL/XXLの4展開。

カラーは充実の11種類。私はメタリックレッドを購入しました。

パッドは前後(フロントパッド・トップパッド)に分かれるようになりました。

・ノーマルパッド (初期設定)
・ウルトラスウェットパッド
・ノーマルパッド
・A.I.ネット
・Winterインナーパッド
AERO-R1やAERO-V1などが対応したバイザーには非対応となっています。

使用感

主な用途はロングライド。普段の夜練でも使用しています。

比較対象は同社のZENARD(not EX)・AERO-R1、LAZERのGENESIS AFです。

 

製品コンセプト

プレスリリースには以下のコンセプトが謳われています。

IZANAGIはその三大要素「冷感」「軽量」「空力」を融合し、”至極”のフィーリングを実現。過酷な環境で頂点に立つための実戦型ヘルメットです。

OGKでは、従来この3要素を別々のヘルメットが担っていました。

・冷感: ZENARD-EX
・軽量: FLAIR
・空力: AERO R1
という役割分担。サイスポのインプレコーナーで安井さんに「それが融合出来なかったからわざわざ3モデルを作っていたのでは」と突っ込まれていましたが、そこは私もそう思います。
あと、この要素の中に安全性が入っていないのはちょっと気になる所。プレスリリースには一度も「安全」の文字は出てきません。
「言うまでもない」ということならそれで良いのですが、MIPSだWaveCelだと他社が安全機能をアピールする中で(エビデンスには乏しいという噂もありますが)、そこを全く触れないのは少し違和感がありますね。

重量

Lサイズの公称重量は240gで実測240g。公称重量ピッタリ。

重量を見て思ったのは「意外と重いな」ということ。

軽量ヘルメット「FLAIR」で偏執的なまでの軽量化を見せたOGKが、オリンピック向けに本気で作るのだから、これはもうLサイズでも210gとかに仕上げてくるものだと思っていました。

ちなみに、融合前の3モデルのLサイズの重量は以下です。

・冷感: ZENARD-EX (220g)
・軽量: FLAIR (185g)
・空力: AERO R1 (235g)
そう、公称重量を見ると、IZANAGIはどれよりも重いんですよね。
「軽量性を融合!」と言っているのに、空力担当や冷感担当より重いのはどういうことなの?とは思うんですが。一方で、重さが合ったほうが「丈夫そう」とも思えたりもします。
何故重くなったのか、特に理由は示されていません。ただ、不安なほどに側頭部や前頭部が薄かったAERO-R1と比べると各部が厚くなっています。安全性能を考えての重量化だと嬉しいのですが。

外観

AERO-R1ほど丸くはないですが、ZENARDよりは丸い形状となっています。

空力性能がどの程度なのか、数値的根拠は特に示されていませんが、この形状から見ると空力性能も意識しているのでしょう。

ZENARDは「後方を絞り込んで空気抵抗を削減」と謳っていましたが、IZANAGIは後ろ側を特に絞っているようには見えません。後方の形状は、むしろAERO-R1にそっくりですね。

 

LAZER GENESIS(写真右)と比べると、前頭部は薄いですが、側頭部はむしろIZANAGI(写真左)の方が厚めに作られています。落車して縁石にヘルメット側頭部をぶつけたことがあるので、ここの厚みはある程度欲しいです。割れる割れないもそうですが、耳への損傷という意味でも効いてくるので、ある程度の厚みは欲しいと思っています。キノコがどうのを気にするより、私はそちらのほうが重要だと思うのですが。

 

フィット感

これに関しては、本当に「史上最高のフィット感」と言って良いと思います。これまでに試したどんなヘルメットよりも付けていて心地よいです。実重量は多少重くなっていますが、フィット感が良いのでむしろ軽く感じると言うか。良い意味で存在感がないです。

帽体の形が日本人向けなのは勿論のこと、アジャスターの位置を物凄く細かく調整できるのがフィット感に貢献していると思われます。

アジャスターの調整範囲を以下に示します。

・前後: 2段階
・上下: 8段階
・ヘッドレストの幅: 2段階
上下を無段階に変えられるKASKのような例外はあるものの、ここまで調整範囲の広いヘルメットは珍しいと思います。
こちらは上下8段階の調整部分。
ヘッドレストの幅も2段階に変化します。
実は店で試着した時、最初は「ちょっとキツいな」と感じたのですが。店員さんがちょっと上下のアジャスターの位置を変えると、魔法のようにピッタリフィットするようになりました。
この上下のアジャスターの位置によって、BOAのワイヤーが通る位置がかなり変わり、フィット感やキツさが大きく変わります。
もし試着をする際にキツいと感じた場合は、店員さんに許可を得てからアジャスターの前後位置を変えてみて下さい。全然印象が変わると思います。
また、アジャスターにBOAダイヤルを採用したのも大きなトピックです。これまでよりも細かいノッチでフィット感の調整が出来るようになったことも大きいですが、IZANAGIは更に細かいこだわりで快適性を上げています。
こめかみの部分に「テンプルガイド」という、横方向のフィット感を調整するための装置があるんですが、これがかなり良い位置に付いているんです。
実はIZANAGIを試着しに店に行った時、私の中での次期ヘルメットの本命は「ZENARD-EX」でした。同じくBOAダイヤル採用ですし、値段も安いので「ZENARD-EXのほうが良いや」と思っていたのですが。どうもZENARD-EXは側頭部が痛いのです。こめかみに異物が食い込む感触があるというか。
そのことを先程アジャスターの位置を変えてくれた店員さん(かなりヘルメットマニアっぽい方)に言ってみると、
「それはこめかみのテンプルガイドの位置と形状の違いですね」
と、即答。

Kabutoの新製品「ZENARD-EX」が最速入荷しましたが、色々と見ていきた...…

こちらのブログにZENARD-EXのテンプルガイドの写真が出ていますが、形状がIZANAGIと全く違うのが分かると思います。また、IZANAGIの方が少し前にテンプルガイドが付いているという差があります。私の頭には、ZENARD-EXのテンプルガイドの形状が合わず、IZANAGIのテンプルガイドの形状がマッチしたということですね。
ちなみに、IZANAGIは「KBF-2アジャスター」、ZENARD-EXは「KBF-1アジャスター」を採用しています。
created by Rinker
OGK KABUTO(オージーケーカブト)
¥14,440 (2021/10/17 03:30:22時点 Amazon調べ-詳細)
最近発売されたVOLZZAというミドルグレードにもKBF-2アジャスターは採用されています。こちらはIZANAGIの半額です。

空力性能

プレスリリースを見ても、製品ページを見ても、空力性能についての言及がありません。

強いて言うなら後ろ側の形状が空力担当のAERO-R1に似てはいます。

OGKサイト内にあるこの記事には以下のように書いてあります。

通気性と空力性能の両立を可能にしたのが、Kabutoのコンピューターシミュレーション「CFD(3次元数値流体解析)」を駆使したエアルート解析です。
この解析と、実際の風洞実験解析により、開口部の位置や大きさを最適化し、空力性能を高いレベルに保ったまま、通気性を高めることに成功したのです。

 

ただ、数値的に何W減るなどの話を見つけることは出来ませんでした。

AERO-R1で風洞実験をしていたのなら、それよりも明らかに予算を掛けているであろう(オリンピックモデルですから)IZANAGIもその辺りはしっかり実験していることは推測されます。日本チームの成績にも影響することですからね。

cyclowired

10月12日、Jプロツアーの最終戦「経済産業大臣旗ロードチャンピオンシップ」が、群馬サイクルスポーツセンターで行われ、フ…

2020年のJPTレースを見ても、OGKに提供を受けているチームはIZANAGIの装着率が高いです(一部AERO-R1の選手もいますが)。空力性能が認められているということなのだと推測されます。

2020年2月号のサイスポ内の「カブラボ」というコーナーでは、「空力性能と風切り音の小ささは比例するのでは?」という説が披露されており、実際風切り音はエアロヘルメットのほうが小さいという結果が出ています。

IZANAGIは私の手持ちのヘルメットの中では風切り音はかなり静かな部類に入ります。

LAZER GENESISで気になった、あご紐が風で振動するという症状も無し。ある程度、厚めでコシのあるあご紐を使っているからだと思います(GENESISはあご紐にコシが無い)。

 

冷却性能

ここもかなりこだわっている所のようです。高温多湿の夏の日本で開かれるオリンピックで少しでも有利になるように、冷却性能にはかなり配慮されています。

出来るだけ頭部とヘルメットを密着させないようにするため、ヘルメットを浮かせるフローティング構造を採用。ヘルメットと頭の間に空気の通り道を設けて冷却効果を発揮する、という思想です。これはZENARDでも同様でした。

ZENARDでは「エアチャンネルプレート」というプラスチックの板でヘルメットを浮かせていましたが、IZANAGIではフロントパッドとアジャスターを連結することによってフローティングを実現しています。

 

また、開口部を大きく取ることにも腐心しており、穴を大きくした分の強度低下を防ぐために「レインフォースメントブリッジ」という樹脂で補強されています。これもZENARDで取られていた手法です。

ずっとZENARDを使ってきましたが、更に一段上の冷却性能を手に入れているように感じました。

12月購入で冬の間しか使っていないので、夏に真価を問いたいと思っています。

 

安全性能

ヘルメットの安全規格には何種類かありますが、IZANAGIは「JCF公認」の規格を満たしているとされています。

ヨーロッパにおけるCE(実際にはEN1078を満たす)はJCF公認よりも基準が厳しそうだなーと思っていたのですが、試験内容的にはJCFも大差は無さそうでした。

前述の通り、側頭部の厚みはそれなりにあります。ただ、前頭部はもう少し厚みが欲しいのが正直な所。これも強度というよりは、目や鼻への直接的なダメージを少しでも減らせたほうが良いと思うからです。

実際には厳しい試験をやっているはずですが、その内容が見えない&アピールされていないのが気にはなります。REDIMOS(3~4世代前のフラグシップ)まではカーボン補強がされていたり、安全へのこだわりがアピールされていたように思うのですが。

LAZERのGENESISも軽量モデルとはいえ、骨組みとしてポリカーボネートロールケージ構造なるものを採用していまし、SPECIALIZEDもアラミド繊維を使った骨組みを入れていたはずです。

そういったこだわりがこのモデルにも欲しかったとは正直思います。

 

フロントパッド

フロントパッドは、予備として「ウルトラスウェットパッド」なるものが最初から付属します。

シリコンのバンドが貼り付けられており、汗がそこを通じてサイドに流れるので目に入りにくくなるというもの。

 

言ってしまえばコレの真似です。私はこのHALOのバンダナを常用しているので、多分ウルトラスウェットパッドを使うことはないと思います。

直接ヘルメットを被る派の人には、特に夏場のヒルクライム等で役立つパッドになるはずです。

 

トップパッド

トップパッド(頭頂部のパッド)は、予備として「A.I.ネット(実測9g)」「ウインターインナーパッド(実測10g)」の2種類が付属します。

 

これ、最初から付いているトップパッドと「交換」するわけではなく、最初から付いているトップパッドの下に上記のパッドのどちらかを「追加」する方式となっています。つまり、追加するパッドの分だけ純粋に重量が増えます。

 

マジックテープでパッドを貼り付ける方式だった従来モデルとは違い、パッドはスナップボタンで固定されています。位置がズレないのは良いんですが、中々面倒です。あと、この方式は着脱につれてスナップボタンの穴が広がらないか、少し心配ではあります。

 

一度、寒い日(0℃くらい)にウインターインナーパッドを追加して走ってみましたが、頭だけ汗だくになったのですぐに外しました。

 

見た目

赤のグラデーションカラーで非常に綺麗です。

 

……が、近づくと結構バリやビニールの残りが目立ちます。フラグシップなのでその辺りはもう少し頑張ってほしいところ。

 

その他

ランドヌールには重要な、「ヘルメットにテールライトが付くか?」問題。

関連記事

CATEYEのセーフティライト。自転車の車体以外にもいろいろな場所に取り付けられるのが特徴です。 購入動機 Twitterでブルべ仲間が紹介していたのを見て、ヘルメット用尾灯として購入。 [sitecard subtitle=関連[…]

CATEYEのWEARABLE MINIは問題なく付けることが出来ました。

BOAダイヤルに貼り付けられるテールライトとか出れば流行る気がするんですけども……今はそういった製品はないですね。

 

まとめ

オリンピックに向けて、OGKが本気で作ってきたロード用ヘルメット。

全ての面で高レベルの性能を誇りますが、装着感の上質さは群を抜いています。日本人の頭に合わせた帽体と、恐ろしく調整範囲の広いアジャスターの効果でしょう。

冷却性能は今の季節では直接確かめることが出来ないので、夏場に追加レビューを書こうと思っています。


一方で、やはり安全性能の面についてはあまり重視されているように思えませんでした。分かるのは、「無理に軽量化はしていない重量だな」ということくらい。

OGKの他のモデルにも言えることですが、ヘルメット本来の役割である安全性能について、もう少しユーザーにわかりやすくアピールしてほしいものです。

それでも軽量・エアロ・冷却性能を前面に押し出しているのは、実際にユーザーが買うのがそういったヘルメットだからなのでしょう。私もこうして文句を言いながらもIZANAGIを買ってしまったわけで。前回のLAZER GENESISのレビューでは「さよならOGK!」くらいの勢いだったのに、あまりの装着感の良さに驚いて見事に出戻りです。

ユーザーがMIPSとかWaveCelとか搭載のヘルメットを積極的に選ぶことになれば姿勢も変わるのかも知れませんが、現状を見るとその日は遠そうに思えます。


本来であれば昨年の夏にオリンピックで華々しく活躍するはずだったIZANAGI。

一年延期となった今年の夏、オリンピックの舞台での活躍が見られることを期待しています。

 

評価

対象モデル:  OGK KABUTO「IZANAGI」
年式: 2020年
定価: 36300円(税込)
購入価格: 27800円(税込)
公称重量: 240g (Lサイズ)
実測重量: 240g (Lサイズ)

価格への満足度

7/10

定価はかなり高いが、安く購入は出来た。

総合評価

9/10

平均点が非常に高いヘルメット。特に装着感の質は極上。

著者情報

年齢: 36歳(執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: QUARK ロードバイク(スチール), GIANT ESCAPE RX(アルミ)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)

# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせて頂きました。


この記事を書いた人
ばる
ロングライド系自転車乗り。昔はキャノンボール等のファストラン中心、最近は主にブルベを走っています。PBPには2015・2019年の2回参加。R5000表彰・R10000表彰を受賞。

趣味は自転車屋巡り・東京大阪TTの歴史研究・携帯ポンプ収集。

【長距離ファストラン履歴】
・大阪→東京: 23時間02分 (548km)
・東京→大阪: 23時間13分 (551km)
・TOT: 67時間38分 (1075km)
・青森→東京: 36時間05分 (724km)