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【レビュー】Oture 「携帯ポンプ カーボン」
評価:5
Otureの携帯ポンプ。独自構造を採用しており、高圧でも極めて小さな力でポンピングが出来るのが特徴です。
また、従来はアルミだったボディ部分の素材をカーボンに変えて軽量化しています。
購入動機
本製品の旧バージョンに当たる、以下の製品のレビューを書いたのが約一年前となります。

このポンプが凄かったのは、内部圧縮機構により、5気圧以上の高圧においても腕力を必要としない所でした。主にブルベ界隈であっという間に広まり、「例のポンプ」という名で定着。
2018年10月。私の元に上記レビューを見たOtureの担当者の方から連絡が来ました。
「もっと良い製品にするために、なにか要望は無いでしょうか?」
機能的には全く不満はなかった私はこう回答しました。
「もう少し軽くならないですかね? 筒の部分をカーボンにするとか……」
「例のポンプ」は機能的には優れていたものの、重量は106g。携帯ポンプの中では決して軽量ではありません。
私が前に使っていたairboneのZT-705は、本体が75g。TNIのお助けチューブをセットにしても86gでした。

たった20gとはいえ、重くなる方向に装備を変更するのは嫌だったのですが、性能的には例のポンプの圧勝だったので、重さには目をつぶったのです。これが軽ければ完璧なのに――、そう思い、担当者に要望を伝えたのでした。
ただ、最初の反応は芳しくありませんでした。
「値段が高くなってしまい、あまり売れそうにない」
「カーボンの筒だと、アルミに比べてポンピングが滑らかさで劣るかもしれない」
というのが理由。個人的には4000円までは出しても良いと思っていましたが、カーボン製とはいえポンプに4000円出す気になる人は多くないでしょう。
それに、このポンプ自体はOtureがロゴを入れて販売しているだけで、生産はPRO STARという中国の会社。カーボン製を作るとなれば、新たな専用のラインが必要となるはず。そこまでコストを掛けるのは現実的ではないのも納得です。
このままこの話はフェードアウトかな……と思っていたのですが。
2019年2月、久々にOtureの担当者から連絡が来ました。
「カーボンを使った新製品が完成しました!」
なんと、無理だと思っていたカーボンボディの製品を作ってしまったというのです。そして、もうAmazonで販売開始したとのこと。
送られてきた写真を見ると、以下のポンプのボディがアルミからカーボンに変更されたものだという事がわかりました。

上記レビューの製品も同じくPRO STARの製造で、「例のポンプ」を小型化した後継製品。
「ミニ例のポンプ」とか「例のポンプミニ」などと呼ばれています。型番はHQ-66。このポンプの重量は、実測で89.9g。しかし、カーボン版はそこから更に10g軽量化したというのです。
念のため、PROSTARの業者向けサイト(Aliexpress内にあります)を確認しましたが、HQ-66のカーボン版は存在せず。Otureは単なるOEM品ではなく、独自仕様の製品を作ってきたことになります。まさか、私が無理だと思って提案した内容が実現するとは……。そして値段は2080円。え、こんな安くて大丈夫? TOPEAKのレースロケットだって、アルミ版が3800円なのに対し、カーボン版は6500円。ちょっと驚きました。
提案のお礼としてサンプルを送ってくれるとのこと。しかし、自分で要望したものをわざわざ製品化してくれたことが嬉しく、自費で更にもう一本注文しました。
製品概要
実測重量は、79.8g。全長は178mm、直径は22mmです。
対応気圧は20気圧(300PSI)。例のポンプと同様。
口金は初期状態では米式対応。ポンプヘッドを引き出すことで仏式に対応します。恐らく、ねじ切りバルブのチューブ専用です。
使用感
「Oture 携帯ポンプ(例のポンプ)」、「Gyue 高圧ミニフロアポンプ(ミニ例のポンプ)」との比較でレビューします。
重量
79.8gと、例のポンプ比で26g、ミニ例のポンプ比で10gの軽量化を果たしています。
分解してみましたが、ボディ部以外のパーツは全てミニ例のポンプと一緒です。単純に、ボディがアルミ→カーボンに変更されたことによって軽量化したということです。
大きさ
OGKのTOOL BOX 700や、カペルミュールのソフトツールケースに入るサイズになっています。
例のポンプとの大きさ比較。20mm短くなっています。これにより、700mlクラスのツールケースに入るようになりました。
使用法
使用方法は下記レビューと全く同じです。

こちらのレビューでも書いていますが、ネジ込み式のため、口金を外す時に一緒にバルブコアが外れることがあります。
必ずバルブコアツールも一緒に携行し、本製品を使う前にはバルブコアを締めるようにしたほうが良いです。せっかくの努力が水の泡になるのは辛いので……(バルブコアが抜ければ、当然入れた空気も抜けます)。
性能
PANARACER GRAVELKING(26C)に対してテストを実施。結果は以下でした。
400回→6.0気圧
ミニ例のポンプと全く同じスペックです。「カーボンの筒だと滑らかさがアルミに劣るかも」という点が気になっていたのですが、ポンピング時の滑らかさ・必要な力はアルミ版と差が感じられません。筒内部の平滑化に成功したということなんだと思います。
例のポンプに比べて全長が20mm短くなっているため、同一気圧に達するまでのポンピング回数が増えるのも、ミニ例のポンプと同様です。このあたりの詳しい話は、「Gyue 高圧ミニフロアポンプ」のレビューを読んでください。
メンテナンス
例のポンプと同じ構造なので、メンテナンス方法も同様です。内筒にオイルを挿すようにパッケージにも書かれています。私はワコーズのシリコンルブリカントを使用。
最初からそれなりの量のオイルが注油されているようで、パッケージに少しオイルが付着していますが、これは仕様です。構造上、このポンプは内部の空気をシールするためにオイルがどうしても必要なためです。実際に使う前には、乾いた布などで一度表面を拭いたほうが良いと思います。
なお、購入直後は底のネジ切り部分(写真赤◯部)に緩みがありました。ここが緩んでいるとエア漏れを起こすので、使う前に増し締めが必要です。手に入れた2本とも同じ状態だったので、担当者の方に改善を要望しました。
その他
前述の通り、本製品のオリジナルと思われるPROSTAR HQ-66ポンプはアルミボディ仕様のみ。カーボンボディ仕様は現在のところ、Otureのみが販売しています。
表面はオーソドックスな3Kカーボン仕上げ。高級感があります。
まとめ
小型化に加え、更にカーボンを使用して軽量化した「例のポンプ」。特にアルミ版に対して劣るところはなく、特に犠牲なく装備を10g軽く出来ます。
例のポンプ (全長198mm/106g)
→ ミニ例のポンプ (全長178mm/90g)
→ ミニ例のポンプ カーボン (全長178mm/80g)
と、たった一年で随分と変化。20mm短くなり、26g軽量化。個人的には現時点で最先端の携帯ポンプだと思います。
実はここ最近、ブルベ用の携帯ポンプとしては、「ミニ」を使っています。
当初は、これまで通り「例のポンプ」をレギュラー継続しようと考えていました(ミニは、7気圧に達するまで450回のポンピングが必要なため)。例のポンプはツール缶には入らないのでフレームにマウントしていたんですが、ある日の輪行時にフレームと接触し、塗装に大きな傷が付いてしまいました。
それならばツール缶に入る「ミニ」を使ってみようと思い立って、レギュラー携帯ポンプを変更。そもそも、そこまでパンクすることは無いし、多少余計にポンピングしても2分ほどロスするだけなので。時間の無いキャノボならば例のポンプを持つと思いますが、時間に余裕があるブルベならば「ミニ」で十分ではないかなと。
5気圧以上の高圧でもポンピングに大きな力を必要としないのがこのポンプの強み。回数さえこなせば、確実に常用気圧まで出先で復帰可能な性能はあるわけですから。
今回の、「ミニ カーボン」の登場によって、レギュラー携帯ポンプはまた変わることになります。道中のパンクはなるべく起こってほしくはないものですが、これからは本製品を頼れる相棒として使っていく予定です。
耐久性については、今後の使用の結果を受けて、追って報告します。
評価
対象モデル: Oture「携帯ポンプ カーボン」
年式: 2019年
定価: 不明
購入価格: (サンプル提供のため0円)
価格への満足度
サンプル提供なので評価対象外。
総合評価
軽量かつ高性能。要望通りの理想の携帯ポンプ。
レビュアー情報
年齢: 34歳(レビュー執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: QUARK ロードバイク(スチール), GIANT ESCAPE RX(アルミ)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)
# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせて頂きました。