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【レビュー】Oture 「携帯ポンプ(例のポンプ)」
評価:5
Otureの携帯ポンプ。独自構造を採用しており、高圧でも極めて小さな力でポンピングが出来るのが特徴です。
購入動機
本製品は、Aliexpressで売っている、いわゆる「中華製品」です。「中華カーボン」などと揶揄されることもありますが、たまに素晴らしい掘り出し物が紛れていることがあります。
今回レビューするのは、この手の掘り出し物を見つけてくるのが得意なチャリモさんが絶賛していた携帯ポンプです。それを受けて買った周囲の自転車仲間も同様の評価をしていることから、私もAliexpressに注文を掛けました。
……が、いつになっても届きません。問い合わせてみたら「売切れたから返金するよ」とのこと。Aliexpress内の他のストアも探したのですが、いずれも売切れ。
そこでダメ元でAmazonを探してみた所、同タイプと思われるポンプを発見しました。ブランド名は「Oture」。元々、周囲の自転車仲間が購入していたのは「PROSTAR」というブランドのもの。確認してみると、長さ・径・対応気圧は一緒。恐らくロゴだけ付け替えたものだろうと推測して購入しました。
結論から言うと、PROSTARのポンプとOtureのポンプは同じものでした。他にも幾つかのブランド名で販売されているようです。OEM生産ということみたいですね(恐らくオリジナルはPROSTAR)。
製品概要
実測重量は106g。口金を反転することで、米式/仏式に対応します。
対応気圧は20気圧(300PSI)。携帯ポンプの対応気圧はせいぜい8~10気圧程度ですが、2倍の数値を誇ります。
全長は19.7cm。直径は22mmです。
使用感
ロングライド時の携帯ポンプとして使用しています。
重量
106gと、見た目よりは重めです。重量はヘッド部に集中しており、そこだけで49gあります。
大きさ
SHIMANOやELITEの大きめのツールボトルなら入るサイズです。OGKのツールボトルには入りませんでした。
19.7cmと言う大きさは、携帯ポンプでは極小の部類には入りませんが、普通のサイズだと思います。エアボリュームを確保するためには、これくらいの長さは必要ですね。
使用法
新品状態では、ポンプヘッドが米式対応になっています。今回はロードバイクで使用するので、反転して仏式対応に変更。
通常の携帯ポンプと同じく、バルブにポンプヘッドをセット。そしてポンプヘッド後部のスイッチを起こすことで、バルブがロックされます。
そして、外筒を掴んで押し引きすることで、チューブ内に空気が充填されます。ロック機構が貧弱なポンプだと、ポンピング中にバルブがズレて空気が漏れてしまうことがあるのですが、本製品のロックはかなり強力。高圧でポンピングしても、ロックが外れることはありませんでした。
ヘッド内部の精度も高く、バルブを押し込んでもバルブコア軸を押しにくい構造になっているため、誤ってポンピング中に空気が抜けてしまう確率は低いと言えます。
なお、ポンプの底部には外気を取り込むための吸気口があります。ここを手で抑えてしまうと正常に動作しないので、外筒の側面を掴んでポンピングをする必要があります。
性能
SCHWALBE ONE(25C)に対してテストを実施。結果は以下でした。
400回→8.0気圧
8気圧まで入れましたが、まだまだ入りそうです。
通常、4気圧を超えた辺りから携帯ポンプではかなり力が必要となりますが、本製品は5気圧・6気圧……と上げていっても、さほど力が必要になりません。公称の20気圧は分かりませんが、少なくともロードバイクの実用域である6~8気圧までは問題なく上げられるでしょう。理由は後述しますが、独自の構造で効率化を図っているためです。
7気圧入れた状態から妻にポンピングしてもらいましたが、さほど力まずに空気圧を上げていくことが出来ていました。
構造
本製品の高圧時の軽さの秘密は、その独自の構造にあります。
最初に分解したチャリモさんにアドバイスを貰いつつ、自分でも分解して構造を調べてみましたが、あまりに良く出来た構造に驚きました。
一言で言うと、本製品は「ポンプの二重構造」を取っています。
引く時にはポンプ1が動作し、押す時にはポンプ2が動作すると言った感じでしょうか。ただ、ポンプ1の役目は「空気をチューブに入れること」ではなく「空気を圧縮し、押す時のサポートとして使うこと」であるのがユニークな部分です。
※以下、ポンプの構造説明ですが、専門的知識がないので誤りがある可能性があります
本製品の構造を理解するためには、まず一般的なポンプの構造を理解する必要があります。かなり簡単ですが、上記のような構造をしている場合がほとんどだと思います。
普通のポンプの動作原理。外気を取り込んで、ピストンで圧縮する。そして、圧縮した空気がチューブ内の気圧を越えると、チューブに空気が流れ込みます。
次に、本製品のポンプの構造がこちら。結構複雑です。
本製品の動作原理。ポンプを引く時には空気が軽く圧縮され(高くて2~3気圧くらいと推測)、下駄を履いた状態で押し始められるというわけです。さらに、押している最中には次のターンへの準備も同時に行っているのです。周到!
もちろん、普通のポンプに比べると引く時に力が必要とはなりますが、大した力は必要としません。前述のように、7気圧を超えていても、女性の力で問題ないレベルまで押し引きが可能となっています。
メンテナンス
構造がマニアックな分、本製品は部品点数が多くなっています。そのため、使い続けると動きが渋くなったり、若干の空気漏れといった不具合が起こる場合があります。
付属の説明書には「3ヶ月に一回、ポンプに注油してください」との記述があります。
私は構造を理解するために分解を繰り返すうちに、早速上記の不具合が起きたので、Oリングやシリンダーにチェーンオイルを注油。問題は解消されました。
まとめ
若干大げさな言い方をすれば「すべての携帯ポンプを過去にする」ような携帯ポンプです。
テレスコピックタイプにしてエアボリュームを増やす工夫や、GIYOのダブルシリンダーポンプのように高圧時に使うシリンダーを減らすタイプの工夫をされた製品はこれまでにもありました。
しかし、本製品はそれをかなりスマートな形で解決しています。
これまで20本近い携帯ポンプを使ってきた私ですが、最高点を付けられる製品だと思っています。
若干ネガがあるとすれば重量ですが、性能を考えれば目を瞑れる範囲ですね。部品点数の多さから定期的なメンテが必要ですが、壊れそうなパーツは少ないので、パッキンとOリングの劣化に気をつければ長く使えそうです。
これまでの私の中での携帯ポンプの選び方は、
→なるべく細いもの(パスカルの原理より)
②高圧対策2
→地面に片方を押し付けてポンピング出来る構造(体重を掛けるため)
③エアボリューム対策
→なるべく長いもの
④エア漏れ対策
→補助チューブ取付のためにネジ切り口金のもの
と言うものでした。
結果として、「airbone 150mmモデル」+「TNI お助けチューブ」という構成がここ2年の定番に。ただ、この構成を持ってしても5気圧を超えてからのポンピングはかなりの力が必要でした。1回1回体重を掛けて、なんとか7気圧まで持っていっていたのです。
これらの課題を、本製品は見事にクリアしています。
→空気の圧縮を引く時に行うことにより、押す時の力が減少
②高圧対策2
→そもそも体重を掛けるほど押す力を必要としない
③エアボリューム対策
→それなりの長さ(197mm)としてエアボリュームも確保
④エア漏れ対策
→精度の高いロック機構
これまで運用で回避していた高圧時の課題を構造でクリアしている所が美しい。本当に良く出来た携帯ポンプです。
評価
対象モデル: Oture「携帯ポンプ(例のポンプ)」
年式: 2017年
定価: 不明
購入価格: 1480円(税込)
価格への満足度
めちゃくちゃ安い。
総合評価
内部圧縮機構によって革新的な性能を得た携帯ポンプ。
レビュアー情報
年齢: 33歳(レビュー執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: QUARK ロードバイク(スチール), GIANT ESCAPE RX(アルミ)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)
# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせて頂きました。