【レビュー】Panaracer「AGILEST CL」

評価:4.5

Panaracerが2022年に発売したロードタイヤ。それまで長年続いていた「RACE」シリーズが廃止され、全く新たに始まったシリーズとなります。

今回レビューするのはクリンチャータイプの25Cと28Cです。AGILESTのクリンチャーには「AGILEST(無印)」「AGILEST LIGHT」「AGILEST DURO」とありますが、今回レビューするのはオールラウンドな「無印」になります。

購入動機

最初の1セット(25C×2本)は、Panaracerの「AGILEST体験キャンペーン」でご提供頂きました。

このキャンペーンは関係者向けのものですが、私は2019年のPBPで「PBP走行後のタイヤが欲しい」という依頼を受けておりまして、その縁でお声がけ頂いた形です。

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使い始めた直後の感想は上記の記事に纏めました。

1セット目が好印象だったこともあり、その後5本ほど自費で追加購入しました。追加購入したのは、25Cを2本と、28Cを3本です。

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ブルベ「宗谷岬600」に備え、ひび割れ路面対策で28Cを導入しました。その場限りの予定でしたが、割りと具合が良かったのでそのまま使い続けています。

製品概要

実測重量は、25Cが190g/196g、28Cが205g/210g。

冒頭にも書いた通り、AGILESTのクリンチャーには3種類のタイプがあります。

モデル名 キャッチフレーズ 意味
AGILEST TOUGH & SUPPLE
圧倒的オールラウンダー。
タフ&しなやか
AGILEST LIGHT LIGHT
鬼軽。
軽量
AGILEST DURO ULTRA TOUGH
軽いのに、強靭。
ものすごくタフ

今回レビューするAGILEST(無印)は「タフ&しなやか」とされているオールラウンダータイプです。

接地面に用いられるコンパウンドは、前作RACE EVO4シリーズより12%の転がり抵抗削減を実現した「ZSG AGILE Compound」を採用。

耐パンクベルトは、従来モデルよりも軽量かつ柔軟な「Tough & Flex Super Belt」を採用しています。

タイプ モデル名 サイズ・重量 カラー 税込価格
クリンチャー AGILEST
(万能モデル)
700×23C (180g)
700×25C (190g)
700×28C (210g)
700×30C (230g)
黒、赤、青、スキン 6270円
7370円
AGILEST LIGHT
(軽量モデル)
700×23C (160g)
700×25C (170g)
700×28C (190g)
6820円
7590円
AGILEST DURO
(高耐久モデル)
700×23C (210g)
700×25C (220g)
700×28C (250g)
700×30C (280g)
6820円
7590円
チューブラー AGILEST TU 700×25C (260g) 10780円
12100円
チューブレスレディ AGILEST TLR 700×25C (220g)
700×28C (250g)
700×30C (270g)
700×32C (310g)

スキン
7370円
8580円

無印クリンチャータイプのタイヤ幅は、23/25/28/30Cの4種類。発売当初は30Cがありませんでしたが、後から追加されました。

カラーバリエーションは、黒/スキン/赤/青。赤と青は25Cのみに展開されます。AGILESTは2020年に改定されたタイヤ規格「ETRTO」の新型規格に対応しています。25C/28Cタイヤは内幅19mmのリムに最適化されています。

使用感

AGILEST(無印)の25C(2セット)と28C(1セット)を使用。どちらもカラーはブラック。主な用途はブルベで、日常の週末ライドにも使っています。

使用距離は、25Cと28Cが共に4000kmずつといった所です。

取り付けているホイールは、内幅20mmの「TOKEN KONAX PRO」と、内幅19mmの「PAX PROJECT AR30」です。

チューブは、同じくPanaracer「R’Air」を使用。空気圧は、25Cの場合は前6.5bar/後7.0bar、28Cの場合は前6.0bar/後6.5barで使っています。

パッケージ

Panaracerは箱型のパッケージは採用してこなかったイメージがあるのですが、AGILESTは箔押しの豪華なパッケージに変わっています。

 

個人的には、「適したリム内幅」の表がパッケージに印刷されているのがポイント高いです。

前作との関連・違い

Panaracerは長い期間、RACEシリーズというタイヤを販売してきました。今回はラインナップがすべて刷新されてAGILESTシリーズとなっています。

1代前(RACE Evo4)&2代前(RACE Evo3)との対応を図にすると以下のような感じになるはずです。

今回レビューしているAGILEST(無印)は、オールラウンドタイプのRACE Aと、ツーリング向けのRACE Cの後継と言えます。

前作「RACE EVO4」シリーズまでは、「オールコンタクト トレッドシェイプ」という先端が少し尖った三角形の断面形状が採用されていました(RACE Cを除く)。

直進時に接地面積を減らし、コーナーリングでは接地面積を増やしてグリップを稼ぐ……というコンセプトでしたが、挙動が独特で賛否両論があったのも事実です。

AGILESTは全ラインナップで一般的なラウンドシェイプ断面が採用されることとなりました。

重量

25Cタイヤは公称190g。2個体を実測し、190gと196g。

28Cタイヤは公称210g。2個体を実測し、205gと210g。

多くの方が想像する25C/28Cタイヤの一般的な重量よりも大幅に軽い数字だと思います。25Cで220g、28Cで250gくらいを想像する人が多いんじゃないでしょうか?

ただ、多くの方が想像するタイヤ重量は「内幅15mm」に最適化して設計された旧ETRTO規格対応のものです。AGILESTは「内幅19mm」に最適化して設計された新ETRTO規格に対応しています。

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トレッド面は確かに薄めですが、特別ペラッペラに作られているタイヤではないです。レーシングタイヤとしては普通の厚みだと思います。

トレッドパターン

若干、模様のようなものがありますが、スリックタイヤに分類されると思います。チューブラーは杉目パターンが入ります。

取付

25C/28C共に硬いということもなく、取付には苦労しませんでした。

タイヤ幅

25Cタイヤを内幅20mmのリムに取り付けて、タイヤ実測幅が26.6mm。28Cタイヤを内幅19mmのリムに取り付けて、タイヤ実測幅が28.8mmでした。

どちらも取り付けてかなり長い期間使っているので、伸び切った状態でこの数値です。公称のタイヤ幅からは大きく外れていません。新ETRTO対応というのが頷ける数値ではあります(旧ETRTO対応のタイヤをこのリム内幅に付けると、かなり太くなるので)。

漕ぎ出し・加速

25Cの加速は鮮烈でした。AGILESTの語源となったAGILEは「敏捷」という意味ですが、それを体現するような漕ぎ出しの軽さ。信号からのゼロスタートでも重さを感じません。

28Cの加速は、25Cに対してワンテンポ遅れる感じはあります。ただ、28Cとしてはかなり漕ぎ出しが軽いタイヤです。それもそのはず、実測重量は205gですので。

また、信号からの漕ぎ出しでは、私は立ち漕ぎで勢いを付けることが多いんですが、ここでサイドが潰れて沈み込んでしまう(腰砕け感、と呼んでいます)タイヤが最近は多いのですが。AGILESTは腰砕け感がなく、好印象。

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AGILEST無印の先祖に当たるRACE Cは腰砕け感のあるタイヤでした。他の性能は満足でしたが、そこだけが気になっていたので良い変化です。

乗り心地

「腰砕けがない」ということは「硬いタイヤ」という印象を持たれるかもしれませんが、乗り心地は悪くないです。モチモチという感じはなく、全体的には硬めな乗り心地だとは思いますが、不快な突き上げは無いというか。

乗り心地と言ってよいのか分かりませんが、このタイヤは荒れた路面でも不思議と「跳ねない」んですよね。路面追従性が高いというのでしょうか。

25Cでも跳ねないのですが、28Cは路面に吸い付くように走ります。スムーズです。北海道の路面ではそれを顕著に感じました。

この乗り心地の理由についてPanaracerの担当者の方に尋ねてみたのですが、「耐パンクベルトがしなやかになっているからだと思います」とのことでした。新採用の耐パンクベルト「Tough & Flex Super Belt」の効果ということですね。Flexと名前に付いているように、より柔軟な耐パンクベルトになったことによって、路面追従性が高まったということでしょう。

巡航

基本的な用途がブルベなので、平坦でも35km/hくらいまでしか出しませんが、よく転がってくれる印象があります。

「跳ねにくさ」がスムーズさを演出している感じと言いますか、特に28Cは快適に進んでくれますね。

コーナーリング

旧モデルであるRACEシリーズはタイヤ断面が尖っていてコーナーリングにクセを感じましたが、ラウンド形状になったAGILESTはこれといったクセを感じず好印象。

といっても私はレースは出ていないので、サイクリングペースでの峠のダウンヒル速度が上限になりますが、怖いと感じる瞬間はなかったです。

ウェット特性

28CのAGILESTを投入した「宗谷岬600」は、600km中100kmくらいが雨の中でした。

1日目の宗谷岬周辺は雨も風も強く、道路も常にウェット。轍は水たまりになっていましたが、特にパンクも滑ることもありませんでした。

2日目の美深峠も雨の中。AGILESTでの雨の峠のダウンヒルは初めてでした。ウェット路面でも挙動が安定しており、全く怖いと感じるところはありませんでした。28Cを選んだのも良かったのかもしれません。

耐パンク性

これまでに6本(25Cを4本、28Cを2本)を使い、パンク回数は1回(25Cの方)です。

パンクの原因は、尖った石が耐パンクベルトの入っていない部分に刺さったことでした。

タイヤを廃棄する前に切断してみると、まさに耐パンクベルトの脇を貫いていました。このタイヤは25Cですが、ちょっと耐パンクベルトは狭めに感じます。28Cだと、もう少しベルトは広いようです。

とはいえ、GP5000の耐パンクベルトの幅は同じくらいなのですが。

発売当初、Twitterでは「使い始めたばかりなのにAGILESTがパンクした」という評判をよく見かけました。恐らくですが、それは「使い始めたばかりなのに」ではなく「使い始めたばかりだから」パンクしたんじゃないかと私は推測しています。

AGILEST、歴代のPanaracerのタイヤと比較しても購入直後の表面がペトペトしてるんですよね。自転車タイヤの表面には劣化防止のワックスか、タイヤを型から外しやすくするために使われる離型剤だと思うのですが、この表面のペトペトした膜が路上の石やゴミを拾いやすいのです。

この膜を剥がすのは「皮むき」とか呼ばれまして、50kmも外を走ってくれば膜はなくなります。ただ、それまでの間に拾ったゴミがタイヤに食い込んで、そのままタイヤを食い破る可能性はあります。下ろしたてのAGILESTにパンクが多かったのはこれが理由な気がしています。

なお、私は購入して取り付けた後、走り出す前に「タイヤの表面を水拭きする」というルーティーンを踏んでいるため、今まで下ろしたてでのパンクはありません。このタイヤを使うならば、走り出す前にタイヤの接地面を一周水拭きしたほうが良いと思います。

耐久性(寿命)

25Cは3000kmくらいで後輪が平らになりました。

28Cタイヤの後輪は、4000km使用でこんな感じ。まだまだ使えそうには見えますが……

スリップサインが消えかけているので、そろそろ交換しようと思っています。

ちょっと気になる穴もありますし。ただ、この穴は裏側には貫通していません。多分何かが刺さった後、耐パンクベルトで止まったのでしょう。この穴を確認してから500kmくらい走っていますが、さすがに交換しようと思いました(既に予備の28Cを1本購入済み)。

見た目

ロゴは紫と赤です。紫色のフレームってあまりないので、色味を合わせるのはちょっと難しいかも。

 

でも遠目で見るとあまり目立ちはしません。

価格

発売当初は税込6270円でしたが、値上げがあって現在は税込7370円です。

それでも昨今のロードタイヤとしては安価ではありますが、ちょっと値上がりは痛かったですね……。世の情勢を考えると仕方ないのかもしれませんが。

執筆時のAmazonでの販売価格は4940円と手に取りやすい価格ですが、今後値上がっていくかもしれません。

まとめ

名前の通りの俊敏なタイヤ。反応性が高く、転がりも良いです。

性格的には、RACE Aというよりは、RACE Cの後継という立ち位置だと思います。「RACE Cの腰砕け感を無くし、反応性を高めたタイヤ」という印象。正直、先端の尖ったオールコンタクト トレッドシェイプは挙動が不自然で好きでは無かったですし、ラウンド形状のRACE Cの方向性を継承するのは良い流れだと思いました。

25Cと28Cを使いましたが、個人的な好みを言えば28Cの方が良かったです。

25Cに比べると若干モッサリしてはいるものの、乗り心地や巡航のスムーズさ、ダウンヒルの安心感などが上がるため、私の用途だとこちらの方が優秀。耐パンクベルトの幅が若干ながら広がるためか、4000km走ってパンクがないというのも気に入った点ではあります。

表面のペトペトはちょっと気になるポイントではありますが、水拭きである程度は回避できるはずです。

ブルベ用という意味では高耐久モデルである「AGILEST DURO」も気になってはいますが、他に色々タイヤを試しているため、中々順番が回ってきません。今はVittoria「CORSA N.EXT」を試しており、次はiRC「ASPITE PRO S-LIGHT」を試す予定です。その後で、AGILEST DUROも試してみたいと思っています。

評価

対象モデル:  Panaracer「AGILEST CL」
年式: 2022年
定価: 6270円(税込)
購入価格: 5500円 (税込)
公称重量: 25C: 190g / 28C: 210g
実測重量: 25C: 190g, 196g / 28C: 205g, 210g

価格への満足度

7/10

最新のロードタイヤとしては安価。ただし、最近値上がったので★3.5。

総合評価

9/10

28Cが★4.5、25Cが★4。路面追従性が高く、オールラウンドなタイヤ。

著者情報

年齢: 38歳(執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: BIANCHI OLTRE XR4(カーボン), QUARK ロードバイク(スチール)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)

# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせていただきました。

 


この記事を書いた人
ばる
ロングライド系自転車乗り。昔はキャノンボール等のファストラン中心、最近は主にブルベを走っています。PBPには2015・2019・2023年の3回参加。R5000表彰・R10000表彰を受賞。

趣味は自転車屋巡り・東京大阪TTの歴史研究・携帯ポンプ収集。

【長距離ファストラン履歴】
・大阪→東京: 23時間02分 (548km)
・東京→大阪: 23時間18分 (551km)
・TOT: 67時間38分 (1075km)
・青森→東京: 36時間05分 (724km)