【レビュー】Panaracer「携帯ミニワンタッチポンプ(BMP-24AEZ)」

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評価:2.5

今月発売となったPanaracerの高圧対応ミニフロアポンプ。

今回はサンプルをご提供頂いてのレビューとなりますが、いつも通り率直に書きます。

目次

購入動機

今回はパナレーサーからのサンプル提供品となります。

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サイクルモードで担当者の方とお会いしまして、その時に「発売したら送ります。分解するなり好きにしちゃってください」とのお話をいただきました。

サイクルモードで触った限りでは「加圧方式(ハンドルを引く際に内部に空気を圧縮し、次に押す際にアシストする)」を採用している感触があり、なおかつ全長も長いのでポンピング回数が減ることを期待していたのですが……結果は予想外なものとなりました。

製品概要

実測重量は198g(単体・ブラケットなし)。ブラケット込の重量は215gです。

全長は260mmとやや長め。

鉄製のフットステップを搭載。足で踏んで地面に固定し、体重をかけてのポンピングが可能に。

自慢のワンタッチ口金は、今回も仏式・米式の両方に対応。最大気圧は900kPa(9気圧)までとされています。

今回は空気圧計も付属します。

ハンドルはフロアポンプとして使うことを考慮して、T型に変形するようになっています。逆に、元々の形状(I字状態)でポンピングは不可能です。

付属品は、ボトルケージに共付可能なブラケットです。

カラーはブラックとシルバーの2種類がラインナップされています。

使用感

自宅内でポンピングテストを実施。対象のタイヤはVittoria Rubino Pro Speed(25C)です。

比較対象は、同社の前モデル「BMP-23AEZ(以下、23AEZ)」です。

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重量

実測重量は198gと、ほぼ公称重量通り。

23AEZは公称100g(実測104gでしたので、ほぼ倍の重量となっています。

全長が伸びていること、空気圧計の搭載、金属製フットステップの搭載等で重量が増加したものと思われます。

大きさ

23AEZが170mm、24AEZが260mm。およそ1.5倍になっています。

ツール缶にも入った23AEZに対し、24AEZは大型サドルバッグに入れるか、フレームにブラケットで取り付ける運用のみになりそうです。

使用法

口金はパナレーサー自慢のワンタッチ口金。これをバルブに押し込むだけでロックされるのですが、今回はかなりロックに力が必要でした。個体差?

あとはフットステップを出し、ハンドルをT字に変形してポンピング。

ホースが長いので、バルブには全く負荷をかけずにポンピングが可能となっています。

構造

分解したわけではないので断言できませんが、この携帯ポンプは「加圧方式」を採用しているはずです。

加圧方式とは、一時期話題となった「例のポンプ(Oture 携帯ポンプ)」や、「TOPEAK ROADIE TT」と同様の構造です。ハンドルを引いた際にポンプ内に空気を圧縮し、次に押す際のアシストとして使うことで、高圧になってもポンピングが軽くなる特徴があります。TOPEAKでは「ツインターボテクノロジー」と呼ばれているものです。

詳しい構造の説明はこちらを御覧ください。

ハンドルを引いた際に空気を圧縮するので、「ハンドルを引いた際にも抵抗感がある」のが加圧方式のポンプの特徴になります。

Panaracerは前作23AEZで加圧方式のシリンダーを採用し、今作24AEZでも連続採用をしたものと思われます。

なお、シリンダーに対する注油の指示はありません。

性能

前述の通り、Vittoria Rubino Pro Speed(25C)に対してテストを実施しました。

200回 → 2.7気圧
300回 → 3.8気圧
400回 → 4.8気圧
正直言って、予想外の性能の低さです。
前作・23AEZは同じタイヤに400回のポンピングで6.2気圧を入れることが出来ました。長さは1.5倍になったのに、逆に2割ほど性能がダウンしていることになります。
同じく加圧方式を採用している他の携帯ポンプと性能を比較してみます。
製品 全長/重量 空気圧(200回) 空気圧(300回)
TOPEAK「ROADIE TT」 195mm/102g 5.4bar 7.8bar
TOPEAK「ROADIE TT mini」 165mm/90g 4.2bar 6.0bar
Panaracer「BMP-23AEZ」 170mm/104g 3.4bar 4.8bar
Panaracer「BMP-24AEZ」 260mm/198g 2.7bar 3.8bar

 

24AEZの性能が如実に低いことがお分かりになるかと思います。

ただ、良くなっている点もあります。「高圧でもポンピングの軽さは随一」という点です。フロアポンプで8気圧入れた状態から「追いポンピング」を実施しましたが、恐ろしく押しが軽いです。

ポンプにおいては、「1ストロークあたりで入る空気量」と「ポンピングの軽さ」はトレードオフの関係にあります。1ストロークあたりで入る空気量を減らせばポンピングは軽くなりますし、1ストロークあたりで入る空気量を増やせばポンピングは重くなる傾向にあります。

恐らく、24AEZは23AEZよりも「ポンピングの軽さ」を重視して設計変更が行われたのだと思いますが、その結果として「1ストロークあたりで入る空気量」が低下し、「ポンピング回数が増えても中々空気圧が上がらない」という特性を得るに至ったと思われます。

しかし、24AEZは「体重を掛けてフロアポンプ的に使える」ことが特徴。ハンドポンプ方式の23AEZよりもポンピングが重くても問題ないはず。なんでポンピングの軽さを重視したのか、良く分かりません。

ただ、そうした性能の差を出す際には変更されるはずの「内筒」「外筒」の直径は23AEZと24AEZで差はありませんでした。外径に違いがないとすると、内径に違いがあるのかもしれません。分解すれば分かるんですが、かなり強固に組み立てられていてバラせず。

ちょっと驚いたのは、ストロークの長さ(一番短い状態と一番長い状態の差)についても、23AEZと24AEZで差が見られなかったことです。普通は全長が長いポンプのほうがストロークを長く取れるはずなんですが、両者はストロークが同じ。24AEZは90mmも全長が長いのに、その長さを全く活かしきれていません。ムダに長いだけです。

フロアポンプタイプで空気圧計付きのものが欲しいのであれば、TOPEAKのミニモーフGの方が優秀と言えます。178gですし。

今回と同じタイヤにミニモーフで充填した所、150回で5.9気圧が入りました。24AEZでこの気圧に達するまでには恐らく500回ほどポンピングする必要があります。もちろんポンピングはミニモーフのほうが断然重いですが、3倍以上のポンピング回数をこなすよりは楽でしょう。その重さを何とかするために体重を掛けやすいフロアポンプ型にしているわけですし。

空気圧計

24AEZは最大900kPaまで対応しているはずですが、空気圧計の目盛りは800kPaまでしか存在しません。仕様は合わせてほしい。

なお、この状態でデジタル空気圧計で測定した所、750kPaでした。0.5気圧ほどのズレはありますが、簡易空気圧計ではこのくらいズレるのは普通です。

熱の問題

性能の低さに加えて、問題だと感じたのが「火傷するおそれがある」という点です。

T型ハンドルなので、大体の人はこうやってハンドルを持つことになると思います。

問題なのが、写真で人差し指と中指の間に挟まっているシリンダーが高熱を持つという点です。

気体は、体積を変えずに圧力を上げると温度が上昇する特性があります。これを断熱圧縮と言います。
逆に、圧力が下がると温度が低下します。CO2ボンベを使うと、ボンベがキンキンに冷えるのがそれです。
携帯ポンプの場合、このシリンダー部分は高圧になるにつれて熱を持ちます。
通常、携帯ポンプはシリンダーを持たなくて済むような形状になっているので問題とはなりません。というかシリンダーの汚れはパッキンの劣化などにも繋がるので普通は何も付着しないように設計すべきです。
では、他のメーカーでT字ハンドルを採用している製品はどうしているのか?
こちらはTOPEAKのミニフロアポンプのハンドル部分です。シリンダー部分にプラスチックのコーティングがされているのがお分かりでしょうか。
この形状であれば、握った際にも直接シリンダーが指に触れることはありません。多少はこのカバーも熱くはなると思いますが、直接シリンダーに触れるよりはずっとマシ。
この工夫はTOPEAKだけのものではなく、ブリヂストンやTNIから出ているT型ハンドルのポンプには採用されている機構です。
さすがにこれは危険なので、Panaracerの担当者の方に対策を依頼しました。せめて注意書きを入れないと危ないと思います。
このように握れば回避可能ではありますが、ポンピング時に力が入れにくいです。これは明確に設計ミスだと思います。

まとめ

前作(BMP-23AEZ)に比べて、2倍の重量・1.5倍の大きさなのに、ポンプとしての性能が2割ダウンしています。

確かに9気圧までは入りますし、高圧でも軽快ポンピング。スペック表記に偽りはありませんが、見た目から期待する性能はありません。前作23AEZの方が携帯ポンプとして断然優秀です。

良かった点は「体重を掛けられる構造」を採用した点と、空気圧計が付いたことくらいでしょうか。しかし、これだけポンピングが軽ければ、体重を掛ける必要はなく、手持ちでも事足ります。フットステップを排してもっとコンパクトにしても……というと、最終的に出来上がるのは前作の23AEZになってしまいますね。

この2本を並べて、「5気圧に達するまでのポンピング回数が少ないのはどっち?」と聞かれたら9割の人は上と答えるでしょう(正解は下)。

フロアポンプ型の携帯ポンプに期待されるのは、「無理のない体勢で体重を活かしたポンピングが出来る」ことと、「長さを活かして少ない回数で規定空気圧に達する」こと。24AEZは前者は満たしていますが、後者を全く満たせていません。

今作でポンピングを軽くする(=1ストロークあたりの空気量を減らす)方向に持っていったのは不可解です。単純に前作の長さを伸ばしてフットステップを付けるだけで良かったはず。フロアポンプとして使うならば、ポンピングが多少重くても問題ないですからね。

「加圧方式を採用した初のミニフロアポンプ」ということで大変期待していましたが、期待とは違う製品でした。

本レビューで挙げた問題点は、Panaracerの担当者の方に送付済みです。23AEZを正当に進化させた次回作に期待しています。

評価

対象モデル:  Panaracer「携帯ミニワンタッチポンプ(BMP-24AEZ)」
年式: 2022年
定価: 4400円(税込)
購入価格: サンプル提供品
公称重量: 200g
実測重量: 198g

価格への満足度

(提供品のため評価対象外)

総合評価

5/10

スペックに偽りは無いが、大きさから期待される性能が無い。あとハンドルが設計不備。

著者情報

年齢: 37歳(執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: BIANCHI OLTRE XR4(カーボン), QUARK ロードバイク(スチール)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)

# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせていただきました。

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この記事を書いた人

ロングライド系自転車乗り。昔はキャノンボール等のファストラン中心、最近は主にブルベを走っています。PBPには2015・2019・2023年の3回参加。R5000表彰・R10000表彰を受賞。

趣味は自転車屋巡り・東京大阪TTの歴史研究・携帯ポンプ収集。

【長距離ファストラン履歴】
・大阪→東京: 23時間02分 (548km)
・東京→大阪: 23時間18分 (551km)
・TOT: 67時間38分 (1075km)
・青森→東京: 36時間05分 (724km)

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