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【レビュー】Panaracer 「ワンタッチミニポンプ(BMP-23AEZ)」
評価:4
パナレーサーの携帯ポンプ。同社自慢の「ワンタッチ口金」を採用したモデルの二世代目です。
高圧対応版を謳っており、恐らく内部に圧縮機構を備えています。
購入動機
サイスポのサイトで以下の記事を見て存在を知りました。
「新しいシリンダー」の文字

目を引いたのは以下の一文です。
注入可能な空気圧上限は約900kPa。新しいシリンダーを採用し高圧を入れる際も軽い力で入れることが可能になった。
900kPa=9気圧。携帯ポンプとしてはかなりの高圧対応です。前モデルよりも1気圧上げてきました。
前作の印象
前モデルの「BMP-22AEZ」は私も発売直後に購入しています。レビューは以下です。

正直、あまり良い出来とは言えない携帯ポンプでした。上限8気圧とは書かれていますが、6気圧に達する前に全く押し込めなくなりました。ロード用としては落第です。
上限気圧を上げる方法
しかし、今回の新製品「BMP-23AEZ」は上限9気圧にスペックアップしています。携帯ポンプにおいて、上限気圧を上げる方法は2つ。「内部に圧縮機構を設ける」か、「シリンダーを細くする」のどちらかです。
圧縮機構というのは、「例のポンプ」が採用していた仕組みのことです。

ハンドルを引く時にシリンダー内部で空気を圧縮し、押す際のアシストをする仕組みになっています。これにより、高圧でも小さな力でポンピングが可能になります。TOPEAKが今年出した携帯ポンプ「ローディーTT」でも同様の仕組みが採用されました。

私の予想
しかし、私は「圧縮機構は恐らく備えていないだろう」と予想しました。
この機構をTOPEAKは「ツインターボテクノロジー」という名前を付けて大々的にアピールしています。Panaracerも、そのような機構を採用したらもっとアピールするでしょう。値段も2900円と、前作より440円値上がっていますが、新機構を入れたならもう少し高いプライスタグを付けてもおかしくないはず。
よって、このポンプは「シリンダーを細くする」という手段で高圧に対応したのだろう、と私は結論づけました。サイスポの記事の中の「新しいシリンダー」という記述とも符号します。それならば大して前作と性能は変わらないはずですし、わざわざ買うまでも無いだろう……と思ったのですが。
一転、購入へ
買う気はなかったのですが、フォロワーの「紙の男」さんのツイートを見て考えが変わりました。
パナレーサーBMP-23AEZ、早速試してるけど確かに7.0barから多分標準的な成人男性の力でそれ程無理せず追加で7.5まで行けた(圧力計持ってないのでTopeak JOEBLOW Max HPX読み)
— 紙の男 (@John_Doe_0774) April 10, 2020
普通の携帯ポンプでは、5気圧、6気圧ならまだしも、7気圧からの「追いポンピング」は相当な腕力が無いと不可能です。「それ程無理せず」に7気圧から先を入れられるというのは、何らかの仕掛けがあるはず。
ということで、近所の自転車屋で早速買ってきました。……ブルベの参加費も返ってきて、何か買いたかったのです。
製品概要
実測重量は104g。口金は、仏式・米式の両対応です。
最大気圧は900kPa(=9気圧)とされています。全長は170mm。
付属品は、ボトルケージに共付可能なブラケットです。
使用感
自宅内でポンピングテストを実施。対象のタイヤはVittoria Rubino Pro Speed(25C)です。
比較対象は、重量・大きさ的に近い「TOPEAK ROADIE TT mini」です。

重量
公称は「約100g」で、実測重量は104g。ギリギリ公称通りでしょうか。
競合すると思われるROADIE TT miniは単体で90g。補助チューブとしてお助けチューブのMサイズを使った場合は+13gなので、ほぼ同等です(ただ、ROADIE TT miniにはお助けチューブは付きません)。
大きさ
170mmと、通常サイズのツールケースにも収まる大きさ。長さは短めですが、一体型の補助チューブのため、幅は取ります。下記のケースには入ることを確認しました。
Vittoriaのツールケースには斜めにすればギリギリ収まりました。
ライバル製品との大きさ比較。
使用法
口金は、パナレーサー自慢のワンタッチ口金。私はこの口金が結構好きで、フロアポンプでも使っています(2台あるうちの1台)。キャッチとリリースが簡単に出来、空気漏れを起こさない優秀な口金です。

仏式の場合、青い口金をバルブに押し付けることでロックされます。そしてポンピング。
更に、構造的には地面や壁に押し付けてのポンピングも可能です。高圧で体重を掛けられるのは大きいですね。
性能
前述の通り、Vittoria Rubino Pro Speed(25C)に対してテストを実施しました。
→ 6.2気圧※ いつも計測に使用している空気圧計が狂っていたことが判明し、再計測しました。以下、間違っている点は赤太字で訂正します。
ちなみに、ROADIE TT miniは、同じく400回で7.2気圧まで入りました。性能的にはほぼ同等でしょうか。性能的には、ROADIE TT miniの方が勝るようです。
構造
ということで、仕組みを何とか確かめようと思ったのですが、各部しっかりとネジロック剤が塗られているのか、分解できませんでした。分解しても壊しそうなので止めておきます。
が、面白いことに気づきました。
初代・例のポンプこと、「Oture 携帯ポンプ」と外筒・内筒ともに直径が全く一緒なのです。外筒22.0mm、内筒11.8mm。TOPEAKはこの比率を変えていましたが、300PSIを標榜していた「例のポンプ」系のポンプは全てこの直径の比率を採用していました。おそらくは高圧対応の黄金比なのでしょう。
となると、やはりTOPEAKで言う「ツインターボテクノロジー」と同等の仕組みが入っていると考えるのが自然なのですが……そこはパナレーサー公式のリリースを待ちたいと思います。
なお、注油の指示はありません。
例のポンプと同じ構造だとすれば、「吸気口」が必要です。
最初は、「これが吸気口かな?」と思ったのですが、これは後述するロック機構のための爪が引っかかる穴でした。
多分、吸気口はこっちですね。
ロック機構
ROADIE TTと同じく、回転防止のためのロック機構が付いています。
ツール缶に入れる場合には不要でしょうが、ボトルケージと共付する場合は必要な機能でしょう。
その他
シリンダーには注意書きが書かれています。その中でも気になるのは「各部のゆるみ点検」の項目。
ほとんどの場所はネジロック剤が塗られていそうですが、ハンドルの部分だけは分離可能でした。つまり、緩みやすい所なので定期的に増し締めが必要そうですね。
まとめ
パッケージのキャッチコピー通り、「高圧でも軽快ポンピング!」な携帯ポンプ。高圧で使い物にならず、落第点の評価をした前作とはまるで別物です。
対抗馬はROADIE TT miniですが、補助チューブが最初から付属する意味で、こちらを選ぶ人も増えるんじゃないでしょうか? 値段も1000円以上安いですしね。ポンピング回数を取るか、補助チューブと値段を取るか。
分解をしていないので推測の域を出ませんが、例のポンプ的な圧縮機構が入っていることは間違いないでしょう。せっかく新しい機構を入れたのなら、TOPEAKのように「○○テクノロジー」的な宣伝をすればよいのに、何故か「高圧でも軽快ポンピング!」としか書かないパナレーサー。もっと良いキャッチコピーがあると思うのですが。
そういえば……とても高性能で良いタイヤな「Panaracer Race C」のキャッチコピーが、
「こだわりを演出!」という、あたかも「見た目重視のタイヤですよ」と取られかねないものだったことを思い出しました。確かにスキンサイドでクラシカルな見た目はオシャレなんですけど、性能も一級品です。そこをもっとアピール出来るキャッチコピーを付けてほしいですね。モノはとても良いんですから。
評価
対象モデル: Panaracer「ワンタッチミニポンプ(BMP-23AEZ)」
年式: 2020年
定価: 3190円(税込)
購入価格: 2900円(税込)
公称重量: 100g
実測重量: 104g
価格への満足度
この機構と性能でこの値段は素晴らしい。
総合評価
前作とはまるで別物。高圧で楽なのは本当。補助チューブの幅分だけ大きい点だけマイナス。
レビュアー情報
年齢: 35歳 (執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: QUARK ロードバイク(スチール), GIANT ESCAPE RX(アルミ)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)
# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせて頂きました。