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【レビュー】Panaracer「RACE C EVO3 CL 26C」
評価:4.5
PanaracerのRaceシリーズのクリンチャータイヤ。「C」は「Classic」の略。見た目がクラシックという訳ではなく、ヨーロッパのクラシックレース用として設計されたレーシングタイヤです。
購入動機
Panaracer公式で情報が出る前から何故か店舗で売られており、気になって購入。
Panaracerのタイヤは主にブルベで愛用しています。使っているのは、GRAVELKING(26C)。大きな不満は無いのですが、太さの割には乗り心地が硬いのが気になっていました。カーボンフレームでブルベを走っていた頃はそれでもよかったのですが、スチールフレームに変えてから気になるように。夏に北海道での1200kmブルベが控えていることもあり、乗り心地の良いタイヤを探していました。
そんな時に発売された本製品。何故かスキンサイドを採用したのか気になっていましたが、周りの山サイ勢からは、
「これ、グランボアとかSOMA等のランドナー向けタイヤの技術を入れたのでは?」
との推測が多く聞かれました。Panaracerはランドナーやグラベル向けのタイヤのOEM生産を手掛けています。荒れ地走行を前提としているタイヤの技術が入っているならば、乗り心地も良いはず。そう思い、詳細情報が出る前に購入してしまいました。
ちなみに「EVO3」という名前ですが、RACE Cはこれまでチューブラーしか販売されていませんでした。
製品概要
実測重量は214g/216g(26C)。カラーは黒でスキンサイドのみです。上限気圧は7.4気圧。下限は明示されていません。
パンク防止機能として、ProTite Beltを内蔵しています。トレッド面のみにパンク防止材が入り、サイド部分には入りません。
バリエーションは、23/26/28Cの3種類です。
使用感
ロングライド用ロードバイクに取り付けて使用。ホイールは、Campagnolo Shamal Ultra(15C)。空気圧は前7.0気圧、後7.4気圧で使用しています。主な使用シーンは、ロングライド・ブルベです。現在まで約300km使用した状態でのファーストインプレッションとなります。
重量
公称210g、実測で215g前後と大変軽いです。同社のGRAVELKING(26C)が240gあることを考えると、かなり軽く作られていますね。その差は、耐パンク材の量と、タイヤ自体の幅にあると考えています。
GRAVELKINGは耐パンク材をサイドを含めた全体に配置した耐久性重視の造り。対して、本製品はトレッド面のみに耐パンク材を配置した、しなやかさ重視の造り。
また、タイヤを広げた際の幅を計測すると、GRAVELKING(26C)は71.0mm、本製品は68.5mmと2.5mmほど狭くなっています。恐らく、昨今スタンダードになりつつあるワイドリムに対応したものだと思われます。
これら2点の対策を行った結果、タイヤが軽くなっていると推測しています。
転がり抵抗
軽さの影響なのか、サイドのしなやかさの影響かは分かりませんが、良く転がる感触があります。
グリップ
トレッドパターンはGRAVELKINGとほぼ同じ杉目で、コーナーリングの感触は大差なし。雨天でのグリップは未テストなので、もう少し使い込んでからレビューします。
また、トレッド形状はPanaracer Raceシリーズの山切り形状(オールコンタクトトレッドシェイプ)ではなく、普通のU字断面(GRAVELKINGも同様の形状)です。この方がコーナーリングでクセがなく、私は好きです。
乗り心地
一番特徴的なのは乗り心地です。とにかく乗り心地がいい。
GRAVELKINGとの差はケーシングの素材&サイドの耐パンクベルトが無いくらいだと思うのですが、「それだけでここまで違うのか」と思うほど。確かに「耐パンクベルト」というくらいなので、硬いものがタイヤに一枚入るわけですが、その有無でずいぶんと感触が変わるものです。26Cの太さと相まって、路面の凸凹をかなりの割合で無効化してくれます。
ここ最近使った中で一番乗り心地が良かったクリンチャータイヤは、Vittoria Rubino Pro Speed(25C)でしたが、その上を行くと感じました。Rubino Pro Speedはトレッドのグラフェンの特性が気に入らないで使うのをやめてしまいましたが、本製品はケーシングで乗り心地を出す王道の方法を用いているので変なクセが無くて良いですね。
耐パンク性
耐パンク材であるProTiteはトレッド面のみに施されています。サイドは心配になるくらいペラペラなのでカットには弱いでしょう。ここは乗り心地とのトレードオフですね。乗り手が気を付けるしかないと思います。
耐久性
まだ300kmほどしか乗っていないので不明ですが、GRAVELKINGとトレッドの消耗が同様だとすれば美味しいのは2000㎞前後、使えて3000㎞程度だと思われます。
見た目
スチールフレーム×スキンサイドで一気にクラシカルな見た目になりました。
その他
Panaracerは自社でもタイヤを販売していますが、グラベル・ランドナー界隈のタイヤのOEM生産も行っています。私が知っているのは、「グランボア」「SOMA」「COMPASS」など。これらの会社のフラグシップタイヤは28Cで200~220g前後と驚異的な軽さを誇ります。いずれもスキンサイドでしなやかなタイヤとして知られていますが、どうも耐パンクベルトをあえて廃しているようなのです。
確証が得られたのは、自ら「乗り心地のために耐パンクベルトは入れない」と宣言しているグランボアくらいでしたが、他のタイヤも重量を見れば耐パンクベルトを入れていないと推測できます。
恐らくですが、本製品はこれらのOEM生産のノウハウを入れて乗り心地を高めつつ、クラシックレース向けに最低限の耐パンク性能を確保したタイヤなのではないかと思います。パッケージには「あなたのこだわりを演出!」といかにも見た目重視のタイヤのように書かれていますが、実は結構な意欲作? スキンサイドはクラシカルさを出したかったというよりは、乗り心地のために「あえてやっている」と見ました。
28Cタイヤをラインナップしているのも、太タイヤを履けるディスクロード用途を見据えたものではないでしょうか。28Cで230gは、ロード用レースタイヤでは知る限り世界最軽量クラスです(SERFASのLESTOが225gで更に軽いが、レースタイヤではない)。
まとめ
非常に乗り心地が良いレース用タイヤ……というと矛盾を感じますが、雪国の荒れた路面を長い距離走るのであれば最適なタイヤだと思います。夏の1200kmブルベでは、今の所このタイヤを使う予定。
このタイヤを買う前は、真面目にMAVIC USTを購入してチューブレスレディに乗り換えを検討していましたが、このタイヤの出現で買うのをやめました。もちろんチューブレスレディの方が構造的にも乗り心地/転がり抵抗ともに優位なのは間違いないのですが、やはりパンクした時のシーラント地獄が怖く……。クリンチャーの簡易さでこの乗り心地ならば、私はこちらを選びます。
気になるのは、やはりパンク耐性。サイドカットにさえ気をつければ大丈夫だとは思っていますが、ここは本番までの2ヶ月で具合を見て決めようと思っています。ダメそうなら信頼のGRAVELKINGに戻そうかなと。
追記(2020年4月3日)
実際に2018年8月の1200kmブルベ「クローバー1200」ではこのタイヤを採用しました。
道中、800kmが雨という悪天候でしたが、何とか完走しています。
乗り心地
乗り心地はやはりとても良く、1200kmブルベの完走に貢献してくれました。
ただ、サイドのしなやかさで乗り心地を出すタイプのタイヤなので、荷重のかかるシーンでは車体が沈む感じがあります(私の体重のせいですが)。このあたりの感触はGRAVELKINGの方が好みでした。
グリップ
ウェット路面でも全く問題なく、ヒヤヒヤすることはありませんでした。
大雨の狩勝峠でも、安全に下ることが出来ました。
耐パンク性
1200km中、パンク回数は0でした。
800kmも雨の中を走ると路肩のゴミを拾いやすいのですが、一度もパンクしなかったことには驚きました。
耐久性
GRAVELKING同様、美味しいところは2000km程度のようです。
見た目
前述の通り、800kmは雨の中。タイヤはかなり汚れ、スキンサイドに着いた汚れは全く落ちず。
ブラックサイドのタイヤよりもごまかしは効かないので、見た目に拘る人は雨の日は履かないことをオススメします。
総合して
ブルベ用途には良いタイヤだと思います。
サイスポのインプレでは、並み居るタイヤを抑えてのトップ評価だったので、レース用途にも使えそうですね。
パッケージはこんな感じで、いかにも「クラシックな見た目ですよ!」とアピールしているのですが、もっとタイヤ自体の性能の良さをアピールすべきだと思いました。
評価
対象モデル: Panaracer「RACE C EVO3 CL 26C」
年式: 2018年
定価: 5842円(税込)
購入価格: 4700円(税込)
公称重量: 210g
実測重量: 214g
価格への満足度
適価。耐久性から見ると少し高いかも。
総合評価
耐パンク性が未知だが、他は欲しかったスペックを実現している。
レビュアー情報
年齢: 33歳 (レビュー執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: QUARK ロードバイク(スチール), GIANT ESCAPE RX(アルミ)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)
# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせて頂きました。