【調査】 ロードレースの速度変化(1892~2018)

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「果たして自転車は進化しているのか?」と言うことが気になって少し調査してみました。

目次

調査動機

Twitterで、こんなリプを頂きました。

「選手から、”なぜ自分たちは最新機材を使い新たな取組をしているのに
レースのタイムは毎年ほぼ同じなのか?”と聞かれました。
機材が進化すると、その分だけ人間が退化するとでも言うのでしょうかね?」

確かに毎年のように各社は新製品のロードフレームに対して、

「昨年比で剛性**%アップ!」
「空力性能が**%アップ!」

と宣伝していますが、毎年見ているロードレースの速度はそこまで変わっているようには見えません。私がレースを見始めたのは2009年からですが、その頃から大体どんなレースも平均40km/h前後がほとんど。毎年のように機材のレベルがアップしているのならば、年々平均速度は上がっていくはずです。

自転車の性能が年々良くなっているというのは嘘なのか? 気になってきたのでデータを調査してみることにしました。

調査方法

調査対象はトップカテゴリのクラシックレースとしました。

・100年以上やっているレースが結構ある
・ある程度コース
・ステージレースではないので総合順位の駆け引きがない
・距離が長い
・恐らくは当時の最新機材が投入されている

以上の理由から、クラシックレースの優勝者の平均速度の変遷を見ることで、何か傾向が掴めるのではないか?と推測しました。

対象のクラシックレースは、「リエージュ・バストーニュ・リエージュ(以下、LBL)」を選択。理由は以下です。

・クラシックレースとしての歴史が長い(1892年開始)
・距離が長い(約260km)
・往復コースなので風向きの影響が出にくい

西暦の年数を横軸に、各年の優勝選手の平均速度を縦軸にしてグラフを作成しました。平均速度は、Wikipediaに掲載されているレース距離とゴールタイムから算出しています。

結果

平均時速1

結果はこのような感じに。概ね右肩上がりになっていることが分かりました。もちろんレース当日の天気や展開などはあると思いますが、クラシックレースの平均速度は、緩やかながら早くなっていると言えるようです。

もっと細かく見ると、グラフの傾きが3つの群に分かれていることが分かります。その境界は1932年の前後、1995年の前後。ここで何らかのブレイクスルーがあったように見えます。

平均時速3

サンプルレースが一つだけだと信頼性に欠けるので、「ロンド・ファン・フラーンデレン」の結果も重ねてみました。1950~70年代の傾向が少し違いますが、概ねLBLと似た変化をしていることが分かりました。

考察

上記の2回のブレイクスルーを中心に考察します。

1932年の変化

この前後であった最も大きな出来事は「変速機の誕生」です。

老舗の変速機メーカーであるサンプレックスは1928年に創業。それまではホイールの左右に違うコグを付ける「ダブルコグ」が主流でしたが、1930年台前半からは変速機が徐々に広まっていきました。ツール・ド・フランスで変速機の使用が認められたのが1937年で、その頃には一般化していたということでしょう。

1995年の変化

この辺りは特に目立った新製品の登場がありません。関係していそうなのは以下のような事象でしょうか。

 【ハード面】
・ビンディングペダルの誕生(1985年)
・手元変速の誕生(1990年)
・マビックが完組ホイールを発売(1994年)
・フレーム素材が徐々にスチールからアルミ、カーボンへ(90年代中盤)
・フレーム形状がスローピングになり高剛性化(1997年~)

【ソフト面】
・チーム戦略の高度化(トレイン、無線使用など)
・科学的トレーニングの浸透

この辺りのことが総合的に影響し、1990年台の中盤から平均速度が上がっていったのではないかと推測します。

もう一つ、あまり認めたくはありませんが、ドーピングがプロトンに蔓延しだしたのもこの頃だと思います。その辺りの影響も少なく無さそうです。

平均時速2

参考までに、ATSさんが調べてくれた1980年~2014年の詳細データ。コレを見ると1980年台から少しずつ徐々に平均速度の上昇は始まっていたようです。

まとめ

百年というスケールで見ると、自転車というものは少しずつ早くなっていることが分かりました。数年スケールだと体感できるレベルではありませんが、着実にハード・ソフトの両面が前進しているということなのでしょう。このまま行くと、20年後くらいにはレースの平均速度が45km/h前後に到達する日が来るかもしれません。

今回はクラシックレースを調べましたが、外乱の少ないヒルクライムレースやアワーレコードの進化を合わせてみると、より興味深いが結果が得られそうです。そのうちやりたいと思います。

ちょっとした思いつきから始めた調査でしたが、面白い結果が得られました。

著者情報

年齢: 33歳 (レビュー執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: QUARK ロードバイク(スチール), GIANT ESCAPE RX(アルミ)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)

# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせて頂きました。

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この記事を書いた人

ロングライド系自転車乗り。昔はキャノンボール等のファストラン中心、最近は主にブルベを走っています。PBPには2015・2019・2023年の3回参加。R5000表彰・R10000表彰を受賞。

趣味は自転車屋巡り・東京大阪TTの歴史研究・携帯ポンプ収集。

【長距離ファストラン履歴】
・大阪→東京: 23時間02分 (548km)
・東京→大阪: 23時間18分 (551km)
・TOT: 67時間38分 (1075km)
・青森→東京: 36時間05分 (724km)

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