【レビュー】Ridefarr「カーボンエアロボルトオン」

評価:4.5

Ridefarrのミニエアロバー。

Ridefarrはエクストリームロングライド向けの製品を作ることを目的に設立された珍しいブランドであり、本製品も「ロングライド向けの簡易エアロバー」という少々ニッチな位置付けの製品です。

 

購入動機

2020年12月、久々のイベント参加となった「バイクロア」にお世話になっているAlternative Bicyclesさん(APIDURAやRevelate Designsの代理店)が出展されていたので挨拶に伺いました。

 

そこで展示されていた製品の中で一際目を引いたのが、こちらの「カーボンエアロボルトオン」でした。

 

この製品はAlternative Bicycles代表の北澤さんがツイートしていたので存在は知っていたのですが、スルーしていました。かなり大きくて重そうに見えたことが理由です。

しかし、目の前で見たカーボンエアロボルトオンは思ったよりもかなり小さいサイズでした。はるか昔に流行った「スピナッチ」くらいの大きさを想像していたのですが、二回りくらい小さいです。バーの先端はSTIレバーよりも手前にありますし、取り付け部分の幅も思ったより少ない。これはなかなか面白い。

握ってみても、幅広の部分が手首の支えになって安定感があります。アームレストは無いものの、これなら握り続けるのも多少は楽そうです。

「ロングライドにエアロバー?」と思われる方も多いかもしれません。ロングライド後半(特にブルベの二日目など)に、姿勢の維持に疲れてポジションを変えたい時が結構あるのです。そういった時にこれは使えるのではないか?と。また、向かい風の時にもこれがあったら便利なのでは……と思いを巡らせていました。

エアロバーを見て考え込む私。それを見ていた北澤さんが「使ってみます?」と一言。これまでも何回か担当してきたように、モニターとしてレビューを書くということで、製品のご提供を頂くことになりました。


エアロバーは過去に何度か試していますが、採用には至っていません。

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初めて購入したのは、プロファイルデザインのステムから生やすタイプのエアロバー。カブトムシみたいな形状の製品です。

とりあえず三浦半島の松輪(信号のない周回コースがある)まで行ってテストしてみたものの、バーに体重を預けるのが怖く、「こりゃ国道1号線で使うのは無理だな」と。更に重量も500gほどプラス。すぐに使用をやめて、今も押し入れに眠っています。

 

二度目に購入したのは、こちらの製品。ヒノタマデザインのミニDHバー。

短いのでハンドル荷重にはならないし、重量も108gとかなり軽量。これはなかなか良いのでは?と思ったのですが……。

一応掴むことはできるものの、手首の落ち着く場所がありませんでした。その割にバランスは悪くて怖い。軽いのは利点でしたが、結局これもほとんど使わずに譲渡してしまいました。

 

そして三度目のチャレンジが、今回のRidefarrということになります。握ってみた感触は良かったものの、実際に乗ってみるとどうなのか?


数日後。

宅配便でカーボンエアロボルトオンが着弾。かなり久々のエアロバー使用となります。

 

製品概要

実測重量は103.6g。

バー自体はフルカーボン。クランプ部品はアルミ製です。フラットバー/ドロップハンドルともに対応していますが、ハンドル径が31.8mmのものにのみ対応しています。

カラー展開は以下の通り。オイルスリックのみ少し値段が高くなっています。私はブラックを使用。

・ブラック
・ホワイト
・オイルスリック
オイルスリックカラーはこちら。
Alternative Bicyclesサイトより引用

非常に派手! 塗装にかなりコストが掛かっているようで、通常版より1000円高くなっています。1000円ではこの塗装はできない気もしますが……。

使用感

3TのERGONOVA TEAMハンドルに取り付けて使用。使用期間は一ヶ月、距離は1000km前後。主な使用シーンはロングライド・ブルベです。

製品の目的

ここで一旦、本製品の目的を確認しておきます。

通常、エアロバーと言えば「前方投影面積を減らす」「手を揃えて前に突き出すことで空気の流れを良くする」等で、空気抵抗を減らすことが唯一最大の目的です。空気抵抗が減れば、小さいパワーで速く走れるわけですからね。

しかし、本製品の説明で最初に書かれているのは「Allows for additional hand positions on long rides」です。日本語に訳すと、「ロングライドにおいて、ハンドポジションを追加できる」と言った所でしょうか。二番目にようやく空気抵抗の話が出てきます。

ロングライドでは、肩の凝りや手のしびれが出ないように、一つのポジションだけを使わずに時折ポジションを変えるのが定石とされています。これによって、使う筋肉や圧迫される箇所が変わってくるからです。要はポジションを変えることで負荷分散をしているわけですね。

ドロップハンドルでは3つのポジション(ブラケット・下ハンドル・上ハンドル)が取れるとされていますが、疲れているのに下ハンドルを握りたくはありません。となると、ブラケット・上ハンドルの二択です。短い距離ならこの2つがあれば適切に負荷分散できるのですが、距離が伸びると2つでは足りないと感じることはあります。

苦し紛れに手首をハンドルの上に乗せて指をクロスさせてみたり(よくツール・ド・フランスで逃げの選手がやっているアレ)、ライトやGarminに手を添えて見たりとポジションを変えてみようとするわけですが、安定感が悪く持続することはできませんでした。

そこで、本製品のようなエアロバーがあると、ポジションの選択肢が一つ増えて、より負荷分散しやすくなるわけですね。空気抵抗以上にこれが嬉しい。

 

多くのエアロバーは、取り付けると上ハンドルが持てなくなることが多いのですが、本製品は上ハンドルポジションを取ることも可能です。

冒頭に書いたように、このブランドはエクストリームロングライド向けの製品を作ることを目的としています。作り手側も相当なロングライダー揃いのようなので、ロングライダーが欲しくなるものをよく分かっているなーと私は感じました。

重量

実測で103.6g。公称は98gなので+5.6g。

似たような製品でDEDAのCarbon Blastという製品がありますが、こちらは226g(アームレスト付きですが)。それと比べてもかなり軽量であることが分かります。

 

こちらと比べると重量はほぼ同じです。

フルサイズのエアロバーは、アームレストを含めると500gに達することもあります。ハンドルがそれだけ重くなるということなので、走行感への影響も無視できません。その点、100g程度であれば、軽量級のライト1個くらいの重さであり、影響は最小限と言って良いと思います。

取付

ステムの左右にクランプします。ちなみにボルトは六角ではなくトルクスです。

 

小さいとは言え、ハンドルの一等地を塞いでしまいますね。ハンドルにライトを付けるのは不可能になるので、先端のライトマウント部(写真ではベルが付いている場所)にライトを付けて使うことを想定されているようです。ブルベだとフロントライトが2本以上必要なことも多いので、ステムのボルトから生やすタイプのライトマウントを併用する必要があるでしょう。

 

私は、BontragerのBlendrシステムを使って、ステムからライトを吊り下げています。

 

一度握ってみたらサイコンが邪魔だったので、サイコンはステムに移設しました。

握り方

握り方はこんな感じです。サイコンが内側にあったら握れないのがよく分かると思います。

上ハンドルと本製品の間に段差がないので、上ハンドルを握った状態からシームレスに握りが移行できるのは良いですね。

走行練習

エアロバーは一時的にブレーキから手が遠くに離れますし、体重がハンドル荷重になりがちなので段差等でバランスを崩しやすくなります。私はほぼエアロバー初心者なので、まずは安全な場所で慣れるための練習をすることにしました。

練習場所に選んだのは、川崎市内の線路沿いにある某コース。往復4.2kmで、夜間は交通量もほとんどありません。ここならば信号も無いし、見通しも舗装状態も良いので練習場所に向くと判断したのでした。

早速練習。最初はちょっと怖かったですが、徐々に慣れていきました。この製品、他の類似製品よりも安定感があるというか、握りやすいのです。

 

その理由は画像で示した横に広がった部分。便宜的に「エラ」と呼ぶことにします。エラが良い具合に手の側面を支えてくれて、手を落ち着かせやすいんですよね。アームレストは無いものの、単純な棒を伸ばしただけのヒノタマデザインのものより格段に握りやすく、安定感も高まっています。エラがあるためにライトを付けることが出来ないんですが、この形状はかなり考えられているなと思いました。

また、アームレストが無いことで「極端なハンドル荷重が出来ない」構造となっているため、段差等でバランスを崩しにくくなっています。

練習に使ったコースは見通しも良い分、風は吹きさらしで、向かい風が強く吹くことも多いです。この日も向かい風でしたが、バーを握るとかなり速度が上がることに驚きました。

空力性能テスト

数日使って慣れた所で、果たして走行速度にどれくらいの影響を及ぼすのかテストしてみることにしました。テスト場所は、最初に練習で使った場所と同じ川崎市内の線路沿いのコースです。

・往復4.2kmのコースを走行
・平均出力200W目標で走ったときの走行時間を測定
・ブラケットを持った場合、エアロバーを持った場合で各4周ずつ測定
・機材はINFINITO CV。パワーメーターはFC-R9100-P(走行直前に校正)。
結果は以下のとおりです。
ブラケットを持った場合
走行時間 平均出力 平均速度
1 8:13 205W 30.9km/h
2 8:24 207W 30.2km/h
3 8:13 206W 30.9km/h
4 8:19 203W 30.4km/h
平均 8:17 205W 30.6km/h
エアロバーを持った場合
走行時間 平均出力 平均速度
1 8:07 206W 31.2km/h
2 8:01 208W 31.6km/h
3 8:03 205W 31.6km/h
4 8:09 204W 31.1km/h
平均 8:05 205W 31.3km/h

 

結果としては、エアロバーを持った時の方が同出力でも平均速度が0.7km/h上昇しました。走行時間は4.2kmで12秒ほど短くなっています。

特に出力を見ないでエアロバーを握った場合、0.7km/hどころではなく速度は上がります。ただ、実はその時は出力も大きくなっていることがパワーメーターの数値を見ると分かります。冷静に出力を揃えると、平均時速の上昇幅はこれくらいに留まる……ということのようです。

こちらの写真を見ても分かるのですが、ブラケットと本製品はほぼ横一線上にあり、本製品を握っても前傾の度合いはほとんど変わりません(≒前方投影面積は大して変わらない)。ちなみに、ハンドル中心~先端までの長さは115mmです。

ただ、腕を揃えて前に突き出すことには意味があるようで。「前に出した腕が空気を切り裂く」と説明されることが良くあります。大きな抵抗を占める腰の部分に空気が行かなくなるので結果として抵抗が落ちるらしいです(ふじいのりあき「ロードバイクの科学」より)。この0.7km/hの平均速度上昇はその結果なのではないかと思います。

ただし、アームレストが無いので、しばらく握っていると結構疲れてきます。ポジションを変えて疲れを分散させることが目的の製品なので、疲れてしまっては意味がありません。あくまでも平均速度上昇はポジション追加に付いてくるおまけ機能と考えたほうが良いでしょう。

ヒルクライムでの使用

元々は平坦走行時を目的に作られたもののようですが、意外とヒルクライム時にも使えます。

これを握った時に割と腹筋に力が入り、ブラケットを持ったときよりも「踏める」感覚が強くなります。

ブルベでの使用

一度、200kmブルベにも本製品を付けた状態で参加しました。

 

ブルベの時は、ライトをマウント部に追加しました。

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分かりにくいですが、Volt800の下にベルが付いています。CATEYEのベルは、ライトと共付けできるのが良いところ。

見通しの良い道で気分転換の時に握る……という使い方でしたが、使う筋肉を切り替えられたのが良かったです。多少の効果はあったのか、翌日の上半身の疲れは少なく済みました。恐らく、北海道での1200kmブルベのようなシーンでは、より効果が大きいことが推測されます。

国内ブルベは主催団体ごとに独自のルール(ローカルルール)を設定しており、その中でエアロバー・DHバーは使用禁止となっていることがあります
参加前に必ずローカルルールを確認してください。
ブルベの最高峰であるPBPでも、2015年まではエアロバーの使用は禁止されていました。しかし、2019年からは「エアロバーの先端がブレーキレバーよりも後ろならばOK」というように規約が変更されています。
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本製品はこの条件を満たすので、PBPの規約的には使用可能です。次に参加することがあれば取り付けることを検討しています。

関連製品

今回レビューしたのはカーボン版のエアロボルトオンですが、アルミ版もあります。

 

Alternative Bicyclesサイトより引用

形状は異なりますが、用途は同様。個人的に非常に良いと思った「エラ」の部分が無いのは残念ですが、その分クランプ幅が狭いのでライトを取り付けることも可能なはず。値段も10000円と、カーボン版の半額以下となっています。

アルミ版は通販サイトなどでの扱いは今の所無いようですが、Alternative Bicyclesのサイトからメールで直接注文が可能です。


また、本製品用のアームレストも近日発売予定とのこと。

Alternative Bicyclesサイトより引用

個人的にはスペースを取らない&軽量であることが魅力なので、特別付ける必要はないかな、と感じています。

まとめ

最小限の重量増加(100g)でライドポジションを増やせる、ロングライド用ミニエアロバー。

「エアロバーに興味はある」「でも重いし場所取るし……」そんな風に考えていたロングライダーのツボを上手く突いた製品だと思います。

フルサイズのエアロバーほどの空力効果はありませんが、長距離ブルベ・エクストリームロングライドでのポジション負荷の分散や、向かい風区間をこなす時の強い味方になってくれるでしょう。ハンドルから手を離さずに安定した上ハンドルポジションへと移行できるので、通常のエアロバーよりも安心感があるのも大きいです。

過去に使った2つのエアロバーはいずれも1回使っただけでお蔵入り。しかし、本製品は一ヶ月以上付けっぱなしです。エアロバー使用禁止の団体のブルベに出る時になったら外しますが、今の所外す予定はありません。


しかし、テストしてみて思ったのは、「日本の都市部に住んでいると中々使い所が難しいな」ということ。

歩行者がいたり、信号が多くある所では怖くて握る気が起きません。満足に使えるのは、海沿いの平坦路や、北海道を走る場合でしょう。

Ridefarrのブランドサイト「About Us」のページを見ると、本製品を握って広大な砂漠を走るライダーの写真が掲載されています。Ridefarrはオーストラリア発のブランドなので、こういった所を走る時のために開発されたんでしょうね。

ただ、ずっと平坦路を走るPBPでは強い味方になってくれそうな気がしています。次の参加機会があれば是非使ってみたいものです。

 

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評価

対象モデル:  Ridefarr「カーボンエアロボルトオン」
年式: 2020年
定価: 23490円(税込)
購入価格: モニター提供品
公称重量: 98g
実測重量: 103g

価格への満足度

モニターレビュー品のため対象外

総合評価

9/10

ロングライダー目線で作られたミニエアロバー。最小限の重量増加でポジションを増やせる。エアロ効果もあり。

レビュアー情報

年齢: 36歳 (執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: QUARK ロードバイク(スチール), GIANT ESCAPE RX(アルミ)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)

# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせて頂きました。


この記事を書いた人
ばる
ロングライド系自転車乗り。昔はキャノンボール等のファストラン中心、最近は主にブルベを走っています。PBPには2015・2019年の2回参加。R5000表彰・R10000表彰を受賞。

趣味は自転車屋巡り・東京大阪TTの歴史研究・携帯ポンプ収集。

【長距離ファストラン履歴】
・大阪→東京: 23時間02分 (548km)
・東京→大阪: 23時間13分 (551km)
・TOT: 67時間38分 (1075km)
・青森→東京: 36時間05分 (724km)