【レビュー】ROVAL「TERRA CARBON SEATPOST」

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評価:3.5

SPECIALIZED傘下のパーツブランド、ROVALのグラベル用シートポスト。

路面からの突き上げを吸収するため、伸び特性を持つ素材を使用してる点が特徴です。

目次

購入動機

2024年2月に納車となったGHISALLO「GE-110」は、久々の丸型断面のシートポストが付くフレームでした。

そこで、「乗り心地が良いシートポスト」をTwitterで聞いてみた所、「シンプルなデザインの割に効果が高い」という評判を得ていたのが、こちらのROVAL「TERRA」でした。

試させてもらった所、確かに路面からの突き上げが緩和されることを感じたので購入を決めました。

詳しい経緯はこちらの記事に書いています。

製品概要

実測重量は224g(380mm/セットバック20mm/カット前)。

ヤグラ以外はカーボン製、ヤグラはアルミ製です。

直径は27.2mmモデルのみ。セットバックが0mmのモデルと20mmのモデルがあります。

海外では330mmモデルの展開もありますが、日本では380mmモデルのみの展開となっています。

使用感

20mmセットバック、全長380mmタイプを購入し、エンデュランスロードであるGHISALLO「GE-110」に取り付けて使用。主な用途はロングライド・ブルベです。

重量

公称重量は194gですが、これは「0mmセットバックの330mmモデル」の重量。私が購入したのは「20mmセットバックの380mmモデル」なので重くなる要素しかありません。

カット前は224gと中々の重さ。これは、ポスト部分が380mmとかなり長めの状態で販売されているからです。

適切な長さにカットした所、37g減の187gとなりました。

調整機構

シートポスト上部を貫くように穴が空いており、その中に筒が入っています。その筒を左右からネジで締め付けるという構造。

かつて私が乗っていたRoubaixの専用シートポストもこの構造でしたが、固定力が弱くて段差などでサドルの角度が変わってしまうことが良くありました。当時よりは精度が良くなっているようで、TERRAシートポストでは角度が変わるなどの問題は起きていません(一応、ヤグラ部分にMOTREX「カーボンペースト」を使って滑らないように工夫はしています)。

この方式はサドルの角度を無段階で調整可能なので、ポジションを出す上ではメリットのある仕組みだと思います。

なお、シートポストを固定するパーツはカーボンレール用と金属レール用で2種類あり、両方が最初から同梱されています。Bontragerのシートポストはカーボンレール用が別売りだったことを考えると良心的ですね。

快適性

冒頭に書いた通り、このシートポストはグラベル用です。

しなりを生む構造

スペシャライズドのサイトから、このシートポストの説明を引用します。

Terra シートポストは垂直方向のコンプライアンスに優れ、路面からの突き上げを吸収してスムーズな走りを実現し、グラベルや荒れた道路、舗装と未舗装が入り混じった路面でのライドに最適です。

なめらかな乗り心地を実現するシートポストの秘密は、カーボンレイアップにあります。伸び特性をもつ素材を特定の部位に使うことで、垂直方向のコンプライアンスをもたせて快適性を高め、同時にさまざまな路面を走るための強度を確保しました。

スペシャライズド公式サイトより

キーワードとなるのは「伸び特性を持つ素材」という部分。恐らくですが、シートポストの進行方向側に伸びやすい特性のカーボン(または異素材?)を使い、シートポストが後ろ方向にしなりやすくしているのだと思われます。

体感の効果

快適性重視のシートポストと言えば、穴が開いていたりするものですが、そういった仕掛けもなく見た目には実に普通のシートポスト。

ただ、実際乗ってみるとかなりの「しなり」を感じられます。特に段差を越えた際には明らかに尻に伝わる衝撃が減ります。シートポストがしなって吸収してくれているのでしょう。舗装路の段差でこれなので、グラベルのようなシーンでは恐らくかなりの効果を発揮するものと推測されます。

なお、乗っていない状態でサドルを強く後ろ側に押すと、それでも微妙にしなります。体重ならまだしも、腕の力でしなるのは驚きでした。

私は試したことがないのですが、↑のErgonのシートポストと今回のRoval「Terra」を乗り比べた方の話では、「Rovalの方がしなる」ということでした。

効果の反面、「動きすぎる」感じも

このように、「衝撃を吸収する」という点においてはかなりの高性能を持つこのシートポストですが、私は使用を中止しています。現在は、Bontrager「XXX Seatpost」に交換済み。

理由は、「あまりにも動きすぎる」からです。

私はヒルクライムで尻をサドルに固定し、前に蹴り出すようなペダリングをします。この動きをしたとき、このシートポストだと蹴り出しのタイミングでサドルが動いてしまう感触があったのでした。これがどうも、パワーを吸収されている感じで気持ち悪く、さらにポジションも微妙に変わるせいなのか尻の筋肉に痛みが出てしまいました。

Bontrager「XXX Seatpost」もあえてしなりやすくしているシートポストではあるのですが、Roval「Terra」に比べると動きにくくはなっています。動き出す下限の力がより大きいと言いますか。

Bontrager「XXX Seatpost」はロード用、Roval「Terra」はグラベル用ということで、そもそもの用途が異なります。サスペンションが欲しくなる路面を想定して作られたシートポストを舗装路で使うというのはオーバースペックな面があったのかもしれません。

Bontrager「XXX Seatpost」に交換後は、ヒルクライム時にサドルが動きすぎる感覚はなくなりました。

まとめ

これといった機械的ギミックを採用せずに、しなりを大きく出せる軽量カーボンシートポスト。衝撃吸収という意味では最強クラスだと思います。

ただ、舗装路で腰を落ち着けて使うには、少々動きすぎるかもしれません。

ヒルクライムの際に前乗りでケイデンスで登るタイプの人であれば、そこまでペダリングに影響は出ないかもしれません。ただ、後ろ乗りの人にとっては、このシートポストは動きすぎる違和感の方が大きくなる可能性があります。

元々グラベル用として売られている品なので、それを舗装路のロングライドに使おうとした私の使い方に無理がありました。その失敗……とまでは行きませんが、経験談をレビューとして書き残した次第です。

結局、このシートポストの使用は中止してしまいましたが、こうした差を楽しむのも汎用シートポスト採用フレームの良いところではあります。専用シートポストだと、そもそも交換することも出来ませんので。

評価

対象モデル:  ROVAL「TERRA CARBON SEATPOST」
年式: 2023年
定価: 30800円
購入価格: 29260円(一度フレーム取付済みの個体のため5%割引)
公称重量: 194g(0mmセットバック/330mm)
実測重量: 224g(20mmセットバック/380mm)

価格への満足度

7/10

特殊素材の採用と効果を考えると適切な価格。

総合評価

7/10

舗装路のみで使った場合の評価。衝撃の吸収度合いで言えば最強クラス。

著者情報

年齢: 39歳(執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: GHISALLO GE-110(カーボン), QUARK ロードバイク(スチール)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)

# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせていただきました。

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この記事を書いた人

ロングライド系自転車乗り。昔はキャノンボール等のファストラン中心、最近は主にブルベを走っています。PBPには2015・2019・2023年の3回参加。R5000表彰・R10000表彰を受賞。

趣味は自転車屋巡り・東京大阪TTの歴史研究・携帯ポンプ収集。

【長距離ファストラン履歴】
・大阪→東京: 23時間02分 (548km)
・東京→大阪: 23時間18分 (551km)
・TOT: 67時間38分 (1075km)
・青森→東京: 36時間05分 (724km)

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