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【レビュー】Schmidt「SON delux」
評価:2
ドイツ製の前輪用ハブダイナモ。元々は小径車向けに設計され、市販のハブダイナモで最も低抵抗とされています。
購入動機
2014年の初めに、本州一周TT、PBPを見据えて購入しました。
充電できる施設の少ない場所を通る場合、何らかの給電手段が必要。となると、自転車界隈でよく使われるのはハブダイナモです。選んだのは、市販のハブダイナモで最も抵抗が少ないと言われる「SON DELUX」でした。
ハブを単体で購入し、ホイール組は定評のある「PAX CYCLE」さんにお願いしました。
ブルベ専門雑誌「ランドヌール」のハブダイナモ特集では、「あまり抵抗を感じない」と書かれていたので期待していたのですが……。
製品概要
実測重量は未測定。公称重量は390gです。
時速20kmでの走行時に、3Wの発電を行うとのこと。つまり、損失は確実に3W以上です。
カラーは、シルバー/ブラック/レッドの3種類。私はブラックを購入しました。
使用感
以下の仕様でホイールを組んでもらいました。
リム: DT-SWISS RR440 32H
スポーク: DT-SWISS COMPETITON 32本
ニップル: 真鍮
ライトは、B&M社の「Lumotec IQ2 LUXOS U」を使用しました。
ランドヌ東京の400kmブルベ「ぐるっと富士山」にてテスト使用した結果のインプレです。比較対象は、Campagnoloのユーラスです。
重量
重いです。
普通のロード用の前輪ハブは、100-150g程度。本製品は390gなので、3倍から4倍程度の重さがあります。回転の中心なので影響は少ないのですが、実際にホイールにする場合は32本のスポークで組むので、ホイール全体としてもかなり重くなります。
私のホイールの実測重量は1070g。ユーラスの前輪が640gなので、430gの重量増。これだけ増えると、明らかに自転車の前後バランスが変わってきます。その件については、抵抗の章で後述。
ライト性能
これはライトの性能にも依存しますが、今回使ったLumotecは非常に良かったです。
照射範囲は横にも広く、また遠くまで照らすことが出来ます。この明るさが、自分の体力が続く限りは無制限と言うのは素晴らしい。ある程度の蓄電はライト側に出来るので、止まっても点灯したままです。
また、USB出力も付いたライトだったので、モバイルバッテリー等の充電も可能でした。ただ、つまりそれは常に発電→抵抗が発生しているということなのですが。
抵抗
ホイール単体でハブを回してみると、明らかにゴリゴリとした感触があります。「整備不良なのでは」と思いましたが、これが普通だそうです。
実際に走ってみると、平地の走行時は、消灯・点灯時ともに、ほとんど抵抗は感じません。
問題は、ヒルクライム時です。ただでさえハブが重い上に、スポークも32本組なので、絶対重量がかなり上がるので抵抗となります。それに加えて、点灯時は発電のための抵抗が加わります。
この時参加した400㎞ブルベでは、柳沢峠と箱根峠の2つの峠を越えました。柳沢峠(昼間)では「いつもより重いかな」くらいの感覚でしたが、箱根峠(夜間)では「重い、重すぎる!」となるくらいに抵抗を感じました。点灯状態での夜間ヒルクライムは、はっきり言って苦行です。
上記は、シュミットのホームページにある速度と損失のグラフです。
仮に、ヒルクライム時の速度を時速15kmとします。
多分、私がブルべ中の登坂時の出力は200-250W程度だと思うのですが、この際のハブでの損失は3.2W程度。高品質な非ダイナモのハブならば0.3W程度の損失になるようです。ハブダイナモに変更した場合のハブで発生する抵抗は、約10倍程度と言うことになります。
数値にすると3Wはかなり小さいのですが、実際にはホイール自体の重さも加わって、非常に抵抗を感じます。何度となく登った箱根ですが、こんなに辛かったことは稀です。
念のため書いておくと、PAXさんの組んだホイールの品質は全く問題がありませんでした。単純にハブの抵抗と、ハブダイナモゆえの重量化が問題だと思っています。
まとめ
結局、ハブダイナモは100kmライドを1回、400kmライドを1回した所で「実用不可」と判断し、お蔵入りとなりました。
電源を気にすることから解放されるのは素晴らしいのですが、いかんせんヒルクライムでの体感抵抗が大きすぎます。とにかく山を登ることが多い日本のブルベではデメリットが大きいと私は感じました。ただでさえ体重が重いので……。
更に、日本ではコンビニに行けばモバイルバッテリーや電池も買えますし、ホテルなどに泊まれば電源も確保できます。電源の確保が不可能な所を長時間走るということが、日本では割と稀なのです。わざわざハブダイナモを使わなくても運用で回避すれば良いという結論に達しました。
今考えると、スポークが32本というのも、重さに拍車をかけていたのかもしれません。日本では最低で32穴からですが、海外向けでは20穴のモデルもあります。24穴で、軽いリムを使ったらどうなるのかは気になる所。
ただ、いつの日か、海外など全く電源の確保できない場所でのライドをすることがあれば、ハブダイナモの使用も検討すると思います。もっとも、モバイルバッテリーの小型大容量化も進んでいますし、そちらで代用可能かもしれません。
評価
対象モデル: Schmidt「SON delux」
年式: 2014年
定価: 28560円(税込)
購入価格: 28560円(税込)
公称重量: 390g
実測重量: 不明
価格への満足度
永久電源と考えれば。
総合評価
日本では使い所が難しい。
著者情報
年齢: 32歳(執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: BIANCHI OLTRE XR4(カーボン), QUARK ロードバイク(スチール)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)
# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせていただきました。