【レビュー】SHIMANO 「RX8 (SH-RX800)」

この記事は約 7分で読めます。

評価:4

2019年末にSHIMANOから発売された、オフロード用軽量SPDシューズ。グラベルレースに特化したモデルです。

目次

購入動機

私はロングライドやブルベでSPDシューズを愛用しています。そこまで速度域が高いわけではなく、コンビニ等での歩行シーンが多いことが理由です。クリートが出っ張らないSPDシューズは、雨の日でも床で滑るようなことはまずありません。また、SPDペダルは両面キャッチ可能なモデルもあり、疲労の溜まるロングライド後半ではストレス的にも差が出ます。

ずっと愛用していたのが「SHIMANO XC31」というモデルでした。このモデルはSHIMANOのクロスカントリー用シリーズの入門モデルです。実売10000円ほどと安いのですが、3本ベルクロのためシリーズでも最軽量でした(43サイズ実測で片足327g)。非常に気に入っており、駄目になっても買い換えて4足は同じものを使ったと思います。しかし、数年前に廃版となっている製品なので、ついに手持ちの在庫が尽きました。

後続として使おうと思って買ったのが以下の2モデルです。

・SHIMANO SH-XC500 (紐靴モデル)
・SHIMANO SH-XC501 (BOAモデル)

どちらも重量はXC31より少し軽く仕上がっています。しかし、どちらも履いてみてすぐに「どうも合わない」と思い、手放してしまいました。この2モデルはいずれもMICHELINのアウトソールを採用しています。その足裏への感触が気持ち悪かったのです。

IMAG2146.jpg

MICHELINソールは、インソールを取るとこんな形状になっています。この凸凹が足裏に食い込むというか、すぐに足裏が痛くなるイメージが浮かんでしまいました。インソールが挟まるので、実際はあまり影響はないはずなのですが……。

—–

そんな時、行きつけのショップで見かけたのが「SHIMANO RX8」でした。SHIMANOは最近グラベルにご執心で、GRXというグラベル向けコンポーネントも発売。そのグラベルシリーズのシューズとして発売されたのがこの製品です。

ショップの方によると、このシューズはSHIMANOとしても「観測気球」的な発売だそうです。グラベルシューズが果たして売れるのか分からないので、一旦出してみたと。なので、入荷は今回限り。売れたら再生産されるかも?とのこと。

IMAG2147.jpg

「どうせこれもMICHELINソールなんだろうな」と思って確かめてみると、付いていたのはSHIMANOのオリジナルカーボンソール。ショップの方に断ってインソールを外してみると、凸凹は無く平ら。そして試着してみると、足裏にも違和感なし。問題は28000円という値段。その日は悩んで買わずに帰りましたが、結局気になって購入してしまいました。

製品概要

IMG_-3ohppe.jpg

実測重量は、295g(43サイズ片足、アーチサポートシム込)。2穴でSPD用です。

IMAG2337.jpg

アウトソールはカーボン製。SHIMANOによる剛性値は10とされています。SPDシューズなので歩くための滑り止め(TPU製)が貼り付けられています。

アッパーは合成皮革。そして、BOAのIP1タイプのアジャスターが採用されています。

カラーはブラックとシルバーの2種類。国内販売サイズは40~44サイズまでで、ハーフサイズの展開はありません。

IMAG2338.jpg

インソールは、土踏まずの高さを調整できるタイプ。2タイプのシム(1枚5g)が付属します。私はシムを外して使っています。

使用感

ブラックカラー、43サイズを購入。主な用途はブルベ等のロングライドです。まだ100km程度しか使用していないため、ファーストインプレッションとお考え下さい。

重量

IMG_d8kppj.jpg

公称重量は265g(42サイズ)で、実測重量は295g(43サイズ)。43サイズで300gを切るのは凄いです。メーカー製のSPDシューズとしては、調査した限りでは世界最軽量でした。

この軽さの秘密は、その構造にあると思います。言ってしまえば、RX8は「ロードシューズに多めの滑り止めを付けたもの」だからです。

オフロードシューズは、歩行をするためにある程度しなるアウトソールを採用し、その上にゴムの滑り止めを全面に貼り付けた構造にするのが普通です。これに対し、RX8は、ガチガチでしならないアウトソールを採用し、その上にTPUの滑り止めを必要な部分にだけ貼り付けた構造になっています。この割り切った構造が、通常のオフロードシューズではありえない軽量性を生んでいます。

外観

グラベル用ということを主張するように、迷彩柄が表面に描かれています。

IMAG2148.jpg

かかと部分の反射材もなかなかおしゃれ。全体的に見た目にも気を使われています。

サイズ感

RX8にはワイドモデルの設定がありません。ノーマルモデルのみです。

甲は低く、幅も狭くは見えるのですが、普段履いているSHIMANOのオフロードシューズのノーマルモデルと同じサイズで窮屈感はありませんでした。

フィット感

同時期にリリースされたXC5(SH-XC501)は若干、爪先の上側の空間が余る感じがありましたが、RX8はそういった感触はありません。やはり見た目通り爪先側が少し細いようです。ただ、アッパーの柔軟性が高いので、前述のように窮屈な感じはありません。

BOAもIP1タイプということで、ダイヤルを逆回転することで緩めることが出来ます。ブルベでは後半に足がむくんで窮屈になることがありますが、そんな時でも微妙に緩める調整が出来るのは嬉しいところ。なお、XC5に付いているBOAはL6タイプで、ダイヤルの逆回転が出来ない仕様です。締め過ぎたときには一度完全にリリースした上で再度締め直す必要がありました。

かかとは細く締まっており、ホールド感は強めです。

ペダリング性能

ペダリングの感触も、まさにロードシューズと言った剛性感です。SPD-SLペダルに、カーボンソールのロードシューズを履いているかのようなダイレクトさを感じます。SHIMANOによると、このシューズの剛性値は10。それまで使っていたXC31の剛性値は5です。

購入動機の章にも書いたように、足裏の違和感は短い距離ではありません。が、これだけ剛性が高いと長距離を走った時に足裏の痛みが出るかもしれません。2015年のPBPでは少しでもペダリング効率を高めようと、SHIMANOのハイエンドシューズであるXC70(剛性値は8)を使用したのですが、1000㎞を超えたあたりから足裏の痛みに悩まされました。剛性値の低いXC31に乗り換えてからは、足裏の痛みは出なくなっています。単純にアウトソールの剛性の高さによるものなのか、その他に問題が合ったのかは分かりません。

RX8で足裏の痛みが出るかどうか、今後、長距離ブルベに投入して確かめる予定です。

歩行性能

十分な滑り止めが付いているので、歩行性能は悪くありません。ただ、ソールが全くしならないので、歩行時に違和感は感じます。クリートが出っ張っていないだけで、ロードシューズと同じ構造なのだから当然と言えば当然なのですが。

元々、このシューズがターゲットとしているグラベルレース(恐らく、Dirty Kanzaなど)は、「ほとんど歩かない」らしいです。障害物のある道なき道を行く……というよりは、舗装されていない道路をなるべく速く走るというもののようで。ゆえに、歩行性能よりは、剛性を高めてペダリング効率を重視した作りになっているようです。

私の主な使用シーンであるブルベも、歩くのはコンビニか飲食店かホテルの中くらいのもの。そこで不自由を感じない歩行性能があれば問題ありません。

なお、シクロクロッサーである「すくみず」氏に聞いてみると、これはシクロクロスでは使う気にならないとか。割と激しく不整地をランで駆け抜けるシクロクロスでは、ソールがしならないとダメだそうです。で、無理に走ると滑り止めが剥がれると。シクロクロスで使おうと思っている方が居たらご注意ください。

まとめ

IMAG2297.jpg

グラベルレース向けのシューズですが、「ロングライドでSPDを使いたい」「けどシューズが重い」という方に向くシューズだと思います。非常に軽量かつパワーを逃さない剛性があるので、ロングファストラン、例えばキャノンボールには最適ではないでしょうか。逆に、歩行時間の多いポタリングのような使い方には向きません。歩きやすいシューズではないです。

問題は、RX8が限定品であるということです。海外ではそうでもないようですが、現在はSHIMANO製品を海外通販で買うことが出来ません。つまり、日本の市場在庫を探すしかないわけです。私はこれが非常に気に入りましたが、次に買い換える時には困ることになるでしょう。

ただ、もしこれがきちんと売れれば、レギュラー化することも考えられます。そういう理由もあって、私は購入を決めました。これで少なくとも売上が+1にはなるので。このレビューを見て気になった方がいれば是非買ってみてください。まだ国内の一部通販サイトには在庫があります(2020年1月9日時点)。それが本製品のレギュラー化の後押しになるかもしれません。

評価

対象モデル:  SHIMANO「RX8 (SH-RX800)」
年式: 2020年
定価: 30250円(税込)
購入価格: 27,230円(税込)

価格への満足度

6/10

クオリティの高いシューズですが、さすがに買うのを躊躇する値段でした。

総合評価

8/10

現状は満足。後はブルベの本番で使ってみて足裏の痛みが出なければ最高。

レビュアー情報

年齢: 35歳 (レビュー執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: QUARK ロードバイク(スチール), GIANT ESCAPE RX(アルミ)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)

# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせて頂きました。

記事のシェアはこちらから
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

ロングライド系自転車乗り。昔はキャノンボール等のファストラン中心、最近は主にブルベを走っています。PBPには2015・2019・2023年の3回参加。R5000表彰・R10000表彰を受賞。

趣味は自転車屋巡り・東京大阪TTの歴史研究・携帯ポンプ収集。

【長距離ファストラン履歴】
・大阪→東京: 23時間02分 (548km)
・東京→大阪: 23時間18分 (551km)
・TOT: 67時間38分 (1075km)
・青森→東京: 36時間05分 (724km)

目次