【レビュー】SHIMANO「WH-R8170-C36/C50」

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評価:4

シマノのディスクブレーキ用カーボンホイール。アルテグラグレードで、リムハイトが36/50/60mmとあります。

私はフロント36mm/リヤ50mmの組み合わせで購入しました。

目次

購入動機

La routeで乗り比べ記事を書いて欲しいという依頼を頂き、WH-R8170の各リムハイトを試乗しました。

試乗で横風耐性に驚く

La route

昨年登場したデュラエースのホイール群は、各性能を驚くほどの高みでバランスさせつつ、23万円という戦略的価格でマーケットを…

これが思いのほか感触が良かったのです。

特に気に入ったのが、「横風耐性の強さ」。La routeの企画における試乗時は最大風速10m/sという風の強い日だったのですが、36/50/60mmの全てのハイトで横風による恐怖感を感じることがありませんでした。

それまで使っていたHUNTのホイールは走行性能には不満がなかったものの、横風にハンドルを取られることが多いのが気になっていました。

WH-R8170は走行性能的にはHUNTのホイールと遜色なく、横風にも強い。販売元もシマノなので保証的にも安心。そして何より前後で15万円という価格に惹かれました。

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結局、試乗後まもなくWH-R8170を注文。フロントをC36、リヤをC50としました。

少しでも横風にハンドルを取られることを嫌った結果のフロントC36。巡航の感触はC50が一番良かったので、リヤはC50です。

後輪ハブを交換

購入からしばらくは不満なく使っていましたが、ある時から後輪に異音が出始めました。

色々試行錯誤した結果、WH-R8170のフリーボディにガタがあることが判明。新品のフリーボディに変えてもすぐに異音が再発したため、別のハブを使って組み直すことにしました。

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グロータックの新発売のハブを使って組み直し。重量は89g軽くなり、走行性能も改善されました。

現在はこの仕様で走っています(前輪は購入時のまま)。

製品概要

実測重量は、前輪682g(C36・TLテープ含)、後輪881g(C50)。合計1563gでした。

リムハイトは、前輪36mm・後輪50mm。カーボンリムです。11速/12速に対応。

リム内幅は21.3mm。

リム外幅は28.0mm。

ニップルホールはありますが、ピュアチューブレスにも対応するとされています。購入段階で純正チューブレステープが貼られています。

スポーク本数は前後共に24本。ストレートプルのステンレススポークです。専用のチューブレスバルブが付属します。

使用感

クリンチャータイヤ(Panaracer AGILEST/Vittoria Corsa N.EXT)を付けて使用。

主な使用シーンは平日練習と週末ライド。比較対象は、現在使用中のMAVIC「KSYRIUM SL」と、以前使っていたHUNT「44 AERODYNAMICIST」です。

重量

重量は以下の通り。

前輪(C36) 後輪(C50) 前後合計
公称 657g 872g 1529g
実測 (後輪組み換え前) 682g 881g 1563g
実測 (後輪組み換え後) 682g 792g 1474g

実測重量は公称よりも少し重め。とはいえ、このハイトのカーボンホイールとしては標準的な重量でしょうか。ハブをグロータックのEQUALハブに組み替えた後は1400g台まで軽量化することができました。

同形状のリムを採用するデュラエースのホイール(WH-R9270)は、大体同じハイトで100g前後軽くなります。

アルテとデュラホイールの公称重量は以下のとおりです。

C36 C50 C60
アルテ 前: 657g
後: 831g
合計: 1488g
前: 698g
後: 872g
合計: 1570g
前: 738g
後: 911g
合計: 1649g
デュラ 前: 620g
後: 730g
合計: 1350g
前: 674g
後: 787g
合計: 1461g
前: 751g
後: 858g
合計: 1609g

リムのカーボンが多少違うようですが、スポークも若干軽いようです(→のむラボの記事)。

適用技術

ハブやスポークには特別な技術は使われていませんが、リムは「D2リム」という形状を採用しています。

 

シマノサイトより引用

D2リムは、今回のデュラ/アルテホイールに採用。デュラとアルテはリムの素材こそ違うものの、形状は全く同じです。

D2リムの主目的は空気抵抗の減少ですが、結果的にこれが横風耐性の高さに繋がっている気がします。

取付

タイヤの取り付けに関しては特別緩い/キツいというのはありませんでした。

リム内幅が21mmあるので、28Cまでのタイヤは表記幅よりも太くなります(28C未満のタイヤは内幅19mm前提で設計)。

横風耐性

最大の購入理由となったのが横風耐性でしたが、購入後もこのホイールで横風に怖さを感じたことがありません。

D2リムの形状が効いているのだと思います。

強い横風の吹いた、前橋~霞ヶ浦間を往復する300kmブルベにも投入しましたが、非常に挙動が安定していました。

加速性能

購入直後に乗ったところ、どうも試乗の時と違って加速がワンテンポ遅れる感じ。若干、後輪が沈み込む感触があったので「スポークテンションが低いのではないか」と推測。

ショップに持っていってスポークテンションをチェックしてもらったところ、どうもテンションが既定値より随分低かったようです。

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テンションを調整してもらった後は、試乗時の感触に戻りました。

購入時のゼロ加速はそれほど良かったわけではありません。のむラボによると、WH-R8170の後輪のスポークパターン(2:1)はイマイチのようで「わざわざふつー以下の性能のホイールを作っている」と評されていました。これならば特に工夫しない普通のハブのほうが良いと。

異音対策としてEQUALハブへの組み換えを実施しましたが、加速も鋭くなったように感じます。EQUALハブはスポークパターンとしては至ってノーマルなものなので、それが良かったのかもしれません。

巡航状態からの加速は、割りとバネ感があるというか、1テンポ遅れて飛び出す感じ。ディスクロードのホイールはスポーク本数が多い&リムハイトも高くてガチガチなものが多いイメージなんですが、割りと「しなやか」な印象です。

巡航性能

巡航も若干タメがある感じ。脚に来ないながらも、なかなか速い。35kmn/h以上の巡航も楽なので、D2リムの恩恵がありそうです。横風に挙動が乱されないので、進行方向の微調整の回数も減りました。

正直「前輪のスポーク24本」は空気抵抗が大きそうだなーと思っていたのですが、40km/hを超えても抵抗を体感は出来ませんでした。

これまでは前輪のスポーク本数を基準にホイールを選んでいたんですが、実はリムの幅や形状のほうが重要なのかもしれません。

現在は26CのCORSA N.EXTを取り付けていますが、タイヤとリムの幅がほぼ同じくらいになっています(内幅21mmなので1mmほど太くなる)。空力的には良い状態です。

登坂性能

あまりこのホイールでは本格的な山は登れておらず、ブルベ中に登場した激坂の短い峠を上った程度です。

ヒルクライム能力を判断できるほど乗れてはいないのですが、ダンシングでも引っ掛かりを感じません。シッティングでも淡々と登ることができました。

見た目

最近流行りのステルスロゴ。遠くから見るとどこのブランドのものだか分かりません。これまでのシマノのホイールに比べると落ち着いていたグラフィックです。

マットブラックのリムも格好良くはあるのですが、汚れは落ちにくいです。

異音問題

全体的に良くできたホイールだと思うのですが、後輪のハブ(というかフリーボディ)には不満があります。

ご覧の通り、使っているうちにガタが出てきてしまったのです。

このガタによって変速は上手く行かず、ペダリング中もカチャカチャとした異音に悩まされました。シマノのフリーボディは分解を禁じられているため、不具合が出たら新品に交換するしかありません。

フリーボディを新品に交換し、一度は異音が解消。しかし、しばらく使うとまたフリーボディにガタが生じてしまいました。構造に根本的な欠陥がありそうな気がしますが、これ以上は付き合いきれないのでハブを交換して組み直すという手段に出ることになりました。フリーボディはさておき、リムの出来は非常に良いので利用を継続したかったのです。

結果的にはこれが正解で、異音も解消。重量も軽くなり、スポークパターンも良くなって掛かりも良くなりました。

価格

発売当初(2021年)から現在(2024年)で、価格がおよそ1.5倍に値上げされています。

価格の推移を以下に示します。

発売当初 157300円
2023年1月(価格改定) 196790円
2024年1月(価格改定) 228618円

発売当初は「凄いコスパの高さ」と感じましたし、実際世間の評価もそうだったと思います。「ディスクロード用ホイールで迷ったらコレ」という感じでした。

しかし、相次ぐ値上げでついに20万円超え。さすがにこれでは「コスパが高い」とはなかなか言いにくくなってしまいました。あと、「シマノなら何かあっても安心」という信頼性にお金を払った人も多いはずですが、クランクの件の対応でその辺りもだいぶ揺らいだ気がしています。

他社も同じように値上げはしています。国内代理店のある有名ホイールブランドだと、同価格帯で同程度の性能を出せているホイールはなかなか思いつきません。価格を安く設定できる直販ブランドならばもっと安くて性能の良いホイールはあると思いますが。

最初の「15万」のイメージがどうしても強いので、今後はWH-R8170を選ぶ人は減る気がしています。

まとめ

発売当初の価格で考えると、コストパフォーマンスの非常に高いホイール。現在の価格だと値段なりの性能という気はします。

特にリムは非常に良いです。素材こそ違うものの、形状はデュラと全く同じ。評価の非常に高いデュラホイールと同等の空力性能を持っていると言えます。横風耐性も高く、リムについては私も非常に良いものだと考えています。

ただ、後輪のハブ(フリーボディ)は色々と疑問です。ガタは出るし、整備もできないし、重い。良い所がありません。

のむラボがこちらの記事で書いているように、「前輪を2本買ってきて、片方を後輪用の汎用ハブで組み替える」のが結果的に安くて軽くて良いホイールになる気がします(組み替えた時点で保証対象外になるのでご注意)。リムだけ売ってくれればそれが一番ありがたいんですけども。

次期フレームのGE-110でも、WH-R8170(ハブ組み換え版)を継続使用予定です。

評価

対象モデル:  SHIMANO「WH-R8170-C36/C50」
年式: 2021年
定価: 134310円
購入価格: 157300円
公称重量: 1529g
実測重量: 1563g

価格への満足度

9/10

購入時の定価(15万)での評価。現在の価格なら★3。

総合評価

8/10

ネガの少ない優等生ホイール。リムの出来は素晴らしいが、ハブがイマイチ。

著者情報

年齢: 39歳(執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: BIANCHI OLTRE XR4(カーボン), QUARK ロードバイク(スチール)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)

# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせていただきました。

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この記事を書いた人

ロングライド系自転車乗り。昔はキャノンボール等のファストラン中心、最近は主にブルベを走っています。PBPには2015・2019・2023年の3回参加。R5000表彰・R10000表彰を受賞。

趣味は自転車屋巡り・東京大阪TTの歴史研究・携帯ポンプ収集。

【長距離ファストラン履歴】
・大阪→東京: 23時間02分 (548km)
・東京→大阪: 23時間18分 (551km)
・TOT: 67時間38分 (1075km)
・青森→東京: 36時間05分 (724km)

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