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【レビュー】TOPEAK「ROADIE DA」
評価:1.5
トピークの携帯ポンプ。押しても引いても空気が入る「デュアルアクション(DA)」方式を採用したロードバイク専用モデルです。
購入動機
すっかり携帯ポンプマニアとして周知されてしまった私ですが、この「ROADIE DA」を買うつもりは全くありませんでした。
だがしかし。
先日、記事のネタにするつもりで以下のようなチャートを作ったのがキッカケで購入することになりました。
これは、「用途による最適な携帯ポンプの選び方」を示したものです。沢山のモデルを販売しており、どれも品質がしっかりしているTOPEAKを例にして作ってみました。
ただですね……私、この中で左の2つ(ローディーTT & ローディーTT ミニ)しか持っていないんです。
既に当サイトの携帯ポンプレビュー数は34本。これだけ触ると、見た目とスペックだけで構造と性能は大体想像出来てしまいます。しかし、「実際に使いもしないで、人に薦めるのはいかがなものか?」と言う疑問が自分の中で湧いてきました。
TOPEAKの新世代ポンプは「DA(Double Action)」と「TT(ツインターボ)」の2系統に分かれています。「TT」の系統は以下で、私もさんざん使ってきました。
しかし、「DA」の系統は一本も持っておらず、使ったこともありません。「私の用途ではあまり役に立たないのではないか」という確信に近い予感があったのが理由ですが、使ってみたらなにか発見があるかもしれません。
そんな高いものでも無いので、試しに買ってみることにしました。ああ、またポンプが増えていく……。
製品概要
実測重量は98g。口金は仏式専用です。米式には対応しません。
最大気圧は120psi(8.2気圧)とされています。
全長は183mm、直径は32mmです。ボディ材質は樹脂。
使用感
自宅内でポンピングテストを実施。対象のタイヤはGP4000S2(25C)です。
比較対象は、同社で同世代のシリーズである「ROADIE TT」「ROADIE TT mini」です。なお、「ROADIE DA」にはミニサイズはなく1サイズ展開です。エアゲージ付きの「ROADIE DA_G」は存在します。
重量
98gと、ロード用ポンプとしては標準的な重さです。
大きさ
183mmと、ミドルクラスのツールケースにギリギリ入る大きさです。
使用法
「ローディー」という名前からも分かるように、ロードバイク専用ということで、仏式バルブ専用のヘッドです。このため、米式バルブを前提としたお助けチューブ的な製品はほとんど使えません(唯一、グランジのポンプアダプターは対応)。
使用法は携帯ポンプとしてはオーソドックス。バルブにポンプヘッドをセットし、ポンプヘッド後部のレバーを起こすことでバルブがロックされます。ロック機構はTOPEAKの携帯ポンプらしく、優秀です。
あとは、ひたすらポンピング。
詳しい仕組みは後述しますが、本製品の特徴は「デュアルアクション」という、「引いた時にもタイヤに空気が充填される」仕組みです。このため、ハンドルを押した時だけではなく、引いた時にも同じだけの抵抗があると考えてください。
性能
前述の通り、GP4000S2(25C)に対してテストを実施しました。
・250回: 5.2気圧
構造
パッケージに「デュアルアクション」テクノロジーの説明がイラスト付きで書かれています。
詳しい説明は省きますが、「ハンドルを押した時に空気が入るのは当然として、ハンドルを引いた時にも空気が入る」仕組みを採用しています。チューブに繋がずにハンドルを押し引きすると、引いた時にも口金から空気が出るのが分かります。
「あれ、Roadie TTや例のポンプと似てるね」と思った方もいるかもしれません。
確かに、兄弟機であるRoadie TTや、例のポンプも、ハンドルを引いた際に口金から空気が出ます。しかし、Roadie TTとRoadie DAでは、口金から空気が出るという現象は同じでも、その目的は全く異なっています。
Roadie TTは「ツインターボ」テクノロジーを採用しています。本記事でレビューしている「デュアルアクション」テクノロジーとは、以下の点で目的が異なります。
テクノロジー名 | 目的 |
ツインターボ(TT) | ハンドルを引いた際に、ポンプ内部で空気を圧縮し、次にハンドルを押した際のアシストパワーにする |
デュアルアクション(DA) | ハンドルを引いた際に、ポンプ内部の空気をチューブに送り込む |
ここで両者で大きな違いとなるのが、「ハンドルを引く際に必要なエネルギー」です。
ポンプはチューブ内に空気を送り込む事が目的です。空気を送り込むには、「ポンプ内部の空気圧 > チューブ内部の空気圧」となる必要があります。
さて、「ツインターボ」はあくまでアシストが目的であり、ハンドルを引いた際に空気をチューブに送り込む必要はありません。
正確な計算はしていませんが、ハンドルを引いた際にポンプ内部の空気圧は1~2気圧程度になっているはずです。ハンドルを引く際に必要なエネルギーは、1~2気圧という低圧のチューブに空気を送り込む際と同等ということです。大した力は要りません。バルブと口金が接続されていない場合、ハンドルを引いた際にはこのアシスト用の空気が口金から出てきているわけです。
しかし、「デュアルアクション」はハンドルを引いた時にもチューブ内に空気を入れる必要があります。すなわち、押す時と引く時で同じだけの力が必要です。
チューブが1~2気圧程度のうちは問題ありませんが、これが3気圧を超えてくるようだと途端に抵抗が大きくなります。5気圧ともなると、ハンドルを引く際には顔を真赤にするくらいの力が必要です。普通、携帯ポンプではハンドルを引く際に力は必要ありませんから、引く際に上手く力を掛けられる人はいないでしょう。体重も掛けられないので、3気圧辺りから1ストロークに異様に時間が掛かるようになるわけですね。
「押しても引いても空気が入るから、パンク修理の時間が半分だ!」などと書かれていますが、全くもって嘘だと思います。弱虫ペダルで手嶋先輩がビンディングペダルを「フラペの2倍の力で回せる」と言っていましたが、アレを上回る理想論です。
多分、2気圧程度までは特別な機構を持たないポンプよりは早いでしょう。しかし、ロードバイク専用のポンプで2気圧で走る人がいるとは思えません。せめて4気圧は欲しいはず。しかし、このポンプで4気圧入れるのは相当の苦行です。
こちらはTOPEAKの特に特別な機構を持たない携帯ポンプですが、こちらの方が性能は遥かに上です。
デュアルアクション機構が役に立つのは、ロードバイクのような高圧・低容量のタイヤではありません。ファットバイクのような低圧・大容量のタイヤでこそ役に立つものだと思います。それでも、単純に「引く際に力が要る」というだけで疲労感はかなりのものだと思いますが……。
まとめ
一体どんな層をターゲットに作られたのか分からない携帯ポンプです。
ロード専用なのに、メリットがあるのは精々2気圧程度まで。それ以上の気圧では普通の機構の携帯ポンプに負ける性能しかありません。昨今流行りのフックレスリムのホイールでも最低4気圧は欲しい所。更に重量もRACE ROCKETシリーズ(80g前後)より重いですし、特別コンパクトなわけでもなく。いよいよもって存在意義が分かりません。
品質も高く使い勝手も良い製品が大半を占めるTOPEAK製品の中で、私が初めて当たったハズレ製品でした。それでも質感はしっかりしており、品質の高さは伺えます。これを2000円そこそこで出してくるのはTOPEAKだからこそ。しかし、設計が壊滅的に駄目です。
ただ、それだけに買って実際に試したのは良い経験でした。使いもせずに人にこれをオススメしていたら、かなり後悔していたと思います。やはり実際に試すことは重要ですね。フローチャートの正式公開時には、このポンプは外します。
TOPEAKの枠内で言えば、7気圧以上なら「Roadie TT」、7気圧未満ならば「RACE ROCKET HP」が良いと思います。あえて「Roadie DA」に利点があるとすれば値段の安さくらいですが、1500円多く出しても前者2つを買うほうがパンク修理時には楽なはずです。
評価
対象モデル: TOPEAK「ROADIE DA」
年式: 2020年
定価: 2420円(税込)
購入価格: 2420円(税込)
公称重量: 95g
実測重量: 98g
価格への満足度
値段にしては高級感のある作りだが……
総合評価
どんな層に向けて作られたのかさっぱり分からない。
レビュアー情報
年齢: 36歳(レビュー執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: QUARK ロードバイク(スチール), GIANT ESCAPE RX(アルミ)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)
# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせて頂きました。