【レビュー】TOPEAK「ROADIE TT」

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評価:4.5

トピークの携帯ポンプ。ハンドルを引いた時にシリンダー内で空気を圧縮し、ハンドルを押した時に圧縮された空気を一気に充填する「TT(ツインターボ)」テクノロジーを搭載しているのが特徴です。

「ローディー TT」という名前からも分かるように、ロードバイク向けの携帯ポンプです。

購入初日のファーストインプレッションのため、耐久性の評価は出来ておりません。

目次

購入動機

2019年10月。あるTLに流れてきたツイートが目に留まりました。それに私は即座に反応。

TOPEAKの新製品「ROADIE TT」。これに採用されているツインターボ構造は、実は2018年にロングライド界隈でヒット製品となった「例のポンプ(下記レビュー)」と同様の構造です。

例のポンプ
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例のポンプと同じ構造の携帯ポンプを、携帯ポンプ界の覇者たるTOPEAKが出す……これは画期的なニュースです。

例のポンプはいわゆる「中華製品」。アフターサービスも製品保証も、日本で一般的に知られたメーカーには劣ります。パーツが劣化したら、基本的にはそこで使えなくなります。

その点、TOPEAKは世界的にも第一人者的な企業です。品質管理がしっかりしていることは、これまで使った数多くの製品で分かっています。更に、TOPEAKは補修部品も充実。たとえパーツが劣化しても、後から修理することが可能なわけです。つまり、長く使い続けられるということ。


それから半年。

ようやく発売となったので、ワイズロード池袋本館で購入。本製品よりも3cm短い「ROADIE TT MINI」という製品も同時に発売されましたが、恐らく性能的に物足りないと予想したので、ノーマルサイズの方を選びました。

製品概要

実測重量は102.6g。口金は仏式専用です。米式には対応しません。

最大気圧は160PSI(11気圧)とされています。

全長は195㎜、直径は22.8mmです。

表面には細かい溝が掘られており、滑りにくくなっています。

使用感

自宅内でポンピングテストを実施。対象のタイヤはVittoria Rubino Pro Speed(25C)です。

比較対象は、「Oture 携帯ポンプ(例のポンプ)」です。

重量

102.6gと、公称重量より2.6g重かったです。それでも、例のポンプよりは約4g軽くなっています。

大きさ

例のポンプより2mm小さいものの、ミドルクラスのツールケースには入りません。

こちらのようなロングタイプのツールケースなら格納可能だと思われます。

ロック機構

オリジナルの例のポンプには無かった、シリンダーの飛び出しを防止する機能が付いています。ヘッドを左右に90度捻ることで、逆さにしてもヘッドが落ちなくなります。詳しくは動画をご覧ください。

同様の仕組みは、TOPEAKの「マイクロロケットALT」などにも存在し、「ツイストロック機構」と呼ばれています。

使用法

口金は仏式オンリーの対応。つまり、米式口金を前提としたお助けチューブ的な製品は軒並み使えません。ここはちょっと残念ですね。「パッキンをひっくり返したら使えるんじゃ?」と思ったのですが、ひっくり返せませんでした。

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→ ご指摘ありましたので訂正します。TRISPORTSのお助けチューブは使用不可ですが、仏式のバルブを持つアダプタである、GRUNGEのポンプアダプタは使用可能です。TRISPORTSのお助けチューブを使う場合でも、米式→仏式アダプタを使えば、本製品にも接続可能だと思います。

例のポンプ同様、バルブにポンプヘッドをセット。ポンプヘッド後部のレバーを起こすことで、バルブがロックされます。このロック機構も例のポンプ同様に非常に優秀で、ポンピング中でも空気が漏れることはありませんでした。

「例のポンプ」には、「底に吸気口がある」という特徴があります。ご多分に漏れず、本製品の底にも吸気口があります。

更に、よく見ると、底のサイドの部分にも薄い吸気口があることが分かります。

従来の「例のポンプ」は、「底」「サイド」のどちらか一方にしか吸気口を設けていませんでしたが、本製品は2箇所に吸気口を設けています。従来の例のポンプは、ポンピング時に吸気口を手で塞がないようにする必要があったのですが、この2箇所を同時に塞ぐのは意識してもかなり難しいもの。つまり、何も考えずに使っても正しく動作するようになっています。これは嬉しい。高圧時に底を手のひらで押して力を掛けられるということでもあります。

一方、前述の「ツイストロック機能」のせいで、少しでもポンピング時にシリンダーを捻ってしまうと、ロック機構のせいで最後まで押し込めなくなります。

こんな感じで、ロック機構の爪のところまでしか押し込めないわけですね。ポンピングでは最後の一押しが重要なので、この機能は私的には「改悪だな」と感じています。「逆さにしてフレームに付けたい」って需要があったのかもしれませんが……。

性能

前述の通り、Vittoria Rubino Pro Speed(25C)に対してテストを実施しました。

300回→7.8気圧
「え、こんなに入るの?」と思ってもう一度試しましたが、確かに300回で7.8気圧入りました。更に、同じタイヤに対して「例のポンプ」でテストを実施した所、
300回→6.8気圧
でした。同じポンピング回数で、1気圧も多く入るという結果になりました。
ポンピング時の感触は、例のポンプと同様です。気圧が高まっても、使う力はそれほど強くなることはありません。

構造

恐らく、構造自体は例のポンプと同様です。詳しくは、こちらの記事で詳しく解説しているので御覧ください。

パッケージ裏には、ツインターボテクノロジーの図解が記載されていました。

ここからは、「例のポンプ」との構造上の相違点を挙げていきます。

外筒・内筒の径の違い

観察していて気づいたのは、内側のシリンダー(内筒)の径が例のポンプより若干太いことです。

右のほうが若干太いのがお分かりでしょうか? 外側の筒も若干太くなっています。計測結果は以下です。

内筒径[mm] 外筒径[mm]
例のポンプ 11.8 22.0
TOPEAK ROADIE TT 14.9 22.8

これまで、「例のポンプ」は、カーボン化したり、長さを変えたりしてきましたが、この「内筒」「外筒」の比だけは変えませんでした。恐らく、「11.8mm-22.0mm」が黄金比なのだと私は推測していましたが……今回のROADIE TTは、その黄金比を崩してきました。例のポンプの製造元である「PRO STAR」という会社のポンプには、この径を変えた製品もありますが、どれも例のポンプよりも高圧性能は落ちていました。

径の異なるPRO
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しかし、今回の「ROADIE TT」、性能的にはむしろ向上しています。内側&外側の筒が太くなった影響で1回のポンピングあたりで入る空気量が増えていますが、押しは重くなっていません。黄金比の更に上を行く、筒の太さの比率を見つけたんですかね。TOPEAK恐るべし。

注油の指示の違い

下の記事に書いたように、例のポンプは定期的な注油をするように説明書に書かれていました。実際、注油しないと性能を保てないのが弱点でもありました。

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しかし、ROADIE TTの説明書には注油の指示はありません。シリンダーに触れてみても、オイルが付くことはありませんでした。Oリングの最適化などにより、オイルによるシールが不要になったのかもしれませんね。そうなると、メンテ頻度は大幅に下がるはずです。

ただ、注油が不要になっても、パッキンやOリングはいつか劣化するはず。まだ補修部品の有無は発表されていませんが、そのうちラインナップされることを期待します。

ネジの緩みの違い

例のポンプは、組み立てがいい加減なのか、手元に届いた段階で各部のネジが緩んでいることが高確率でありました。

これに対し、ROADIE TTは各部のネジがしっかりと締められています。このため、「いきなり空気が入らなくなる」的なトラブルは起こりにくいはずです。

ただ、ネジロック剤でも塗っているのか、外そうと思っても各部のネジは外れません。唯一外れるのは、ヘッドの部分だけです。ヘッドのパッキン劣化は対処できそうですが、内部のパッキン劣化はどうするのか、ちょっと疑問は残ります。

ミニとの違い

本製品と同シリーズで「ROADIE TT MINI」という製品があります。

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こちらの製品は、本製品よりも長さが30mm短い165mmとなっています。このサイズならば、ミドルサイズのツールケースにも普通に入るはずです。

ただ、例のポンプは、「ポンプの二重構造」であるため、1cm縮むと2cm縮んだのと同じだけ性能が低下します。高圧時での押しの軽さは変わらないと思いますが、1回のポンピングで入るエアボリュームが減るので、目標の気圧までに必要なポンピング回数は本製品より大幅に増えることになると予想しています。

そのうち、使うことがあれば追加レビューをします。

まとめ

「例のポンプを一流メーカーが作ったらこうなりました」と言った感じの携帯ポンプ。

例のポンプのメリットである「高圧でも楽に押せる」「バルブのロック機構が優秀」と言った利点はそのままに、弱点であった「定期的な注油」「各部のネジの緩み」が解消され、トラブルが起こりにくくなっています。吸気口もサイドと底の二箇所に増えたことで、手で塞いでしまうことがなくなりました。

これまでは玄人向けの製品だったものが、一般ユーザーでも手軽に扱えるように改良されたわけですね。更に、1回のポンピングあたりのエアボリュームも増しており、目標の空気圧までに必要なポンピング回数は減少しています。

気になるのは、「補修部品がまだ発表されていない」「ヘッドのツイストロック機能がイマイチ」と言った点です。補修部品については、早期に発表されることを望みます。補修部品があるのがTOPEAK製品の良いところですからね。


かつて私は例のポンプが登場した時に、「すべての携帯ポンプを過去にする」と評しました。今回のROADIE TTは「すべての例のポンプを過去にする」製品かもしれません。これは恐らく、ヒット製品になるでしょう。

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評価

対象モデル:  TOPEAK「ROADIE TT」
年式: 2020年
定価: 4620円(税込)
購入価格: 4620円(税込)
公称重量: 100g
実測重量: 102.6g

価格への満足度

6/10

例のポンプの倍の価格だが、品質を考えると妥当か。

総合評価

9/10

「TOPEAKが例のポンプを作ったらこうなる」を、そのまま形にしたような携帯ポンプ。ツイストロック機能だけ余計。

レビュアー情報

年齢: 35歳(レビュー執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: QUARK ロードバイク(スチール), GIANT ESCAPE RX(アルミ)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)

# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせて頂きました。

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この記事を書いた人

ロングライド系自転車乗り。昔はキャノンボール等のファストラン中心、最近は主にブルベを走っています。PBPには2015・2019・2023年の3回参加。R5000表彰・R10000表彰を受賞。

趣味は自転車屋巡り・東京大阪TTの歴史研究・携帯ポンプ収集。

【長距離ファストラン履歴】
・大阪→東京: 23時間02分 (548km)
・東京→大阪: 23時間18分 (551km)
・TOT: 67時間38分 (1075km)
・青森→東京: 36時間05分 (724km)

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