【レビュー】Vision「METRON 6D INTEGRATED」

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評価:4

FSAのレース向けブランド「Vision」のステム一体型カーボンハンドル。ケーブル完全内装には対応しない、非ACRモデルのレビューとなります。

目次

購入動機

Bianchi OLTRE XR4(リムブレーキ仕様)を組む際に購入しました。

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Metron導入の理由

FSAと関係の深いフレームメーカー(Bianchi・MERIDA・ORBEAなど)は、フラグシップクラスの完成車にMETRONハンドルを付けるケースがあります。

OLTRE XR4もその一つ。XR4は更に一歩踏み込んで、フレーム形状をMetronに最適化させています。要は、「Metronを付けたほうがエアロ効果も高いし、見た目もまとまる」ということです。

ステム一体型ハンドルなので、多少ハンドルが遠いと感じても修正は出来ません。ハンドルの送り・しゃくりの調整も出来ません。

不便な点は色々と思い浮かんだのですが、「XR4はロングライド投入用ではないから見た目とエアロ性能を優先しよう」と開き直って、Metronハンドルの導入を決めました。

5Dか6Dか

Metronハンドルには2つの形状があります。

ご覧の通り、5Dは前方向に湾曲しており、6Dはストレート形状です。

プロ選手の採用率が高いのは5Dのほう。しかし、私は6Dのほうを買うことにしました。理由は、「5Dはライトが付けにくそうだから」。上ハンドルが湾曲していると、ライトの光軸があらぬ方向を向いてしまうので、ストレートハンドルの6Dにしたのです。そもそも。「これだけ太いハンドルにライトブラケットが付くのか?」という不安はありましたが。

ステムの長さ

私はハンドル幅は必ず、芯-芯400mmのモデルを買います。問題はステムです。一旦買ったら取り替えられないので、慎重になる必要があります。

幅400mmの場合、Metronにラインナップがあるステム長は90mmと100mのみ。そしてハンドルのリーチは80mmです。

既にポジションが出ているINFINITO CVの、BBからハンドルまでの距離(リーチ)を以下の方法で算出しました。

・フレームのリーチ: 376mm (INFINITO CV 53サイズ)
・ステム長: 110mm (Bontrager XXX Stem)
・ハンドルのリーチ: 77mm (3T ERGONOVA TEAM)


リーチ合計: 563mm

 

次に、OLTRE XR4のリーチを計算します。

・フレームのリーチ: 390mm (OLTRE XR4 55サイズ)
・ステム長: ?? mm (Metron 6D)
・ハンドルのリーチ: 80mm (Metron 6D)
実際にはヘッド角やステム角もリーチ計算には関わるんですが、双方大きな差はないので今回は無視します。
フレームとハンドルのリーチ合計は470mm。INFINITOのリーチ合計が563mm。ということは、求めるステム長は、563-470=93mmとなります。半端ですね……。
100mmと90mmのどちらに近いかと言えば、90mmのほう。ということで、90mmを購入することにしました。
着弾。中々豪華な梱包です。
OLTRE XR4を組む際に、店の方にハンドルを渡して組付けをお願いしました。

製品概要

実測重量は、386g(幅400mm/ステム90mm)。フルカーボン製です。

下ハンドルは、ドロップ部分が5mm外側にフレアしています。また、ドロップ部分は握りやすいように潰しの入った形状に加工されています。

付属品は以下。すべてこのハンドルの専用品です。

・ライトマウント
・サイクルコンピュータマウント (Garmin用)
・カーボンスペーサー(10mm×2 / 5mm×1)
・トップキャップ

使用感

Bianchi OLTRE XR4に取り付けて使用しています。本来はレースやファストラン用に組んだのですが、イベントも特に無いので、もっぱら夜練用に使っています。

バーテープは、シクロベーションのものを巻きました。上ハンドルには巻いていません。

取り付け

前述の通り、組付けはショップにお願いしています。

一つ、OLTRE XR4の特殊事情として、「Metron用のトップカバーを用意しなければならない」という注意点があります。こちらの記事に書かれているんですが、OLTRE XR4のフレームセットに付属するトップカバーだと、Metronハンドルとの間に隙間が空いてしまうとのこと。

という事で、それだけのために4680円のトップカバーを購入しました。そんな値段がするようなモノには見えませんが、カーボンで専用形状だから仕方ないのでしょう。多分。

ポジション

懸念していたリーチですが、ちゃんと計算しただけあって、そこまで違和感なく仕上がっていました。

「若干ハンドルが近いかな」とは感じるものの、100mmに伸ばしたら「ちょっと遠いな」と感じるのだと思います。こういう時、ステムが別のハンドルならば角度で若干の調整が効いたりしますが、一体型ハンドルだとそれは無理。諦めることにしました。

もう一つ心配だったのは、ハンドルの角度。ステム一体型なので、ハンドルを送る・しゃくることは出来ません。私は割と普段からハンドルの角度は水平にしていたこともあって、特にそちらにも違和感は出ませんでした。

見た目

さすがにMetronハンドルを前提に設計されたフレームだけあり、変な隙間もなし。ヘッド周りがスッキリと仕上がって満足しています。

重量

公称365gで、実測386g。若干重かったですが、誤差の範囲と思うことにします。

Metronは一体型ハンドルではかなり重い部類ですが、それは剛性を重視した設計であるため。結果的に、カーボンハンドル(約200g)+軽量ステム(約110g)の組み合わせより随分重くなるのですが、そこは剛性の方を優先しました。

重さのイメージとしては、軽量アルミハンドル+軽量ステムと同じくらいになると思います。

剛性感

ステム一体型ハンドルの特徴の一つが、その剛性感の高さ。

 

通常のステムよりも幅広に取られたステム部分がいかにも剛性がありそうですが、実際に使用した感じもイメージ通りのもの。ガチガチです。スプリントをしてみても全く形状が変わっている感触がありません。力が余さずフレームに伝わっている感じ。

これまで使った中でもっとも硬いと感じたハンドルは、PRO VIBE 7Sでしたが、その上を行く硬さです。VIBE 7Sは下ハンドルを握ってのスプリントの際には若干捩れる感じがあったのですが、Metronにはそれもありません。

実に無茶苦茶な製品テストをする「CYCLING COLLEGE」という中国のサイトがあるんですが(私はこういうサイト大好きです)、↓の記事では4種類の一体型ハンドルの剛性を実験しています。

https://cyclingcollege.com/index.php/ja/2020/01/19/the-review-of-four-integrated-bars-2

Metron(6Dではなく5Dですが)は、これら4製品の中でもトップの剛性を示しました。実はもう一つの購入候補であったBontragerの一体型ハンドルは試験中に折れてしまったそうです。BontragerのハンドルはMetronよりも100g以上軽いんですが、やはり強度と重量はトレードオフということなのでしょう。

快適性

「Metronは硬くて手がしびれる」という噂は聞いていましたが、「とはいえフルカーボンだし、そこまでではないだろう……」と楽観視していました。

ただ、実際に使ってみると一般的なカーボンハンドルとは違い、振動や衝撃を直接的に手に伝えてきます。

快適性には定評のあるシクロベーションのバーテープを巻いたにもかかわらず、100km程度のライドで手にしびれが出てしまいました。普段なら手のしびれは400kmくらい走らないと出ないのですが。

製品の目的からしてもロングライド用ではないことは明らかですし、そこは「とにかく硬く」を優先したということなのだと思います。

空力性能

Metronのもう一つの特徴は、空力性能であるとされています。

 

正面から見ると非常に薄く、かつケーブル類もハンドルに内蔵出来る(完全内装ではない)ので空力に優れるというわけです。

ただ、それを体感できるか?と言われると、よく分からないのが正直な所です。

普通のハンドルと比較できれば良いのですが、ケーブルが中を通っていることもあり、ハンドル交換は大手術になるので比較は難しく。そして性能を見ようにもイベントも開催されないので、中々空力性能を確かめる機会はありませんでした。

ただ、ハンドルとステムの段差的な部分がないので、上ハンドルに伏せるようなポジションが取りやすくはあります。下ハンドルのドロップ部分にも潰しが入っていて、更に外側フレアの効果もあって下ハンドルポジションを取りやすいことから、結果的に空気抵抗が減るハンドルではあると思います。

将来、イベントが再開されたら空力性能について追記したいと思っています。

拡張性

この手のハンドルで困るのが、ライトやベル、サイコンの配置です。一般的なハンドルとは形状が全く違いますし、そもそもレース用なのでライトの取り付けは考慮されていません。

 

CATEYEの誇るフレックスタイトブラケットは、何とか取り付けが可能でした。ただ、ハンドルが幅広であることもあり、ライトの後端が膝に当たることが気になりました。

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ということで、Metronハンドル用に製作された「CloseTheGap」のマウントでライトを取り付けています。

 

このマウントはベルも内蔵しており、サイコンも付けられるので非常にハンドル周りがスッキリしました。

一応、このようにソリューションは無くもないのですが、選択肢は少ないです。ライトを複数取り付けることをルール上で求められるブルベには実に不向きなハンドルであると言えます。

まとめ

非常に剛性感の高い一体型ハンドル。重量はありますが、そのリソースをすべて剛性に回している印象。ちゃんとポジションが出て、レース目的であれば魅力的な選択肢と言えると思います。

色々と使いにくい点を書いてはきましたが、結構このハンドルは気に入っています。

OLTRE XR4は元々ロングライド用に組んだものではなく、どちらかと言えば「最後のリムブレーキ」としての盆栽用途で組んだものです。ハンドルに合わせて設計されたフレームならば、そのハンドルを入れた状態が「本来の乗り味」であるはず。見た目も本当にスッキリしていて、見るたびに気分が上がります。それもまた、一つの性能でありましょう。

ご注意頂きたいのは、ライトやベル等の保安部品が取り付けにくい点です。普段遣いをしようとしている方は、その辺りを調べてから取り付けたほうが良いと思います。そう簡単に外すことは出来ないので。

 

評価

対象モデル:  Vision「METRON 6D INTEGRATED」
年式: 2020年
定価: 76780円 (税込み)
購入価格: 約50000円
公称重量: 365g
実測重量: 386g

価格への満足度

6/10

カーボンステムを包含していると考えれば、この値段は仕方ないか。

総合評価

8/10

レース用機材としては、意図通りの性能が出ていると思う。普段遣いはしにくい。

著者情報

年齢: 36歳(執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: BIANCHI OLTRE XR4(カーボン), QUARK ロードバイク(スチール)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)

# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせて頂きました。

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この記事を書いた人

ロングライド系自転車乗り。昔はキャノンボール等のファストラン中心、最近は主にブルベを走っています。PBPには2015・2019・2023年の3回参加。R5000表彰・R10000表彰を受賞。

趣味は自転車屋巡り・東京大阪TTの歴史研究・携帯ポンプ収集。

【長距離ファストラン履歴】
・大阪→東京: 23時間02分 (548km)
・東京→大阪: 23時間18分 (551km)
・TOT: 67時間38分 (1075km)
・青森→東京: 36時間05分 (724km)

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