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【レビュー】Vittoria「CORSA N.EXT CL 26C」
評価:4.5
Vittoriaから2022年に発売されたタイヤ。CORSAシリーズ初のナイロンケーシングモデル。
本記事では、クリンチャーの26Cをレビューします。
購入動機
Vittoriaのコルサは遥か昔(2010年頃)にチューブラー版を買ったことはありますが、グラフェンを搭載するようになってからは買ったことがありませんでした。
コルサシリーズは、コットンケーシングによる「しなやかさ」を売りにするタイヤです。
私はVittoriaの提唱する「しなやかさ」があまり好きではなく、世間では固めと言われるタイヤを好んできました。
そんなコルサシリーズになんとナイロンケーシングのモデルが出るとのこと。
コルサシリーズのしなやかさはコットンケーシングに拠る所が大きかったはず。そして値段もそこまで高くはなかったので、買って試してみることにしました。
製品概要
実測重量は200g。C19リムに取り付けることを前提に設計。
コルサネクストはチューブレスレディとクリンチャーの2タイプが販売されています。
ラインナップと重量は以下の通り(日本公式サイト記載)。
タイヤ幅 | チューブレスレディ | クリンチャー |
24C | 260g | 190g |
26C | 285g | 200g |
28C | 300g | 210g |
30C | 315g | 220g |
32C | 330g | 235g |
34C | 340g | 240g |
Vittoria本国サイトで公開されている情報は以下の通り。数値が結構違います。
タイヤ幅 | チューブレスレディ | クリンチャー |
24C | 260g | 210g |
26C | 285g | 200g |
28C | 330g | 250g |
30C | 355g | 275g |
32C | 356g | 285g |
34C | 395g | 315g |
さすがに34Cで240gは軽すぎるので、恐らく本国サイトの数値のほうが正しいんじゃないかと思います。でも、26Cより24Cクリンチャーのほうが軽い数値になっているなど、ツッコミどころはあります。
その後、本国サイトのほうの重量が修正され、国内サイトと同じ値になりました。
他社は「23C」「25C」「28C」「30C」という不規則な刻みでラインナップをしていることが多いんですが、コルサネクストは規則的な2mm刻みとなっています。今回はクリンチャーの26Cを選びました。
カラーラインナップは特に無し。ブラックのみです。
MADE IN THAILANDの文字がタイヤサイドに刻まれています。
使用感
ディスクロードに取り付けて、日々の夜練や週末のライドで使用しています。
取り付けているホイールは、SHIMANO「WH-R8170(内幅21mm)」。チューブはRevoloopをメインで使用。空気圧は前6.0気圧、後6.5気圧。
2022年9月購入、走行距離は1500km程度です。
比較対象は、新ETRTO対応で同期生とも言える「AGILEST CL」「ASPITE PRO S-LIGHT」です。
パッケージ
2022年あたりから、Vittoriaの箱は再生素材感たっぷりのものになりました。
構造の説明。
この説明だけでは分かりませんが、接地面はシリカ入りコンパウンド、少しサイド側に行くとグラフェン入りコンパウンドを使っているようです。
耐パンクベルトはトレッド下のみ。ケーシングはナイロン製であることが分かります。
最大気圧は8.3気圧。フックレスリムには使えません。
「ETRTO ON 19C RIM」とあり、ETRTO2020(新ETRTO)対応のタイヤであることが分かります。
同社のルビノプロに比べて、「スピード: +20%」「耐パンク性能: +9%」「重量: -14%」とのこと。
重量
2本購入して、どちらも公称通りの200g。工業製品として優秀ですね。
26Cタイヤとしてはかなり軽いですが、内幅19mmのリムを前提に設計した新ETRTO準拠のタイヤと考えると標準的な重さと言えるはずです。
組付け
素手で取り付けができました。
ここ最近出たタイヤの中でもトップクラスの着脱のしやすさ。ちなみに一番着脱しにくかったのは、IRCのASPITE PROです。
太さ
内幅21mmのリムに取り付けた際の太さを実測しました。
購入直後は26.25mm。
C19(内幅19mm)のリムに合わせて設計されているので、C21のリムに付けると27mmくらいになる計算です。
購入から一年が経過した現在は27.82mmでした。結構膨らみましたね。
パターン
縦溝パターンです。写真は購入直後のもので、現在は接地面の溝は消えかけています。
裏側はちょっと不思議な横溝パターン。チューブにこの跡が付きます。
漕ぎ出し・加速
私がこれまでに使ったVittoriaのクリンチャータイヤというとルビノプロのみ。
レビュー中にも書きましたが、ルビノプロは妙に柔らかく、信号からの漕ぎ出しや加速時にタイヤが潰れるような感触がありました。接地面まで含めてグラフェン配合コンパウンドを使用していたはずで、それが「柔らかすぎる」印象を産んだのかもしれません。
Vittoria曰く、グラフェン配合コンパウンドには以下の特性があるそうです。
舗装路をまっすぐ走るようなタイヤに掛かる荷重が少ない場合には硬くグリップ力が低いが、タイヤに大きな荷重が掛かるコーナーリングや加減速ではソフトになって高いグリップ力を発揮する。
接地面までグラフェン配合コンパウンドを使っていたルビノプロは、私の体重だと「ソフトにならなくて良い場面でもソフトになる」特性が発揮されていたように思えます。
その点、コルサネクストは潰れるような感触もなく、自然な加速感でした。まっすぐに走る場合に接地するタイヤセンター部分はグラフェンを使っていないそうなので、踏み込んだ際の潰れる感触が軽減されているのでしょう。
タイヤ自体も軽量であることもあり、停止からの漕ぎ出しもなかなか軽快です。
他のタイヤと比べると、加速ではAGILESTのほうが鮮烈な感じはあります。
乗り心地
従来のVittoriaタイヤに比べると硬めな感触ではあるものの、乗り心地は悪くありません。むしろ今世代のタイヤでは良い方。
シクロワイアードの記事(こちらはチューブレスレディ版のインプレ)では「他のブランドはもっと硬めなので、ヴィットリアのタイヤらしさがある範疇での硬さという印象です。」と書かれていますが、この内容に同意します。
巡航
特別に転がり抵抗が低いという感じはありませんが、引っかかる感じもなく。加速感同様にこちらも自然な印象。
コーナーリング
同世代のIRCのASPITEはヘリンボーンパターンによるコーナーリング時のグリップ変化が独特だったこともあり、コルサネクストの縦溝にもコーナーリング時のクセがあるのではないかと考えていました。
実際に乗ってみるとコーナーリングは自然な挙動で、かつ倒し込んでも不安がない感じ。倒し込んだ時に接地するサイド面にはグラフェン配合コンパウンドが使われているようですが、それが良い仕事をしている気がします。
ウェット特性
雨でも何度か走っていますが、特に不安を覚えた場面はありませんでした。
2010年頃のVittoriaのタイヤは「雨だと滑る」と言われていましたが、それももう過去の話ですね。
BRRのテストによれば、ウェットグリップは全タイヤでトップクラスとのこと。
耐パンク性
今のところ、パンクはゼロです。乗っている距離が少ないこともあるかもしれませんが、トレッド面への切り傷も見られません。
切り傷は耐パンクベルトを突破しない限りは実害はありませんが、そこに小石などがめり込むと走るうちに耐パンクベルトを貫いてパンクします。切り傷がつきにくいというのは、そういった意味でアドバンテージです。
耐久性
1500kmほど使った状態の後輪の写真を示します。
トレッドセンターはそれなりに削れていますが、まだまだスリップサインは残っています。3000kmくらいは使えそうな感触です。
名称
「N.EXT」は、Nylon CasingのNと、Next Generationを掛けた言葉だそうです。
検索エンジン的にはちょっと探しにくい言葉な気はします……。まぁ、「コルサネクスト」で検索しても、Google先生は理解してくれますが。
価格
発売当初は税込7997円でした。現在は8998円に値上げされています。
昨今は定価1万円超えのクリンチャータイヤも珍しくなくなったので、グレード的には価格が抑えられている印象はあります。
実売は7000円前後、安い通販ショップだと5500円というところもあります。
まとめ
あらゆる意味で「自然」な挙動のタイヤ。
期待通りに動いてくれて、あまりキャラを主張しない優等生タイプ。尖った長所はありませんが、これといった短所もありません。こういうタイヤが良いタイヤなのでしょう。
しかしレビューとしては書きにくい。一年経つまでレビューを書けなかったのは、これといった特徴が見いだせなかったからです。それだけ全方位優秀ということなんですが。
Vittoria風味は薄くなっているので、従来のコルサの乗り味を好む人には物足りないかもしれません。逆に、他社のタイヤから乗り換える人には違和感を感じにくいタイヤだと思います。
評価
対象モデル: Vittoria「CORSA N.EXT CL 26C」
年式: 2022年
定価: 8997円(税込)
購入価格: 7200円 (税込)
公称重量: 26C: 200g
実測重量: 26C: 200g
価格への満足度
購入時の価格であれば。
総合評価
これと言った弱点の無い優等生タイヤ。幅広いラインナップも魅力。
著者情報
年齢: 39歳(執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: BIANCHI OLTRE XR4(カーボン), QUARK ロードバイク(スチール)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)
# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせていただきました。