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【レビュー】WAKO’S「チェーンルブ リキッド エクストリーム」
評価:3.5
ワコーズの自転車競技用オイル。チェーンルブリキッドシリーズには「パワー」「スピード」「エクストリーム」の3種類があり、今回は「エクストリーム」のレビューです。
購入動機
ワコーズによる店舗専売の「チェーンルブ リキッド」は最初に「パワー」「スピード」の2種類が発売されました。パワーのレビューは以下。
その後、遅れて発売されたのが「エクストリーム」です。2016年末だったと思います。私は発売から1年後の2017年末に購入しました。
動機としては、「ブルベに最適」といった説明が製品にあったからです。下記は製品の裏面に書かれている説明です。
ヘビーレインやマッドコンディションにも耐えうる強靭な被膜を形成。各種レースやグラベル、ブルベ等、過酷なライドに最適。
ブルベの名前を製品名に出されては使わない訳にはいかないと思って購入を決めました。
ちなみに、この時点で聞いていた前評判は以下の通り。
・グラベルなどで使っても汚れにくい。
・1000kmくらい持つ。
・雨でも中々流れない。
本当ならば、確かにブルベ向きです。
製品概要
内容量は50ml。オイルタイプは「ハーフウェット」と書いてあります。
成分については特に記載はありません。SDSには成分が書かれていますが、ここには記載しません。
消防法上の分類は、「第四類(引火性液体) 第2石油類 危険等級III」。SDSを持参すれば飛行機への持ち込みも可能です。ワコーズの場合、SDSの請求は販売店経由で行う必要があります。
使用感
ブルベ用のロードバイクのチェーンに塗布して使用しました。
特性
黄金色と言いますか、緑黄色系の液体です。
「パワー」「スピード」はWETという記載がありますが、「エクストリーム」はHALF WETという記載があります。
後述しますが、本製品は「塗布から6時間以上経ってから使う」ように説明があります。一見ウェットルブでありながら、溶剤が揮発してから使うドライルブ的な特性も持つと言えます。
なお、「パワー」「スピード」には容器の中に何も入っていませんが、「エクストリーム」には撹拌球が入ってます。つまり、中身が分離しやすい液性のものだということ。これもドライルブっぽい特性ですね。
施工
このチェーンルブ最大の特徴は、「施工が面倒くさい」ことだと思います。
同梱の説明書には下記の工程が書かれています。
① 汚れ(油・砂・ホコリ・泥・金属粉など)を洗浄する
② 水分の除去
エアブロー、もしくは水置換性を有した浸透防錆潤滑剤(ワコーズ ラスペネ推奨)をチェーンにまんべんなくスプレー。しばらくしてから浮き出てきた水分とラスペネをウェス等でしっかり拭き取る。
※撥水・撥油性に優れたオイルの為、①②を行わないと注油時にオイルが弾かれてチェーン内部に浸透しません。
③ 注油
容器を30秒以上よく振ってからチェーンのプレートとローラーの間に浸透するように1コマ2滴を目安に注油を行う。
④ オイルをなじませる
注油後、クランクを数回ゆっくり回してオイルをチェーンになじませる。
⑤ 余分な場合はオイルを拭き取る
拭き取りは注油後6時間以上経過してから行う。(推奨)
拭き取らない場合も6時間以上経過してから走行する。(推奨)※チェーンルブリキッドエクストリーム(以下 CL-EX)を注油して走行した後、洗浄をおこなわずCL-EXを重ね塗りをし続けると、チェーンの動きが重くなる場合があります。
……長い!!!
「超音波洗浄機で脱脂した後、熱したオーブンで乾かし、注油後に超音波洗浄機に入れてなじませる」ように言われる「LUDICROUS AF」よりはマシですが、それにしても要求事項が多い。
で、一番問題なのはラストに書いてある「重ね塗り不可」という所です。
購入前に見た評判では「ひと塗りで1000km持つ」という評判も見られましたが、ブルベでは1200kmを走ることもあります。1000kmで切れて重ね塗り不可だと困りますし、こんな面倒な手順をブルベ中にやっていられません。
ただ、実際にどうなのかは使ってみないと分かりませんので、頑張って施工しました。
1回の塗布あたりでの走行距離
施工後、一晩置いてから使用を開始しました。
こちらは乗り始めて100kmくらい(全てドライ条件下)のチェーンの様子。かなり綺麗です。
ペダリングの感触としては、特に体感できるほどの軽さとか特徴的なものは感じられませんでした。
最終的には1000kmは持たず、7-800kmでキシキシ音が鳴り出した(と過去のメモに記載)ようです。塗布した季節が冬だったこともあり、雨天ライドはありませんでしたが、それでも1000kmは持たず。
ただ、このチェーンルブは前述の通り施工がかなり面倒であり、1ユーザーレベルで正しく施工できていたのかは怪しいです。正しく施工できたら、もう少し持ったのかもしれません。
なお、距離で言うと持つ物が多いウェットルブでも平均は400kmくらいです。7-800kmは「かなり持つ」部類に入ります。
静粛性
muonやベルハンマーほどの「無音」にはなりませんが、静かではあります。
走行抵抗
前述の通り、体感できるほどの軽さは私は感じませんでしたが、スムーズではありました。
耐水性
結局、使用期間中は雨の中を走っていないので、雨天走行時の耐久性は未知数です。せっかくの「雨に強い」と豪語するルブなので試したいところでしたが。
今後、雨天走行をする機会があればその後に追記します。
防汚性
前述の通り、汚れはつきにくいです。この辺りの特性はドライルブっぽいですね。
入手性
発売から6年が経ちますが、未だに実店舗専売品です。通販では買えません。ちょっともったいない気はします。
お値段は安いので、自転車店で特に買うものがなかった時にこれを買ったりはします(なので使ってない新品が残っている)。
価格
多分、税込1760円です。この持ちと価格を考えるとかなり安い部類だと思います。
まとめ
防汚性と、距離の持ちはトップクラスです。ただし、施工もトップクラスに面倒くさい上に、重ね塗り不可です。
「ブルベ用に」とは書かれていますが、600kmまでならば雨が降っても恐らく大丈夫でしょう。しかし、1000km以上のブルベでは心もとない。何故ならば、重ね塗りが出来ないから。「気にせず塗れば良い」という向きもあるでしょうが、私は割りとメーカーの推奨は守って使いたいタイプです。
実際、このチェーンルブを入手してから半年後の2018年8月に出た「クローバー1200」という1200kmブルベでは、上記の理由もあって「エクストリーム」の使用は見送りました。使用したのは、Vipro’s「muon」です。
クローバー1200はスタートから800km地点までずーーーっと雨でして、muonも200kmごとに注油しなければならない状態でした。とはいえ、重ね塗りは出来るので、なんとか最後まで走れました。
同じコースを走った知人は、出走前に「エクストリーム」を施工してから出走したそうですが、「2日目には流れてしまった」と証言しています。1日目(300km)持っただけでも大したものですが、重ね塗り不可の条件がキツイ。結局、彼は途中のショップで適当なチェーンオイルを買って凌いだそうです。
ただ、「一気に1000km以上を走らない」「雨の中で長距離を走らない」という条件で考えれば、施工さえ乗り越えてしまえば汚れにくくて性能が良い上に、注油頻度も少ない良いチェーンルブという評価になるでしょう。ただ、それは「エクストリーム」という名を名乗るにはどうなのか、と思えます。
エクストリームが「雨や泥などの厳しいコンディション」を指す場合、短い(100km以下)であれば、最適なチェーンルブと言えます。エクストリームが「超長距離(1000km以上)」を指す場合、このチェーンルブは適さないと思います。
結局、2017年末~2018年初頭にテストして以降、このチェーンルブは出番がありません。そのうちまた雨天ライドを走る時にでも使ってみようと思います。
評価
対象モデル: WAKO'S「チェーンルブ リキッド エクストリーム」
年式: 2017年
定価: 1760円(税込)
購入価格: 1760円(税込)
価格への満足度
この性能でこの価格は安い。
総合評価
チェーンルブとしての性能は理想的。ただ施工が面倒なので運用に制限が掛かるので、1000km以上のライドへの使用は厳しい。
著者情報
年齢: 38歳(執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: BIANCHI OLTRE XR4(カーボン), QUARK ロードバイク(スチール)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)
# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせていただきました。