評価:1.5
ワークマンの販売するレインウェア「イナレム」シリーズのレイングローブ。1900円と格安です。
購入動機
ワークマンが2021年ごろに販売を開始した「イナレム」シリーズ。
透湿性を重視しており、「蒸れない」を逆から読んだネーミングになっています。
イナレムシリーズについて
イナレムはGORE-TEXやeVentなどと同じく、防水透湿素材の名称です。ワークマンが独自開発した素材ということで、詳細は明らかにされていません。
レインジャケットやレインパンツは既に販売されていましたが、2023年になってレイングローブが発売されました。「雨天時の自転車走行に使えるのではないか」と思い、早速購入。
想定用途
ちなみに公式商品ページには、下記の記載があります。
キャンプ、アウトドア、スポーツ観戦、ハイキング、自転車、ガーデニングなど様々なシーンで!
一応、自転車も想定用途に入っているようです。ガッツリとした雨天走行まで考慮されているかは分かりませんが。
製品概要
実測重量は50g(LLサイズ)。多少ストレッチするようになっています。
構造としては、一般的な3レイヤータイプ(表地・防水膜・裏地)とのこと。
裏返すと、縫い目部分にはシームテープが貼られています。
防水透湿スペックは以下の通り。
- 耐水圧: 20,000mm
- 透湿度: 25,000g/m2/24h
ただし、製品タグには「完全防水ではありません」という記載があります。
カラーは、ブラックとオリーブの2種類。
使用感
まず家で防水性能のテストを実施。その後、雨天走行を含む600kmブルべで使用しました。
私の場合、適正サイズはMサイズですが、レイングローブの透湿性を正しく発揮するためにはインナーグローブが必要です。このため、通常よりも2サイズ大きいLLサイズを選びました。
重量
LLサイズで実測重量は50gでした。
まぁまぁ軽いと思います。
サイズ感
手首の部分に絞りが入っていますが、ここが結構細いです。いつも選んでいるグローブのサイズを選ぶと、この絞りの部分が通りにくいかもしれません。試着してから購入したほうが良いでしょう。
裾部分は長めで、レインジャケットの袖の中に収納することが可能(=裾部分からの水の侵入を防げる)です。
防水性能テスト
以前、レイングローブに対してこんなテストを実施しました。
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自転車用途のレインウェアの中で、防水的な条件がもっとも厳しいのはレイングローブだと思っています。
レインジャケットであれば濡れたものが押し付けられることはありません(リュック等を背負っていれば別)。
レインパンツはサドルに押し付けられていますが、サドル表面は保水しませんし、接触面積が比較的大きいので耐水圧を超えることはありません。
その点、レイングローブは、水を含んでスポンジのようになったバーテープに狭い面積で押し付けられます。瞬間的に耐水圧を超えてしまい、浸水することが考えられます。防水透湿素材自体の耐水圧を超えない場合であっても、グローブは縫い目が多く、縫い目から浸水することもあります。
残念ながら、自転車用レイングローブは、(少なくとも我が家にあったものは)浸水しました。
防水かつ透湿性を備えたゴム手袋です。ロングライド用途に転用した場合のレビューとなります。 購入動機 2016年頃、雨のロングライド用途に購入。ブルベ界隈では以前から「最強の防水グローブ」として有名でした。 様々な自転車用レイングロ[…]
前に行った試験で浸水しなかったのは、縫い目を持たない「テムレス」だけでした。
さて、イナレムレイングローブはどうか?
なんと、スポンジ握り試験では浸水しませんでした。これは今までのレイングローブと違って期待できそう。
そう思ってブルべに投入したのですが……。
防水性
ブルべで使ってみた所、1時間ほどで内部が濡れはじめ、3時間後には指先に水が溜まっている状態になってしまいました。
裾部分にはレインジャケットの袖を上からかぶせているので、そこからの水の侵入は起こらないはず。となると、やはりグローブ表面から染み込んできたことになります。
短時間のスポンジ握り試験では浸水しませんでしたが、長時間ではジワジワと染み込んでくるのかもしれません。
気温が20℃前後と高かったこともあり、手先の冷えを心配する必要が無かったことから、以後はイナレムレイングローブを外しました。
これが冬場だったら、手先が冷え切って大変なことになっていたかもしれません……。
念のため、家でもグローブの手首から先部分だけを水に浸け置くテストをしてみました。10分ほどで内部の濡れを確認しました。
水深100mmほどで浸水って、スペックの「耐水圧20,000mm」とは……? もちろんこの耐水圧は「防水透湿膜」の性能であって、縫製後のグローブの耐水圧ではないというのは分かっていますけども。
体重を掛けてバーテープに押し付けられて浸水するなら分かるんですが、水に浸け置いただけで浸水するのは論外です。
透湿性
完全に浸水を許してしまっているので、グローブ内はびっしょり。湿気の抜けを評価する以前の問題です。
数値上ではGORE-TEX(44000g/m2/24h)の半分程度の透湿性を誇りますが、それを確かめることは出来ませんでした。
グリップ
表地は割とグリップします。雨でバーテープを握っても滑りやすいということはありませんでした。
その他
人差し指のみ、タッチパネルに対応した導電布が縫い付けられています。
まとめ
正直言って、レイングローブとしては期待外れの性能でした。
タグに「完全防水ではありません」と書いてありますが、それにしても防水性が低すぎるとは思います。
当初は「自転車用途は考えてないだろうし、まぁ仕方ないか」と思ったのですが、このレビューを書くに当たって公式サイトを見ると、ちゃんと「自転車」の文字がありました。
公式商品ページには他の利用者からのレビュー(主にモーターサイクルの人から)もありましたが、いずれも「短時間で浸水した」という低評価が付いています。個体差というわけでもなさそうです。
片道30分以内の自転車通勤のような用途であれば実用に足りそうですが、それより長時間になる場合には浸水すると思ったほうが良いでしょう。
ハンドルやポールを握らない、ハイキング等であれば実用に足るかもしれませんが、試していないので分かりません。
ワークマンの製品をここ数年追いかけていますが、残念ながら「改良」には熱心ではない印象があります。一度作ったら仕様変更をしないというか。
現時点で★1.6という低評価を見ると、製品の改良は必須と考えますが……1900円という値段を考えると厳しいでしょうか?
出身地である群馬県伊勢崎を本拠地とするワークマンを応援したい気持ちはあるんですが、ちょっとこのグローブは頂けません。
とりあえず私はテムレスに戻ることにします。
評価
対象モデル: ワークマン「イナレム レイングローブ AGA02」
年式: 2023年
定価: 1900円 (税込)
購入価格: 1900円 (税込)
公称重量: 不明
実測重量: 50g(LLサイズ)
価格への満足度
これだけの作り込みにしては安いと言えるが……
総合評価
水圧を掛ける以前に、水に浸け置いただけで内部に浸水する。レイングローブは名乗れない。
著者情報
年齢: 38歳(執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: BIANCHI OLTRE XR4(カーボン), QUARK ロードバイク(スチール)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)
# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせていただきました。