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【レビュー】SHIMANO PRO「PERFORMANCE 17F MINI TOOL」
評価:2
SHIMANO PROの携帯工具。17個の機能を備えながら公称78gの軽量性を誇ります。
購入動機
知人がTwitterで紹介しており、チェーンカッター付きで78gという重量に惹かれて購入を決めました。
私の場合、現在の携帯工具は「PB SWISS BIKE TOOL」と「KMC ミニチェーンカッター」という組み合わせ。合計88gで、必要な機能を一通り満たしています。
今回購入したPROの携帯工具は公称78gで上記の組み合わせの機能を網羅しています。もし、実使用に耐えるのであれば乗り換えるつもりでした。
製品概要
実測重量は81g。
ビット&ビット保持工具は硬化スチール製、チェーンカッターはスチール製、ビットホルダー部は樹脂製と思われます。
17個の機能は以下の通り。
・六角(2/2.5/3/4/5/6mm)
・トルクス(T25/T30)
・プラスドライバー
・マイナスドライバー
・チェーンカッター(9~12S対応)
・スポークレンチ(3.6/3.75/4.0/4.4mm)
・バルブコアツール
・チェーンリンクホルダー
使用感
実際にライドに投入する前に、「使い物になるのか」を自宅でテストしました。写真のミッシングリンクは手持ちのものをホルダー部分に付けただけで、製品には付属しません。
重量
公称78gで、実測は81gでした。
3g重かったですが、まぁ誤差といった所でしょう。
ビット式工具
本製品の機能のうち、多くはビットが締めています。
割と珍しい、双方タイプのビット。
これをビット保持工具の先に取り付けて使うのですが……ビットホルダーからビットを取り出すのが難しい。
同じくビット式工具であるPB SWISSのBIKE TOOLの場合、付属のアーレンキーでビットを押し出せる構造になっています。しかし、SHIMANO PROのツールの場合はビット保持工具であり、押し出すことができません。
苦肉の策として、ビット保持工具の持ち手の角を使ってビットを押し出しました。使いにくい。
ビットをビット保持工具に取り付けて準備完了。
作業性は並程度といったところ。ビット保持工具の持ち手は短いので、あまりトルクは掛けられません。スルーアクスルの取り外しにはちょっと厳しいでしょう。
チェーンカッター
さて、問題はチェーンカッターです。
チェーンカッターというのは、携帯工具の中でもかなり重量的に重くなる機能です。それだけトルクが必要なので、丈夫さが要求されます。
4mm六角のビットを取り付け、それでチェーンカッターのボルトを回すわけですが……持ち手となるボディ(ビットホルダー)部がしなります。
チェーンのコネクトピンを押し出す直前にはかなりのトルクでボルトを回す必要がありますが、その動きにボディが「耐えられません」と訴えるかのように、曲がっている感触が手に伝わってきました。
このまま力を込めた場合、コネクトピンが押し出されるか、それともボディが折れるか。ボディが折れた場合、おそらく私の手は無事では済まないでしょう。
2回ほど力を込めようとして断念しました。とはいえ、ここで諦めてはレビューになりません。ボディが折れた場合に手を切らないよう、左手をテムレスで保護。その状態で3回目のチェーンカットチャレンジ。
結果として、ピンは押し出され、チェーンを切ることが出来ました。
しかしこれ、何回かやればボディは折れそうですし、それ以前に毎回この「折れそうな感触」に耐えるチキンレースをやりたくありません。出先で困っている時に使うものですからね。
個人的には、この携帯工具のチェーンカッターは使い物にならないと判断しました。
その他の機能
チェーンリンクホルダー機能があり、チェーンリンクを1セット分保持できます。ボディ内部に磁石が仕込まれていて、リンクが脱落しません。
ビット保持工具には、ニップル回しが4種類付属。うち1つ(4.4mm)はバルブコアツールを兼ねます。
サイレント仕様変更?
さて、このレビューを書くにあたって製品を購入した通販サイトの画像を見ていて違和感を覚えました。
あれ、ビット保持工具が黒い。そして、ボディ部の質感も樹脂ではなく金属っぽい……?
商品ページを見ると「ボディ素材: アルミ」の文字があります。写真で見る限りはアルミっぽい金属光沢が見て取れます。
私の手元にあるのがこちら。白抜きのはずの「PRO」ロゴもただ掘られただけ。
このバリの形を見ても、アルミとは到底思えません。というか、この携帯工具にはアルミを使った部位が見つかりません。
さて、ここからは私の想像です。
本製品、最初は本当にボディ部をアルミで作っていたのではないでしょうか? しかし、何らかの問題が生じて、ボディ部をアルミから樹脂に素材変更を行った。
その問題ですが、「チェーンを切る際のトルクに耐えられなかったのではないか」と推測します。
アルミのサイコンマウントを使った方なら経験があるかもしれませんが、意外とアルミは硬いようで脆いものです。剛性と強度は違っていて、剛性が高いものほど折れるときはポッキリと折れます。
剛性が低くても折れるよりはマシ……ということで、そういう配合の樹脂素材を選んだのではないか? ただの推測ですが。
ただ、商品写真と現物が明らかに異なっているというのは間違いありません。ちょっとした詐欺に思えます。
まとめ
軽量かつコンパクトにまとまっているものの、チェーンカッターが実用的ではありません。
チェーンカッターを備えないで本製品よりもコンパクトで軽い携帯工具は他にもあります。チェーンカッターが付いて80gという重量だから価値があるのであって、チェーンカッターが使えないのならば別々に用意したほうが良いでしょう。実用に足るKMCのミニチェーンカッターは32gしかありませんし。
そして、商品写真と現物の仕様が明らかに異なっています。これは頂けません。仕様変更があったなら写真と説明を差し替えた上で、理由についての解説があるべきだと思います。
SHIMANO PROは割りと信頼してきたブランドでしたが、本件で私の中の信頼度は落ちました。
追記: シマノお客様相談室への問い合わせ
サイト記載仕様が実物と違うことや、チェーンカッターの実用性について気になったので、シマノお客様相談室へ問い合わせを行いました。
問い合わせ内容
今回問い合わせたのは以下の二点です。
① サイトの写真・説明と、実物の仕様が大きく異なる。
② チェーンカッターを使おうとするとボディがしなってしまい、実用的とは思えない。
特に、公式サイトの画像と説明が実物とことなっている点は明らかにおかしいので(コピー品の可能性もある)、担当者の方に調査をお願いしました。
結果
問い合わせ翌日、担当の方から今回の実物を取り寄せてテストした上で折り返しの連絡を頂きました。
要点を纏めると以下の通りです。
① 製品の仕様変更があり、ホルダーは樹脂製が正しい(この写真の製品は正規品の本物である)。
→サイトの記載(アルミ製)が誤っていたので早急に修正する。② チェーンカッターは担当者が20回ほどテストを実施。
→使い方にコツはあるものの、切ることは出来たので実用上は問題がないと考える。
「サイトの説明と現物が異なる」ことに関しては、仕様変更あったとのこと。それが適切にサイト上に反映されておらず、各通販サイトにもその情報が掲載されていたようです。
このバリたっぷりの製品が正規品というのはちょっと衝撃ですが、とりあえず偽物ではなかったようです。
「チェーンカッターの実用性」については、どうもこの携帯工具でチェーンを切る時の握り方にコツがあると担当者の方は仰っていました。
そのコツとは、「チェーンを指で抑える」こと。
私は普通のチェーンカッターを使うときのように、ボディ部のみを手で持ち、チェーンにはなるべく触らないように作業をしていました。手が汚れますし。
言われた通り、このチェーンを指で抑える持ち方をしてみたところ、確かに前の持ち方よりもボディ部がしなることなくチェーンを切ることは出来ました。チェーンを抑えることでカッター部も同時に抑えることになり、ボディ部の変形は抑えられるので合理的ではあります。手は汚れますけど。
ただ、こんなコツはこれまで全く聞いたことはありません。このようなコツがあるのならばパッケージやマニュアルに説明を図入りで書いておいて欲しいですね。
その後の処理
シマノ側としては、「サイト上の説明と現品が違った状態で販売してしまったのは事実なので、返金には応じる。問題がなければそのまま使ってもらっても良い」とのことでした。
どうするかは考え中ですが、あまりこの製品に良いイメージが持てないので多分返金の方向で動くと思います。
評価
対象モデル: SHIMANO PRO「PERFORMANCE 17F MINI TOOL」
年式: 2022年
定価: 4730円(税込)
購入価格: 4020円 (税込)
公称重量: 78g
実測重量: 81g
価格への満足度
携帯工具としては高め。
総合評価
スペックのウソとチェーンカッターの実用度の低さが頂けない。ビット式工具としては使い勝手は悪くない。
著者情報
年齢: 38歳(執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: BIANCHI OLTRE XR4(カーボン), QUARK ロードバイク(スチール)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)
# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせていただきました。