HUNTのホイールに試乗

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イギリスのホイール直販ブランド「HUNT」。

今回、たまたま近所に住んでいる方がHUNTのホイールを持っており、試乗させてくださるとのことで試してきました。今回の記事では、試した感想を書いていきます。

目次

試乗の経緯

まずは何故、試乗をすることになったのか、その経緯から。

レーゼロカーボンDBの不満点

今年購入したディスクロード「INFNITO CV」には、Fulcrum Racing Zero Carbon DBを付けています。リムブレーキ版のRacing Zero Carbonがとても良かったので、ディスクブレーキ版もきっと良いだろうと思って購入しました。

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定価は274000円と、現行のディスクロード用ホイールとしては高級ラインに入るモデルです。剛性の高いカーボンリムに、反応性の良いアルミスポーク。低速域の加速の鋭さや、斜度のキツいヒルクライムでの性能は現行ホイールの中でも屈指でしょう。下りコーナーでの安定感も素晴らしく、山岳用ホイールとしては最高のものだと思っています。

しかし、50km/h先の伸びと、35km/h以上での巡航に引っかかりがある感じがありまして。これは何なのかと悩んでいました。

不満の原因

そんなことをTwitterに書いたら、有識者からこんな指摘を頂きました。

「レーゼロカーボンDBはアルミスポークなので、前輪の空気抵抗が大きいのでは?」

なるほど。確かにレーゼロと言えば極太のアルミスポーク。そして空気抵抗への影響が大きいと言われる前輪のスポーク数は21本。リムブレーキ版の16本に比べて5本追加されています。

ディスクブレーキのホイールの前輪のスポーク本数の相場は24本なので、それに比べたら21本は少ないほうです。しかし、24本スポークの場合は細いステンレススポークが使われているのが普通。21本のアルミスポークというのは、もしかしたら想定以上に抵抗が大きい……という可能性はあります。

参考までに、フルクラムのホイールの前輪におけるスポークのスペックを以下に纏めておきます。

幅[mm] 厚み[mm]
アルミスポーク(レーゼロカーボンDB/ラジアル側7本) 4 2
アルミスポーク(レーゼロカーボンDB/クロス側14本) 4 1.5
アルミスポーク(レーゼロカーボン/ラジアル16本) 4 1.5
ステンレススポーク(レーシング3/ラジアル16本) 2 1.2

計測してみたら、レーゼロカーボンDBはスポークの組み方で厚みを変えていることが分かりました。ラジアルスポーク側はほんの少し太くなっているようです。やはりラジアルは負担が掛かるからなんですかね。

とりあえず、アルミスポークは幅も厚みもステンレスの倍近くあることが分かりました。果たしてスポーク形状と本数がどれだけ空気抵抗に影響するのかは不明ですが、アルミスポークが空力的には不利でありそうに見えます。
名著「ロードバイクの科学」でも、ホイールの空気抵抗について言及があります。自転車全体の空気抵抗のうち、ホイールが占めるのは10%程度。そして、スポークによる抵抗はスピン抵抗と呼ぶそうです。

追加ホイール候補

私はアルミスポークの反応性が好きで、リムブレーキ時代から好んでアルミスポークのホイールを使ってきました。しかし、どうもディスクブレーキではデメリットもありそうです。山岳ブルベならばレーゼロカーボンDBはベストマッチなはず。しかし、平地メインのコースを走るのであれば、もう少し巡航が楽なホイールが欲しいと思い始めました。

ホイール界隈では、アルミスポークは少数派で、大半のホイールはステンレススポークです。選択肢はかなり多いと言えます。そんな中から私が欲しいホイールの要件をまとめると以下のようになりました。

・ステンレススポーク
・空力的に良さそうなホイール
・リムハイトは40mm前後
・フックレスリムは除く
この条件で浮かび上がってきたのが、HUNTのエアロシリーズでした。
Hunt Bike Wheels International
404 Not Found Hand-built performance bike wheels. Hunt Bike Wheels bring you the latest technology and thinking in all things round. Leading components carefully sourced.
pillarのステンレススポークを使用し、前輪のスポーク数は20本。リムハイトは前40mm/後50mmで、エアロリム。リム内幅は19mmとそこまで太くはなく、重量も1458gとなかなか軽量です。
驚いたのはその値段。なんと10万9000円(執筆時)です。各社のエントリーグレードのカーボンホイールでも最低は15万円から。この安さは直販ブランドであるHUNTの強みなのでしょう。

試乗の機会を得る

HUNTが気になる。しかし、日本の自転車メディアでは全く取り上げられていませんでした。Canyonのような直販ブランドな上に、日本に現地法人もない会社の製品は取り上げる意味が無いというか、取り上げられないのでしょう。日本で取り上げているのは個人のブログのみ。しかし、HUNTのロード用カーボンホイールで参考になりそうなインプレを見つける事ができませんでした。かといっていきなり買うにはちょっと高価です。

そこでこんなことをツイートしてみたところ、ありかたいリプライを頂きました。

なんと嬉しいご提案。やはり百のインプレを読むよりも、実物を試すほうがよく分かるものです。しかも、おさむさんがお持ちのホイールは、私が気になっていた「HUNT 4050 CARBON AERO DISC WHEELSET」でした。

試乗

数日後、おさむさんとの交換試乗会を開催しました。

場所は新川崎駅周辺の、いわゆる「パイオニア周回」コース。一周4.2kmのほぼ平坦コースですが、ゴール地点は緩い登りになっています。

なお、私はINFINITO CVには、Racing 5とレーゼロカーボンDBしか履かせたことはなく、比較対象はこの2つになります。リムブレーキほど色々試せてはいないので、その辺りはご了承ください。

ホイール概要

モデル名 HUNT 4050 CARBON AERO DISC
重量 1528g (リムテープ・ロックリング付き実測)
スポーク数 前輪: 20本
後輪: 24本
リムハイト 前輪: 40mm
後輪: 50mm
リム幅 外側: 27mm
内側: 19mm

試乗の感想

コースを2周、8.4kmほど試乗しました。

まず最初に感じたこと。フリーボディの空転音が爆音! 誇張ではなく爆音です。一昔前のうるさいカンパフリーを2倍にしたくらいの音量があります。

北海道でも鹿をビビらせるくらいの効果はありそうですが、街中でこの音はちょっと辛いですね。後ろに付かれたらかなりストレスフルかなと。

巡航性能

走り始めてすぐのストレート区間は向かい風区間。このホイール、向かい風でやたら楽です。交換試乗のあとにもう一度レーゼロカーボンDBで同じ区間を走りましたが、明らかな差があります。

リム形状なのか、リムハイトなのか、それともスポークなのか。20本とディスクにしては少なめの本数でステンレススポークで組んだ影響も少なからずあるのではないかと思います。

35km/h超での巡航が楽なホイールだと感じました。

加速性能(低速)

ゼロ発進や低速域の加速はレーゼロカーボンDBの方が良いと感じました。アルミスポークと比べるのは土俵が違うかもしれませんが。

加速性能(高速)

こちらはHUNTに軍配。40km/hから50km/hへの加速もスムーズ。

レーゼロカーボンDBはこの高速域の加速で抵抗を感じます。剛性は十分あるので空気抵抗の影響ではないかと踏んでいるのですが。

快適性

これもHUNTの方が良かったです。

付いていたタイヤがGP5000チューブレス(5.5気圧)だったことも影響しているかもしれませんが、快適なホイールだと思います。

顕著に感じたのはレーゼロカーボンDBに戻した後。またがっただけで「これは硬いな」と感じました。レーゼロも硬いなりに振動の収束は早いのですが、ステンレススポークの方が素材どうしても乗り心地は良くなりますね。

コーナーリング

コーナーリング性能は普通。と言ってもこのコースはキツいカーブもないのですが。変に膨らむ感じや切れ込む感じは無し。

レーゼロカーボンDBはコーナーでも全く捻れる感じがないので、私的にはレーゼロカーボンDBに軍配。

重量

実測重量は以下の通り。

・レーゼロカーボンDB: 1508g(公称1450g)
・HUNT 4050 CARBON AERO DISC: 1528g(公称1458g)

どちらも同じくらいのサバ読みっぷり。ただ、前40mm/後50mmハイト、リムテープ込みの実測で1528gなら十分軽いですね。

横風耐性

レーゼロカーボンDBはリムハイト30mmなので、HUNTは前輪が+10mm、後輪は+20mm。

この日は風がそれなりに強かったので横風に持っていかれるかな?と心配していましたが、特に怖い思いはしませんでした。付いていたローターがスラムのローター(穴が多く風が抜けやすい)からかもしれませんが。

見た目

HUNTのホイールはマットブラック仕上げ。フレームがグロス仕上げなので、出来ればグロスコートのモデルも欲しいところ。

その他

せっかくの機会なので、ユーザーであるおさむさんに色々聞いてみました。

まずはホイール組の精度。どうもスポークが一本緩んでいたとのこと。最初からそうだったのか、配送中の振動でそうなったのかは分かりませんが……やはり通販で買ったホイールは一度店で見てもらう必要がありますね。

付属品について。チューブレスバルブやチューブレステープは付属。センターロック→6穴のアダプタも付属し、更に予備スポークも3本最初から付いているようです。これは心強い。

送料について。おさむさんが購入した3月時点では無料だったようですが、現在は7000円程度の送料が掛かります。ヨーロッパの物流はコロナの影響で大混乱したので、その影響ですかね。

試乗の総評

HUNTのホイールは、一言で言うならばバランスの良い優等生タイプのホイールと感じました。尖ったところも無いけれど、苦手なところもないタイプ。

私の印象をレーダーチャートで表すと以下の通りになります。

HUNTはオレンジ線で、ほぼ全方位で及第点と言ったところ。対するレーゼロカーボンDB(青線)は登坂性能に集中的にステータスを割り振っているように感じました。ちなみに、スコア合計は、HUNTが425点、レーゼロカーボンDBは440点です。

レーゼロカーボンDBもヒルクライム用としては最強クラスの性能を持っていると思うのですが、履き替え用の万能ホイールとしてHUNTが欲しくなりました。

ただ、私のレーゼロカーボンDBを試乗したおさむさんもこんな感想を述べています。

隣の芝生は青い……ってことですかね? 確かにレーゼロカーボンDBの細部の作り込みは凄いのですが。

まとめ

HUNTのホイールの試乗記でした。

試乗前は、「もっと決定的に駄目な所があるんじゃないか?」と疑っていましたが、短時間の試乗ではそういった所は発見できず。リムハイトの割には軽いのでリムの耐久性は気になるところですが、この値段だと目をつぶっても良い気もします。走行中にいきなり壊れたら困りますけど。

調べてみると、HUNTの他にも直販のホイールブランドは色々ある模様(Scribeなど)。ただ、その中ではHUNTはサポートの手厚さなど、評判は良いようです。爆音フリーボディが気になる所ですが、そこ以外は特に不満なし。そしてこの値段。結構心は揺れ動いています。

K&M CYCLE BLOG
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もう一つ気になっているホイールブランドがあります。「ワンエアー」です。38mmハイトで1292gと超軽量。ただし、こちらは中々持っている人もいないので試乗は難しそう。

最後に、試乗会にご協力頂いたおさむさん、誠にありがとうございました。色々と発見がありました。

著者情報

年齢: 35歳(執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: QUARK ロードバイク(スチール), GIANT ESCAPE RX(アルミ)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)

# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせて頂きました。

 

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この記事を書いた人

ロングライド系自転車乗り。昔はキャノンボール等のファストラン中心、最近は主にブルベを走っています。PBPには2015・2019・2023年の3回参加。R5000表彰・R10000表彰を受賞。

趣味は自転車屋巡り・東京大阪TTの歴史研究・携帯ポンプ収集。

【長距離ファストラン履歴】
・大阪→東京: 23時間02分 (548km)
・東京→大阪: 23時間18分 (551km)
・TOT: 67時間38分 (1075km)
・青森→東京: 36時間05分 (724km)

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