最後のリムブレーキ

  • 2020年12月16日
  • 2021年3月25日
  • コラム
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リムブレーキ時代が終わろうとしている今、ロードバイク趣味の人間としては「リムブレーキ最後の一本」を抑えておく時期が来たのではないかと私は考えています。

私は先日、リムブレーキのフレームを注文しました。恐らく、これがマスプロメーカーのリムブレーキのロードフレームとしては「最後の一本」になるでしょう。

この記事では、「リムブレーキ最後の一本」をテーマに色々と語っていきたいと思います。

ちなみに、この記事のタイトルは、「サイクルスポーツ」2019年1月号の同名特集が元ネタです。さらなる元ネタは恐らく「The last of Mahican(最後のモヒカン族)」あたりでしょうか。

この記事から約2年が経っていますが、いよいよ本当に「最後の」という時期が来たと思ったので、あえてこのタイトルを使わせて頂きました。

 

導入

グランツールではディスクブレーキのロードバイクを採用するチームが増え、リムブレーキは徐々にその数を減らしています。

メーカーの発表する新モデルもリムブレーキの数は減り、既にディスクブレーキのみのラインナップとなっているメーカーすらあります。言い換えれば、ロードバイクのメーカー・プロチームはリムブレーキへの投資を止め、ディスクブレーキにその分の資源を集中させているということです。

それにも関わらず、今年のグランツールを制したフレームはいずれもリムブレーキでした

・ジロ・デ・イタリア
 → 優勝者: タオ・ゲイガンハート(イネオス・グレナディアーズ)
 → 使用バイク: PINARELLO DOGMA F12(リムブレーキ)
・ツール・ド・フランス
 → 優勝者: タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)
 → 使用バイク: COLNAGO V3-RS(リムブレーキ)
・ブエルタ・ア・エスパーニャ
 → 優勝者: プリモシュ・ログリッチ(チーム・ユンボヴィスマ)
 → 使用バイク: OLTRE XR4(リムブレーキ)
ポガチャルに関しては、一部ステージでディスクブレーキバージョンのV3-RSを使っていましたが、メインバイクはリムブレーキでした。
ステージ優勝に目を向けても、今年のツール・ド・フランスでは全21ステージのうち10ステージがリムブレーキの優勝となっています。既にツールでリムブレーキを使っているチームは全体の1/3に過ぎないのにも関わらず、です。

もちろん乗り手の能力が一番大きいとは思うのですが、今やプロトンでマイナー側に倒れたリムブレーキが勝利数を稼いでいるのも事実です。「勝てる能力を持ったチームがあえてリムブレーキを選んでいる」とも言えるかもしれません。


恐らく、今後はリムブレーキの進化は止まるでしょう。メーカーもリムとディスク、両方に投資する余裕はないからです。ディスクブレーキの性能向上は今後も続き、逆にリムブレーキの性能は現状維持か下降曲線を描くことが予想されます。

しかし、現時点ではリムブレーキのフレームはディスクブレーキのフレームに負けない、むしろ平均レベルはまだ高い状態にあるのではないか?と私は考えています。

冒頭で紹介したサイクルスポーツ誌の特集でも言われていましたが、「リムブレーキは今が一番成熟した状態」であるとも言えます。今後、進化が見込めないことを考えると、現在のリムブレーキのフラグシップフレームは、過去を見ても未来を見ても一番レベルの高い状態にあるということになります。これは、フレームだけではなく、周辺のパーツ(特にホイール)にも言えることではありますが。

ここで一本、自分にとっての「あがりの一本」を抑えておくのも良いのではないか? そう思い、私は「最後のリムブレーキ」フレームを購入することにしたのでした。

 

今、リムブレーキを買う意味

各メーカーが一斉にディスクブレーキに舵を切る今、あえてリムブレーキのフレームを買う意味を考えてみます。

完熟の一本が手に入る

前の章でも述べましたが、現在のリムブレーキのフレーム(特にフラグシップ)は完熟の状態にあります。各社がリソースを最大限投資した最後の世代と言えるわけなので。

私見ではありますが、恐らく来年のグランツールにリムブレーキの姿はほぼ見られなくなるのではないかと思っています。

これまでリムブレーキフレームを供給してきたBIANCHIは、来年ディスクブレーキのフレームを供給することが発表されています。イネオスがリムブレーキを継続する可能性はありますが、そろそろ切り替わるのではないでしょうか。

レースを走らないフレームにリソースを投入する意味はないので、各社はリムブレーキのフレーム開発をやめてしまう可能性は高いと思います。リムブレーキはミドルグレード以下で生き残る可能性はありますが、フラグシップで残るのはあと1~2年ではないかと思っています。

事実、今年のツールでリムブレーキをメインで使用したCOLNAGO・BIANCHI・PINARELLO以外のほぼ全てのメーカーは、2021年モデルのフラグシップにリムブレーキの姿はありません。今年のツールで一部の選手がリムブレーキを使っていたCerveloも、日本国内こそリムブレーキモデルが継続していますが、本国ではディスクブレーキのみになっています。

……ということなので、最高のものが手に入る今のうちに自分の納得の行くリムブレーキのフレームを抑えておくのは、趣味人としてはアリなのではないか?ということですね。

現在、リムブレーキは恐らく「先がない」という理由でかなり割引されているのも見かけます。そういったフレームを軽率に購入して、「最高の一台」を作ってみるのもアリなのではないでしょうか。

これまでの資産が使える

これまでずっとリムブレーキのフレームに乗ってきた人は、家にリムブレーキ用のパーツやホイールがあるはずです。

そうした資産を使い回せるのもリムブレーキのフレームをあえて買うメリットではありますね。

ハード・ソフト面で環境が整っている

リムブレーキは100年続いたシステムです。周辺の環境が(今は)整っているのも大きな魅力だと思います。

一番大きな差は「ホイール」だと思っています。

 

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ディスクブレーキのホイールを色々試していますが、なんというか「値段と性能が比例していない」と感じています。

リムブレーキのホイールの場合は、高いホイールは高いなりに納得の行く性能がありましたが、ディスクの場合はどうもまだそうではない、というか。ゾンダやキシリウムエリートと言った、「ド定番」ホイールがディスクブレーキにはまだ存在しないことも、ホイール選びの難しさに拍車を掛けています。発展途上ということなのだと思いますが。

その点、リムブレーキのホイールは価格に沿って性能はきちんと高くなりますし、定番ホイールが存在します。予算相応の走りが手に入るということですね。


もう一つ感じるのは、ディスクブレーキにおける周辺製品の充実も発展途上であるということ。

 

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先日、初めてディスクロードで輪行をしてきました。ハード面という意味では「ディスクロード用輪行道具」はまだまだ少ないですし、ソフト面では「これが定番の輪行パッキング方法!」みたいなものも確立されていないと感じました。ディスクローターという装置が増えた分、パッキングの手間も増えます。

その点、シンプルなリムブレーキのロードは輪行の道具も十分に揃っていますし、パッキングの方法も確立されています。

輪行の他にも、泥除けやライトマウントはクイックリリースを前提としていることが多く、まだまだディスクロード用には選択肢が少ないのが現状です。


ただし、この「リムブレーキにとって環境が整っている」時間はこの先そう長くは続かないと思います。

リムブレーキのフレームがレースを走らなくなれば、高級なリムブレーキホイールの開発も止まるでしょう。Dura-AceやRecordクラスのブレーキキャリパーの開発も止まるでしょう。生産もいつまで続くか分かりません。

変速段数が10→11速に移行した際には、数年間10速用のDura-Aceチェーンが販売されましたが、現在はアルテグラグレードのチェーンしか販売されていません。このように、最上位のグレードのものは、パーツ・消耗品含めて少しずつ消えていく可能性は高いと思います。

しかし、急に消えることもないはず。大体ロードバイクは5年が賞味期限と言われますが、今買ってもそのくらいの期間はパーツ類も手に入る……と予想してます。外れたらスミマセン。

 

私の「最後のリムブレーキ」

長々と引っ張ってきましたが、購入したフレームはこれです。

BIANCHI Oltre XR4です。まさかの二台連続BIANCHI。カラーは、既に持っているINFNITO CVと同じグロスブラックです。

選択理由① 実証済みの性能

Oltre XR4を選んだ理由はいくつかありますが、一番大きいのはユンボヴィスマの活躍です。

今年のツール・ド・フランス。最終ステージのTTでまさかの逆転負けを喫しましたが、それまでマイヨジョーヌを着ていたのは、Oltre XR4を駆るプリモシュ・ログリッチでした。負けたのはTTだったわけで、今年のツールで一番早かった「ロードバイク」はOltre XR4であるとも言えます。ステージ優勝も3回を記録しており、最新鋭のディスクロードを上回る性能を見せつけてくれました。

ブエルタ・ア・エスパーニャでは、ツールでの悔しさをバネにプリモシュ・ログリッチが2年連続の総合優勝を達成。ログリッチはステージ優勝も4回を記録し、強さを示しました。

この実績から見て、Oltre XR4は現時点のリムブレーキの最高峰であることは疑いの余地はないでしょう。2017年デビューのモデルにも関わらず、4シーズンに渡ってワールドツアーの最前線で勝ち星を挙げたことを見ても、普遍的な良いフレームであることが伺えます。

振動除去素材「カウンターヴェイル」を採用し、普通はエンデュランスフレームを投入するような石畳を走るクラシックレースでも使用されたことから、乗り心地もお墨付きということになります。そのために作られたINFINITO CVが全然クラシックレースで使われてないのはオーナーとして納得がいきませんが……

試乗も一度していますが、これと言ったクセも無く、よく進むフレームだなという印象がありました。

過去に乗った中では、初代Foilによく似ています。Foilは乗り心地はイマイチでしたが、Oltre XR4は乗り心地も悪くないのです。言うなれば「乗り心地の良いFoil」という感じ。

私がこれまで所有した中でもっともレース用フレームとして気に入っていたのがFoilだったので、その雰囲気を持ちつつ、乗り心地が良いという点に惹かれました。

購入理由② 妻が速くなった

妻は一足先に、リムブレーキ版のOltre XR4を手に入れています。

今年の下半期のブルベでは、妻はこのOltre XR4で走ることになったのですが……明らかに速くなっているのです。特に登りが。

妻はとにかく山岳が苦手であり、出るブルベは大体100kmあたりの獲得標高が500m程度の「平地ブルベ」ばかりでした。

しかし、今年は峠を複数含む400kmブルベ2本、600kmブルベ1本を完走。600kmブルベは割とギリギリではありましたが、400kmブルベはかなり時間に余裕を持ってのゴールでした。一緒に走っていても明らかに登りで遅れることが減りました。

フラグシップフレームともなると、選手レベルではないと逆にパフォーマンスが落ちるフレーム場合もあります。その点、Oltre XR4は一般人が乗ってもパフォーマンスの上昇が見込めることがよく分かったのが購入の理由になりました。

購入理由③ タイミング

具体的に言うと、値段とカラーです。



「Oltre XR4、欲しいな」とボンヤリ思っていた所、タイミング良くワイズロードオンラインでフレームセットがセールになっているのを発見してしまいました。なんと29%OFF。

グランツールで勝てる性能を持ったフラグシップフレームが、税込33万円で手に入る誘惑には勝てませんでした。

カラー的にも、恐らくこのブラックカラーは来年の展開は無いのではないかと予想します。グリーンエッジカラーも発表されましたし、売り出されるとしたら通常のチェレステとチームカラーの2色展開というのが自然です。となると、ブラックカラーが手に入るタイミングは今しかないわけです。

なお、私が注文した55サイズ以外はブラック・チェレステともに在庫がまだ残っているようです↓(2020年12月15日現在)。

BIANCHI 2020 ロードフレーム OLTRE XR4 WISHBONE BBセット

予定構成

せっかくのレーシングフレームなので、ブルベは一切考えず、レース用に振り切った構成にしたいと思います。重量よりはエアロ重視。レース全然出てませんけど。

 

ハンドルは、このフレームが設計前提としているMetron 6Dを突っ込みます。初めてのステム一体型ハンドル。ジオメトリ表を見ながらサイズが合うものを注文したはずですが、合わなかったら一巻の終わり。

 

ホイールは、先日購入したTOKEN KONAX PROを付けようと思っています。52mmハイトのディープリムホイールです。

 

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コンポーネントは例によって、SHIMANOの紐式のDura-Aceになる可能性が高いです。そろそろ電動にも手を出してみたいですが……。

ちなみに、納期は12月と書かれていますが、現時点で全く連絡はなし。この分だと年を跨ぐかもしれません。来年はDura-Ace 9200のリリースという噂もあるので、そちらを入れても良いかなと思っています。リムブレーキコンポが9200に残っていたらの話ですが(ディスクブレーキオンリーの可能性も高いと思っています)。

まとめ

完熟の状態にある、現在のリムブレーキフレームを買おうぜ!という言葉を長々と文章にしてみました。

「今あえてリムブレーキを買おうか迷っている人」の背中を押す内容の文章にしたつもりですが、人によって捉え方は違うかもしれませんね。

残念ながらリムブレーキはこのまま(高性能レースフレームとしては)消えゆく定めにある可能性が高いです。もう少し過渡期が続くかと思っていましたが、予想外に移行スピードが早かったですね。UCIがディスクブレーキをレースで正式解禁したのが2018年ですが、たった3シーズンでここまでプロトンがディスク一色になるとは。

今回の記事を書くのに様々なメーカーのサイトを見ましたが、2021年モデルのディスク一色っぷりには戦慄しました。ほんとにディスクブレーキ化が進んでいるのだなと。そしてリムブレーキは消えゆくのだな、とも。

ただ、レースの結果を整理してみると、2020年現在でもリムブレーキの成績が良いので、来年どこか一つのチームがリムブレーキで勝ちまくってリムブレーキ復権!……なんてことがあるかもしれません。限りなく可能性は低いですが。

気になっているリムブレーキのフレームがあれば、今のうちに抑えておきましょう。

著者情報

年齢: 36歳 (執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: QUARK ロードバイク(スチール), GIANT ESCAPE RX(アルミ)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)

# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせて頂きました。


この記事を書いた人
ばる
ロングライド系自転車乗り。昔はキャノンボール等のファストラン中心、最近は主にブルベを走っています。PBPには2015・2019年の2回参加。R5000表彰・R10000表彰を受賞。

趣味は自転車屋巡り・東京大阪TTの歴史研究・携帯ポンプ収集。

【長距離ファストラン履歴】
・大阪→東京: 23時間02分 (548km)
・東京→大阪: 23時間13分 (551km)
・TOT: 67時間38分 (1075km)
・青森→東京: 36時間05分 (724km)