ハブダイナモから二度目の撤退を決めた話

この記事は約 15分で読めます。

ディスクロードで自身二度目のハブダイナモを試すも、結局やめてしまった件について書き残しておきます。

目次

導入までの話

今年の1月頃、再びハブダイナモのテストを始めました。

ハブダイナモとは

ハブダイナモは、ホイール中心にあるハブで発電を行う仕組みのことです。ハブ内部に磁石が仕込まれていて、中学で習った電磁誘導の原理で電気を作り出します。

SONのハブダイナモ

このゴツいハブを前輪に取り付けて発電をするわけですね。一般に、「ハブダイナモ」というと、電源であるハブから電流を供給されるライトまで含めたシステム全体を指すことが多いです。

重量があり、発電のための負荷も存在するので、レース用途のスポーツ自転車に取り付けられることは稀です。

一方、1000kmを超えるようなスーパーロングライドの世界ではハブダイナモの愛用者が過半数になると思います。何故なら、日本のようにどこでも電源が手に入る国はそうそうないから。人気のない荒野を走り続けるために、自らのパワーを電源に変換するハブダイナモを選ぶユーザーが多くなるというわけです。

1度目のハブダイナモ挑戦(リムブレーキ編)

私も1000km超のロングライドをたしなむ一人。ハブダイナモには憧れがありました。

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初めてハブダイナモを使ったのは2014年のこと。32Hのローハイトアルミリムでリムブレーキ用ホイールを組んでもらいました。

システム構成は以下の通り。

■ホイール
ハブ: SON delux 32H
リム: DT RR440(21mmハイト・内幅16mm)
スポーク: DT Competition 32本
ニップル: 真ちゅうニップル 32個
■ライト
フロント: B&M Lumotec IQ2 LUXOS U
リヤ: なし

リムブレーキ用ダイナモホイール

使ってみた感想は、「全てが重い」でした。

単純な重量も400gほど重くなりますし、発電時のハブにおける抵抗も加わります。前輪のスポーク本数も配線ケーブルも増えて空気抵抗も増加。走りが重くなる要素しかありません。

平地はまだ我慢できましたが、長いヒルクライムでは耐えきれないほどの負荷を感じ、ブルベで1回使っただけで撤退を決めました。

2度目のハブダイナモ挑戦(ディスクブレーキ編)

時は流れて2022年。時代はリムブレーキからディスクブレーキへと移り変わっていました。

10月末のブルベのゴール地点でMさん(ハブダイナモ愛用者)の熱心な布教を受けている中で頭の中に浮かんできたのは、「ディスクブレーキでハブダイナモはどうなのか?」ということでした。

リムブレーキ時代はブレーキ性能の観点からアルミリムを選ばざるを得ませんでした。しかし、ディスクブレーキであれば軽いカーボンリムを使うことが出来ます。ハブダイナモの「重さ」の要因の一つである「重量」を削減できるわけです。リムハイトを高くしてもそこまで重量が増えないので、3-40mmのミドルハイトにすれば空力的にも性能が改善されるはず。

そして、ディスクブレーキは元々スポークへの負荷が掛かる方式であり、フロントでも24本が基本。同じスポーク本数で組めば重量的にも空力的にも差も感じにくいはずです。

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その辺りの二度目の導入に関する話はこちらの記事に書いています。

結局、以下の構成でホイールを組んでもらうことになりました。

■ホイール
ハブ: SON delux 12 Center Lock 24H
リム: Growtac「EQUAL」(30mmハイト・内幅21mm)
スポーク: SAPIM CX-RAY 24本
ニップル: アルミニップル 24個
■ライト
フロント: Supernova M99 DY PRO
リヤ: なし

リムブレーキ時代と比較すると以下のようになります。

1度目(リムブレーキ) 2度目(ディスクブレーキ)
ライト B&M「Lumotec IQ2 LUXOS U」 Supernova「M99 DY PRO」
ハブ SON「Delux QR 32H」 SON「Delux 12 Center Lock 24H」
リム DT「RR440 32H」 Growtac「EQUAL 30mm 24H」
スポーク DT「Competition」 Sapim「CX-RAY」
ニップル 真ちゅうニップル アルミニップル
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そして2023年2月にはホイールが完成したという報告記事を書きました。

ディスクブレーキ用ダイナモホイール

実測870gという、かなり軽いハブダイナモホイールが完成。なんとリムブレーキ時代に組んだものと比べて200gも軽くなりました。

その後、本件については特に触れていなかったので、その顛末を書いていこうと思います。

結論から言うと、4ヶ月ほどで撤退しています。今は使っていません。

2度目のハブダイナモの感想

2度目のハブダイナモ挑戦(ディスクブレーキ編)の感想を書いていきます。

ライト

今回使用した「M99 DY PRO」の性能は非常に素晴らしかったです。

M99 DY PRO

世界初のハイビーム対応ダイナモライト

日本でも近年は上側カットの防眩ライトが増えましたが、これには弱点がありました。対向から誰も来ないような荒野であっても、あまり遠くは照らせないという点です。上方向の光をカットすると、どうしても遠距離は照らしづらくなるものでして。

そんな事情もあってか、防眩ライトの本場・ドイツのStVZOに「ハイビーム」という概念が追加されました。これは「明るさがハイ」という意味ではなく、車のヘッドライトで使われるような遠くまで照らす光のことを指します。

従来のStVZOでは上側の光をカットした「ロービーム」しか認めていませんでしたが、使用場所によっては「ハイビーム」に切り替えることが可能なライトが認められるようになりました。

ただ、自転車ライトほどの小ささでロービームとハイビームを切り替えるのは大変なことです。メカニカルな仕組みで切り替えを導入すればライト本体がバカでかくなってしまいます。

ハンドルのスイッチでハイ/ロー切り替えが可能

今回私が購入した「M99 DY PRO」は、世界で初めてハイビームに対応したハブダイナモライトです。手元のスイッチを押すことで、ハイビームとロービームを切替可能になっています。

9個のLEDを備える

9個ものLEDを備えており、モードごとに点灯するLEDを切り替えることで配光を変えています。

照射の様子

河原で照射実験をやってきました。ハブダイナモは基本的に走行中しか明るく点灯しないので(停止中も点灯はするが暗くなる)、胸カメラで撮影した動画から切り出したものです。

ロービーム

こちらはロービーム照射の様子。橋の側面は暗く、上側の光がカットされています。一方、横方向にはかなりの広さを照らしていることも分かります。

ハイビーム

こちらがハイビーム。上向きの光が追加され、橋の側面が照らされています。この状態で最大1000ルーメンに達するとか。

背面に光センサーを搭載

背面には光センサーを搭載しており、昼はデイライトとして点灯します。スイッチを長押しすることで完全に消灯も可能。

正直、ライトとしては現状最高のものだと思いました。これが漕ぎ続ければ無限に使えるのですから凄いことです。

ただし、久々にSupernovaのサイトにアクセスしたら、私の使っているハブを名指しで以下の注意書きがありました。

「一般に、M99 DY Pro は標準の 6V/3W ハブ ダイナモと互換性があります。
 SONdelux ハブ ダイナモは例外で、その電圧曲線はより平坦です。
 そのため、このモデルでは M99 DY Pro のフルパワーが発揮されず、ハイビームはかなり高速でしか利用できません。SON28 はこの目的に適しています。」

一応ハイビームはそれなりの低速でも使えましたが……1000ルーメンにはなかなか達しないということかもしれません。

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ハブ: 走行負荷

次にハブについて。まずは走行時の負荷からです。

結構配線にもこだわりました

漕ぎ出し

前輪で870gという重量は重めではありますが、ハブダイナモとしてはかなり軽量に仕上がりました。カーボンリム様々です。

実測870gのダイナモホイール

リムブレーキの時に比べてリム単体で100g、全体で200gも軽くなったこともあり、漕ぎ出し時に異様な重さを感じることはなくなりました。この点は狙い通りでした。

左右の振り

一方、重さを感じたのは立ち漕ぎで自転車を左右に振るシーンです。

ハブの抵抗というよりは、重量を感じました。ハブだけで通常のものより300gも重いので当然といえば当然。

その後、ダイナモではないGOKISOのハブでも違和感があったので、私は前輪ハブが重いことに違和感を持ちやすいのかもしれません。

ただ、これは座って巡航している分には特に気になりませんし、まだ我慢できる範囲でした。

ハブ: 乗り心地

許容できず、最終的にハブダイナモ撤退を決めた理由が「前輪の突き上げ」です。明らかに振動がダイレクトに手に伝わるようになりました。

当初は「ハブが重くなったことが原因ではないか?」と思い、こんな実験を行いました。

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しかし、普通のハブにおもりを付けたところで特に乗り心地に変化はありませんでした。突き上げが増えた理由は重量以外の理由がありそうです。

ホイールを組んでもらったショップの店長に相談してみた所、「ハブのフランジ幅が狭くなったことが原因ではないか?」と推測していました。

ディスクブレーキでそもそも左フランジ位置が内にある上に、SONはコネクターがあるため右フランジもかなり内側なので通常のハブよりはかなり左右が狭い寸法になっています。
フランジ幅が狭いと、今度はスポークテンションが縦方向へ大きく振り分けられることになります。
リムブレーキだと例えばDT240リム用でフランジの左右間が約70mmなのに対して、DT350のディスク用だと約58mmです。
それに対してSONは約48mmしかないので結構差があります。

確かにロードの場合、前輪はディスクブレーキであってもエンド幅100mm。そこにディスクローターが入ってくるので、フランジ幅は狭くなります。ハブダイナモの場合は、更にそこに電力を外に出すためのコネクタが加わるわけです。

参考までに、普通のディスクブレーキの前輪ハブの写真がこちら。

WH-R8170の前輪ハブ

次に、ダイナモホイールの前輪ハブの写真がこちらです。

SON Deluxのハブ

確かにフランジの幅が狭いですね。

左右ともにスポークがリムに対してほぼ垂直に近い状態になっており、こうなると地面からの突き上げはキツくなりそうではあります。

あまりにも突き上げがキツく、100kmすら続け乗ることが辛いと感じたため、ブルベへの投入も断念。そのままハブダイナモから二度目の撤退を決めたのでした。

突き上げへの対処法を考える

結局私は突き上げに耐えきれずにディスクブレーキへのハブダイナモを断念してしまいました。

くろみつ劇場
The Japanese Odyssey2023で日本人初の私設エイドを開設しGreater Hentaiな外国人さんたちに芋煮をふるまっ... ※このブログはpayanecoさんのロードバイクAdvent Calendar 2023に参加しておりまして、二日目になります ロードバイク Advent Calendar 2023 - Adventar 一日目はNなAおOさ...

しかし、くろみつさんの記事に出てくるJapanese Odysseyの参加者を見ると、「ディスクブレーキでハブダイナモ」という人はかなり多いです。なんらかの工夫をして長距離を乗り続けてもストレスがないように対処している……と推測されます。中には物凄く鈍感力が強いというだけの人もいますが、それだけではないでしょう。

そこで、突き上げを対処する方法がないかを考えてみることにしました。

乗り心地の良いタイヤを使う

一番安価で手っ取り早い解決手段がコレです。

私が突き上げに耐えられなかったのは26Cのクリンチャータイヤでのこと。幅を太くしたり、チューブレスタイヤを使うことで突き上げを緩和できる可能性があります。

くろみつさんの投稿に出てくるJapanese Odyssey参加者のニックさんのハブはSON28で、タイヤはGP5000STR(チューブレスレディ)。幅は不明ですが、ニックさんが芋煮を食べている画像の後ろに映るタイヤの太さを見る限り、30Cは超えていそうです。

リンダさんのほうはバッテリーライトのようですが、フィリップさんのほうはニックさんと同じくSON28+GP5000STR。このタイヤ、そちらの界隈では鉄板なんだろうか……?

フランジの広いダイナモハブを使う

次にハブを交換する解決手段。実行する場合、ハブとスポークを買い直し&ホイールを組み直しになります。

今回私が使ったSON Deluxのセンターロック用は特にフランジ幅の狭い製品のようです。もう少しフランジ幅の広いディスクブレーキ(12mmスルー/センターロック)用ダイナモハブは無いかを調べてみました。

ブランド 製品名 フランジ幅 重量
SON delux 12 Disc Center Lock 48mm 403g
SON 28 12 Disc Center Lock 48mm 420g
Shutter Precision PL-7 12mm Thru-Axle 50mm 409g

そもそも「ディスクブレーキ」「センターロック」「スルーアクスル12mm」のハブダイナモが数えるほどしかありませんでした。

残念ながらエンド幅100mmという縛りの中でハブダイナモをやろうとすると、フランジ幅は50mm前後になってしまうようです。

くろみつさんの写真の中では、唯一リカンベントのリシャールさんだけが私と同じSON Deluxユーザーでした。リカンベントだと前輪の乗り心地とかあまり関係ないのかも……?

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SONのダイナモどれ選ぶ? | CYCLES GRAND BOIS / グランボア|オーダーメイドのランドナー専門店 こんにちは、スタッフの前野です。 10月のピックアップ商品はダイナモ、ライト、リフレクター関連商品ということでちょっぴりお買い時になっているのですが、その中からSON...

ちなみに、リムブレーキ用のSON Deluxには6mmフランジ幅を拡大した「ワイドバージョン」があります。ディスクブレーキ用も作って下さい!

スポーク数を増やす

こちらもハブの交換が必要となる手段です。

一般に、スポーク数が増えると1本あたりのテンションを下げられるため、乗り心地を良くすることが可能と言われています。

今回は最小の24本で組みましたが、28本や32本にすれば乗り心地は改善されるかもしれません。ただ、そうなると重量や空気抵抗が増加するため、悩ましいところです。

まとめ

2度目のハブダイナモ撤退の報告でした。

私が撤退したのは6月ですが、8月に参加したPBPではディスクロードでハブダイナモという人はかなり多かったです。

そして10月のJapanese Odysseyを見て、「蛇の道は蛇」とでも言いましょうか、専門の道にはその道ならではの定番解決法がありそうなことが分かりました。

とりあえず「30C以上のチューブレスタイヤ」で突き上げを緩和するというのは効果がありそうに思えました。

そのうちやる気になれば「3度目のハブダイナモ挑戦」もあるかもしれません。

著者情報

年齢: 39歳(執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: BIANCHI OLTRE XR4(カーボン), QUARK ロードバイク(スチール)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)

# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせていただきました。

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この記事を書いた人

ロングライド系自転車乗り。昔はキャノンボール等のファストラン中心、最近は主にブルベを走っています。PBPには2015・2019・2023年の3回参加。R5000表彰・R10000表彰を受賞。

趣味は自転車屋巡り・東京大阪TTの歴史研究・携帯ポンプ収集。

【長距離ファストラン履歴】
・大阪→東京: 23時間02分 (548km)
・東京→大阪: 23時間18分 (551km)
・TOT: 67時間38分 (1075km)
・青森→東京: 36時間05分 (724km)

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