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ロードバイクユーザーのタイヤシステム利用比率
ロードバイクユーザーのタイヤシステムの利用比率について調べてみました。
タイヤシステムのトピック
昨日はタイヤの太さについてのアンケート結果を記事にしましたが、今日は「タイヤシステム」の話です。
ここで言うタイヤシステムは、クリンチャー・チューブラー・チューブレス……というタイヤを取り付ける際の仕組みを指します。
まずは、タイヤシステムに関係しそうなトピックを振り返ってみます。
クリンチャータイヤの登場
ロードバイク用のタイヤと言えば、かつてはチューブラーを指していました。
ロードバイク用のクリンチャータイヤが登場したのは1985年(仲沢隆「ロードバイク進化論」より)。
最初に手を付けたのは今でもトップメーカーであるミシュランです。ハイライトシリーズというタイヤを発売し、プロチームに供給。
数年後にはグランツールでも勝利を挙げ、それまで当たり前であったチューブラータイヤに比肩しうる性能を持っていることを証明したのでした。
これに追随する形で他ブランドもロードバイク用のクリンチャータイヤをラインナップするようになったのでした。
チューブレスタイヤの登場
ロードバイク用のチューブレスタイヤを最初に発売したのはハッチンソンと言われています。2006年のことでした。
それに続いたのは日本のiRCです。2008年に現在でもシリーズとして続く「Formula Pro」の初代をリリース。
この頃はチューブレスといえば「ピュアチューブレス」を指しており、シーラントは必須ではありませんでした。
クリンチャータイヤとチューブレスタイヤの両方が利用できる「2WAY-FIT」のリムが登場し、2023年現在はそうしたリムが一般的になっています。
チューブレス「レディ」タイヤの登場
2010年代の前半になると、シーラントが必須なチューブレスタイヤが登場します。いわゆる「チューブレスレディ」。
元祖がどこのブランドであったかはハッキリしないのですが、2013年に発売されたハッチンソンの「SECTOR」というタイヤが調べた限りでは一番古い製品のようでした。
ピュアチューブレスのタイヤは空気保持層をタイヤ内側に持つ必要があり、これが重量化を招いていました。その空気保持層の役目をシーラントに担わせるのがチューブレスレディです。
ピュアチューブレスより重量が軽く出来るためか、最初はピュアチューブレスタイヤを作っていたメーカーも、徐々にチューブレスレディへとシフト。
2023年現在、ロード用ピュアチューブレスタイヤを出しているメーカーは、ハッチンソンとiRCだけになってしまいました。
フックレスリムの登場
2020年になると、タイヤビード保持用のフックを持たない「フックレスリム」のロードホイールが登場。GIANT・ZIPP・ENVEがいち早く参入しました。
フックレスリムは非常に軽量に製造できる上に、低圧でも腰砕けしない特性があります。
そして、フックレスリムはその構造上、チューブレスタイヤ専用でした。チューブがタイヤを押し上げてタイヤが脱落するおそれがあるからですね。
2022年に、iRCからフックレスリムにも使用可能なクリンチャータイヤが発売。しかし、他メーカーは追随していません。
TPUチューブの隆盛
フックレスリムと同時期に日本に上陸したのが「TPUチューブ」です。
実はTPUチューブは日本発の製品でしたが、あまり流行らずに一度消滅。2010年代後半になって再復興した分野です。
最初に上陸したのは、Tubolito。2019年のことでした。
チューブなのでクリンチャータイヤ専用品。何が良かったかと言えば「非常に軽い」ということ。
それまでのロード用チューブのボリュームゾーンの重量は80g前後(ブチルチューブ)でしたが、TPUチューブは厚いモデルで40g。薄いモデルだと30gを切る重量。
最初はブチルチューブの倍程度の値段のものばかり&様子見の人が多かったのですが、徐々に「意外と悪くない」という評価が広がっていったように思います。
2022年頃からはTPUチューブを出すブランドが爆発的に増え、現在では国内でも10以上のブランドのTPUチューブを買うことが出来るようになりました。
アンケートを実施
2020年ごろから年に1回程度のペースでタイヤシステムのアンケートを実施してきました。
実施したのは以下の3回です。
- 2020年5月
- 2022年2月
- 2023年3月
質問内容
設問は「ロードバイクでメインとして使っているタイヤシステムは何ですか?」でした。対象は「ロードバイク」に限定しています。
回答2: クリンチャー
回答3: チューブレス(レディ含む)
回答4: その他
選択肢は4つあり、その中から1つを選んで回答してもらう方式です。
「その他」に該当するのは、TUFOの「チューブラークリンチャー」くらいでしょうか。チューブラータイヤに対し、クリンチャータイヤに取付可能なビードを追加する……という製品があるのです。相当マイナーですが。
アンケート結果
まずは2020年5月の結果から。投票数は1044票。
クリンチャーが72.7%、チューブレスが18.8%、チューブラーが7.8%という割合でした。
次に、2022年2月の結果です。投票数は1490票。
クリンチャーが2%減り、チューブレスが2%増えました。
最後に、2023年3月の結果です。投票数は2360票。
クリンチャーが1%増えて、チューブラーが1%減りました。チューブレスの比率が0.1%も変化していないことにはちょっと驚きました。
考察
まず、このアンケートはTwitterにおけるアンケートということで、回答者は私のフォロワーさんが中心です。比率的にはブルベ等のロングライド関係の人が多く、レース系の方の比率は少ないと思われます。
ロングライド関係ではチューブレスの乗り心地を理由に愛用する人もいる一方、パンク時の復旧のしやすさからクリンチャーを選ぶ人も多数。どちらかと言えば後者の方が多い気がします。
一方、レースの世界ではパフォーマンスの高さを理由にチューブレスを使う選手がかなりの割合を締めるようです。そして未だにレースの世界ではチューブラー人気も根強いものがあります。
以上より、このアンケートでは世間一般のロード乗りの使用状況よりも「クリンチャー多め」「チューブレス/チューブラー少なめ」になっているものと思われます。ただ、三回のアンケートの回答者層はほぼ同じであるはずです。
2020年からの3年間で比率に大きな変化はありませんが、一度減ったクリンチャーが2023年になって増加に転じたのは興味深い変化です。
私自身は2022年5月まではチューブレスレディタイヤを使っていましたが、大事なイベントでパンクして修理が不可能であったため、それ以来チューブレスレディは封印することにしました。
クリンチャーが増加に転じたのは、TPUチューブの効果が大きいかもしれません。
登場当初こそ「様子見」の人が多かったものの、2022年には多くのメーカーが参入。選択肢も増え、ブチルチューブと変わらない値段の製品も出てきました。長期使用レポートも出始めて、「普通に使える」と判断した人も増えたのでしょう。
自転車業界側の流れとしてはチューブレス推しであることは明らかですが、ディスクブレーキ化に比べるとそこまで業界の思惑通りにはなっていないように感じます。フックレスリムに追随するメーカーがあまり現れなかったのも痛手だったかもしれません。
次のチューブレス側の一手に注目です。
まとめ
一般ユーザーのタイヤシステム利用比率は、現状はクリンチャーが最も多数派のようです。
チューブレスも2割程度はおり、業界側の姿勢も考えると今後比率はより増えることが予想されます。
チューブラーは完全に老年期に突入……といった感じではありますが、今後また見直されることもあるのでしょうか? TPUチューブも90年代に一度消えた所から復活したのでありえない話ではありません。
今後の利用比率の動きは「TPUチューブ」が鍵を握っている気がします。
また2024年の春頃にもう一度アンケートを行ってみようと思っています。
昨日のタイヤ幅の記事と合わせると、現状一番メジャーなのは「28Cのクリンチャータイヤ」であると言えそうです。
実際、今日ショップで聞いた所、一番売れているのは28Cのクリンチャーだそうで。メーカー側としても力を入れているのがここだと思うので、品質が今後更に向上することを期待しています。
著者情報
年齢: 39歳(執筆時)
身長: 176cm / 体重: 82kg
自転車歴: 2009年~
年間走行距離: 10000~15000km
ライドスタイル: ロングライド, ブルベ, ファストラン, 通勤
普段乗る自転車: BIANCHI OLTRE XR4(カーボン), QUARK ロードバイク(スチール)
私のベスト自転車: LAPIERRE XELIUS(カーボン)
# 乗り手の体格や用途によって同じパーツでも評価は変わると考えているため、参考情報として掲載しています。
# 掲載項目は、road.ccを参考にさせていただきました。